温水暖房の解説、これで完了です。
1800年代の温水ボイラーはいかにもアンティークな姿で魅力的です。現代の装置に比べたら、とっても不便そうではありますが。。。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
様々な暖房方法 Ⅲ
低圧(常圧)温水暖房
ボイラーの配置
ボイラーの能力は、すでに述べたように(191ページ)、水柱高さが高いほど大きくなります。したがって、ボイラーを加温パイプより低い位置にするほど、暖房性能は向上します。
一方で、水柱高さを1フィート高くするごとに、水柱の底部にかかる圧力は1平方インチあたり433ポンド(=2.99 MPa, 304.44 mH2O)増えることを忘れてはいけません。
水柱の太さ、水管の形状、直径、絶対長さ、傾斜の有無、ねじれの有無、あるいはボイラーへの挿入位置は、圧力には全く影響しません。
圧力は鉛直高さにのみ比例します。
例えば、占有面積6平方フィート (0.56 m2) のボイラーが建物の地下室に設置されているとします。直径4インチ (10 cm)、長さ20フィート (6 m) の放熱管が40フィート (12 m) 上方に設置され、径1インチ (2.5 cm) の流入管と戻り管で接続されている場合、ボイラーにかかる全圧力は6トン13 cwt(1平方インチあたり17.32ポンド, 0.12 MPa, 12.18 mH2O)をわずかに上回ります。(1 cwt = 112 ポンド)
径4インチの流入管と戻り管が長さ200フィート (61 m) の放熱管と接続されている場合でも、鉛直高さが同じであれば、ボイラーの内圧は全く同じ、すなわち1平方インチあたり17,32ポンド、つまり総圧力は6トン13cwt強となります。
要するに、ボイラーが発揮すべき仕事量に見合うように、ボイラーを固定する地下深さを決めることが重要だとわかります。
なお、このボイラーの限界より高い水柱圧をかけてもボイラーが爆発することはありません。
水は圧力下で体積が縮むことはほとんどないのと同様、圧力がかからなくなったり、圧力に対する抵抗がとれたりした場合も、体積はほとんど変わらないので、ボイラーは単にひび割れるだけでしょう。
排水不良やその他の状況により、地下深さを非常に浅くする場合もあります。
この場合、ボイラーを安全に設置できる最小深さは、187~191ページに記載されているデータから容易に計算できます。ただし、ボイラーからの流出水と戻り水の差が大きいほど、垂直柱を短くする必要があり、ボイラーとこの配管部の高低差が小さくなるように設置することを常に覚えておいてください。
配管をボイラーより下に下げることはできません。
配管をどこに設置するにしても、ボイラーは必ず最も低い位置に設置しなければなりません。
Box氏はこれを次のように非常に明確に示しています。
図108は最も低い位置に設置したボイラー、図108aは最も低い位置と最も高い位置の中間に設置したボイラーを示しています。
いずれの場合も、水はボイラーから210 ℉ (99 ℃)で出て、そのまま水管に入るので、行きの水柱の平均温度は190℉(88 ℃)、戻りは平均140℉ (60 ℃)になることがわかります。
したがって、循環を引き起こす駆動力は190℉および140℉の水柱の比重の差と言えます。
図108Aでは、水柱内の平均温度はどちらも160℉ (71 ℃)と同じなので循環は起こり得ません。
ボイラーをパイプの真上に設置して、垂直に高く水柱を掲げることで、パイプを加熱し循環を起こすことも可能かもしれません。その場合は適当な水柱の高さになっていることを確認し、ボイラーに入る水と出る水の温度を決定します。
次に、パイプの配置図を作成し、図108および108aと同様に、パイプ全体にわたって様々な位置の温度を正確に記録します。
上昇水パイプと下降水パイプの水温を求めれば、どのような駆動力が循環に利用されるかが一目でわかります。
2つの水柱の差を計算する際には、必ずパイプの垂直部の温度のみを加算し、水平パイプの温度は加算してはいけません。
循環用の水タンクを用いてボイラーを給湯加温部より上にすることもできますが、これはあまり好ましい方法ではありません。
どのような場合でも、可能な限りボイラーは給湯加温部より下に設置すべきです。
給湯加温部に対するボイラーの水平位置については、一般的にその場所の状況によって決まります。
立て掛け式屋根の連続ハウスを暖房する必要がある場合は、一般的に、ボイラーをそのハウスエリアの中央の、後壁の後ろに配置し、両方向へ熱を供給することをお勧めします。(196ページ参照)
