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2021年10月9日土曜日

ヒアシンスのアンティーク・グラス

ヒアシンスのアンティークの水耕栽培容器は世界的にコレクターが多く、今も人気があるそうです。

左:ベルギータイプ、中央:花瓶型、右:ボヘミアンタイプ

PETER HENDERSON (1884), Gardening for Pleasure. ORANGE JUDO COMPANY より。 

この本では、19世紀のアマチュア園芸家向けに以下のような解説がなされています。

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水仙はヒアシンスと同様ガラス容器での水耕栽培が可能ですが、それほど栽培されていません。ヒアシンスだけは図のような水耕栽培用のガラス容器で大きく花を咲かせます。

ガラス容器は、昔ながらのベルギー製のプレーンなものから、装飾的なボヘミアングラスまで、様々なスタイルで作られており、透明なガラスや、緑色、琥珀色、ワインレッドなどの色付きのものがあります。暗い色のガラスが最適で、球根の根元が触れる程度の高さに水を入れます。これを涼しく暗い場所に置きます。水が凍らないように気をつけないと、ガラスが割れてヒヤシンスを多かれ少かれ傷つけてしまいます。二重咲きのものより一重咲きの方が水耕栽培に向いています。 水は6~8日ごとに交換します。

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20世紀スタート(1900年) のカタログでは、モダンなフォルムでバライティが増えてます。
Henderson catalog, NYC, 1900. https://oldhousegardens.com/forcingbulbsより。


私のヒアシンス球根は来週まで冷蔵庫で保存中です。水耕容器はいたって普通、安心の定番商品です。



2021年9月18日土曜日

[図解]ヒアシンス・19世紀流

ヒアシンス・19世紀流」の文章が長かったので、図にしてみました。

まずはヒアシンス・ヴィラの展示会の想像図。(テントは幅4m、長さ60mにおよびます。高さは不明。)

4エリアで対角に花色を分けましたが、ラウドン先生の本にあるように1本1本が対角に色配置されていたのかも(こんな配色です↓)。

赤 青 白 赤 青 白 赤 青 白
 白 赤 青 白 赤 青 白 赤 
赤 青 白 赤 青 白 赤 青 白
 白 赤 青 白 赤 青 白 赤

次は、庭でのヒアシンスのための大がかりな栽培床(栽培土層)の断面図。


😊庭のヒアシンスあこがれますが、我が家は毎年1個だけの水耕栽培です。今年は紫を買いました。冷蔵庫でお休み中です。

2021年9月12日日曜日

ヒアシンス・19世紀流

 そろそろ秋植え球根を買いたくなる季節になりました。毎年、ヒアシンスの水耕栽培だけは、はずせません。花の香りを楽しみに待って冬中生育を見守ります。

VALLEY GREENHOUSES. SPRINGFIELD, OHIO. WILSON BROTHERS' Autumn Catalogue of Bulbs and Plants. (1889)


ミセス・ラウドンの「レディーのためのガーデニング入門書(1840年)」の球根の項では、チューリップをさしおいてヒアシンスの解説が一番長いです。花姿、色、香りどれをとっても素晴らしいので、当時も大人気だったことがうかがえます。

長いですが、庭での本格的な栽培方法から鉢植えまで細かく解説されています。19世紀らしく、化成肥料は使っていませんが、1.8mの深さの穴を掘るなど、手間は惜しみなくかけられています。


***ヒアシンス************

ヒアシンスはすべての花の中で、おそらく最も美しい花でしょう。

チューリップのように栽培床で育てる場合、その鮮やかさはチューリップにほぼ匹敵するものとなります。香りはヒアシンスに軍配が上がりますよね!

ヒアシンス・ヴィラと呼ばれるSherherd's Bushに住んでいるオランダの花屋のCorsten氏は、毎年4月にヒアシンスの展示を行っています。私はこれ以上に印象的な展示を見たことがありません。
長さ約60 m、幅4 mのテントの下、長さ約45 mの栽培床が2つあり、その真ん中にマットでカバーされた通路があります。テントの両端にはイスが設けられています。
この栽培床には3000本以上のヒアシンスがあり、その色は対角線上に配色されていて全体が燃えるような完璧な美しさを醸し出しています。

ヒアシンスはチューリップと同様、名前のついた品種が数多くありますが、色以外の何か明確な属性で分類されるようなことはありません。主な差異は白、ピンク、青といった色です。しかし、これらの色には多くのバリエーションがあります。うすい黄色やかなりレモン色に近いものもあれば、とても濃い紫色でほとんど黒色のようなものもあります。

