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2023年1月29日日曜日

Cucumber(キュウリ):「The Gardeners Labyrinth」第61章

庭のヤサイは庭師らの選抜によって古代ローマ時代から本書の16世紀まで徐々に改良されてきたと思うのですが、栽培技術は古代ローマ時代からの引用が多いです。そのせいか、古代ローマで愛されたキュウリについての本章は結構ボリュームがあります。

今は厳寒の最中ですが、春めいた日がときどき出てくるようになるとキュウリをかじりたくなりますよね。早めに収穫する方法について古代ローマから16世紀の当時まで伝えられてきたことが書かれています。そしてそれが19世紀の温床や温室の集大成につながるんだろうと思います。

第2部29章 キュウリの播種と栽培において知るべき技術、管理、秘訣。

キュウリ
(The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。)


昔、古代ローマ人はヘチマ類とキュウリを区別することもあれば同一視することもありました。プリニーもそうでしたし、アテナイ人エウティデモスはポットハーブについて書いた自身の本の中で、同じものをヘチマと呼んだりインドキュウリと呼んだりしています。エラシストラトスの弟子であるメネドルスはこの2つは別の種類であると定義しました。彼の言うインドキュウリがキュウリのことであり、もう一つは一般的なヘチマで別種であるとしました。さらに、キュウリは(ヴァロの文によれば)その曲がった形からつけられた名前であり、ギリシアの医師はそれをシキュオンとシキュスの2つの名前で呼びました。というのは、(デメトリウスが書いているように)キュウリに含まれる冷たさが性的な行為を止め、抑制するからです*。

*「シキュオン」「シキュス」は何か性的なものを連想させる言葉なのかも。

しかし、これらの2種の区別についてさらに述べることは置いておいて、キュウリの適切な栽培管理についてどのような注意が必要かをお教えする事に取り掛かりましょう。

ナポリのルティリウスの教えに従えば、キュウリは畝に厚蒔きにならないようにします。キュウリは 1.5 フィートの高さになります。畝幅は3フィートとし、畝同士は 8フィート、間隔を空ける必要があります。そうすればキュウリは(生育中)自由に這い広がることができます。

発芽後、レーキをかけたり雑草を除く必要はありません。なぜなら、最初に発芽さえすればキュウリは他のハーブのあいだで生長することを好み、より良く繁栄するからです。他のハーブはキュウリを助けて大いに強くしてくれます。

キュウリの株は地面に長く伸びて這いまわり、ブドウのように枝分かれして広がります。キュウリの茎は弱いので地面に支柱を立てて生長を支えなければ、そのツルは地面に広がって伸びることとなります。この支柱は弱い枝やツルをより良い状態に保ち、キュウリの実が地面に横たわって腐敗するのを防ぐことができます。

種子の大部分は播種後 6〜7日目までに発芽して地表に現れてきます。

その期間、蒔いた場所は容器に蓄えた水で十分に湿るようにしておきます。すなわち、水を蓄えた容器の口から布のへり地か毛織物を垂れ下げて、絶え間なく水がしたたり落ちるようにします。この水やりの方法はフィルタリングと呼ばれます。

このような水やり方法は必要とされる最も重要な技術の 1つであり、これによりキュウリは繁栄し、多くの湿気が与えられて生長が最速で進み、キュウリが大変好む状況をもたらします。

ただし、これを非常に邪魔するものがあります。霜や冷たい空気は非常に恐しいものです。

そのため、このような寒い時期にはフェンスを立てて、そこにわらのマットレスを丁寧にかけてやる必要があります。

熟練者ルティリウスが書いたキュウリの栽培書には、タネを蒔く3月から5月中旬までは寒さや霜の危険があるので、わらのマットレスで栽培ベッドを覆うように、と書かれています。

その時点で、よく耕したベッドに株を移植すると、生長して地面に厚く広く這い回りますが、土と糞で十分に整えたベッドに植えて1フィート以上の高さにして育てれば、もっと多くの収穫をもたらします。

タネを土に蒔く際には、栽培ベッドに1列に並べた種子がお互いに2フィート離れるように注意する必要があります。

ここで、種子が8〜10日目までに割れて発芽したかどうかを調べて、種子がまだ硬いかすでに割れているかで種子の良し悪しを判別できます。

しかし、これと逆に柔らかくなっている種子は無益であり、投げ捨てられるべきものです。その場所にはタネを新たに蒔く必要があります。6〜8日目まで様子を見て、そのタネが割れたか逆に柔らかくなっていないか調べて、柔らかくなっているようなら上記のようにまた新たにタネを蒔き直します。

発芽後、十分立派に育っている限り、除草する必要は一切ありません。他のハーブの中で育つことによって、そこから栄養が取れるからです。

タネは蒔く前に、ルティリウスが言ったように羊の乳に2日間浸すか、プリニーが指示したようにハチミツ水に浸すか、砂糖水に浸すと、キュウリは完全に生長した後、甘く柔らかく白く、そして味も見た目も最高の実を収穫できます。偉人コルメラが認めたように、そして彼の前にはギリシャのフロレンティヌスが、また、コルメラやフロレンティヌスの後にはプリニーとパラディウスが全て経験を通してこのことを確認しています。

キュウリを適期に迅速に、まして一年中収穫するには(ナポリ人の教えに従って)春の初めに古い使い古したバスケットやへこみのない土鍋に、細かくふるいにかけて前もって肥やしを入れて調整し水でいくらか湿らせた土を満たす必要があります。これにタネを蒔いた後、このバスケットや土鍋を暖かく晴れた日が続いたり、穏やかな雨が降ったりする時に屋外に置けば、太陽や少しの降雨によってキュウリは丈夫になり、元気に育ちます。