これができない場合は、ハウスエリアの端に設置しても問題ありません。なぜなら、最も熱を必要とするハウスの近くにボイラーを設置する必要はないからです。すなわち、肝心なのは給湯加温部の場所ですから。ボイラーの配置は、加温パイプの放熱面積とボイラーと加温部との間の配管の保温によって決まるからです。
その他の条件が同じであれば、ボイラーは、燃料の投入と給水が容易にできる場所、煙突の設置が容易な場所、見苦しくない場所、そして、焚き付け口の排水が容易で、焚べる作業からできるだけ近い場所に設置する必要があります。
燃料
燃焼は一般に光と熱の発生を伴う化学反応です。
通常の燃料では、炭素は大気中の酸素と結合して炭酸ガスを生成し、水素も同様に酸素と結合して水を生成します。
水素を含んだ可燃物に酸素も存在する場合、酸素:水素が重量比8:1で結合して、水9が生成されますが、利用可能な熱は発生しません。
このような可燃物中に存在する酸素が結合しなかった余剰の水素は、当然ながら熱として利用できます。
ペクレ、プレイフェア、ド・ラ・ベシュらの実験から、一般的な可燃物の化学組成は次の表のとおりであることがわかっています。
デュロンの実験によれば、炭素が酸素、そして水素と適切な原子比で燃焼により結合すると、炭素+酸素は炭素1ポンドあたり12,906 BTUの熱を、炭素+水素では水素1ポンドあたり62,535 BTUの熱を発生することが分かっています。
(1ポンドの水の温度を32°F(=17.78℃)上げるのに必要な熱量が1 BTU(British Thermal Unit:英国熱量単位)です。これは、約1,055J、約252calに相当します。)
上記のデータから、上記の各種燃料が発生する熱量(BTU)の表を簡単に作成することができます。
例えば、1ポンド (454 g) の石炭の場合、次のようになります。
炭素 0.804x12,906 = 10,376 [BTU]
水素 0.0519 - 0.070/8 = 0.04206x62,535 = 2,630[BTU]
計 13,006 [BTU]
表XXXIIは、各種燃料の最大加温能力を比較しています。
ボックス氏は、石炭を例に次のように考察しています。
5%は燃カスの灰となり、
20%は煙突からの排気によって失われ、
12%はボイラー室での燃焼時の放射熱によって失われ、残りの63%が加温に利用されます。
燃料に水分が含まれている場合、可燃有効重量が減少するだけでなく、実際の燃料に含まれる熱が水の蒸発熱として消費されてしまいます。
すなわち、通常の状態の木材には20%の水分が含まれているため、燃焼物の重量は80%となります。さらに、残りの20%の水分を蒸発させるのに4%の熱が必要となるため、燃焼物の有効重量は、結局、約76%に減ってしまいます。
この項目の冒頭で、大気中の酸素が燃焼を促進すると述べましたが、燃料への大気供給に関する詳細な説明は「炉とボイラーの設定」の項(p.212)に記載されています。
ラムフォード氏らの実験に基づき、フッド氏は、各種パイプ内水温と空気温度における、径4インチパイプ(長さ100フィート(約30メートル))を加熱するのに必要な、1時間あたりの石炭量を示す表を提示しています。
石炭の通常の燃焼速度は、火格子1平方フィート (30 cm X 30 cm) あたり毎時約10~11ポンド (4〜5 kg) です。
しかし、どの燃料が最も多くの熱量[BTU]を出すかが分かったとしても、それで全てが終わったわけではありません。
この点だけを基準にすると、表XXXIIを見れば、石炭と木炭はどちらもコークスよりも優れていることが分かりますが、実際には、コークスが温水暖房に最も適した燃料であることが多いのです。
コスト計算も必要です。
ボイラーによっては、石炭、コークス、木材どれでも燃焼できるものもあれば、石炭用やコークスを投入することで効率が格段に向上するものもあります。
ボイラーの設置面が良質な遮熱材でできているか、そうでないかによって、効率は大きく異なります。
石炭は、特定の条件下では、熱が失われ燃焼バーが詰まると、石炭が浪費されやすくなります。
石炭燃焼では煤が堆積しますが、煤のような高断熱体がボイラー内部などを覆ってしまうと、煙突から逃げる熱が大きくなって損失を促進してしまいます。
コークスではこのような弊害は生じません。屋敷の暖房で煙突から煙が立ち上る光景は見苦しいものです。
もちろん、完全燃焼なら、煤も煙も発生しません。しかし、温水ボイラーや炉の製造業者は、まだ完全燃焼を実現できていません。それが実現するまでは、石炭は通常、コークスに取って代わられるでしょう。
ここで、「石灰窯式暖房」システムの利点について簡単に見てみましょう。
その燃料は炭酸カルシウム(石灰石)です。これを石炭と混合し、窯で加熱します。すると、炭酸が赤熱して蒸発し、石灰が残ります。