ヒアシンスの栽培方法はいくらかチューリップと似ています。しかし、ヒアシンスは根が下へ向かって長く垂直に伸びていくので、もっとずっと難しいのです。そのため、かなりの深さまで根のために土の準備をする必要があります。

もう一つ、ヒアシンス栽培の特色があります。それはかなり実現が難しいことです。すなわち、球根は完全に乾いていなければなりませんが、根は大量の水分を必要とすることです。また、根はとても肥沃な土を必要とします。しかし、使用される肥料はcoldと呼ばれる発酵が終了してもはや発熱することがない完熟堆肥でなくてはいけません。

ヒアシンス栽培のこれらの特性から、なぜオランダはヒアシンスのため抜群に適した土地であるのかが容易におわかりいただけるでしょう。

オランダは海から国土を守るため、数多くの堤防や土手に盛られた砂質土壌が、同時に、ヒアシンスの球根に適した栽培床となっていて、根は簡単に地中に伸びることができます。一方、堤防の下にある水から蒸発によって常時上がって来る水分は、まさに根が必要とするものです。

オランダで最も容易に入手できる肥料は牛糞ですが、ワラが混じっていないのでヒアシンスに最適です。ワラが混じっていないので、発酵やその結果として熱をもたらすことがないからです。

オランダでとても簡単に実現できるこのような条件をイングランドで整えることは、とても法外な支出をしなければ無理です。一般に、私たちの土壌はとても粘着質なので、根が下に伸びるのに必要なかなり深いところまで土を粉砕する必要があります。たとえ土壌が砂質であっても、オランダ人が砂丘砂(Dune sand)と呼ぶ美しい銀色の海砂とイングランドの砂質土はとても異なっています。そういったなかで唯一の解決策は、私たちが銀砂と呼ぶものとピートをほぼ同量混ぜることで砂丘砂に似せるか、もしくは、細かい腐葉土をほんの少量加えた銀砂で育てることです。どの様な土壌であれ、「オランダの強い風によって吹き飛ばされるくらい細かな砂粒子じゃなくちゃヒアシンスは決して栄えない」と言われるくらいなので、土が軽すぎて良くないということはまずありません。

イングランドで完璧なヒアシンスを育てようとする場合、栽培床作りの前に、幅0.9~1.2 m、深さ1.8 mの穴(ピット)を掘ります。ピットの長さは状況や育てる球根数によって決めます。

ワラや切りクズの混じっていない古い牛糞の層をこのピットの底に少なくとも30 cmの厚さに敷き、ピートと銀砂を同量混ぜた混合土か石の混じっていない完全に細かく軽い腐葉土1に対し銀砂3を混ぜた混合土で上部7.5 cmを残してピットを満たします。上部のこの7.5 cmには純粋な砂の層を敷き広げます。

その上に、下層と同じ混合土で栽培床を作ります。そして、花の見栄えのために全体に約7.5 cmの厚さの純粋なピート層で覆います。

植え付けは必ず乾いた天候下で行います。球根を一定間隔で、オランダ人が鼻(nose)と呼ぶ尖った先端を上向きにして植えていきます。植える深さは栽培床の表面から約15 cm下とし、砂が球根全体を覆うようにします。栽培床は沈み込みを考慮して周辺の庭よりも少なくとも7.5 cmは上げるようにします。表面の純粋なピート層は花が咲いた時、花に対して黒い背景としての効果もたらすためだけのものです。もしこの黒い背景が必要ないならピート層は省略することができます。

球根は10月の最終週か11月の第1週か第2週に植えます。四方に約10 cm間隔を空けて植えるようにします。通常、植え付け後、牛糞を水で溶いたものをシャベルですくって栽培床にまきます。土中に浸透させるのではなく、表面にうすくコーティングするようにします。

霜が降りる頃になったら、乾いた野菜残渣やアシあるいは樹皮で栽培床の上を覆います。もしくはフープを床に固定して(トンネル支柱をたてて)靭皮のマットを覆いかけることもできます。