ただし、寒い季節のあいだは霜や冷気から守るため、夕方が近づいたらこれらに保温のためのカバーをかけるか地下の室(むろ)に入れてやる必要があります。このように、カバーの下または暖かい地中に置いて、時に応じて水でやさしく湿らせます。

そして、あらゆる霜、嵐、冷気が通り過ぎるまで、このような賢明な管理を続けます。通常、私たちのところでは5月中旬頃まで霜、嵐、冷気は止まないのでその管理を続けましょう。

この後、適切な機会や日が訪れたら、前述のように、よく耕して刈り込み手入れしていた地面にこのバスケットまたは土鍋の縁の深さまで、またはそれより深く地中に丁寧に埋める必要があります。

こうすれば、他のどの作物よりもずっと早い時期に適期のキュウリを楽しむことができるでしょう。

こうして、(余分な枝は切った後)よく手入れしたベッドにそれらを植えれば、より容易に、より短期間で立派なキュウリを収穫できるでしょう。

学ぶ必要があると私が考えるのは次の1点です。

毎日、半分に切った容器、バスケット、または土鍋を外に出したり室に運び入れるといった手間と苦労は、より大きな道具を利用することで避けることができます。

容器にキュウリを植えた(ポット栽培)の場合、手押し車または車輪付きの似たようなものがあれば、外に出す時も、再び室に運び入れる時も、この頻繁な出し入れの作業は驚くほど楽になります。

若い株を寒く激しい風、霜、冷気、暑い太陽から守るには、その目的のために用意したガラスをベッドに置いて若い株を覆うようにします。この方法でティベリウス・カエサルへ一年中キュウリが献上され、彼はキュウリを毎日楽しむことができ、大いに喜びました。偉人コルメラの後、学識者プリニーがこのことを記録に残しています。

ただし、コルメラが書いているように、より少ない世話と労力で、同じことができます。

日当たりが良くよく肥えた場所 (と彼は言っています) にヤナギやブラックベリーのようなイバラといった雑多な枝を一列にして土に挿して育てます。秋分後、土の中で少しその頭を切り取り、硬い木の棒で刺して穴を作って大きくした後、ヤナギかイバラのその真ん中の穴に柔らかい糞を詰めます。こうしておいて、キュウリのタネをその場所に入れます。ある程度大きくなったら、キュウリはヤナギやイバラとの接ぎ木になります。

このように上手に接木したキュウリは、自分自身で養分を吸収するだけではなく、いわば別の母根からの養分も受け取ることになります。これにより、通常は寒い季節と霜で傷つけられるキュウリを収穫できるというわけです。

博学なプリニーはこれに問題があると言っています。コルメラの間違った指示についてここで読者の皆さんに忠告いたしましょう。

コルメラは一人の著者の主張を根拠なく述べたようです。そのため、コルメラの誤りを修正したプリニーの文章は大いに参考になるでしょう。

キュウリは一年中青いものを楽しむことができ、そのためにプリニーは次のように指示、主張しています。すなわち、

イバラの最も優れた小枝を日当たりの良い場所に挿木して、春分または3月中旬頃に指2本程度の長さにカットします。そしてその頭部に大きな穴を作った後、キュウリのタネを特にイバラの髄に埋め、柔らかい糞で満たします。それから、肥えた糞と細かい土を十分混ぜて、厚めに敷いてその根の周りに丁寧に塚を築きます。それが寒さを防いでくれます。

しかし、どのように扱われるべきであるにせよ、プリニーはこの指示の中でコルメラに同意していないことが十分読み取れます。

プリニーはこの作業を春分の頃に行うよう主張していますが、コルメラは秋分の頃としています。ナポリのルティリウスはコルメラと同様の解釈を記していて、彼はコルメラに同意しているようです。

キュウリは雷と稲妻を非常に恐れます。そのため、庭師は雷鳴のある時にはキュウリを植えたり抜いたりすることはできません。また、大嵐や嵐が発生した時、柔らかい実をシートや薄いカバーで覆っていないと、通常はその後に滅びて枯れてしまいます。

長くて柔らかいキュウリを手に入れたいと思っているなら、若くて成長中の実の下にきれいな水で満たされた土鍋、ボール、または半分に切ったチューブを、指5本か6本分あるいは半フィートの距離をとって置く必要があります。翌日までに、キュウリの実は水のところまで伸びているので、土鍋をその下に低くして設置したり、実を高く上げたりするとキュウリは水に向かって先が伸びるのを毎日目撃するでしょう。その長さを園主は賞賛します。キュウリの実が器から水を奪っていくのに反比例して、キュウリの樹体は曲がりくねって長く這い伸びるでしょう。

キュウリの花がエルダーの木で作った杖の中空のパイプの中で成長するようにセットすると、驚くことに実もこのパイプと同じような長さに成長します。

なお、キュウリの油に対する反応についても学ばなければなりません。なぜなら、キュウリは(プリニーが書いているように)実の下に水の代わりに油の容器を置かれるのを徹底的に嫌い、その後、キュウリの実は油を避けるように曲がりくねります。一晩毎のペースでキュウリの実が鉤針のように曲がっていないかをよく確認する必要があります。

コルメラが (ギリシアのフロレンティヌスにちなんで) 忠告しているように、特別な注意が必要です。月経中の女性はキュウリの実に近づき、特に実を触ってはいけません。キュウリは弱り、枯れてしまうからです。

そういった場合、キュウリはこの影響を受けて若い実を殺した後、キュウリの樹体は見た目上は回復したように見えますが、結局、その後の実は不快な成長をとげるか、さもなければ腐敗します。

ナポリのルティリウスが記しているように、播種する 3日前に種子をゴマ油、またはナポリのルティリウスが記しているジュニペルス・サビーナの油に浸すか、またはPlinie Culixという名前のハーブジュースに浸すとキュウリはタネなしの実を実らせます。ギリシャではイギリスノミトリ草類のConizaを利用したと推測します。(←古代ローマの受け売りで現実味はないと思われます。)

