本項は英語で"Staging"となっています。植物の栽培や鑑賞用の置き台のことのようですが、現代風に「栽培ベンチ」としました。観賞用だと「ステージ」の方がぴったりくるのかもしれませんが。。。各種栽培ベンチの寸法まで事細かに書かれていて、当時の意匠的なこだわりが感じられます。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
栽培ベンチ
植物を地面より高く持ち上げる必要がある場合、そのための栽培ベンチは状況に応じてさまざまな材料で作られます。
木製の栽培ベンチ
植木鉢を支え、排水し、湿気がたまらないような栽培ベンチがほしい場合は、通常の厚板、たとえば 3 インチ x 1 インチの材木を1 インチ間隔であけてスノコにしたものに、短い間隔で支え棒を付けた格子細工が最適です。適切な長さの脚かレンガを支え棒とします。
これが「木製スノコベンチ」と呼ばれるものです。
栽培ベンチを計画する際は、スペースの節約と利便性を検討してください。1 つの通路で十分なら、通路を2つ設ける必要はありません。
ベンチは手が届かないような幅にしてはいけません。
ベンチとガラス面の間の距離をよく確認してください。
栽培する予定の植物の種類と高さにも注意してください。
栽培ベンチの計画の良し悪しは、こういった点すべてに注意を払っているかどうかによって決まります。
どの場合も、それぞれのメリットに基づいて決定する必要がありますが、次のヒントが役立つでしょう。
両屋根ハウスの栽培ベンチ。
幅が最大 12〜 13 フィート (3.6〜3.9 m) の両屋根温室では、中央に 1 本の通路を設け、その両側に平らなベンチを配置するのが最も経済的です(図 73 を参照)。
平らなベンチの最も便利な高さは床面から 2 フィート 6 インチ (75 cm) 、つまり通常の栽培ハウスの側面のガラス窓を支えているレンガ造りの側壁の高さとほぼ同じです。
通路が 2 フィート 9 インチ (82.5 cm) の一定の幅で、各側面の 幅9 インチ (22.5 cm) の壁に 4 インチ (10 cm) 幅の木組みの窓枠が施工されていると仮定した場合の最も経済的なベンチ幅は表 XII のとおりです。
通常の植物であれば4 フィート 9 インチ (142.5 cm)が平らなベンチで手が届く幅の限界です。
庭師にとって、手が届く範囲を越えると植木鉢や植物の世話が面倒になるだけでなく、側面の換気窓に同時開閉ギアが付いておらず別々に開けなければならない場合、各サッシの「セット オープン」が異常に長くなってしまい邪魔になります。さもなくば、庭師の腕が痛くなり、機嫌が悪くなるでしょう。
幅が 12〜 13 フィート (3.6〜3.9 m) を超える両屋根ハウスの場合は、必ず 2本の通路が必要です (図 74 を参照)。
すなわち、両サイドに2つと中央に1つの栽培ベンチができます。中央の栽培ベンチは最も便利で、必要に応じて平らなベンチにも段状のベンチにもできます。
各通路幅が2 フィート 9 インチ (82.5 cm) で、側壁の木枠部分の幅が 4 インチ (10 cm) だとすると、中央の栽培ベンチと両サイドの栽培ベンチに割り当てることができる寸法は表 XIII のようになります。
表 XIII. 大型両屋根ハウスにおける栽培ベンチの寸法
両サイドの栽培ベンチは通路に十分な頭上スペースを確保できる幅が必要です。ハウスの軒の高さが 5 フィート (1.5 m) で、屋根の傾斜が 1 フィート (30 cm) あたり 6 インチ (15 cm) 以上である場合、2 フィート (60 cm) 幅のサイドベンチであれば、隣接する通路の中央で約 6 フィート 6 インチ (205 cm) の頭上スペースを確保することができます。
段状の栽培ベンチの寸法については後で説明します。
1 つの両屋根温室が別の温室と直に繋がっている場合、または内部の配置が許す場合は、図 74 の両端に示すように、2 つの通路を 1 つに収束させる必要はなく、連続させることができます。これにより、ベンチのスペースが節約できます。
この配置は、図 74 を 1 つの温室ではなく、点線で仕切りとドアによって区切られた2 つの温室と見なすと、より明確になります。
片流れ屋根(立て掛け式)ハウスにおける栽培ベンチ
片流れ屋根(立て掛け式)ハウスの栽培ベンチを計画するにあたり、非常に便利な方法が図 75 に示されています。