3月にその覆いを取り去り、栽培床の雑草をきれい除草します。新たに牛糞と水でコーティングします。

4月に薄いキャンバス地の天幕を各栽培床の上に建てます。その下で花が咲きます。4月の半ばまでには美しい満開を迎えます。

花がしおれ始めたらすぐ花茎を切り落として撤去します。栽培床の上にそのままにしておいてはいけません。次の年のヒアシンスの栽培床にその土を混ぜることさえしてはいけません。

開花後もヒアシンスから出続ける浸出物質は球根を腐らせる原因になります。これは、ヒアシンスからの浸出物質が同属の他の球根類に対して有毒であるからだけでなく、ヒアシンスの花茎はある種の腐食性の汁を含むことがわかっているからです。オランダで球根から花茎を切り落とすために雇われた労働者は手や体に赤い炎症を起こすことがよくあり、時に安眠できないほど痛みます。

葉の先端が茶色に変わったら、それは一般に6月半ば頃ですが、球根を掘り上げなければいけません。この場合、最初に葉を引き抜きます。もし引き抜けなければ球根の近くで切り取ります。それから球根を地中から掘り上げて、品種毎に分類して列状に通路に置いていきます。

その後、栽培床にレーキをかけて、上面をすっかり平らにします。約45 cmの幅の板で栽培床の中央を平らに固めます。板で押さえるか、スペード(シャベル/スコップ)の背で叩くかして、その上に分類した列を崩さずにヒアシンスの球根を置いていきます。それからその上に土を5~7.5 cmの深さになるようかけて、2,3週間放置します。これは、オランダ人が「 Kauilに置く(lying in the Kauil)」と言っているもので、放置する時間は球根の大きさと天候によって変化します。最も大きな球根は最も早く取り出されます。

Kauilから球根を取り出したら乾燥させるため、棚か木のトレイに置きます。球根の根側のお尻を南に向けるようにします。


栽培床の沈み込みが深くならないと考えられる場所なら、ピットの深さを1.8 mから1.2 mにすることができます。ピット底の牛糞の層は土と混合して30 cmの深さとします。ピートと川砂に腐葉土を1/3混合した土で約0.9 mの深さ分だけ満たします。その他の作業は先に述べたのと同じです。


すべての場合において、土壌は軽くて細かいものでなければなりません。肥料としては牛糞のみを使用します。また、根のある栽培床に必ず牛糞と水の混合物をとても控えめに撒きます。この混合物は栽培床のコーティング用に使われるものほど濃くしません。

球根を植えつける時と掘り上げる時、球根を注意深く調べます。わずかでも斑点やカビのあるものは他の球根に感染するので、すべて一方に取り分けておきます。感染した部分が大きい場合、その球根は捨てるか茎ごと燃やしてしまいます。しかし、斑点が小さいなら鋭利なナイフでその部分を切り取って24時間以内に植えつけます。

ヒアシンスは子球、球根分けあるいはタネによって殖やします。タネによる場合は花が咲くまで5年かかります。


鉢やボックスに植える時は、鉢かボックスの半分を鉢のかけらか排水を確実にできる材料で満たします。球根はピート、砂、完熟牛糞堆肥の混合土に植えつけます。球根は約半分だけ土で覆います。

ボックス(プランター)植えの場合、もし可能なら花の準備が整うまで温室に置きます。鉢植えなら、温床か樹皮の発酵熱ストーブ(tan-stove)に埋め込みます。それができない場合は、鉢ごと庭に埋めます。その際、球根の先端が少なくとも地中10 cmの深さになるように埋めます。ここで、花が着くまで約6週間放置します。それから鉢を掘りだして、花を咲かせたい場所に置きます。

所定の場所においた鉢の側面はコケで保温します。毎日水やりすることで開花を早めます。鉢やボックスで育てられるヒアシンスはどれも根が限られた不自然な環境にある代償として、豊富な水が必要です。

鉢やボックスあるいはガラスの水耕栽培容器のヒアシンスは、咲き終わったら球根を露地に植えて、そこの土で約2.5 cm覆います。このように管理すると、優良品種は枯れて消えてしまいますが、丈夫な品種は毎年秋まで葉を着けたままにしておけば新たな球根ができるまで生き残って何年も花を着けます。ただし、水耕や鉢植えで開花したヒアシンスは根が不自然な状態に置かれていたショックから完全に回復することがないため、その後少なくとも数年間うまく花が咲くことはほとんどありません。

このような状況と違って、オランダの花屋は垂直に下降する根に十分な空間を設けてやれるので、毎年秋に球根を掘り上げることで最も良質な花を持つ優良品種の球根を12年あるいは20年間さえも保ち、毎年素晴らしい花を咲かせることが知られています。

