秋も深まりだいぶ涼しくなりましたので、そろそろ促成栽培の記事にもどります。
著名な造園家であるWALTER NICOL氏の書「THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.(促成、果実とキッチンガーデナー)」(1802年)に、キュウリの促成栽培が詳しく書かれています。
日本でも江戸時代から明治・大正(20世紀初頭)にかけて、当時の日本に合うように工夫したキュウリの促成栽培方法が書き残されています(多分、江戸時代より伝わる技術と西洋の情報を融合し実践したもの)。本書は、それより100年前の、原初的な促成栽培の基といった趣です。
現代にアレンジするなら、明治・大正の実情に特化した方法よりもこちらの方がむしろ自由な発想につながりやすいかもしれません。
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第1書・第2章 キュウリ
特にロンドン辺りでは、ガーデナーたちはこぞってキュウリの早出し生産に取り組んでいます。すなわち、1月か2月にキュウリを供給することを目的として、さまざまなことを試みています。
この目的のため、英国の各所で多くの方法が実践されてきました。なかには成功している方法も1,2例あります。しかし、それらの方法には問題があったり費用がかかりすぎたり、一般にこの目的を達成する上で満足のいくものではありません。
畜糞を発酵材料とした発熱温床でキュウリやメロンを促成する旧来の方法に反対する意見があります。その理由は、この種の植物(キュウリやメロンといったウリ科)は発酵熱といった制御が難しい荒々しい熱で焼けやすいこと、栽培ベッドに達する発酵蒸気で植物が青白くなるためとされています。
---これらの反対意見はもっともなことで、一般にあまりによく目にするところでもあります。
しかし、長年キュウリとメロンの促成栽培を行なってきた私は、幸いなことに、この荒々しい熱や発酵蒸気で障害を受けたることが一度もありません。 以下で説明する私の実践方法は、迷い少なく、最小の費用で、世間的に見ておそらく最も生産的な方法であることをわかっていただけると思います。
残念ながらMacPhial氏の方法は彼自身の要求に応えられませんでしたが、それを残念に思うガーデナーは多くないと思います。(問題の対象はさておき)明らかに、それは、一般的かつ必要な肥料資源(畜糞)を大幅に使ってしまうやり方で、キッチンガーデンを消耗させてしまう傾向があるからです。
前年の古い栽培ベッドに新らたにライニングを施す(畜糞を上掛けする)方法もキュウリの促成栽培に試されましたが、これもうまくはいきませんでした。古い畜糞は新しい畜糞よりも有害な湿気を多く含んでいることが原因でした。栽培ベッドに残っている古い畜糞からの湿気によってライニングの発酵熱が頻繁に奪われるのは実に厄介なことでした。同じ原因、すなわち多すぎる熱と蒸気が、前者と同様に、この方法でも生じたのです。
キュウリとメロンの晩成栽培なら燃焼暖房のピットで栽培可能かもしれませんが、促成栽培の場合は畜糞発酵の温床の方がずっとうまく栽培できることを私は見てきました。この原因は明らかに、メロンやキュウリは穏やかで湿気のある熱を好み、乾燥しがちな燃焼暖房には弱いからです。しかし、乾燥しがちな燃焼暖房は余計な湿気を乾かし、遅着きの晩生の実の成熟を早めるので、晩秋には効果的なのです。
皮なめし業者のバークがたくさんあるが、価値の高い畜糞が不足している地域では、メロンやキュウリは外側を糞や寝藁で固めたバークの栽培ベッドでうまく栽培することができます。もしくは 煉瓦や石、木枠を当てて芝を貼るなどして壁を造ってやればうまく栽培できます。
ただし、潰瘍病を伝染させないないよう、どの生育段階でも植物の根がバークに触れないよう注意しなければなりません。
温床を掘り下げる、あるいは部分的に掘り下げることもできます。これは一般に、通常の温床とほとんど違いはありません。
私は掘り下げを否定するものではありません。その掘り下げは適切にできていれば、かなり整然とした庭の区画ができるからです。しかし、優先順位を間違えてはいけません。もしその場所が自然と湿っていて完全に乾かすように注意が払われていないなら、庭師の掘り下げた手間は間違いなく徒労に終わるでしょう。
キュウリの播種床は12月中旬か1月初め頃に準備するのが通例です。私は1月初めに準備するのが好きですが、ほとんどは2月始めに準備されます。自分で試したり他の人の方法もよく見てきましたが、早すぎる時期に作った播種床はその後のシーズン中ずっと何の目的もなく残されたフレームよりもトラブルが多く、当惑することになります。
経験上、2月の初め頃に種まきした植物はどの時期に播種したものよりも生育がよく、果実も早く収穫できます。
キュウリやメロンの苗をパイナップル温室、乾燥暖房室、早期促成栽培用温室等で育て、温床に移植する人もいます。しかし、温室で育てられた苗は、専用に準備された播種床で育てられた苗と同じでないことをお知らせしなければなりません。温室では温室本来の作物が優先されますが、播種床はそれ専用だからです。さらに温室とでは気候の違いが大きいのです。
キュウリは早い時期にパイナップル温室に置かれたボックス植えでうまく育つことがあります。しかし、パイナップル温室の燃焼ストーブの熱はキュウリに合うように調整できるものではありませんから、ほど良く換気された環境にして、肥沃な軽いコンポストでボックスを満たし、かん水で十分に元気づけるようにするべきで、それ以上のことをここでことさら多く述べる必要はないでしょう。
なお、一般的なことを話していることをご理解いただきたい。例外も多くあります。植物についても同様です。
このことを十分な前提として、2月始めにタネまきした(あるいは播種予定の)苗を想定して畜糞の温床でのキュウリ栽培の作業にとりかかります。
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と、キュウリの促成栽培の具体的な温床での作業へと解説は続きます。
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