タネなしの実を作る似た方法があります。最初の茎や枝(ツルの状態によります)の頭だけが地中から見えてきたら土を掘って頭1/3がむき出しの状態になるようにします。その茎・枝が伸びて大地に広がったら、巧みな技術で切り落として、必要な茎と枝だけを残します。そのようにうまく処理すれば、その直近の出芽からの実はタネなしとなります。

キュウリの実をローマ文字の形や奇妙な形にしたり、お絵描きや紋章を緑色の外皮にエンボス加工のように描き出して楽しみたいと思うなら、木型にその形を生き生きと彫って、陶芸粘土かパリの石膏で指の太さの厚みまで包み、2つに切り分けて、早く使用できるように晴れた暑い場所で乾かします。この木型と同じくらいの大きさと長さの若いキュウリの実を選んでこの中空の粘土型に入れ、ピッタリと閉じてぶら下げておけば、粘土型いっぱいに実が成長します。これは楽しい作業であり、型枠いっぱいに成長したら収穫できます。

熟練した人の報告によると、その特性として若い実は新しい形に非常にあるいは驚くほど変形します。そのため、若い実を巧みに作られた器や型にはめると、あたかもその真剣な意志と欲求に従うように、内部に造られた形をそっくり再現します。ルティリウスはその農業書の中で、このことをガルギリウス・マルティアリスからの言い伝えとしていますが、私にはそれが確かかどうかわかりません。

手短に言えば、木枠に向かって実が生長してくると木枠通りの形になります。実の多くは(プリニーの報告によると)その表面にドラゴンが巻き付いているような形になります。

新鮮で立派なキュウリを長期間楽しみたいなら、白ワインの中に実を壊したり返したりしないで並べて入れ、その後、その容器を乱暴に動かしたりしないで、天井の低い倉庫やアーチ構造の地下室に入れて砂を山のように盛ってその容器を覆います。

キュウリは水と塩でできた適切なピクルス液に漬ければ長持ちします。

しかし、キュウリの実の新鮮さとおいしさはもっと長く保存することができます。農業書の指示によれば、樽か木製の容器内の4分の1またはそれより少し少なめに実をできるだけ高く吊るし入れます。ぶら下がっているキュウリの実は決して酢に触れないようにします。

そして、その容器はそっと静かに扱います。酢の力が決して息を吐き出さないようにします。そうしないと、酢は本来、実の薄い部分を浸透または突き刺す性質があるからです。

こうすれば、冬の間じゅうずっと、食べたい時においしいキュウリのサラダを作ることができます。

熟練者の報告によると、キュウリは最も純粋な蒸留酢で満たされたガラスの容器に入れられれば、新鮮で青々とした状態を最も長く保ちます。園主が望むなら実がまだ若くて小さいうちに切り取って長く保存することもできます。

火傷するような熱湯を入れた容器にこのきゅうりを入れて、それが完了したら、取り出して一晩中外に置き、完全に冷やします。その後、キュウリを水と塩でできた刺激の強いピクルス液で満たした容器に入れたら、前述の方法のように、新しい実ができるか入手できるまでずっと保存しておくことができます。

古代ローマの人の報告によると、キュウリとヘチマは容器に並べて入れて塩、酢、フェンネル、マジョラムをパラパラとふって一緒にピクルスにすれば長期間保存できます。

別の方法もあります。酢とマスタードシードで作ったピクルス液にキュウリを入れると、新鮮で緑の状態が長期間保存できると言われています。

博識なプリニーは、キュウリを日陰の場所に作った畝に置いて、ふるいにかけた砂をベッドの形にまき散らし、土と乾いたわらで覆うようにしていました。

アテネウスは、キュウリは月が満ちているときに最も大きく、目に最も美しいと言っています。月の光の強さに合わせてキュウリに含まれる水分が増加するからと報告しています。

そのため、庭師がきれいで大きなキュウリを楽しみたいのなら、満月の時に収穫しましょう。月が痩せたり欠けたりしているときは、実は細くなり、売る場合も見栄えがよくありません。

これに加えて、このアテナイオス(プリニーの支持者)は、どれほど頻繁に雷鳴や稲妻を受けたかにより、キュウリは(恐怖に襲われたように)非常に頻繁にねじれたり曲がったりすると付け加えています。

大変驚くことに、ラバやロバはキュウリに非常に夢中になって、遠く離れた場所のキュウリの味を嗅ぎ取り、驚くことに、その美味しさに誘われて何度もキュウリを育てている場所に突進します。

そのためには、周囲に生け垣や堤防を頑丈に作らなければなりません。そうすれば、キュウリを踏み荒らしてダメにすることは決してありません。

しかし、キュウリについてさらに驚くべきことがあります。それはギリシアの農業指南書に記されていて、証明がたくさんなされています。すなわち、急な発熱にうなされた、まだ母乳を吸っている乳児をキュウリで作ったその子と同じくらいの大きさのベッドに横たえて眠らせます。 このキュウリのベッドで少しの時間、昼寝程度でも眠れば、その間にキュウリの効果で発熱がすっかりキュウリに吸い取られます。

もしほとんど水のない土地でキュウリを楽しみたいなら、適切な深さの畝を掘って作り、そこを半分、籾殻、かブドウや樹木の廃枝を細かく折ったもので満たします。そして土で覆って、そこにタネを適度な間隔を空けて埋めます。発芽中は水やりしたりあるいはほとんど湿らせません。しかし、その後は前に教えたように管理してください。


