2024年4月21日日曜日

19世紀末の園芸施設:9. 栽培温室---立て掛け式ハウス

 温室の1種、LEAN-TO House。LEAN-TOって、差し掛け?壁掛け? ここでは立て掛けにしました。

  HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

栽培温室

立て掛け式ハウス

この形式のハウス(温室)の存在理由は、他の形式のガラスハウスとともにすでに述べたところです。 (「6. 園芸ハウスの周囲と場所」を参照)

立て掛け式ハウスは一般的に次のような場合に利用されます。 

— 壁や建物がすでに存在し、それに面してガラスハウス(ガラス温室)を配置したいとき

— 単独ハウスまたは複数組み合わせたハウスを南向きで作って、北側はレンガで保護したいとき 

— 栽培上の理由などからこの形式を必要とする場合。


南向きの立て掛け式ハウスは両屋根ハウスよりも暖房が容易で、その他の条件が同じであれば、他のどの形式のハウスよりも建設費が安くあがります。 立て掛け式ハウスは、たとえ真南に配置して建設していても、最も暑い時期には、早朝と夕方の日射は入らないということを忘れてはいけません。

また、植物を移動できないなら、立て掛け式ハウス内で植物にぐるっと太陽光線を当てることはできません。

立て掛け式ハウスの最も一般的な形を図21に示します。

図 21.— 正面にガラス面のある立て掛け式ハウス(断面図)

このハウスの正面は約 2フィート 6インチ (75cm) の高さのレンガの壁に垂直に2フィート 6インチ(75cm)のガラス面が載っていて、この面の高さは合計約 5フィート 0インチ (1.5m) になります。

このタイプのハウスはどれも、正面の高さは数インチ(10cm)程度の違いはあっても、ほとんど(1.5m)前後で、どのような植物の栽培にもほぼ適します。

植物にとって、正面のガラス面の高さが2フィート6インチ(75cm)であるのはとても好都合です。ブドウのつるなどはガラス面に沿わせるように誘引して育てる必要がありますが、その必要高さに合わせるようにボーダーや内部の栽培ベッドの高さを調整すれば十分対応できます。

この形式のハウスの上部の換気は棟にヒンジで取り付けられたガラス窓によって行い、下部の換気は正面の壁に造られた溝プレート部にはめ込んだスイングするガラス窓によって行われます。

もちろん、場合によっては、点線で示すように、このガラス窓を固定窓とし、レンガの壁に換気口を組み込むこともできます。

または、特に悪天候の寒い時などで、流入した外気を植物にあたる前に温める必要がある場合には、両者(換気と燃焼暖房)を使って、正面壁のすぐ後ろに設置した温湯パイプの近くに外気を通すようにすることもできます。

図22.— 正面にガラス面がない立て掛け式ハウス(断面図)

別の立て掛け式ハウス( 図22)は、図21と同じ形状ですが、正面に垂直のガラス面がありません。

下部の換気はレンガ造りの壁に設けられたスイングシャッターによって行われ、上部の換気は棟にヒンジで取り付けられたガラス窓のサッシによって行われます。

正面の壁の高さは約 4フィート 0インチ (1.2m) が適切です。これは、栽培ベッドなどを置くための棚を設置するのに十分な高さであり、また、ガラス面近くで育てられるブドウの木などを植えるためのボーダーやハウス内の栽培ベッドを高くする際には十分な低さだからです。

図22のハウスは図21と同じ面積でも、いくらか安く建設できます。

図22のハウスは正面の高さが低いので、植物が育つ土壌と屋根の立ち上がりの間に最小限のスペースを必要とする樹木などにとっては有利であることがわかっています。

もちろん、ハウス内の正面付近に栽培ベッドは作らないことが前提です。


別のタイプの立て掛けハウスを図23に示します。

図23. 幅が狭めの立て掛け式ハウス(断面図)

このタイプのハウスは、1つか複数の傾斜角で構成された屋根、換気口が備えられた非常に低い正面壁、および図21, 22と同様に上部に換気窓があります。

メインの最も急勾配のガラス面は、フレーム付きのはめ込みで作られている場合があります。その場合、非常に大量の外気をハウスに入れる必要がある際には取り外すことができます。

このタイプは、ハウス内の後ろ壁側にある果実を保護するのが目的であり、ハウスの幅は狭くせざるを得ません。そのため、ガラスと後壁そばに植えられた果樹の間に最小限のスペースが確保できるよう、屋根は理論的に推奨される(太陽光の最適入射角度)よりも急勾配になっています。これにより、ハウスの主要空間に無駄が生じないようになっています。

このようなハウスは、高さ 2 フィート (60cm) で、地面の6 インチ(15cm) 以内のところまで届く垂直のガラス面を正面に取り付けるとガラス面のすぐ前でイチゴなどを栽培できて、有利な場合があります。

外側と内側にボーダー(栽培区)を設ける場合、できるだけ遮光部分を少なくするために、正面壁の一部に鉄の柱とスレートのスラブを設ける場合があります。 (「レンガ工事」の項を参照のこと)

立て掛け式ハウスにはまた、図22に似ていますが垂直な正面壁が全くなくて、屋根が直に地際から立ち上がっているタイプもありますが、あまり見かけません。

もちろん、その利点は、太陽光線が地面に直接当たることであり、地際から立ち上がっているガラス面の近くのボーダーや栽培ベッドで、丈の低い植物を栽培できることです。

逆に、この事が欠点となる可能性もあります。正面のボーダーや栽培ベッドの土壌を葉陰で保護することができるないかもしれません。場合によっては低めの壁を設ける方がよいこともあるのです。低めの壁が正面にあれば、土壌を日陰にすることができます。

これに加えて、このようなタイプの立て掛け式ハウスでは、通常、上部の通気は可能ですが、下部の通気は困難になります。 この場合、十分に換気する唯一の方法は、ガラス面をサッシにして、垂木と平行に開くことができるようにすることです。

下部から屋根上部へ通気する、この換気方式は、特にハウスが暖房されていて、入ってくる冷たい外気が葉に触れる前にその温度を上げたい場合には、必ずしも適切であるとは言えません。

すべての図(図21〜23)で、ハウスの内側の地面高さと外側の地面高さは同じとして示されています。

しかし、もちろん、この内外の地面の高さを違える必要があるかもしれません。例えば、障害物を最小限に抑えるためにハウスを部分的に低くしなければならない場合や、排水不良やストークホールを必要なだけ下げることができない場合など、ハウスを高くしなければならないことがあります。

また、建築上、内側の地面高さを外側の地面高さよりも大幅に高くする必要がある場合があります。ハウス内部の地面から屋根の立ち上がりまでの高さを増やすことなく、見た目の良い外観にしたい場合がよくあるからです。

この場合、ハウス内側の地面高さは小さめの壁の高さにして、外側の地面高さはそれより 2フィート 6インチ  (75cm) または 3 フィート (90cm) ほど低くなるようにします。その結果、ハウスの正面の垂直高さは外側から見ると 8 フィート (2.4m) ですが、内部の正面の垂直壁の高さはわずか 5 フィート (1.5m) におさえることができます。

また、他の条件が同じであれば、ハウスの地面を低くする方が、ハウスの地面と外部の地面をほぼ同じにするよりも費用がかかるということも忘れてはなりません。土地の排水性に関してよく知っておくことです。

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