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2025年8月11日月曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-1 低圧(常圧)温水暖房 −原理−

低圧(常圧)の温水暖房装置について詳しく解説されています。まずは原理から。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


一般的な原理

熱は放射、伝導、対流によって伝わります。

・放射とは、周囲の空気温度を著しく上昇させることなく、発熱源から離れた物体へ熱が伝わる現象です。

・伝導とは、熱が物体自体を介して伝わる現象です。

・対流とは、熱が(水や空気などの)流れにのって伝わる現象です。

燃え盛る火の前に立っている人の顔が温かくなるのは放射によるものです。

火に入れた火かき棒の柄が温かくなるのは伝導によるものです。

やかんの中の水が温められるのは対流によるものです。

放射熱は、その名の通り、音や光と同様に、あらゆる方向に直進します。

放射熱の強度は、点源からの距離の2乗に反比例して減少します。この法則は光の放射と同じです。

図9は、これを非常に明確に示しています。
1ヤードの距離で、ある量の熱線が1平方フィートを覆っているとします。2ヤードでは、同じ熱線は2平方フィートではなく4平方フィートを覆います。3ヤードでは、3平方フィートではなく9平方フィートを覆います。4ヤードでは、4平方フィートではなく16平方フィートを覆うことになります。
つまり、1ヤードで、1平方フィート当たりの熱線強度が1であるとすると、2ヤードでは、1平方フィート当たりの熱線強度は1/2ではなく1/4になり、3ヤードでは1/3ではなく1/9、4ヤードでは1/4ではなく1/16・・・となります。以下同様です。


ここで、さまざまな建築材料自体の熱伝達率、すなわち熱伝導率を示した表が役立つかもしれません。


表 XVIII.— さまざまな材料の熱伝導率 (Hurst)

---------------------------------------------------------
材料 :: 熱伝導率
(キャンバス生地を1とした場合の比率)
---------------------------------------------------------
銅::1000
鉄::450
亜鉛::430
鉛::230
スレート::42
バースストーン::25
ガラス::14
レンガ(耐火)::13
レンガ(一般)::12
オーク材::4
モミ材::3
コルク::2
キャンバス生地::1


温度の異なる物質をほぼ接して置くと、温度は自然と均一になる傾向があります。
したがって、他の条件が同じで、外部からの影響がないと仮定した場合、それぞれ60度と90度の温度の2つの物質をくっつけて置けば、どちらも75度の温度になります。
熱を素早く吸収するものは、当然ながら熱を放出するのも素早いです。逆もまた同じです。
したがって、他の条件が同じであれば、温室の容積が大きいほど、突然の日光や霜の影響を緩やかに受けます。
温室が小さいほど、早く暖まりますが、暖房を切ると急速に冷えます。
温室の表面積が大きいほど、その容積に比例して温室からの放熱のスピードが早まります。


空気や水の場合、熱伝導率が非常に小さいので、伝熱は主に対流によって促進されます。

温度変化が空気に及ぼす影響については、「換気」の項で説明しています。

温度変化の影響は、空気の場合と同様に、水でもほぼ同じです。

しかし、表XVII. を見ると、空気は温度が何度でも、温度が上昇すると膨張することが分かります。一方、水は温度上昇時に膨張するためには、華氏39.2度(4 ℃)以上である必要があります。
39.2 °F(4 ℃)以下では、温度が下がる方が水は膨張します。


表XIX.—異なる温度における水の体積(相対値)

------------------------------------------
華氏温度, °F(摂氏温度, ℃)::体積
------------------------------------------
20 (-7)::1.0012000
30 (-1)::1.0003780
40 (4)::1.0000000
42 (6)::1.0000258
52 (11):: 1.0005123
62 (17)::1.0014070
72 (22)::1.002627
82 (28)::1.004143
92 (33)::1.005901
102 (39)::1.007911
112 (44)::1.010150
122 (50)::1.01261
132 (56)::1.01527
142 (61)::1.01814
152 (67)::1.02120
162 (72)::1.02443
172 (78)::1.02788
182 (83)::1.03148
192 (89)::1.03526
202 (94)::1.03922
212 (100)::1.04333
------------------------------------------

すなわち、水は39’2°(4℃)で密度が最大になるので、体積としては最小になります。

表XIXは、様々な温度における水の体積(4℃)で体積を1した相対値)を示しています。

したがって、39.2°(約40°)(4℃)以下の水の場合を除けば、空気の流れに関して述べた一般的な考察は水の流れにも当てはまることがわかります。

しかし、水は空気ほど流動性の高い物質ではないため、空気よりもはるかに正確かつ確実に操作できます。

熱水は上昇し、冷水は沈みます。これは単に、両者の比重が異なるためです。

言い換えれば、ある量の熱水は、同じ量の冷水よりも軽く、両者が接触すると、重い冷水が沈み、その沈む際に軽い熱水が上方に押し上げられます。


図版43


一般原理の実際への適用

上記の原理を低圧(常圧)の温水暖房に適用する場合、2本の水柱を用います。

一方の水柱は常にもう一方の水柱よりも高温に保つようにします。そうすれば、水は規則的に移動し続け、いわゆる「循環」が維持されます。

図92は、最も単純な形の装置の縦断面図を示しています。

図92. 暖房装置の鉛直断面図

Aはボイラー、すなわち熱の発生部を示しています。

CとDは配管で、Aと繋がる2本の水柱を含んでいます。

「2本の水柱」とは、高さのある垂直方向のパイプ部分を指します。

つまり、A、C、Dに含まれる2本の水柱は、点線H、F、G、F、つまり配管Cの上部とDとAを結ぶ配管の下部との高低差に相当します。Kは、必要に応じて水を排出するための蛇口を示しています。

A、C、Dは、配管や周囲の空気と同じ温度の水で満たされているとしましょう。この場合、水の循環は起こりません。

ボイラーAを加熱すると、パイプC内の水温は上昇し、それに比べてD内の水は冷たいので沈むので、水は押し上げられる方向に動きます。

Cのパイプ菅は中の温水から熱を吸収し、大気中にその熱を放射するので、結果的にC内の水を冷却することになります。

しかし、その間にボイラーAはさらに熱を供給するので、C内の水温は上昇し、冷却されてDで沈みます。Aが熱を供給し続け、CとDの温度が周囲の空気や周辺の物体よりも高い限り、矢印の方向で示される循環のプロセスが続きます。

水が部分的に加熱される際に膨張しますが、その膨張は空のタンクBに設けられた余剰空間で受け留めます。

パイプ内に空気が溜まって循環を妨げないように、上部が開いた小管Eが最上部のパイプCの最も高い部分に取り付けられています。

BとEは両方とも大気に開放されているため、装置のどの部分にも、水頭による圧力を除いて内部圧力がかかることはありません。

したがって、水温は212°F(100℃)を超えることはありません。

低圧加熱装置内の水は沸騰しないはずですが、蒸発によって減少する可能性があります。そのため、膨張タンクBはパイプを介してボイラーの最下部に接続されていて、減少分の水を補給するための容器として機能します。

このシステムは安全で、シンプルで、信頼性が高く、操作が簡単で、微妙な調整が可能で、園芸用途では特に、放射温度が 華氏212度 (100℃) (実際には 華氏200 度(93 ℃)) を超えないという大きな利点があります。

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