身体を解き、浄化することに関して。

ルベルベ、タービス、アガリッケ、エルボールなどの野生のキュウリの根を潰すか絞った液体に種子を3日間浸し、そして5日間まとめてキュウリを発芽させた後、頻繁にこの液体でキュウリの株を湿らせます。そうしてできたキュウリの実はお腹を優しく浄化してくれるでしょう。

キュウリが枝を伸ばしている間に、根のあたりを掘り起こして、上向きに生えている小さな根を切り落とし、その場所に大量のヘレボレス(クリスマスローズはその1種)かその他の簡単な清めになるものを置いて、丁寧に土で覆えば、キュウリをより強くすることができます。


薬草としてのキュウリとその使用方法。

栽培種のキュウリは2度の湿性と冷性をもっていますが、種子は乾いていて、1度または2度初めの乾性をもっています。

Dyphilus Carystus(ギリシア人の間で非常によく知られた医学者で、農業にも精通していた)は、肉は消化が良くないので、食べた後に休憩したい場合、夕食の始めにキュウリを食べることは、ラディッシュの場合と同様、禁止していました。しかし、キュウリを食事の最後に食べることは、肉の消化を容易にし、消化できなければ多くの場合、食べた肉を吐き出させるとしました。

種子を包んでいる固いさやの部分は消化しにくいですが、より柔らかい繊維や中の果肉は、はるかに速く簡単に消化されます。コレラや熱くて乾いた胃に効果があります。適切に食べれば胃を冷やし、かつ喉の渇きを癒してくれます。

キュウリはまるごと、酢や毎日の労働する体に必要な塩で適切に食べることができます。

しかし、労働しない人、または痰気質の人にとっては、こういった食べ方はすべて否定されます。

これは、特に胃と腱に大きな害を及ぼすからです。しかし、(上手に蒸留された)キュウリ水と漉されて透明なキュウリのジュースは急性の発熱を取り除き、喉の渇きを和らげます。

キュウリは水に浸して食べるのではなく、油と酢をつけて生で食べるべきであり、良い実というのは完全に熟した状態で収穫したものか、手に取ってやや軽いと見分けられるものです。

キュウリの種子を潰して飲めば、強い尿臭を和らげますが、キュウリのタネの煎じ薬はこれにもっと効果があり、腎臓の熱を和らげます。熱と熱による渇きを和らげてくれます。

前述のディフィルスは次のように述べています。キュウリの種子には冷却する特性があって、そのためほとんど消化されず、そのまま腹部の曲がりくねった部分(腸)に送られます。種子は(彼が断言するように)確かに大きな寒さを引き起こし、黄色い胆汁を生じさせ、そして性的衝動が減退します。

キュウリの種子は潰して煮詰めたワインかミルクで飲めば、潰瘍性の膀胱を持つような人に非常に効果があります。3本の指でうまく持ち上げられるくらいたくさんの量の種子をクミンと一緒に潰してワインで飲めば、こういった人や咳で苦しんでいるような人を短期間で癒すことができます。

前述の種子を潰した粉を母乳に入れて、1回に最大で3オンスまでの量を飲めば、パニック症状の人に効果があります。危険な赤痢の下痢にやられたような人はこの粉と同程度の量のクミンの種子を一緒に粉状にして飲めば、腐敗物や問題となる物質を吐き出させ、回復させます。

キュウリ全体と果肉は洗浄効果とバラバラに切り離す特性をもっています。これは体をきれいにし、さらに、種子を乾燥させ細かく叩いて焼いたものはクレンジングパウダーの代わりになります。

博識者のガレノスがキュウリの用途と特性について書いた書物には、学ぶ価値のある方法が述べられています。すなわち(彼が言うには)胆汁の消化に良いので気にせず一度にたくさん食べたりするけれども、時間が経過すると冷たさが増して体液がある量増加して、その中で消化することができず、その後、健全な血液を壊すことになります。

その理由から、私は邪悪なジュースと栄養を含む肉を控えることが有益であると判断している(と、彼は言っています)。ただし、特定の人の場合は簡単に消化できる可能性があります。

私たちにとって、それに注意せず、気にかけないと(かなりの時間が経ってから)静脈に邪悪なジュースが集まり、ちょっとしたきっかけによっていったん腐敗するやいなや、ただちに燃え上がり、邪悪な熱を引き起こします。これらはキュウリの欠点として、これまでガレノスが述べていることから引用されたものです。

 

2021年11月3日水曜日

キュウリの促成栽培 in 19世紀(後半)

キュウリの促成栽培は「燃焼暖房の温床より発酵熱の温床がいいよ」というのが前回の内容でした(アスパラガスはその逆で、燃焼暖房の方をお勧めされています。)。発酵材料の家畜糞はさぞや臭かったろうし有害微生物もいっぱいで、とても現代では採用し難いです。かろうじて植物性の発酵材料なら心情的に許せますが、人体に有害な微生物がいないわけではないので、現代人が安易に手を出せるものでもありません。もちろん通常の庭仕事だって有害な微生物を吸って肺症にかかるなどの心配があります。将来、安全安心に微生物が完全コントロールできるようになりますように。

さて、今回は発酵塚の上に栽培床(ベッド)を作っていよいよ栽培開始です。200年以上前のキュウリの促成栽培はどんなものか、お楽しみください。

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【発酵塚の準備】

この時(12月中旬か1月初め頃)あるいは1月20日頃に最高品質の厩糞(馬糞)を十分な量、塚に混ぜ、56日置いて熟成し、それから切り返して2つめの塚の上によく振りかけます。この状態で、2月始めまで置いておくことができます。その頃には栽培床(ベッド)を作る準備が整います。栽培ベッドに便利なサイズは1ライトのボックス(1.2m長のフレーム)となるでしょう。