ヒアシンスの浸出物質は多量で自身の同属の植物などにとても有害であることを認識しなくてはなりません。この理由でオランダ人は決して同じ栽培床で2年続けてヒアシンスを育てることはありません。通常のローテーションは、1年目ヒアシンス、2年目チューリップ、3年目水仙・ポリアンサ、4年目クロッカス、そして5年目に再びヒアシンスに戻ります。

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2021年7月18日日曜日

バラ in 19世紀(後半)

レディのためのガーデニング入門 (by Mrs. Loudon 1840年)より

    低木の1種として、バラについて詳しく書かれています。その後半部です。

    プロヴァンのバラは今でも大変有名で、バラ好きの方たちの聖地のひとつでしょう。
    野バラ、つるバラについてもたくさん書かれています。関係ありそうなリンクを付けました。

    ミセス・ラウドンは、この節の最初に「バラの栽培専門の特別な説明書が作られるべき」と書いていましたが、20世紀初頭までには充実したバラの専門書がたくさん出版されるようになりました。

    この節ではバラの増やし方も書かれていますが、当時は同じ植物でも違う名前で売られていたり(カタログにはたくさんの品名があるのに実際の取り扱い数はずっと少ない、すなわち1種の植物を別名でも売る悪徳な商店もあったようで、)結構混乱しました。確実なのはここに書かれているような信頼のおける店で確認・購入して、大事に自分で繁殖するのが確実な方法だったでしょう。広大な北アメリカ大陸などではカタログから取り寄せるしかなかったでしょうから、苦労のほどがしのばれます。今みたいに簡単に苗を入手できないので、接ぎ木や芽つぎ、取り木・挿し木などの繁殖技術はアマチュア園芸家であっても必須だったはずです。
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    バラ: 

    フランス、プロヴァンのバラの花は「バラ窓」として建築で表現されたバラのように、一般に大きく開きます。縞模様や大理石模様の花はこの門のバラに属します。これらのバラで香りのあるものは稀です。しかし、花は一般にとても見栄えがし、かなり耐寒性があります。薬屋はバラの砂糖漬けを作るためにそれらを使います。この目的のため、フランスのプロヴァンの小さな町の近郊で大量に育てられています。その名前からプロヴァンは南フランスのプロヴァンスとしばしば混同されます。

    白バラは耐寒性で、ほとんど世話なしでたくさんの花を着けます。

    スコッチローズ もまた、その耐寒性は際立っていて、一般的に他のバラより2週間早く咲きます。そしてたくさんのタネを作ります。そこから新しい品種が次々と育成されています。

    イエロースコッチローズもとても美しいバラです。

    Williamsdouble yellow sweetbriarとAustrian yellowまたはcopper colored roseもまた、栽培価値が高いバラです。

    copper colored roseは花びらの外側が黄色で、内側は赤い色をしています。このバラは汚染された大気中ではうまく育ちません。しかし、WimbledonMarryatt婦人のフラワーガーデンとKingston近くのNorbiton ハウスにあるR.H. Jenkinson氏のフラワーガーデンでは美しく咲いています。

    common double yellow roseはうまく咲くことは稀な品種で、肥沃な土壌と温かい環境で育てなればいけません。そして豊富な空気が必要です。

    ツルバラのうちAyrshire rose、特にthe queen of Belgiansと呼ばれる美しい白バラと、とても見事で香りのある品種のRosa rugaは完全に耐寒性なので、バラの記念柱やピラミッドと呼ばれるものを作るためのフレームへ最もうまく仕立てることができる品種です。

    温室環境には、Rosa multifloraおよびそれに近い類属のSeven Sisters' Roseを選ぶことができます。それらは霜に簡単にやられてしまいますが、とても早く高く成長し花のピラミッドを作ります。

    しかし、最も価値あるツルバラはRosa semporvirensの子孫のevergreen roseです。これは低木類の茂みの掘り起こされた地面を覆うように、ペグ留めして用いられる唯一の品種です。それは木の雫の下でも成長し、剪定もすべきでない、栽培が最も容易な種類です。それを植える前、地面は掘って雑草の根を取り除き、十分きれいにしておきます。それから古い温床の一部で施肥し、バラを約 1.5 m 間隔で植えつけます。次の秋、肥料で地表面を十分コーティングしてやります。裸地部分が出ないようにシュートをペグで留める以外、その後の管理は必要ないでしょう。Triomphe de Bollwillerは、この目的に最も適したバラのひとつです。