この図では、前面に平らな栽培ベンチがあり、端まで続いています。後壁には別の平らな栽培ベンチと段状の栽培ベンチがあります。
いずれにしても、前面のベンチを広くしすぎるのはお勧めできません。また、段状であっても、後ろのベンチが屋根のガラス面から離れすぎてしまう可能性があります。
片流れ屋根ハウスの長さが短すぎて前面のベンチを端で折るのが難しい場合は、図 76 に示すように、前面のベンチと後ろのベンチを同様にまっすぐに配置してもかまいません。
通路の幅を 2 フィート 9 インチ (82.5 cm) 、前面の壁で木枠が占める幅を 4_1/2 インチ (11.25 cm)とすると、表 XIV はさまざまな幅の片流れ屋根ハウスにおける前面のベンチと後壁のベンチに適した寸法を示しています。
もちろん、幅の広い片流れ屋根ハウスでは、後壁のベンチの後ろの部分にもアクセスしやすいように、前面だけでなく後壁にも通路を設ける必要があるかもしれません。
その場合、通路は後壁に直接接している方がよいでしょうが、そこに占める栽培ベンチのスペースを完全になくす必要はありません。通路から張り出したヘッドライン上の小さな棚が後ろのベンチの上部にあると非常に便利です。
同じ一般的な注意事項が、3/4 スパンハウスの栽培ベンチの設計にも適用できます。
段状の栽培ベンチ
特に片流れ屋根(立て掛け式)ハウスでは、はしご、階段、または段状のベンチを地面から棟まで同じ幅の多数の小さな段で作るのが過去に流行しました。
これを今でも適切だと考える庭師もいるかもしれませんが、一般的には段の数は少なくして、上に行くほど幅を広くする方が有利であることがわかっています。
そうすれば、スペースを節約し、さまざまなサイズの植木鉢や植物をうまく配置できます。
後部の段状のステージの最初の段は、床面から 2 フィート 6 インチ (75 cm) の高さにするなどして、前面の平らな栽培ベンチと同じ高さにすることもあります。
それに続く段は6 〜 9 インチ (15〜22.5 cm) ずつ高くしていきます。
ただし、この点については、置く植物の高さなどに大きく左右されるため、一般的な規則を定めることはできません。
通常、段状のベンチの傾斜は屋根の傾斜ほど急にする必要はありません。前に草丈の低い植物を、後ろに草丈の高い植物を配置すれば、樹上の葉のラインは屋根とほぼ同じ傾斜になります。
植物の生育条件、屋根の傾斜、ハウスの幅などに応じて段状のベンチの寸法も変えなければなりません。
なお、表 XV は一般的に片流れ屋根のハウスの段状のベンチがどのような構成になっているかを示しています。もちろん、前の項の最後で説明したように、後ろに通路を設けずに、このような段状のベンチを後ろの壁まで伸ばすことが望ましいとした場合を仮定しています。
後ろのベンチの端を折る必要があるけれども、ハウスにそのための長さが足りない場合は、段数を減らすのがよいでしょう。
表 XV.—片流れ屋根(立て掛け式)ハウスにおける段状ベンチの寸法
片流れ屋根ハウスでは16 〜18 フィート (4.8〜5.4 m) といった幅が必要になることはめったにありません。
両屋根ハウス用の段状ベンチは取り扱いがかなり簡単です。
通路に向かって両側に下りていく段となるため、このような段状の栽培ベンチは手が届きやすいものとなります。
片流れ屋根ハウスの段状のベンチのさまざまな条件に関する注意事項は、両屋根ハウスの段状のベンチにも当てはまりますが、一般的な用途には表 XVI の寸法が適切であることがわかっています。
注意: 実際のベンチ全体は両側に段を形成するため、下の各段の幅の 2 倍に 最上段の幅を加えたものが中央の栽培ベンチの幅に等しくなります。
上記の栽培ベンチはすべて、ガラス屋根面の傾斜ラインとある程度まで対応しています。ただし、一部のコンサバトリーや花室の型ではガラス屋根面の傾斜ラインと対応しない場合もあります。
花を列状に見せたいけれども、それを純粋に自然な方法で作り出せない場合は栽培ベンチの最上段をガラス窓下の 2 フィート (60 cm) の高さの低い壁の上に置き、続く各段を地面に近づけるように下げていきます。この場合、栽培ベンチの傾斜方向は屋根の傾斜方向と反対になります。図 77 は、このベンチ配置を施工した八角形の小さなコンサバトリーを示しています。
