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2025年3月15日土曜日

19世紀末の園芸施設:32. 遮光

  昨年の夏は暑かった。。。温暖化でこの傾向が続くなら、遮光(ひよけ)はますます重要ですね。

本項では主に温室の外部に遮光カーテンを設置する方法が述べられています。外部遮光は暑熱対策の理に適う方法ですが、台風が来る日本では安易な付けっぱなしに要注意ですね。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

遮光

強い太陽光線を和らげたい場面は頻繁にあります。
そのため、外部遮光、内部遮光、恒久的な遮光、一時的な遮光、ブラインド、白塗り、ペイント、半透明または波形ガラスの使用など、さまざまな方法があります。

恒久的な遮光

原則的には、恒久的な遮光が一時的な遮光ほど有利であるとは言えません。なぜなら、固定された日よけは真夏には非常に適しているかもしれませんが、太陽光線をすべて取り込む必要がある時期もありますから。

もちろん例外的にシダなどの植物を栽培する場合はこの規則に当てはまらないこともあります。シダなどは、自然状態で片隅や谷間、密集した茂みの下で繁茂するからです。

その場合、恒久的な固定化された遮光は推奨されないだけでなく、必要不可欠でもありません。
最も優れた恒久的な遮光材は「ハートリーのロールプレート」と呼ばれる、厚さが 1/8 〜 1/4 インチの遮光ガラスです。

不透明に見えるのは、ガラスの片面が波状になっているからです。
ガラス面が凸凹している場合、少し離れて見るとそれがまだら模様や不規則模様のように見えるものもありますが、表面全体がかなり規則的な凸凹だと、そのガラスは非常にすっきりと美しく見えます。

着色ガラスによる恒久的な遮光も、栽培のために必要な日射の熱線と光線がハウスへ十分透過し、過剰な熱線は遮断するという観点から、多方面で提唱されてきました。
が、このアイデアは、まだ実験段階から実用・商業利用段階へと至っていません。

ガラスの内側または外側に白漆を「塗布」するのは見苦しいものです。
内側に塗りつけると、かん水(シリンジ)で植物に白漆成分が滴り落ちる恐れがあり、外側に塗り付けた場合は雨で流されてしまいます。

白漆のガラス面への接着性を向上させることはできますが、接着性の向上と必要なときにガラスや木工品から白漆を剥がすのが難しくなるというデメリットをバランスさせなければなりません。

この塗布が唯一の望ましい手段である場合は必要な濃度になるまでテレピン油で薄めた白鉛塗料が適しています。ただし、この塗料はガラスの外側に塗った場合、最初の霜でほとんどが消失してしまうことに注意する必要があります。

一時的な遮光

スクリーン(カーテン)による遮光では、複雑な機構は避けてください。
スクリーンは、効率性を考慮して、できるだけシンプルにすべきです。

スクリーンの動きを一定の長さに伝えるための装置、すなわち、チェーンで動く滑車と車輪、不思議な見た目の複動ロッドやベベルピニオンなど、これらはすべて見た目は美しいかもしれませんが、雹、雨、風の嵐が予期せず来れば、ほぼ確実に壊れます。

あるいは、そのような災害に耐えたとしても、始終受ける湿気や大気の作用はより静かではありますが、厳しいものです。その影響から逃れられる可能性は低いでしょう。

コンサバトリーの屋内または屋外の垂直面の遮光は、ベネチアンブラインドで簡単に実現できることが多く、特に遮光するエリアが広い場合は、通常のロールスクリーンまたはスプリングローラータイプのスクリーンを使用します。南アフリカのグラスカーテンもこの用途に適しています。それらは芸術的で軽く、日光や雨で傷むことはありません。

栽培ハウスでは植物は屋根にできるだけ近づけて置かれ、正面のガラス面の高さは非常に短い(高さ 2 ~ 3 フィート以下)ので、垂直面の遮光は一般に不要です。

したがって、屋根のスクリーンに、より多くの注意が必要です。

屋根の外側をロールカーテン(ローラー式のスクリーン)で遮光する場合は、装置全体がそれほど手間をかけず、無理せずに、冬の間巻き取って乾燥した場所に置けるようにする必要があります。

スクリーンを巻き込むための棟の雨よけの収納ボックスは、ほぼ毎日スクリーンが必要な季節には優れた保護具となりますが、冬季にはリスクとなります。

この箱は必ず残しておきますが、遮光が必要ない季節が近づいたらスクリーンを取り外しておきます。
冬の間スクリーンをずっと箱に入れっぱなしにしておくと、湿気が入り込み、スクリーンは腐り、いつの間にか故障し、急に必要になったときに役に立たなくなります。