    Boursault門のRose de Lisleはその最高品種のひとつで、同じ方法で取り扱うことができます。

    noisette roseはシュートの先端に大きな花の房を着けることで知られています。その枝(branch)は短くしてはいけません。なお、枯れた花はしおれかけたらすぐに取り去ります。

    Banksia Rose(モッコウバラ)Tes Rose(ティーローズ)the Macarteneyおよびmusk roseは南壁以外の環境では傷みやすい種類です。


    ロンドン近郊の最高のバラはHammersmithLeeの店HackneyLoddigeの店で見ることができます。Saw bridge worthRiversの店、MaresfiekdWoodの店、BrechkegTunbridge wellsのどちらにも近いHookerの店、さらには、特別にBerkhampsteadLaneの店にも、とても美しいバラのコレクションがあります。

    Laneの店は、毎年1月下旬から11月半ばまで美しい花を咲かせるように促成栽培方法を工夫しています。


    バラは普通、接ぎ木か芽接ぎによって殖やします。取り木や挿し木でも殖やします。挿し木の場合、蒸散の発生を防ぐためにシュートの先端と葉の大部分を取り去ります。

    2021年7月11日日曜日

    バラ in 19世紀(前半)

    レディのためのガーデニング入門 (by Mrs. Loudon 1840年)より

      低木の1種として、バラについて詳しく書かれています。
      ここで取り上げられている品種に、19世紀のバラを見に行く」で紹介した品種は見当たりません。19世紀の品種といっても、人気があり育てられやすいものは当時の英国と現代日本では大いに異なるでしょうから。
      おすすめの品種、栽培方法だけでなく、当時の花屋のバラの生け方についても言及されています。
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      バラ:

      この美しい低木は、とても称賛されていて、どの庭でもあまねく育てられています。


      バラの栽培専門の特別な説明書が作られるべきだと思っています。


      最初に植えた場所のバラは3年毎に更新する必要があると言われています。その根は多量の物質を浸出し、それは再吸収されません。ひげ根は小さく少ないので、低木の樹冠より広がることはありません。

      厳密に書き残す必要はないのですが、一般的に、バラの木が病気のように見えたり、花の着きが悪かったりする場合は、新鮮な土壌に移すと活力を取り戻すことを思い出してください。


      ほぼ2000の品種、変種のバラがあることはおそらく一般に知られていません。そのような混沌とした状況で、的確な品種を選ぶのはほぼ不可能でしょう。


      花屋は約20あるバラの門のうちの一つの門のバラだけで生けることはしません。

      生け花の中心(フォーカルポイント)はキャベツ咲きのバラ青いドレスのマリーアントワネットがキャベツ咲きのバラ1輪を手にしている絵が有名です。とし、それに、それらの美しい子孫、20種以上がある十六夜バラ、とても印象的なもの、そして特に、一般にRouge de Luxembourgと呼ばれている暗い深紅色の十六夜バラ、および白い十六夜バラを合わせます。


      白い十六夜バラは、町で育てるには繊細過ぎます。冠毛のある十六夜バラも面白い変種です。それはスイスの古い壁から生えているのを発見されたと言われています。

      十六夜バラの種類はすべて温かく乾いた環境に植えなければなりません。3月に肥料を少し根の周りの土の表面に置きます。乾燥した季節は頻繁に水やりします。その結果、花はたいそう見栄えがするようになるでしょう。


      キャベツ咲きやプロバンスローズの品種は2530あります。それらはすべてとても香りがよく、まさにローズウォーターなどを作るための品種です。すべて完全に耐寒性で特殊な栽培は必要としません。


      秋咲きや四季咲きのバラもまた美しさと香りの両方が際立っています。50以上の種類があります。

      その中の最も美しいもののひとつがLee's Perpetual、フランスのRose de Roiです。

      Paestum Roseは、Plingによれば、この一族に属していると考えられています。

      Rose des Quatre Saisonsもよく知られています。

      これらのバラはすべて、1年に2回、11月と6月に剪定しなければいけません。剪定後、根の辺りの地面はフォークで緩めて、肥料を 57.5 cm の厚さに覆います。肥料の不快な外観を見せないように、新鮮な緑のコケで覆うようにします。

