園藝之友 第2年第7号 (1906年)
記念付録
花卉繁殖法
第一章 繁殖室及びその構造
西 荘太郎
欧米の花卉栽培に精通しておられる西荘太郎先生*がご自身の欧米での見聞と文献から繁殖室について要点を具体的にまとめられているので、メモしました。*お写真からは20代か30代のようにお見受けしましたが、この後、間もなく西荘太郎先生は故人となられています。明治は今より早世の方も多かったのですね。繁殖室とは、植物の繁殖用の温室です。植物の展示や鑑賞用温室ではなく、いわば裏方の温室です。本記事や口絵により当時のものを具体的にイメージすることができます。
欧米の花卉栽培に精通しておられる西荘太郎先生*がご自身の欧米での見聞と文献から繁殖室について要点を具体的にまとめられているので、メモしました。*お写真からは20代か30代のようにお見受けしましたが、この後、間もなく西荘太郎先生は故人となられています。明治は今より早世の方も多かったのですね。
繁殖室とは、植物の繁殖用の温室です。植物の展示や鑑賞用温室ではなく、いわば裏方の温室です。本記事や口絵により当時のものを具体的にイメージすることができます。
この口絵はプリムラサイ子ンシス**の培養室(園藝之友 第2年第3号、1906年)。**以前に「グリンハウス、コンサーベートリー内における花の王」で種子が高価、と紹介しましたが、このように大事に繁殖されています。園藝之友には当時の写真や色付きの絵が載っていて、眺めるだけでも楽しいものです。
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[繁殖室の形状]
- 室内の温度が意のままに調整できて、高低に温度差がなく常に平均温度を保つことができること。そのため、高からず幅も広すぎずが善しい。
- 温室中央に、幅0.6〜0.9m幅の通路を設ける。
- その両側壁に沿って幅0.9〜1.2mの繁殖床の棚を設ける。---> 口絵では植物のある棚で、ガラスの蓋がついています。
[繁殖室の形状]
- 両屋根タイプが便利だが、片屋根も可。
- 日射を受けると急激に温度が上がるので屋根傾斜を極めて緩やかにし、南向きにしないこと。
[繁殖室の高さと幅]
- 繁殖室自体の幅は2.4, 2.7〜3.3m。高さは棟部で3m内外。高すぎると温度に高低差がつくし、繁殖させる植物は草丈が低いので上部は無駄になる。---> 長さはわかりませんが、幅と高さは現代の温室に比べるとかわいらしいものです。
[繁殖室の出入口]
- 室温を保つため、出入口は直接外部と面しないように、汽罐室の一側、または熱室の隣に設ける。---> 口絵では通路奥に外部との出入口ドアがあり、西先生が見聞した欧米温室と異なるようです。繁殖床の棚の下には暖房用の温湯管/スチーム管が走っていて、温湯や熱蒸気を作るための部屋が繁殖室とは別に設けられます。
[繁殖床]
- 繁殖棚の高さは0.9〜1.2mとし、棚は壁に密接する。(繁殖用ではない温室の場合は壁との間に3〜6cmの隙間を設ける。)棚の前面は板またはレンガ作りとし、1.8〜2.7m毎に開閉窓を設ける。---> 口絵の右の棚の足元に開閉窓が見えます。
- 繁殖室の床には多数の細孔がある板を敷くか、石盤石を少しづつ重ねて敷く。石盤石1枚の大きさは長さ0.9〜1.2、幅15〜18cmか30cm位。英国ではトタン並板の低い部分に6〜9cmおきに排水のための小孔を開けて用いている。これが最も熱伝導がよく、価格も安い。
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