温室の19世紀における最も特徴的な進歩は暖房技術でしょう。本書でも暖房について多めのページを割いています。しかし、自動制御は全然ないので、現代とは隔世の感があります。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
様々な暖房方法 I
暖房は非常に広範なテーマであり、もしすべて網羅しようとすれば、本書で扱える量をはるかに超えています。
本稿では、園芸で用いられることはあるものの、通常は用いられない暖房システムについて言及し、それぞれの要点を述べることにしましょう。次に暖房に関わるいくつかの原理を述べ、最も一般的に採用されているシステムを解説し、そのシステムを構成する様々な要素について、順に論じていきます。
園芸目的で人工的に熱を得る方法としては、発酵資材、煙道、燃焼ストーブ、ランプ、ガスストーブ、高圧温水、蒸気、低圧温水などが挙げられます。
発酵資材
発酵資材による暖房はエンジニアの仕事ではなく、庭師や耕作者の領域に属すると考えられるため、ここでは取り上げません。
煙道
煙道は、単純に火炉と煙突を通路でつないだもので、暖房したい空間の近傍へ熱風を導きます。
熱風は火炉から煙突へと流れていく際に、通路を構成する材料(通常はレンガ)を加熱し、加熱されたレンガが次にその周囲の空気層を加熱します。
加熱された周囲の空気は上昇し、そこに冷たい空気がとって代わって加熱されては上昇します。このプロセス(熱伝導と対流)は、炉が熱を作り、まだ加熱されていない空気が周囲にある限り、継続します。
熱を持ったレンガはまた周囲の物体に熱を放射します(熱放射)。
煙道は急速に時代遅れになりつつあります。その主な理由(短所)は以下のとおりです。
接合部にひび割れが生じやすく、燃焼生成物が加熱されてハウス内に入り込み、植物に悪影響を与えます。
煙は華氏800度(摂氏約270度)まで加熱される可能性があり、そのような場合、煙道からの放射熱が集中すると植物が焦げてしまう危険があります。
熱の集中するところができる危険に加え、予想外の高温は空気を過度に乾燥させ、葉の生育を阻害するなどが危惧されます。
煙道は、重要なきめ細かな園芸作業でしばしば求められる繊細な温度調節や制御を行うことができません。煙道での暖房作動は不安定になりがちです。
多数の火炉がない限り、広大な一連のハウス群を効果的に暖房することはできません。
炉がひとつだけの煙道で、隣接する複数のハウスをそれぞれ暖房することはほぼ不可能だからです。
実際、たとえ他の条件が同じであったとしても、温風は温水のように効果的に制御できないと想定するのはもっともなことです。
煙道の内部には煤(これは熱伝導を非常に低下させます)が付着しがちです。
この煤を常に除去しておかないと、レンガが熱を吸収できなくなります。
また、必要以上に熱を吸収したり放射したりする煙道は燃料の無駄遣いと言えるでしょう。
一方(長所としては)、他の条件が同じであれば、煙道の初期費用は、効率的な温水暖房装置の初期費用ほど高くはなりません。
同量の燃料から得られる熱量は、温水装置よりも煙道の方が多くなります。なぜなら、適切な操作を行えば、煙道の空気は温水暖房装置の熱水ボイラーほど高温にする必要はないからです。
煙道の表面積は大きいので、表面積が小さい熱水ボイラーよりも燃焼熱をより多く吸収するはずだからです。
煙道にはこのような長所がありますが、短所による弊害がそれを上回るのです。
熱風の燃焼ストーブ
これには多くの種類がありますが、おおむね次の3つのグループに分けられます。;
—燃焼生成物と熱風を暖房対象の室内に排出するもの
—燃焼生成物は煙突から排出し、ストーブ本体からの熱放射を利用するもの
—新鮮な外気をストーブの放射面に接触させて加熱し、室内に送り込むもの
煙道に対する否定的な意見の多くは、一般的な園芸用ストーブにも当てはまるものです。
・熱は均一に分散せず、集中しがちです。
・過度の乾燥と高温を生じるおそれがあります。
・一部のストーブでは、有害な燃焼生成物が室内に漏れ出すおそれがあります。
・明らかに、通常の煙道ほど燃料効率が良くありません。
・発生する熱は容易に操作や制御ができません。
しかし、小さな園芸ハウス(霜を防ぐことだけが必要なタイプから)、馬具室、厩舎などでは、温水暖房設備は複雑で高価すぎますが、ジョイス社の製品のような、植物に有害な煙を発生させないように処理した炭を燃やす燃料ストーブなら使用が可能でしょう。あるいは、図91に示すようなゆっくりと燃焼するタイプのストーブがおそらく最適でしょう。
このストーブは耐火粘土で床と周囲が覆われていて、開放型の火格子の代わりに自在に開け閉めできるスライド式の吸気口が下部に設けられています。このストーブには煙突が必要です。
0 件のコメント:
コメントを投稿