シンプルな巻き上げ式のスクリーンは屋根の遮光に最適です。
このタイプのスクリーンは屋根の棟に設けた縦長の箱の中のスプライン(薄い木板)またはロッド(竿)に固定します。

スクリーンを完全に開けた場合、スクリーンは必要な長さまで垂れ下がり、その下端がローラーに固定される仕組みです。ローラーを回転させると、最小限の摩擦でスクリーンを屋根に巻き上げることができます。

このローラーを作動させるために、一端に幅広のフランジ付きの木製滑車が固定されており、その周りにコイル状にコードひもが巻かれているタイプもあります。

このコードひもの一端は屋根の棟にある小さな滑車を通してあり、コードが引っ張られるとフランジ付き滑車からほどけていいきます。このほどける動作によりローラーが回転し、スクリーンが巻き上げられます。

この方法は単純ですが、滑車と反対側のローラーの端はスクリーンを非常に緩く巻き上げるので、スクリーンが不規則に巻き上げられることがよくあります。

ローラーを作動させるとても優れた方法を図 87 に示します。

図87. ローラー式スクリーンの作動モードを示す平面図。

この図は、屋根のスクリーンが開いた時の平面図です。 F A がスクリーンの端で、ローラー G H は屋根の下部にあります。

コードひもの一方の端は A で棟に固定され、スクリーンの下を通って底部まで行き、ローラーを回り、スクリーンの上を通り、B の滑車を回り、次に 別の滑車 C へとつながり、スクリーンの上を通り、D で地面に十分近く人の手が届きやすい位置まで行き、スクリーンの上を E まで行き、滑車を通り、スクリーンの上を通って、ローラーを回り、最後にスクリーンの後ろの固定点 F まで到達します。
D に掛かっている二重コードを引くと、ローラー G H が回転してスクリーンを屋根に巻き上げます。

スクリーンの端の片側がもう一方の端よりも早く上がる傾向がある場合、D で二重コードの一方をもう一方の端よりも強く引くことで、この偏りを簡単に調整できます。

二重コードはスクリーンの D 以外のどの位置にも降ろすことができます。装置の効率は変わりません。

もちろん、ヒンジ付きの跳ね上げガラス窓によって上部の換気が行われる場合はスクリーンを棟まで伸ばすことはできません。その手前で止めて、上部の換気口のすぐ下にスクリーンの収納ボックスを配置する必要があります。

横方向 (垂木と平行)に換気口がある屋根の場合は、当然、換気口間のスペースにのみブラインドを取り付けることができます。

スプリング式のスクリーンは屋外用にはお勧めできません。遅かれ早かれ、必ず故障します。

ハウス内には誘引ワイヤー、誘引支柱、つる性植物などがあるため、スクリーンを屋根の内側に固定することはめったにないので、内張のスクリーンについて議論する必要はないでしょう。

さらに、スクリーンを内側に配置するのがまったく便利であっても、遮光本来の目的を達成できなくなります。なぜなら、過度の太陽熱線がガラスに到達する前に侵入を防ぐのではなく、ハウスの内部に届くようにしてしまうからです。

多くの場合、最も便利なスクリーンの方式は、端にリングを付けて、半円形のひっかけフックを必要な場所に木工で簡単にねじ込むことができるようにしたスクリーンです。

このようなスクリーンには大気にさらされて故障する可能性のある部品はありません。それほど大規模でない場合は、スクリーンを簡単に取り外しできます。そして保管スペースもほとんどとりません。

実際、屋根のどの部分も長方形でないことが多いコンサバトリーの場合、このようなスクリーンが絶対に必要です。

もちろん、取り外しに庭師の余分な労力がかかることから、この種のスクリーンを設置することを怠る危険性はありますが、そのような余分な仕事が避けられないとわかれば、庭師ほど喜んでそれを実行する人はいないでしょう。

通常の屋外スクリーンに最適な素材の 1 つは、ティファニーの 品番4 です。

遮光は、太陽光線を穏やかにするだけでなく、太陽光線を完全に遮断する場合も有効です。キノコハウスや果物室から光を遮断する時にも注意が必要です。
すなわち、これらの施設に窓がある場合は、引き戸やその他のシャッターで注意深く遮光する必要があります。

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