畜糞がバラバラに乾燥していて焼けるような状態なら、混ぜたり切り返す過程で少量の水を加えることをお薦めします。これは発酵を促進し、適切な日に向け早めに発酵を落ち着かせるでしょう。これは将来の成功をかなり左右します。

いよいよ栽培ベッド作りにとりかかります。周囲をフレームよりも30cmほど幅広くとって、フレームの高さは後ろ1.5m、前1.2mとします。フォークで塚をよく叩き、畜糞がくずれるようなら、12度踏み込みます。

どんな場合も必ず踏み込みを行う人もいれば、全く踏み込まない人もいます。しかし、栽培ベッドを作るときに糞が粗くバラバラな状態だったら1回か2回は踏み込みを行うのが作法といえましょう。踏み込むことによってベッドのどこが傾きそうかかわかりますから。そして、全体が均一に落ち着けば結果的に植物に好影響をもたらします。特に尾根状(高畝?)の栽培ベッドにおいては。もし畜糞が窪めば、植え付ける腐植土層にひびが入るのは避けられません。これは柔らかな根にとっては明らかに障害となります。

塚にある程度の高さがあるなら、アスパラガスの栽培ベッドの項で述べたのと同じ方法で注意して芝を貼ります。

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【フレーム内の準備】

フレームを設置して、その中に最も細い海砂か山砂を敷きます。望ましいのは、前もって砂はライト(フレームのガラス面)下にて15 cm以内の厚さにして完全に乾かしておくことです。この砂層の上に軽い砂質ロームを5 cm厚で敷きます。

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【タネまきとフレームの管理】

それから約15 cm径の植木鉢かトレーに完熟腐葉土*を満たし、タネを撒きます。そして同じ腐葉土で1.25 cm覆土します。鉢かトレーは栽培ベッドの真ん中に一列に鉢の縁まで埋めます。後ろ側に30 cm離して他のを埋めます。ライト(ガラスの蓋)を設置して、夜間は二重のマットでカバーします。

*この腐葉土の準備方法はこの本の別の章で述べられています。

蒔いたタネはネズミに食べられないよう注意しなければいけません。ネズミはこの早春の季節に温床辺りでとてもよく見かけます。タネを撒いた鉢の上にサイズのぴったり合う鉢を被せます。鉢底の穴は敵が侵入しないよう小さな穴のものにします。この被せた鉢は朝に取り外さないといけません。そして発芽して2.5 cmの草丈になるまでは毎夜被せます。この害獣は主に夜間に悪さをするからです。昼は植物はたっぷりの日射を受ける必要があります。

栽培ベッドは24時間内に発酵熱で暖まり始めるでしょう。ライト(ガラス蓋)の後ろ側を2.5 cm程度、前はその半分の1.25 cm持ち上げて少し換気するようにします。立ち上る有害な湿気を排出するためです。日没時毎晩フレームにマットを掛け、天候が良ければ朝8時までかそれより早くにマットをとりはずします。植物が伸び始めたら換気や水やりに注意を払います。

庭師は誰でもこの国では悲観的です。この国ではこの季節、日が短いだけでなく曇って薄暗いからです。それは大陸の人にはほとんどわからないでしょう。植物の健康と活力に日射が必須なのに、厳密に言ってこの国では許されないことなのです。 ガラスだって頻繁に洗って拭き、埃やゴミで日射熱や太陽光線が遮られないように常にきれいにしておかなければいけません。

朝に快適な蒸気が少量発生するなら良い兆候です。しかしこれが多量ではいけません。フレームのカバーを外した後1時間内に消える程度にとどめます。それ以上の量の蒸気は好ましくありません。植木鉢やトレーの底を頻繁に調べてください。発酵熱があまりに強く昇ってきているようなら、若い細根が焼けるのを防ぐため少し持ち上げます。必要とあれば完全に地表に置きます。もし水が必要なら少し水やりします。しかし、それはフレーム内か同様の別の場所であらかじめ数時間汲みおいておかなければいけません(水温を合わせるため)。

温床内の温度計を見て作業することは一般的なやり方ではありませんが、ストーブ(燃焼暖房)などでの作業と同様、確かに望ましいことです。・・・温度計が高価だったのでしょうね。

この季節の変わりやすい天候下では播種床は1521の範囲であれば大丈夫です。温度を見れば、さらにマットを追加してかける必要があるかどうかもわかるでしょう。

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【育苗時の管理】

草丈が約2.5 cmになったら、育苗ポットに植え替える時期です。育苗ポットは径が約10 cm深さも10 cmものにします。種まきしたのと同じ種類の腐植土に植えかえます。ポット内で各苗をできるだけ離して34苗植えます。ごく一般的に行われていますが、指で腐植土に穴を空けたり押してはいけません。代わりに、まず土を苗のサイズに従ってポットの半分か2/3まで満たします。そして、苗の葉が鉢の縁よりも上に来るように、かつ鉢の側面に寄らないように置いて、(ふるいにかけた)腐食土をポットの縁の高さまでゆったりと入れます。そして少量の水で全体を落ち着かせます。再びポットを縁の深さまで埋めます。それには前もって砂の層を作って、播種の時と同様にベッドの表面に砂質ロームを約5 cmの厚さに敷いておかなければなりません。ここで育苗する間、天候の状態に応じて、空気、蒸気、水をきちんと管理します。そして発酵熱で根が焼けていないか、ポットの底を頻繁に調べます。

悪い蒸気がベッド内に充満しているなら、夜間1.25 cm隙間を空けておくことをお薦めします。その上にマットの端を垂らして、空気がそこから抜けるようにします。しかし、マットはベッドのライニングを包み込むほど低く垂らさないようにします。それでは蒸気を逃す代わりに中に留めてしまうからです。日中は、ベッドの中の蒸気や湿気を取り除くために、フレームの前と後ろから適度に空気を入れて換気します。日射熱を利用できる時は、砂の表面などを頻繁にかき混ぜます。そうすることでベッドの内部空気を浄化し、良い効果をもたらします。水やりはほとんど不要です。34日に1回だけでおそらく十分でしょう。 ただし、水やりする時は必ず根の先端に十分な量が届けられるようにしなければなりません。

