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2021年9月5日日曜日

キッチンガーデン向きの立木果樹ーマルベリー(桑)

 レディのためのガーデニング入門 (by Mrs. Loudon 1840年)には、果樹園ではなくキッチンガーデンに植えることのできる立木の果樹として、

4種(プラム・ダムソン、マルベリー、甘栗、フィルバーツとヘーゼルナッツ)だけは、刈り込むことで、キッチンガーデンで立木として栽培することができる」と書かれています。

私は、マルベリー(桑)はラズベリーなどと同じ低木類で狭い庭でも大丈夫かなと思って、実から発芽させて植えちゃいました。もし大きくなったらどんどん刈り込みたいと思います。もっとも、タネから育てるとばらつきが大きいらしいので、実がならないかも。。。




それでは、  レディのためのガーデニング入門から---------------------------------

マルベリー(桑)の木は、一般に、その美しい形や実を集めるため、芝地に植えられます。実は熟すとすぐに落果します。乾いた地面や砂利に落ちたら台無しです。

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多くの種類がありますが、3つに大別されます。ひとつはホワイト種で、この種類だけがその葉で蚕を養うのに使われています。ブラック種は果実用として、一般に庭で育てられます。そして、レッド種、別名アメリカンマルベリーの3種です。

多くの人は、ブラック種とホワイト種のマルベリーの違いに気づいていません。マルベリー(桑)の木が自分の庭になければ、蚕を飼うことができないと思っています。実際は、ホワイトマルベリーはイングランドでは育てられることすらまれです。

ブラックマルベリーの葉は、逆に、蚕に有害です。レタスの葉の方が、イングランドでは蚕を飼育するのに、よほど適しています。

レッドマルベリーの果実は食べることができますが、食味はよくありません。さらに、その葉は蚕に有害です。

ブラックマルベリーはペルシャ原産といわれています。古代ローマ統治時代に、イタリアではすでに一般的だったそうなので、だとすると、とても早い時代にヨーロッパへもたらされたにちがいありません。イングランドへは1573年までにはもたらされたそうですが、現存する古い木の中には1573年にすでにかなりの大きさであったと言われている木があります。

マルベリーは他の木にはない特徴を持っています。

このうち最も印象的な特性は、幹(trunk)で繁殖できるというものです。もし男性の腕の太さかそれ以上の大きな枝肢(limb)を切断して、地面に挿したら、さしたるトラブルなく、生長するでしょう。おそらく翌年か翌々年たくさんの実を着けるでしょう。これはオリーブの木以外では見られない特徴と思われます。

マルベリーはまた、他の木よりも遅く葉を出します。ただし新芽が開き始めると、その葉は信じられないほど短時間で展開し、若い実を着けます。

もうひとつの特徴は、古い木は5つか6つに割れることがよくあります。それぞれの部分はやがて樹皮で取り囲まれるようになり、その結果、とても古くて太い幹は、5つか6つの細く新しい幹へと見た目を変えます。その枝(branch)もまた、地面に横たわっているだけで、根が出て木になります。

もし古いマルベリーの木が風で倒されると、倒れたそれぞれの枝(branch)から地面へ根が伸びて短期間で木になります。

枯れてしまった場合、ほとんどのマルベリーは生長点のすぐ上で切り落とせば、蘇生させることができます。その場合、多くの若い茎を伸ばして、あっという間に実で覆われるようになるでしょう。

その他の特徴として、マルベリーは庭師の世話をほんのわずかしか必要としません。剪定は不要です。実は熟すとすぐ落ちるので、果実を収穫する必要すらありません。

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拾えばいいだけ。落ちた実が汚れないように地面を芝にしたり、現代ならシートを広げておけばよさそうです。

2021年8月29日日曜日

壁栽培やエスパリエ向きの果樹

 THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.