      四季咲きバラの種類はすべて花びらが落ちずに、そのまま枯れることがよくあります。この場合、枯れた花はすぐに取り去ります。

      それらの種類はすべて、取り木で根を作るには不十分なので、普通のイヌバラ(dig rose)に接ぎ木して殖やします。

      これらのバラは少しの管理で、毎年8か月間花を咲かせ続けることができるので特に価値があります。 >>>(後半)に続きます。

      19世紀のバラを見に行く

       福岡県久留米市の石橋文化センターと福岡市植物園のバラ園に、

      19世紀のバラを7月に見に行きました。

      暑さの中でもポツポツ咲いていました。

      カタログなどでは見ることのできない、暑さでお疲れ気味の現実感のある写真になっております(しかも下手くそでピンボケ)😓

      20世紀、21世紀のバラに比べると19世紀のバラは小ぶりで色味も素朴ですが、それゆえバラが昔から愛されてきた魅力の素が感じられます。














      以下の品種は残念なことに完全に咲き終わっていました。

      クープ・デペ 1840年

      ルイーズ・オディール 1851年

      レーヌ・デ・ヴィオレット 1860年

      コント・ドゥ・ジャンボール 1860年

      コンテス・セシル・ドゥ・シャブリアン 1858年

      フェリステ・エ・ペルぺチュエ 1827年

      ユエユエフェン(月月粉) 1835年以前

      オーギュスティーヌ・ギノワゾー 1889年

      スヴニール・ドゥ・ラ・マルメゾン 1843年

      アントニア・ドルモア 1835年以前

      アンリ マルタン 1862年

      カイゼリン オーギュスト ビクトリア 1891年

      ケニギン・フォン・デンマーク 1816年

      ジェイムズ ヴィッチ 1865年

      シドニー 1847年

      フェリステ・エ・ペルぺチュエ 1827年

      ブレジダン・ドゥ・セース 1828年

      リゼット・ドゥ・べランジュ 1867年


      2021年4月29日木曜日

      園藝之友 第2年第2号 (1906年)  蘭科植物の栽培

       園藝之友 第2年第2号 (1906年)

       蘭科植物の栽培

      熱帯産の蘭科植物の栽培には温室が必要ですが、蘭科の栽培室を蘭温室と一緒くたにするのではなく、熱室・温室・冷室と区別して定義されていたので、メモ。


      夏季の温度は熱室も温室も冷室もかなり低めです。この数値は海外雑誌から引用した値のようで、我が国についてコメントがついています。いくら光を遮っても、夏季にこの温度条件を実現できるのは、北国や高原、冷たい地下水が確保できるところに限られたのでは?あるいは、明治時代は現在よりもずっと涼しかった?


      現代の蘭温室は、ほとんどがエアコンなどの冷房装置を備えています。温暖化の影響もあって、ヤサイでも冷房が求められるようになってきています。

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      夏季

               温度                                                      

               熱室           75℉24℃                        6570℉1821℃

               温室           70℉21℃                        60℉16℃

               冷室           60℉16℃                        55℉13℃

       

      冬季

               温度                                                      

               熱室           65℉18℃                        60℉16℃

               温室           5560℉1316℃          55℉13℃

               冷室           55℉13℃                        50℉10℃

       

      以上の温度は、ただ大体を示すものにて、外気の関係上、室内温度80℉27℃)から85℉29℃)を示しても差し支えない。ただし、冷室は70℉21℃)以上に超過すると害があると言われる。

      また蘭類の大部分は、4月より8月までの5ヶ月間は多少隠蔽の装置必要にて、強き光線に触るるを忌む。特に我が国の如き夏季陽熱の強き所にては一層その必要を認めるなり。



      2021年4月10日土曜日

      園藝之友 第1年第6号 (1905年) 庭園と花卉  スウィート、ピーに就きて

       園藝之友 第1年第6号 (1905年)

       庭園と花卉

       スウィート、ピーに就きて

      欧米園芸界で流行の一つであって、本邦でも同じ気運になると思われるので、ここに初めて栽培する人への参考になるものと、解説されています。木筐(Cold Frame)を利用しています。その要点は、以下の通り。