このコンサバトリーの内部幅が 12 フィート (3.6 m) の場合、各段幅は 9 インチ (22.5 cm)で、中央に 5 フィート (1.5 m) の幅の舗装スペースが確保されます。
コンサバトリーのこのタイプのベンチの段は、栽培ハウスのベンチの段よりも幅が広くて、高さ方向の間隔は狭い方がよいでしょう。そうすることで、エッジによって形成される鋭いラインがそれほど目立たなくなります。
このような栽培ベンチに木製の脚を付ければ、前方の脚は回転させることができます。
温水パイプや空きスペースを隠すために木製の格子(ラティス)を栽培ベンチの前方に固定することがあります。
段状のベンチが多数の狭い段で作られている場合、図 78 の断面図に示すように、多くの場合、支えがあります。
より広い段の場合、図 79 に示すようにとても優れた方法になります。
固定ベンチ
多くの場合、縁に細長い帯を付けたスレート、石、またはコンクリートの棚を頻繁に使用する場合、植木鉢は湿らせておくことをお勧めします。
このクラスの栽培ベンチ、すなわち、すでに説明した通常の平らな格子状のスノコベンチは非常に安価で簡単に構築できる方式で、縁の周りを丸くして内側を亜鉛板(たとえば No. 20 B.W.G.)で裏打ちすれば非常に浅い防水ボックスができます。
ボックスの角や適切な間隔に穴を開け、余分な水分を排出するように栽培ベンチをこれらの穴に向かってわずかに傾斜させるようにします。
この浅いボックスに砂、細かい砂利、苔、またはその他の適切な材料を詰め、植木鉢をこの湿っているが水はけのよい上に置くか、または、このベンチを乾いた状態で使用して、洗った砂利または小石の薄い層の上に置き、栽培ベンチを満たすことができます。この砂利または小石は、鉢からの排水のための媒体となります。
この栽培ベンチは常に非常にすっきりとした外観で、安価であり、その木組みは、植木鉢の排水が滞らなければ腐りにくいです。
補足しますが、非常に重要な栽培ベンチは「イチゴ棚」です。
これは(必ずしもイチゴに限定されるわけではありませんが)ガラス面近く、前面のガラス窓の近くや両屋根ハウスの屋根の頂点の近く、または片流れ屋根ハウスや3/4スパンハウスの後壁の棟高さ近くに設置する必要があります。
このような棚に置かれた植木鉢は、過度の太陽光線から保護することが強く望まれます。これを行う簡単な方法は、イチゴ棚の片側または両側に、鉢とほぼ同じ高さの垂直の板を固定し、必要に応じて内部を亜鉛板で覆うか、そのまま使うかにして、こうしてできたボックスには排水穴を設け、必要に応じて湿った苔で過度の日射から鉢をさらに保護するようにします。
栽培ベンチが石、スレート、または亜鉛で覆われていて、暖房用の加熱パイプを通路の片側に配置する必要がある場合、片側のベンチの支柱を前面に少し引っ込めて、加熱パイプが邪魔にならないようにすることが望ましい。
一方、加熱パイプが外壁の横に設置され、栽培ベンチの前面が壁で支えられているなら、ベンチの下に多かれ少なかれ区切られた空間ができます。その場合は、熱がベンチを経由せずにハウスの内部に到達するように、外壁だけでなく内部にも換気装置を設置して空気の流れを作ることをお勧めします。
「キノコ栽培ハウス」の項( 80 ページ)に、こういったハウスに必要な棚の説明があります。
装飾用の鉄製ベンチ
装飾用の鉄製ベンチは栽培用ハウスにはほとんど不要で、主にコンサバトリーでのみ使用されます。
「展示ハウス」の 記事(63 ページ)で述べたように、展示目的で収集された植物や花は、できるだけ自然な方法でグループ化し、ベンチ方式を栽培ベッドやボーダーに採用しないでください。
コンサバトリーで栽培ベンチがどうしても必要になった場合は、装飾用の鋳鉄を使用しても問題ありませんが、塗装をしっかり行い、高くせず、目立たないように、できるだけ葉で隠れるようにする必要があります。
木製の格子状のベンチは鉄製よりもはるかに安価で、手入れをすれば長持ちし、著者の意見としてはあらゆる用途に応えるものです。
木製、スレート、石、またはコンクリート製の栽培ベンチの下のスペースは光がなくても熱を必要とする植物のためにしばしば利用されますが、鉄製のベンチの下に置かれた植物は錆びの滴りによる損傷を受けるものと考えなければなりません。
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