「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」

WALTER NICOL 氏の本(1802年)でとりあげられている壁栽培向きの果樹は、

リンゴ

アプリコット

オウトウ

イチジク

洋ナシ

プラム

このうちリンゴ、オウトウ、洋ナシは高温を嫌うため北向きの壁で栽培できる品種もあげられています。

ここにはありませんが、ミセス・ラウドン(1840年)ではモモ、ネクタリンが、イギリスでは南壁での栽培が必須な果樹として登場しています。


エスパリエ向きの果樹として、

リンゴ

オウトウ

洋ナシ

プラム


ブドウの垣根仕立てはエスパリエそのものと思うのですが、ブドウは本書では温室栽培の果樹の扱いで、壁栽培やエスパリエ向きの果樹として挙げられておらず、温室栽培の章で詳しく解説されています。


これら果樹の植え付け間隔は次のように記載されています。

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高さ3.6mの壁の場合:リンゴは6m間隔で配置します。 アプリコットは9m、 オウトウは6m、イチジクは3.6m、梨は9m、プラムは6m離します。 高さ4.5mの壁の場合、リンゴは4.5m、アプリコットは7.2m、オウトウは4.5m、イチジクは3m、梨は7.2m、プラムは4.5m離します。 同様に、3〜5.4mの高さの壁でも同じ比率で配置します。

エスパリエの場合、リンゴは9m、オウトウは6m、洋ナシは9m、プラムは6m離します。 しかし、これらは壁と違ってレールの両側を使えば、2倍の本数を植えられるので、同品種2本を一緒に配置すべきです。これにより、2本のうち1本を間引いても、必ずどの品種も残せることになります。

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我が家は九州の暖地、しかも極小の庭なので、どれも植えられそうにありません。小型の柑橘果樹や低木のベリー類でエスパリエもどきができたらいいなと思います。

16世紀の有名な園芸書“Gardners Labyrinth”の挿絵。19世紀の壮大な庭園に比べたら16世紀の庭は素朴にも感じられます。これは庭のごく一部分を描いたもの。壁やあずまやでの立体栽培も描かれていて、壁栽培やエスパリエに近いものを感じます。(我が家の極小の庭は全部でこの絵の広さくらいです。こんな雰囲気にできたらいいな。)

2021年8月22日日曜日

図解 果樹用ボーダーの地下部

壁栽培やエスパリエの果樹を植える栽培床となるボーダーの地下部を図にしてみました。

ミセス・ラウドンによれば、果樹の根は深さ30〜45 cm までで維持するように(Walter Nicol氏は深さ90 cm)。深いところの澱んだ滞水へ根が伸びると、突然実を着けなくなるから、だそうです。

エスパリエは無理な形に誘引して、しょっちゅう剪定するので短命だそうです。植え替えを考えると現代でも遮根シートなどで根域を深さ30〜45 cm に制限した方が便利かも。

排水の悪い土地では、Walter Nicol氏はロームと砂利を交互に転圧した不透水層(耕盤みたいなもの)+排水溝を作っています。200年前ともなると、見えないところにも惜しみなく人力をかけてます。人力が高価な現代は代わりにいい資材があります。暗渠パイプで排水ですね。暗渠パイプの施工方法はYoutubeにいっぱいあがっています。もっとも、ミセス・ラウドン推奨の深さ30〜45 cm の栽培深さにまで地下水位が到達しているような場所で果樹栽培するようなむこうみず人は滅多にいないだろうと思われます。


2021年8月15日日曜日

果樹用ボーダーの幅、深さ、構成

 ガーデンウォールやエスパリエのレールができたら、次の作業は、壁栽培やエスパリエの果樹を植える土壌となるボーダーの造成です。

ボーダーの幅、深さ、土壌構成について以下よりメモ。

60 cm 四方の穴を掘るだけでさえ、人力では、ひ弱な現代人には重労働です。現代に以下のボーダーを忠実に再現しようとなると、重機を使ったプロにお任せしかないでしょう。

労力も財力もない場合は、遮根シートや大型ポットなどの現代資材で工夫してミニサイズのボーダーもどきを作るのが関の山?その場合でも、本書のエッセンスには参考になることがあると思います。

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THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.

「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」

WALTER NICOL 著 第3版、1802

BOOK II:壁栽培と果樹園の果樹

SECTION II:アプリコット、リンゴ、サクランボ、イチジク、ナシ、プラムのさまざまなボーダーの幅、深さ、構成について



庭のレイアウトルールに従えば、壁が高いほどボーダー幅を広くしなければなりません。ボーダーに沿う歩道の幅はボーダー幅の半分にします。 私の意見では、壁の高さを 3.6 m 未満にすることはめったにありません。(約40年後のミセス・ラウドンは「 3 m以上は高すぎ!」と書いています。) しかし、壁の高さが 3.6 m 未満でもボーダー幅を極端に狭くしてはいけません。必要最低限の幅を確保します。(壁栽培の場合のボーダー幅は3.6 mを確保し(?)、壁が高ければボーダー幅もさらに広くするということ。 エスパリエの場合、3.6 m が中程度の幅です。