      フレームは、九州だとあまりお家の庭にあるのを見かけないような。。。

      でもあるととっても便利。料理で出た野菜クズをフレーム内の土に埋めていますが、捨てた種からよく発芽します。特にカボチャやスイカなど。

      ベニシアさんのご自宅のお庭にあったのをテレビか冊子で見た気がします。

      以下では障子と書かれているのはガラス障子。

      当時の適期を現代は調整する必要がありそうです。

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      ・秋まきは10月下旬から11月上旬の間

      ・播種は床蒔き、鉢蒔きにかかわらず木筐内にて行う。---フレームが必須ってことですね。

      ・発芽したら1週間くらいはそのままにしておき、なるべく強健なものを必要数選んで25分(7.5cm)から3寸(9cm)くらいの小鉢に1本ずつ移植する。---この後も鉢替えがあります。当時は鉢替えが頻繁な気がします。

      ・移植後は木筐内に並べ、過度の乾燥を防ぎ、時々灌水する。

      こうしておくと3月下旬より花蕾が出て、4月上旬より次々開花させることができる。567月末頃まで着果が続く。なお8月中も着花させるには4月上旬頃露地に植え出して土用中(立秋前の18日間)には少し日除けする。


      2020年9月21日月曜日

      園藝之友 第1年第6号 (1905年) プリムラ、種まき方法

       園藝之友 第1年第6号 (1905年)

       プリムラ、サイ子ンシス(Primula Cainensis.*) 和名 寒桜草

      「グリンハウス、コンサーベートリー内における花の王」と書かれています。洋書でも代表的な温室の花として必ず見かけます。種子は高価でかつ細粒なので、大事に百発百中で発芽させる種まき方法が紹介されています。要点としては以下の通り。

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      とりわけ安全な方法は2重鉢仕立て法(ダブルシードリングパン)。


      ・鉢を2重にする。

      ・中の鉢には、鉢底から順に、鉢や炭の欠けら、小砂利くらいの土塊、ふるい分けした砂がちの軽鬆土を3段重ねとなる様に詰め込む。表面は平らにする。

      ・これをしばらく水桶に浸す。鉢の縁がようやく水面に出る程度とする。

      ・桶より取り出したら直ちにタネを蒔く。その上をうっすら細土(表面土と同性のもの)で覆う。

      ・播種後外鉢に重ねる。鉢と鉢の間は水苔を入れる。この水苔の潤いが始終中鉢に湿気を与える。

      ・灌水するには、中鉢を取り出して水苔に水を注ぐ。

      ・播種後は日光の強く射さない場所に置き、朝に夕に水湿を絶やさない様にする。



      *当世では、Primula sinensis.のこと? 寒桜は多くの園芸品種が作出されているそうです。当時の読者はどんな品種を思い浮かべたんでしょうね?「こぼれダネから自然と株元に子株ができることが多いので、植え替えて育てておくのもよい」と、発芽は容易な感じで書いてあります(https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-760)。

      乾き具合から見て、水やり間隔をのばすにはもっとスポンジの量が必要そうです。
      ルッコラは翌日発芽。発芽の早いルッコラは2重鉢にする意味かったですね。







      2020年9月6日日曜日

      園藝之友 第1年第5号 (1905年) 園藝家旅行案内

       園藝之友 第1年第5号 (1905年)

               園藝家旅行案内

      千瓢生氏の花のお江戸の園芸地案内です。入谷にあった温室の紹介部分です。

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      「入谷の・・・・・今回「入十」で新築した温室は幅3間(5.4m)、18間(32m)の温室で一見の価値あり。温室ではツツジ、鉄砲百合、ポインセチア、ボタン、フリージアを栽培している。フリージアは9月中旬、小鉢に植え込み、温室に入れれば翌春1月に開花し、箱室なら3月に花が咲く。」

      *入谷朝顔まつり(朝顔市)として今に伝わっていますが、「周辺の植木屋の廃業により、同まつりは一度姿を消してしまいましたが、1948年、地元住民らが復活させようと、切り花の生産が盛んな江戸川区の園芸農家に生産を依頼。まつりに並ぶ約10万鉢のアサガオの約6割は江戸川区産のアサガオです。」https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e004/kuseijoho/kohokocho/press/2020/06/0624-1.html


      [近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:かすかに秋の気配

       9月に入っても35℃超え、最低気温も27℃と暑いです。 ただ、熱湯の中にいるような空気感は、日陰で風があれば、やわらいできたような。。。いや、単に、自分が暑さに順化しただけかも(笑) 夕方なら草刈りする気力が、ようやく戻ってまいりました。暑さで弱っている雑草は比較的抜きやすいで...