本来であれば大気中に放出される熱は、温水器の駆動熱源として利用できます。
確かに、その観点からすれば熱にはコストがかかっていないと言えるかもしれません。しかし、このシステムは、実際には、非常に大規模な施設で、石灰製造のような商業活動を行う場合にのみ利用できます。
領地に石灰石がなく、あるいは石灰製造に全く関わっていない貴族や紳士がわざわざ石灰石を購入して、それを領地まで運搬させ、その場所に石灰工場を建設し、製造した製品を販売するなどという事業を、年間わずかな石炭やコークスの節約のために行うことはないでしょう。
木材と泥炭はどちらも発熱量が少ないですが、木炭に加工すれば発熱量は2倍以上になります。
しかしながら、現在に至るまで、木材、泥炭やそれらの製品は燃料として広く普及していません。
そのほかに、様々な人工燃料が開発されています。、その主な原料は、石炭粉、石炭くず、コークス、泥炭、樹皮、タンニン、おがくず、植物繊維、ピッチ(タールなどを蒸留した後に残る黒色のかすや樹脂)、タールなどです。
ピッチとタールは一般に車両の接着剤として利用されています。
これらの燃料すべてに共通する大きな欠点は、石炭に見られるように、その接着成分が燃焼せずに蒸発しやすいことです。燃焼が阻害されると、熱が無駄になり、火格子が詰まって空気の供給が妨げられます。
炭化水素、通常石炭ガスと呼ばれるものは温水暖房装置の燃料として使用されることがあります。
この燃料には利点が1つあります。それは、見張りが不要であることです。一度点火すれば長時間燃焼し続け、もちろん、好きなように燃焼を調整することができます。
一方、石炭ガスの燃焼にかかるコストは、コークスと比較して、5倍(最も完全な燃焼の場合)から12倍(燃焼が不完全で熱の大部分が利用されない場合)にもなります。
石炭ガスの燃焼生成物は植物に非常に有害であり、(石炭ガスストーブを温室から完全に隔離していない限り)温室内の植物に深刻な被害を与えるのを防ぐのは困難です。
にもかかわらず、非常に小さな暖房には石炭ガスを使ったストーブが使われていることがよくあります。放熱パイプの長さが短い場合を除いて、石炭ガスを使用することは現実的ではないと考えます。
燃料の供給
ボイラーは目的に最適化可能ですし、望み通りに設置できるでしょう。配管は適切に設置され、適切な加熱面積を確保できます。暖房装置全体を完璧な状態で稼働させることができるでしょう。
ただし、その暖房装置がうまく稼働するかどうかは、管理人次第です。
管理者の職務は多岐にわたり、重要なものです。ここではそのいくつかについて述べてみましょう。
どの燃料を選ぶかは、多くの場合、燃料供給係の役割です。
どの燃料を選択するかは、燃料の入手しやすさとその地域での価格、敷地内で廃棄することになる廃棄物が再利用できるかどうか、使用するボイラーのタイプ、そしてボイラーが必要とする作業内容によって決まります。
炉に燃料を投入する際、投入回数が多いほど燃料消費量が増え、投入間隔が長いほど燃料の節約につながることを覚えておかなければなりません。
ただし、燃料供給係はさらに細心の注意を払わなければなりません。長時間の燃焼は、炉の容積が大きい場合にのみ経済的になるからです。
また、炉床上に供給する燃料の厚さについても適切な判断を下す必要があります。
これもボイラーの形状によって異なります。
可能な限りデッドプレート(火除け板)を使って新しい燃料を炉床に投入する前に一部を加熱することを忘れてはいけません。
一般に、燃えている層が薄く明るいほど、一酸化炭素は発生しにくく、それに伴う熱損失は少なくなります。
ダンパーと炉扉の開け閉めは、燃料の量と投入頻度に応じて適切に操作する必要があります。
これらの作業は、一般に燃料供給係の能力を試すものとなります。
これらの点に関しては、経験こそが唯一の指針となりますが、次のことを覚えておくと良いでしょう。
・ダンパーは常に燃焼を維持できる範囲でできるだけ閉じておくべきであること。
・強い火力にする場合は火格子の上部から空気を供給する必要があること。
・空気の供給と排出が多すぎると、燃焼が速くなり、気流速度が増し、煙突から熱が逃げてしまうこと。
・空気の供給が少なすぎて排出が多すぎると、二酸化炭素が発生すること。
燃料供給係は、以下の事項を確認しなければなりません。
・空気管とバルブが正常に作動していること。また、それらを含む装置のどの部分にも、汚れなどが詰まっていないこと。
・給水タンクの底に常に水があること。
・使用する水はきれいな雨水であること。
・そして、ボイラー、火格子、煙道、煙突にクリンカー(石炭の燃焼または製錬の副産物として生成される灰とシリカの溶解物)や煤などが付着していないこと。
























