三保村の促成栽培法
園藝之友 第3年第5号 (1907年)
温暖な駿河国の三保村で最も古くから促成栽培を始めた紫田氏の方法を記録した記事がありました。「促成筐」というのが低設温床です。フレームは木枠ではなくてレンガか石組だったそうです。一つのフレームの長さは通常の2.4mの1.5倍の3.6m。幅は1.2mと普通。高さは前面が10cm程度、後面が30cmと低めです。「促成筐」12個を駆使して、促成きゅうりを商業生産されています。
発熱材料は、基本の[馬糞・木の葉・わら]の代わりに、牛糞・木の葉とし、人糞尿をかけるのは当時の日本らしいですよね。柴田氏はこれにわらやこめぬかを組み合わせて、入手できるもので大いに工夫されています。現代の庭先で人糞尿や生の牛糞はちょっと勘弁ですし、植物残渣だけ(そういった温床もあります)としても発酵菌などの微生物は得体が知れないので、自宅の庭で発酵熱を利用するのはまだまだ先の技術、あるいは利用されないか、でしょう。
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・場内に12個の促成筐あり。レンガで築いた促成筐と石組み促成筐の2種類がある。木筐は耐久性、保温性に劣ると言う。
・ひと筐は長さ2間(3.6m)、幅4尺(1.2m)。地下1尺2寸(36cm)掘り下げてその内側をレンガで囲む。後方は地上1尺(30cm)まで、前方は地上数寸(10cm程度)までレンガを積む。
床穴に一様に藁を敷き、その上に麦ぬかを入れ、次に牛糞、木の葉を入れ堅く踏む。その上に人糞尿を注ぎ、さらに植え土を約4寸(12cm)の厚さに盛る。3日後に作物を移植する。馬糞に比べて牛糞は発酵が遅いので、通常は馬糞が採用されるが、同地方は暖流と土質の関係で馬糞では発酵が進むのが早すぎるため牛糞を採用している。
植え土は堆肥と砂を7対3の割合で混合。
この促成筐でキュウリを生産している。播種から収穫、販売まで詳しく紹介されているがここでは省略。
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ここ九州では35℃を超える猛暑日も出てきて、温床の話も暑苦しくなってきました。
涼しくなってから温床を利用したインゲンの促成栽培の記事をメモしたいと思っています。
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