天候が厳しい時はベッドの1側面か複数の側面を覆うのが良いと思われます。ただし、これにより植物が阻害を受けていないか時間をかけて調べなければいけません。また、植物が突然の熱や急激な熱によって傷害を受けていないかにも注意が必要です。

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【定植の準備】

上記の様な方法で、必要とされる生産量に応じてライトフレーム(ガラス蓋付きのフレーム)の数(123かそれ以上か)が決まります。それに見合う必要量の畜糞を用意しておきます。

そして、各苗が本葉4枚になったら、播種床や育苗床で説明したのと同じ方法で移植用のベッドを作ります。畜糞の状態から発酵熱が強すぎると思われる場合は、先に述べたようにベッド全体に芝を貼ります。しかし、適切に発酵しているなら、各ライトの中央に大きな丸い芝を貼って、その上に植物を置けば、一般に過熱を避けることができるでしょう。しかし、後者の場合(芝の上に植物を置く場合)、芝を貼る前に畜糞の表面は軽い砂かよく量を減らした古い樹皮15 cmの厚さで覆っておきます。それは前もって完全に乾かしておかなければなりません。

フレーム*とライトをセットして、夜間はマットでカバーし、熱を立ち上らせます。穏やかな温度に達したら、猫車3台分の腐植土+(前もって完全に乾燥させて積んでいたもの)をベッドの各ライト幅に合わせて均等に広げます。

フレームは後ろは30インチの深さ、前は15インチの深さに設置すべきです。

+ 3/4は入手可能な最も肥沃な黒ローム(可能なら牧草地からのもの)14は落ち葉の腐食土で、十分な量の厩糞とよく混ぜたものが、私が長年使ってきて成功したものです。

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【定植】

24時間後、ベッドは苗を植え付ける準備が整います。しかし、植え付ける前に、ベッド表面から十分な量の腐植土を集めて、各芝の真ん中か、各ライトの中央に、ガラスまで12.515 cm以内の距離となる丘を作ります。厚さ37.5 cmで、頂部は2530 cmの幅になるはずです。

ポットの土塊を受け入れる穴をつくります。土塊はポットから注意して取り出し、この丘の表面の高さに合わせて植え付け、全体に少量の空気を含んだ水で落ち着かせます。植え付け時、植物の地上部はキュウリの種類によりますが、多かれ少なかれ約7.5 cmの径に広がっています。もっと伸びている種類もあります。

こうすれば、熱、蒸気、換気、かん水はすでに示したやり方で、ハウス内の環境状況と実ができ始めるまでの植物の活力に応じて調整できるでしょう。ここではそれ以上言いませんが、キュウリの剪定や摘果について検討したのち、この話題に戻りましょう。

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【栽培管理:摘芯】

植物が本葉を形成したら、芯芽を摘み取ることが絶対に必要と考える人もいますが、 私はそうは思いません。なぜなら、私が繰り返し行ってきた詳細な観察と公平な試験結果から、芽を摘むか摘まないかは結果的に変わりはないと断言します。4本目のランナーかつるを出し始めるまで摘み取りも摘芯も考えません。また(あまりにつるが少なすぎてフレームの側面で茂っていないというのでなければ)キュウリの実の着果を確認するまで摘芯は考えなくてよいのです。実をつけてたらこれらのつるを切り落とす時です。ただし、6節の長さに達しにくい場合もあるかもしれません。そこで繁殖力のあるつるを作るために切り落とします。植物が健康なら繁殖力のあるつるを作るのにほとんど失敗しないでしょう。

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【栽培管理:受粉・収穫】

もし雄花の量が極端に多いなら、その一部を指*で優しくこすり取ります。通常の数だけしか花が咲いていないならこれは賛成できません。自然にやさしく空気を入れます。しかし、それができない場所で無理に受粉したり受粉の邪魔をしたりしてはいけません。雌花が十分に成長したら、最も強く健康な雄花を選んで丁寧に受粉するようにします。それが実の成熟を促進します。ここで注意していただきたいのは、実や雌花が雄花と受粉していないと、実が大きくなって食卓にぴったりのサイズになっても、タネは熟さないということです。雄花の花粉が虫などによって運ばれたり、フレームを通過する風によって受粉するのはよくあることですが、人の手で受粉の些細な手間をかける方がより確実な方法です。果実がきれいな形に実っていれば繁殖用のタネができているという目印になります。

メロンやキュウリの強くて古いつるの剪定以外はナイフを使うべきではないとここでわかるでしょう。健全な状態のキュウリの葉ほど脆いものはないので、必ず細心の注意を払って丁寧に取り扱う必要があります。

受粉した実は膨らみ、収穫が早まります。そのやり方はこうです。強くて健康そうな雄花を選びます。茎を摘み取ります。花びらやがくを取り除き、雄しべと葯だけを丁寧に残します。指の間にそれをはさみ、葯を雌花の懐に入れます。それは新しい実のような形をしているので容易に識別できます。そして指ではさんでいる茎をねじると、雄花の花粉が擦り落とされて、雌花の結実器官である柱頭に付着します。

植物に問題がなければ、ベッドの発酵熱が消失する前に順調に成長するでしょう。2月半ば頃にベッドが作られたとするなら、一般に最初に着果した数個がその時までに確実に収穫できます。23日か24日頃に植えられて、天候に恵まれたなら3月中下旬までに収穫に適した株になっているはずです。(これは蒔かれたキュウリの品種に大きく左右されます。現在、キュウリの種類は非常に多く、ほとんどの園芸家が自分のお気に入りの品種を持っているため、どの品種が良いかを私が述べるのはおこがましいかもしれません。特に、多くの知られた品種が同等の能力を持っています。)