アプリコット、リンゴ、サクランボ、イチジク用のボーダーの深さは 60〜90 cm にすべきです。壁部で深さ 90 cm 、歩道部で深さ 60 cm にする必要があります。梨とプラムの場合は壁部で120 cm、歩道部で 90 cm にします。(イギリスの本なので、残念ながら、柑橘類についての解説はありません。)


土壌が湿っていて、かつ底部が砂利や粘土の場合は、庭にとって適切とは程遠い状況です。過湿を解消するために、ボーダーの正面に沿って底の深さまでの排水溝を走らせる必要があります。 そして果樹に向いた栽培ベッドを作らなければなりません。 そのための最も一般的な方法は底部を石やレンガで舗装することですが、莫大な費用がかかります。 しかも、底が排水によって前もって完全に乾燥していないと、それはほとんど役に立ちません。 したがって、排水は慎重に行ってください。 


底を作る際には次の方法を実践してください。これはどんな舗装よりも好ましいことがわかっており、しかも、はるかに安価です。


底を壁から排水溝まで傾斜させて、15 cm の落差をつけます。 まず、滑らかに延びるタイプの良質のロームを 5 cm 敷き、ローラーをかけます。 次に、同じ量のきれいなピットまたは川の砂利を置き、ローラーをかけて落ち着かせます。 この上に、またロームを 2.5 cm の層に敷き、同様にローラーをかけます。 これらの作業はすべて、材料がかなり乾燥した状態で行う必要がありますが、最後は全体を少し湿らせて、表面に艶が出るまでローラーをかけます。その後、水かけとローラーによる転圧を交互に繰り返して、固く締固まった状態を作り、砂利がローム中にしっかりと埋め込まれた状態を作ります。

こうして、レンガや石の舗装よりもはるかに少ない費用で、より自然で優しい性質の根が侵入しない底が形成されます。(現代なら、暗渠パイプと遮根シート利用???)


アプリコット、リンゴ、サクランボ、イチジクに最も適した栽培ベッドの土壌組成は、軽い砂壌土3/4と強い粘土質ローム1/4です。これに、堆肥として適量の厩糞、牛糞、泥灰土(marl) を混ぜます。アプリコットとイチジクはリンゴやサクランボよりもかなり多くの動物性堆肥を必要とします。 梨とプラムの場合は、強い粘土質ローム3/4、軽い砂壌土1/4を堆肥とよく混ぜます。


しかし、私はこういった組成だけが果樹のボーダー用であるとは決して思いません。 樹木はさまざまな土壌でよく育ち、実を結んでいます。ただし、上記の材料を調達できる場合は、この組成、幅、深さにほぼ合わせることをお勧めします。


果樹のボーダーを本方法で作った場合には、さまざまな種類の木を分類する必要があります。 つまり、梨やプラム、そしてリンゴ、サクランボなどを同種だけでまとめることです。  同種でまとめれば、 ボーダーを準備する前に、植えることができる本数とスペースを決定するだけです。


堆肥は植える前に適切に準備する必要があります。植える前に、2、3回、溝を掘って堆肥を入れ、よく混ぜておきます。 そして、腐植土の状態を維持するために、完熟した少量の糞や他の肥やしを季節ごとに混ぜ入れます。 この作業で木の根を傷つけないように注意してください。

2021年8月12日木曜日

エスパリエの構造と配置

ガーデンウォールで囲まれた庭は秘密の花園っぽくて憧れますが、モンス〜ンな九州では果樹の壁栽培は適さない気がします。風通しが悪くて湿気で病気が出そう。透かし気味のエスパリエならいけるかも。

以下より、エスパリエの構造と配置に関する部分をメモ。

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THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.

