現代の換気窓の開閉は自動制御可能で、ガラス温室だとラックアンドピニオンのギア、プラスチックフィルムのトンネルハウスだとくるくる巻き上げ機、家庭用の小さなハウスだと形状記憶のウィンドウオープナー、が浮かびます。150年くらい前の本書に書かれている“セットオープン”は形状記憶なしのウィンドウオープナーといったところでしょうか。ラックアンドピニオンはあまりお勧めされていないようです。どれも人力が必要で大変そうです。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
窓ガラスの開閉装置
開閉装置とは、ハウスの屋根の窓ガラス(天窓)、側面の鉛直の窓ガラス(側窓)などに付けられた換気装置で、1 回以上の操作で開ける装置を指します。
窓ガラスの開閉装置は他の装置同様、最も単純な操作で動作するものが最良であることがわかります。
セットオープン
垂直にスイングする窓ガラスを個々に開ける装置は、通常“セットオープン”のことです。窓ガラスの中央、上部、側面どこを支点にスイングするかに関りなく、通常のセット オープンは鉄製のアームまたは四分儀で、固定した垂直ピンに引っ掛けるための穴か、間隔をとって切り込みがつけられているものです。
セット オープンのアームの長さは、アームの位置や窓ガラスの前に置かれた栽培ベンチが幅広いか狭いかによって決まります。
栽培ベンチがなく、通路が垂直のガラス窓のすぐ近くにある場合、セット オープンはスイベル ジョイントを使っているので、開口部を閉じている時にアームが方立(ほうだて)または窓の下枠近くまで迫っても通常、支障ありません。
栽培ベンチを窓ガラスの前に設置する場合、セット オープンは常に開口部に対して直角になるようにしておく必要があります。そうしないと、セット オープンを伸ばした時にベンチ上の鉢を置くスペースを占拠してしまうからです。
天窓を個々に開く場合、各窓ガラスに穴の付いた四分儀で固定することができます。
穴に取り付けたひもを垂木または主梁に固定した小さな滑車に通して動かすだけで、窓ガラスを開くことができます。
必要に応じて、ひもの端にカウンターウェイト(釣り合い重り)を取り付けることもできます(図 71 を参照)。
あるいは、ひもを後壁に取り付けた滑車に通して都合のよい長さで固定するか、カウンターウェイトで留めます。
開閉装置を必要としない小さな施設を除き、スライド式の窓ガラスは現在、ヒンジ付き換気装置に取って代わられ、事実上無くなっています。したがって、スライド式の窓ガラスの開閉の配置について、ここで説明する必要はないでしょう。
一斉開閉ギア
複数の垂直窓を一斉に開閉する最も一般的で最適な方法は、各方立に固定した小さなベアリングにロッドを通すことです。ロッドには、適切な間隔で、たとえば各窓に 2 本ずつ、エルボジョイントの端を固定し、もう一方の端は窓の下部のレールに取り付けます。
ロッドを部分的に回転させると、エルボジョイント全体がまっすぐになります。まっすぐになることでサッシが開く仕組みです。
ロッドを作動させるには、サッシの開き具合を調整できるように穴を開けた鉄の円弧に沿って動くレバーを、ロッドの任意の都合の良い位置にねじ込むだけです。
また、栽培ベンチ、栽培ベッド、またはボーダーが窓ガラスの前にある場合、ロッドを使用して、レバーを任意の都合の良い位置に固定すればよいのです(図 72 を参照)。
この図のエルボ ジョイントは、ロッドに固定された歯車付きのピニオンで動作するラック セット オープン(ラックアンドピニオン)よりも優れています。
窓ガラスが閉じているとき、このような“ラックセットオープン”はハウスの中にロッドが突き出るので植物や花に当たりがちです。一方、エルボジョイントは閉じているときも開いているときも、植物や鉢に接触することがありません。
ギアの接続部分に「遊び」が生じないように注意する必要があります。そうしないと、風で窓ガラスがガタガタと鳴り、大きな問題が生じる危険があります。
上記のレバーと四分儀の代わりに、特に駆動力が必要で速度を犠牲にする場合は、回転ロッドを作動させるウォームアンドピニオンを使用することがあります。
しかし、実際には、どうしてもウォームアンドピニオンが必要な場合を除き、レバーギアが好まます。ピニオンがウォームに対して摩耗して、しばらくすると、わずかな不快な「遊び」が発生することがほぼ確実だからです。
ここまでは、垂直の窓ガラス(側窓)に関して説明しましたが、屋根やその他のヒンジ付き換気装置についても同様です。
一斉開閉装置の強度は、開閉する窓ガラスの重量に合ったものにすることを忘れてはいけません。
窓ガラスが重くバランスが崩れやすいほど、操作に必要な力は大きくなります。
ロッドに埋め込まれたキー溝または止めねじのいずれかによって、セットオープンがロッドに沿ってしっかりと固定されているよう注意する必要があります。そうしないと、セットオープンの一部がわずかに位置を変える可能性があります。
この場合、すべての換気窓、すべての部品が同時に閉じなくなります。フレームに力がかかって歪み、大きな不都合が生じることとなります。
換気窓の一斉開閉を実現するために、さまざまなメーカー会社がさまざまな工夫をしていますが、通常、上記のシステムが最も有利であるとして採用されています。
時には、チェーン ギアによって操作者が換気装置を一斉に開閉することも可能ですが、芝刈り機、牽引エンジン、またはあらゆる種類の動力を伝達するチェーン ギアを扱う経験が豊富な人なら、園芸施設にそれを導入することに躊躇するでしょう。
一斉開閉ギアの使用
一斉開閉のギアは慎重に使用する必要があります。
通常、垂直の窓ガラス(側窓)に簡単に手が届く大きさの小規模や中規模のハウスでは、一斉ギアは役に立たないどころか悪影響を及ぼします。
風向きの影響やハウス内の特定の場所の植物を外気の直撃から護る必要があるため、特定の換気窓だけを開けて、近くの換気窓は閉じたままにしたほうが良いことがよくあります。
一斉開閉ギアを使用する場合は、一定数の窓ガラスを同時に同じだけに開けることになります。
垂直の窓ガラス(側窓)が通路から少し離れていて、手が窓ガラスに届くにはブドウを植えたボーダーを踏む必要がある場合、促成栽培ハウスの栽培ベッドが 4 フィートまたは 5 フィート幅の場合、ハウスの栽培ベンチが通路と窓ガラスの間にある場合は、長くて扱いにくいセットオープンを各窓ガラスに設置するか、または、より望ましいのは、一斉ギアを使用するべきです。
連続する複数の換気用の窓ガラスをまとめてフレーム化することもあります。
この場合、一斉ギアは個別の窓ガラスと同じ方法でフレームに取り付ける必要があります。開口部のベアリングが少なすぎると、フレームがどうしても歪んだりねじれたりします。
前壁にある垂直の換気窓では、窓ガラスをまとめてフレーム化することは、将来的に窓ガラスを個別に開く可能性があるので、好ましくありません。
このことは屋根の換気装置(天窓)には当てはまりません。屋根の換気窓を個々に開閉する必要性はほとんどないからです。
通常、1 つの用途に限られる、仕切りのない長い園芸施設を除き、上部または下部の換気窓を約 20 ~ 25 フィート(6 ~ 7.5 m)以上にわたって同時に開くような換気はお勧めできません。
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