傾斜のある庭に小さなハウスや小屋を作る際にも参考になりそうな解説でした(経験のある人には至極当然な事でしょうが)。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
レベリング(水平の出し方)
レベリング(水平の出し方)は園芸用ハウスの建設、排水、庭の設計に関連する非常に重要な事項であるため、必要な装置、基本原則、そしてハウスへの適用法について述べるべきことがあります。
測量具
庭師/園芸家は、レンガ職人が普段使っているような下げ振りと水準器、竿とひも、測定棒、通常のガンターチェーン、 水平器(図13に示す)、そして 2本のレベリングスタッフ(票尺 、木製や金属製の目盛りのついた測量用の木製や金属製の棒)を持っておくと便利でしょう。 ガンターチェーンは長さ 66 フィートで、通常は真鍮のリングまたはタグで 10 個ずつにグループ分けされた100 個のリンクで構成されています (1平方エーカーは 100,000 平方リンクであることを覚えておいてください)・・・今はスチール製の巻尺に取って代わられました。
「道具小屋」のセクションで説明するツールなども参照してください。
測量の基本原則
地球は球体で、その表面は半径 3,956.5 マイル(約6367Km)の円周を形成しています。 したがって、地上で測った測地線は一見直線ですが、実際の測地線というのは当然、この円周の一部(曲線)のはずです。
表7 は 100 から 1,000 ヤード(91〜914 m)で実際のレベルより上にある見かけの高さを示しています。
表7 見かけのレベルと実際の違い(1ヤード=0.9144 m, 1インチ=2.54 cm)
大気の屈折についてもレベルの補正が必要です。大気の屈折は変化しますが、一般に1/7の曲率補正で求められます。屈折により対象物は実際よりも高く見えるため、曲率補正の1/7 を差し引く必要があります。
これらの点について説明すべきですが、曲率や屈折による誤差は水平をとりたい地面の中心に水準器を配置して測量することで回避できます。具体的に説明すると、
(図 14) A と E の間の真のレベルの差を見つける必要があるとします。まず、距離全体を適宜複数のレベル調整区間に分割します。この例では、A C と C Eの2区間に分割しています。:
図 14. 長距離測量の方法
レベリングスタッフ(票尺)を点 A と C に固定し、測定器をそれらの中間に配置し、2 つの票尺の読み値を記録します。
その後、この操作を C と E の間で繰り返します。
AとCの後視の合計とCとEの前視の合計の差がAとEのレベル差を表します。
したがって、A と E の間の読み取り値は次のようになると計算されます。
後ろから見て後ろが前を超えていれば、地面は上がっています。 前から見て前が後ろを超えて見えれば、地面が下がっています。
測量する距離が長く、中間点を都合よく取れない場合は、曲率と屈折で補正する必要があります。
しかし、これは、 (配水タンクと遠く離れた給水源を結ぶ、などといった)特定の場所について正確な高低差が必要な場合でない限り、園芸ハウスや庭園でその必要性が発生する可能性は高くありません。
整地面が地面に近い場合は、次の方法が採用できます。
- 水平距離方向にペグを地面に打ち込んでいきます。
通常レンガ職人がペグを打つ間隔よりもかなり短い間隔で水平を取っていく必要があります。 (図 15 を参照):--
図15. —短距離での測量の方法。
No.1のペグを固定点として、水平器の気泡管の泡が中心にくるようペグNo.2を上げ下げして水平をとります。
それから、同様にNo. 2を固定点として、No.3を上げたり下げたりします。 No2と同じレベルになるまで上げ下げします。次に、No. 3 を固定点として、No. 4で・・・と、 操作を繰り返します。
この方法で、100 フィートや 150 フィートまでの距離なら非常に正確かつ迅速に地面に水平をとることができます。
園芸用ハウスにおける整地
起伏があったり傾斜が続く場所でどこに園芸用ハウスを建てるかを選定する際の重要な点は、可能であれば北側に土地の盛り上がりや防護物があり、くぼみがないか、であり、いずれにしても、南側に障害物があってはいけません。
もう一つ重要な点は、ハウスからの排水が容易になされるようにすることです。
地面がハウスの長さ方向にはかなり平らで、横方向にだけ凸凹がある場合、人為的に地面を平らにする必要はほとんどありません。
一方、ハウスの長さ方向に地面が平坦でない場合は、いくつかの方法があります。
ひとつめは、図16の A のように、ハウスの床のラインを地面の最高高さに揃えるように作ることです。
図16.— 盛土されたハウスの鉛直断面図。
2つ目は、ハウスが非常に長く、かつ、残土を入手することも残土を捨てることもできない場合、それ以外の条件が変わらなければ、図17のように半分削って半分盛土することで水平を得ることができます。:—-
図 17.—半分が削土、半分が盛土されたハウスの鉛直断面図。
3つ目は、地面の傾斜やハウスの長さが極端すぎて上記の方法が実現不可能な場合は、図 18 に示すようにステップを切る方法を導入できます。
図18.—階段状のハウスの鉛直断面図。
この場合、ボイラーは最下端の最も低い地点に設け、ハウスに湯を容易に供給できるような深さと位置にしなければなりません。
この 3つ目の方法は、敷地内に異なる高さの通路ができるので一般に便利でありません。可能なら回避すべきです。 (「通路」のセクションを参照してください。)
(排水が困難など)何らかの理由で栽培用ハウスのレベルを全体的に上げる必要がある場合は、手押し車が利用できるように、階段状ではなくスロープ状の通路にすることをお勧めします。そうすれば、手押し車をスムーズにハウスへ入れることができます。
いかなる理由があっても、ガラスと木組部分のラインを図 19、20 のように地面の傾斜に沿ったものにしてはいけません。 :—
図19.—ハウスの標高が平坦でないハウスの鉛直断面図 (悪い例)。
図20. - ハウス自体が平らになっていないハウスの鉛直断面図 (悪い例)。
著者はこのようなハウスを見てきましたが、日常の園芸作業にとって不自然で、不便で、恐ろしく使い勝手の悪いものです。
図20のような長い通路が作られることはあります。 なお、図18に示すようにドアの位置は地面の傾斜に沿うようにする一方で、屋根はステップ状に高低差をつけていれば、際立って見映えのするものになるでしょう。その良い例として、クリスタルパレスからロンドンとブライトン駅につながる長い通路があります。
以上の注意事項はすべて、単独のハウスの場合だけでなくハウスを組み合わせた場合にも当てはまります。
ただし、組み合わせる場合、それを構成する個々のハウスは、可能なかぎり同じレベルにすべきです。
ただし並んだハウスのラインは、並びごとに異なるレベルにすることができます。
実際、レベルを合わせるためにコスト、見た目、実用性などを犠牲にするわけにはいかないでしょうが、可能な限りレベルを合わせるように努めてください。
コンサバトリーや園芸施設の床面ラインは応接室のレベルと合わせる必要がないなら、排水を促進するために地面から 2 段か 3 段高くすべきです。
住宅とつながったコンサバトリーの床面の高さは、マットの厚さ程度のわずかな違いでなければいけませんが、連接する応接室のレベルよりも低くしてはいけません。 (「通路」と「展示ハウス」の項を参照してください)。
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