「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」

WALTER NICOL 著 第3版、1802

BOOK II:壁栽培と果樹園の果樹


エスパリエは装飾的であるだけでなく、庭で有用であり、スタンダード(立木)仕立てよりもはるかに好まれます。 エスパリエとスタンダードのどちらも菜園の作物に影を落とします。また、激しい風で揺すられがちなので開花期や着果期に悪影響を受けやすいものです。 しかし、レール*にきちんと誘引されて仕立てられていれば、リンゴやナシの多くの品種は壁に誘引されている場合と同様にうまく栽培できるでしょう。

エスパリエは、一般的には、歩道の向こうの壁と平行に、0.9〜1.2 mの距離をとって作るのが最適です。 また、庭を横切る歩道の両側には、歩道から上記の距離(0.9〜1.2 m)をとって作ります。 健康な木が茂って覆われれば、それは見栄えのする並木道となるでしょう。


*エスパリエのレールの挿絵(現代住宅の背の高めのフェンスといった趣です。)

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2021年8月9日月曜日

図解 ガーデンウォールの断面図

 ガーデンウォールの構造と環境(続き)

細部と地下について、図にしてみました。

THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」 WALTER NICOL 著 第3版、1802年 BOOK II より


1840年の「レディのためのガーデニング入門」(Mrs. Loudon著)のガーデンウォールの説明から図にしてみたものも右に書き添え。

私の勘違いや理解不足があったらごめんなさい。






2021年8月8日日曜日

ガーデンウォールの構造と環境(続き)

ガーデンウォールの構造と環境の続きです。

細部と地下について。

THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」

WALTER NICOL 著 第3版、1802

BOOK II より

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最も見栄えが良く、最も役立つ笠石の作り方は、壁の両側で2インチの厚さまで石を斜めにし、できるだけ突き出します。 一般的に行われているように、下に溝を付けます。

庭に最も適したガーデンウォールの高さ、そして、一般に果樹の樹液の脈動に適した壁の高さは 3 m です。 しかし、変化幅を調べると、壁の高さは庭の広さ、またはむしろ見かけ上の広さに対応する必要があります。 ただし、最小値を 3 m と最大値を 5.4 m としたいと思います。 ここでは、地表面からの高さについて述べています。 0.9 m 未満のガーデンウォールは建てるべきではないことに注意してください。ほとんどの種類の木は 90 cm の土の深さを必要とします。

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と、ガーデンウォールについてはここまでしか書かれていませんが、38年後のミセス・ラウドンのガーデニング入門では、・・・

笠石/笠木は支えを付けて壁から30 cmも突き出す、と突き出しが大きくなっています。

この笠石/笠木の下にフックを列状に付けて、カーテンを吊るし、花を守る方法が紹介されています。

「果樹を植えるボーダーの土の深さは 90 cm 」という簡単な記述から、「(表土層は)45 cm の深さとし、根がその地表面近くにとどまるように」注意しなければならないと、浅くなる方向に変化しています。

根が壁の裏側にアーチとなって広がらないように、壁は丈夫で深い基礎の上に設けること。

下層へ根がのびないように、表層土の底は排水の効いた石層やアスファルトなどにすることで、下層への根の伸びを遮断するように。

と解説がより具体的になっています。


ガーデンウォールとそこでの壁栽培の果樹に目を奪われますが、その地下も工夫されていることを私は初めて知った次第です。理解不足もありますが、後で図にしておこうと思います。


2021年7月31日土曜日

図解 ガーデンウォール

WALTER NICOL 著「FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER」(1802年)の

  BOOK II壁栽培と果樹園の果樹

    第1章 第1節のガーデンウォールの解説を絵にしてみました。

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ガーデンウォールは樹高 30 m の樹林地の中に作られました。

樹林と壁の間は 90 m 離されています。近いと樹林が作る日陰に入っちゃいますから。そこに、低木類と歩道とボーダーが配置されます。

南向きのレンガ製のガーデンウォールで果樹を壁栽培するという趣向です。

ガーデンウォールの高さは3〜3.6 mと書かれています。1, 2 世代後のミセス・ラウドンは3 m以上は高すぎ2.4 m が適当と書いています。中産階級、庶民へと普及するにつれて土地も狭くなり、高い壁では内部の菜園に大きな日陰を作ってしまうようになったから、だと思います。



[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:かすかに秋の気配

 9月に入っても35℃超え、最低気温も27℃と暑いです。 ただ、熱湯の中にいるような空気感は、日陰で風があれば、やわらいできたような。。。いや、単に、自分が暑さに順化しただけかも(笑) 夕方なら草刈りする気力が、ようやく戻ってまいりました。暑さで弱っている雑草は比較的抜きやすいで...