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【栽培管理:発酵の継続】

この時までに発酵熱がかなり減衰している場合は、後面と両端の面をライニングする準備をします(発酵材を新たに上塗り追加すること)。少し発酵させた新しい厩糞を一定量、ベッドの古い面や端面と混ぜる作業をします。アスパラガスのベッドで示した方法と同様、まずその面を切り落として、それが落ち着くように作り上げます。その後、芝か腐葉土でカバーします。植物が成長するにつれてガラス面に接触しないように、適時、レンガやタイルでフレームを持ち上げる必要があります。

また、根を広く生長させるために、この時までに、丘を拡張する必要があるでしょう。そこで、ベッドの表面を、パイナップルの鉢などを埋めるのに使う小さなハンドフォーク(熊手)で砂や樹皮面の深さまでかき上げます。そして、もし熱で根が焼けていたならば(根が障害を受けるような経験を私は2度したことがあります。)、そこを腐植土で置き換えます。フォークで根が現れるまで慎重に丘(hill)の側面を崩し、必要なら少量の水を注ぎます。そのあと、表面を丘の高さまで最初*の時と同質の新鮮な腐植土で盛り上げます。しかし、この作業はライニングする数日前に行うか、ライニングした数日後に延期するかしなければいけません。ベッドが内も外も同時に冷えている時には植物はチェックを受けることができませんから。

* 私はここでベッド全部を直ちに土で満たすよう指示してきました。もし促成を上記のお勧めする時よりも早く始めていなければ、それで十分満足がいくでしょう。しかし、もし促成をそれよりひと月か6週間早く始めたいなら、より強力な発酵熱のベッドとより多くのライニングが必要になるので、一気にベッド全体を盛り上げるのは軽率な行為となり、結果的に根焼けの危険を増すことになります。

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【栽培管理:かん水】

植物は今や活発に成長するでしょう。そして実をたくさん成らせるでしょう。季節が進むにつれて実の品質が向上するように、毎日すぐに新鮮な空気で十分換気しなければなりません。晴れて穏やかな天気の5月が来たら、ガラスは日中完全に取り外すことができます。ジョーロの散水口から大量の水を頻繁に与えます。季節が進むにつれ、花を暖める効果があります。かん水をキュウリ以上に多く必要とする植物は他にほとんどありません。 そしてかん水が差し控えられれば、優秀な観察者はキュウリの木が不満であることにすぐに気づくでしょう。

水やりの最も適切な時間は朝8時頃か夕方4時頃です。季節に応じて1時間早くしたり遅くしたりします。可能なら、植物が育っている気温と常に同じ水温にすべきです。そうすれば、成長は停滞せず、水分や栄養の調達者である柔らかな根毛に不要な努力をさせません。同様の理由で、一度に極端に多量の水も与えるべきではありません。

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【栽培管理:間引き・誘引】

ツルや葉は適度に間引きして、順番通りにすべて規則的にレイアウトし、お互いが交差しないように管理します。 また、 枯れた葉や腐った葉が見られたら取り除くよう注意してください。それは植物にとっては、動物が閉じ込められて腐敗した空気を呼吸するような不快なものです。そのほか、キュウリを一度にたくさん剪定するのも避けなければいけません。切り口からの多くの樹液が流出してしまい、植物は枯渇してしまいます。

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【ライニング(発酵材の追加上塗り)】

4月初旬か中旬頃、ベッドの正面をライニングする必要があるかもしれません。正面は後ろや両端面と同じ方法でライニングします。しかし、後面や両端面と同じ頻度で正面のライニングを更新する必要はまったくありません。正面のライニングは優しい熱(日射熱)を受け与えてくれます。それは4月じゅう続きます。 結局、底熱はほとんど正面に影響しません。

キュウリの後継株用のベッドは3月と4月に建設できます。上記と同様に栽培します。季節が進むにつれ、ベッド(の発酵熱)を少し軽めにします。

私は燃焼ピットにおけるメロンの誘引柵(水平な横木と支柱からなる柵)について取り扱うつもりですが、それはメロンの栽培を述べる時にいたしましょう。キュウリとメロン、2つの植物の栽培は非常によく似ています。 ここでは、同じ腐植土を使ってもキュウリはメロンよりも多くの空気と水を与える必要があることを述べるだけに留めておきましょう。

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ハンドガラスやベルガラス

ハンドガラスやベルガラス下でのキュウリの栽培は、促成栽培の一種ではありますが、一般にとてもよく理解されており、改善の余地はありません。上記と同じ品質の腐植土に植え、暑い季節には十分な量の水を与え、秋はできるだけ冷気と湿気を避けるべきで、それ以上さらに述べて時間を無駄にする必要はないでしょう。

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【害虫

私はキュウリを観察してきて、キュウリに寄生する昆虫はアブラムシ以外ほとんどいなかったと結論付けます。・・・当時がうらやましい限りですアブラムシは、ほとんどすべての庭師によく知られているタバコの燻蒸によって、いかなる状態またはいかなる状況においても素早く駆除されます。 

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2021年10月24日日曜日

キュウリの促成栽培 in 19世紀(前半)

 秋も深まりだいぶ涼しくなりましたので、そろそろ促成栽培の記事にもどります。

著名な造園家であるWALTER NICOL氏の書「THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.(促成、果実とキッチンガーデナー)(1802年)に、キュウリの促成栽培が詳しく書かれています。

日本でも江戸時代から明治・大正(20世紀初頭)にかけて、当時の日本に合うように工夫したキュウリの促成栽培方法が書き残されています(多分、江戸時代より伝わる技術と西洋の情報を融合し実践したもの)。本書は、それより100年前の、原初的な促成栽培の基といった趣です。

現代にアレンジするなら、明治・大正の実情に特化した方法よりもこちらの方がむしろ自由な発想につながりやすいかもしれません。

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1書・第2章 キュウリ


特にロンドン辺りでは、ガーデナーたちはこぞってキュウリの早出し生産に取り組んでいます。すなわち、1月か2月にキュウリを供給することを目的として、さまざまなことを試みています。

この目的のため、英国の各所で多くの方法が実践されてきました。なかには成功している方法も1,2例あります。しかし、それらの方法には問題があったり費用がかかりすぎたり、一般にこの目的を達成する上で満足のいくものではありません。


畜糞を発酵材料とした発熱温床でキュウリやメロンを促成する旧来の方法に反対する意見があります。その理由は、この種の植物(キュウリやメロンといったウリ科)は発酵熱といった制御が難しい荒々しい熱で焼けやすいこと、栽培ベッドに達する発酵蒸気で植物が青白くなるためとされています。

---これらの反対意見はもっともなことで、一般にあまりによく目にするところでもあります。

しかし、長年キュウリとメロンの促成栽培を行なってきた私は、幸いなことに、この荒々しい熱や発酵蒸気で障害を受けたることが一度もありません。 以下で説明する私の実践方法は、迷い少なく、最小の費用で、世間的に見ておそらく最も生産的な方法であることをわかっていただけると思います。


残念ながらMacPhial氏の方法は彼自身の要求に応えられませんでしたが、それを残念に思うガーデナーは多くないと思います。(問題の対象はさておき)明らかに、それは、一般的かつ必要な肥料資源(畜糞)を大幅に使ってしまうやり方で、キッチンガーデンを消耗させてしまう傾向があるからです。


前年の古い栽培ベッドに新らたにライニングを施す(畜糞を上掛けする)方法もキュウリの促成栽培に試されましたが、これもうまくはいきませんでした。古い糞は新しい畜糞よりも有害な湿気を多く含んでいることが原因でした。栽培ベッドに残っている古い畜糞からの湿気によってライニングの発酵熱が頻繁に奪われるのは実に厄介なことでした。同じ原因、すなわち多すぎる熱と蒸気が、前者と同様に、この方法でも生じたのです。


キュウリとメロンの晩成栽培なら燃焼暖房のピットで栽培可能かもしれませんが、促成栽培の場合は畜糞発酵の温床の方がずっとうまく栽培できることを私は見てきました。この原因は明らかに、メロンやキュウリは穏やかで湿気のある熱を好み、乾燥しがちな燃焼暖房には弱いからです。しかし、乾燥しがちな燃焼暖房は余計な湿気を乾かし、遅着きの晩生の実の成熟を早めるので、晩秋には効果的なのです。


皮なめし業者のバークがたくさんあるが、価値の高い畜糞が不足している地域では、メロンやキュウリは外側を糞や寝藁で固めたバークの栽培ベッドでうまく栽培することができます。もしくは 煉瓦や石、木枠を当てて芝を貼るなどして壁を造ってやればうまく栽培できます。

ただし、潰瘍病を伝染させないないよう、どの生育段階でも植物の根がバークに触れないよう注意しなければなりません。


温床を掘り下げる、あるいは部分的に掘り下げることもできます。これは一般に、通常の温床とほとんど違いはありません。

私は掘り下げを否定するものではありません。その掘り下げは適切にできていれば、かなり整然とした庭の区画ができるからです。しかし、優先順位を間違えてはいけません。もしその場所が自然と湿っていて完全に乾かすように注意が払われていないなら、庭師の掘り下げた手間は間違いなく徒労に終わるでしょう。


キュウリの播種床は12月中旬か1月初め頃に準備するのが通例です。私は1月初めに準備するのが好きですが、ほとんどは2月始めに準備されます。自分で試したり他の人の方法もよく見てきましたが、早すぎる時期に作った播種床はその後のシーズン中ずっと何の目的もなく残されたフレームよりもトラブルが多く、当惑することになります。

経験上、2月の初め頃に種まきした植物はどの時期に播種したものよりも生育がよく、果実も早く収穫できます。


キュウリやメロンの苗をパイナップル温室、乾燥暖房室、早期促成栽培用温室等で育て、温床に移植する人もいます。しかし、温室で育てられた苗は、専用に準備された播種床で育てられた苗と同じでないことをお知らせしなければなりません。温室では温室本来の作物が優先されますが、播種床はそれ専用だからです。さらに温室とでは気候の違いが大きいのです。


キュウリは早い時期にパイナップル温室に置かれたボックス植えでうまく育つことがあります。しかし、パイナップル温室の燃焼ストーブの熱はキュウリに合うように調整できるものではありませんから、ほど良く換気された環境にして、肥沃な軽いコンポストでボックスを満たし、かん水で十分に元気づけるようにするべきで、それ以上のことをここでことさら多く述べる必要はないでしょう。

なお、一般的なことを話していることをご理解いただきたい。例外も多くあります。植物についても同様です。


このことを十分な前提として、2月始めにタネまきした(あるいは播種予定の)苗を想定して畜糞の温床でのキュウリ栽培の作業にとりかかります。

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と、キュウリの促成栽培の具体的な温床での作業へと解説は続きます。


[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:かすかに秋の気配

 9月に入っても35℃超え、最低気温も27℃と暑いです。 ただ、熱湯の中にいるような空気感は、日陰で風があれば、やわらいできたような。。。いや、単に、自分が暑さに順化しただけかも(笑) 夕方なら草刈りする気力が、ようやく戻ってまいりました。暑さで弱っている雑草は比較的抜きやすいで...