園藝之友 第2年第6号 (1906年)
促成栽培(四)
促成栽培シリーズも第4回となって、概念的なお話から実務的な記事になってきたので引用。温床についての解説です。いきなり温室を建設というのは高価すぎるので温床を利用した商業経営が現実的だったと思われます。---第2年3号に類似の簡易温床の記事があり、冬の間でも「パンジー」「プリムラ」「ヒヤシンス」「ゼラニウム」「バイオレット」等の開花を見ることができるとあります。
「低設温床」と「高設温床」の2通りが紹介されていますが、違いは発酵熱材料(馬糞、落ち葉、敷き藁)を穴を掘って入れるか地上に置くか、です。どちらもガラス戸の蓋付きで、やや南面に傾斜のついた木枠フレームをその上に置きます。これを現代利用しようとすると、発熱や衛生面の管理にかなり手こずるんじゃないかと思います。そもそも未発酵の馬糞なんて、厩舎の近所じゃなくちゃ入手できないし。今の家庭だと生ゴミコンポスト作りの時の発酵熱利用ということになるでしょうが、菌の衛生管理がかなり心配。不用意に危険な菌を吸い込む恐れも。
そのため私たちは電気や燃油で加温している。安全で正確な発酵コントロールができる21世紀の温床が実現すれば環境に優しいだろう。けれど、これは科学的には結構複雑で難易度の高い研究テーマではなかろうか?
--------(以下、引用部)---------------
「低設温床」は西洋より伝わった方法で、地中に穴を掘ってその内に発熱材料を入れ、上部にガラス戸の木枠フレームを覆って発熱させ、種子を播種、発芽、生育させる方法である。
「高設温床」とは我が国の在来法であって、東京府下砂村、京都馬関地方等において慣行されてきたものにある。その方法というのは、従来のものは地上に板囲い、または藁囲いをし、その内に発熱材料を盛り、油障子の類で覆って播種・発芽・生育・開花させる方法である。世に改良版として紹介されているものは油障子の代わりにガラス戸とし、板囲いまたは藁囲いとして地上に露出させる代わりに地下に穴を掘って被框したものを改良の結果得たとしている。我々は一般的に用いられている低設と高設温床の方法を解説し、その利得を述べて世の識者に問いたいと思う。
(甲)低設温床
平地を掘って深さ30〜75cm、幅1.2m、長さ2.4mの穴を掘り、底面は平にして馬糞、木の葉、敷き藁の混合物を積むこと30〜60cmとし、その上に前年に温床に使用した腐朽土またはゴミ捨て場の腐朽土をフルイにかけたものを積むこと9〜15cmとする。こうして地表面とほとんど同じ高さにし、周囲に南面深さ21〜 27cm、北面の深さ36〜39cm、東西はこれに合わせた木枠で覆い、その上に幅0.9m、長さ1.2mのガラス戸を蓋として覆い、夜間と雨天時はコモや古俵等を載せて寒気を防ぐ。
(乙)高設温床
地上に板囲いか藁囲いしたもので、その高さ45cm以上60〜90cm、幅1.8m、長さ2.4m以上のものを通常の大きさとしている。砂村では北側の高さ1.5m、南面の高さ0.9mの板囲いとしている。その他の多くは45cm内外の藁囲いとすることが常である。我々の新設計は従来のものとやや趣を異にして、近頃実験しているものである。その構造は、幅1.2m、長さ2.4m、高さ南面45〜75cm以内、北面は60〜90cm以内とし、平地の床にあたる場所の中央に土を盛って凸状にし、その周囲に木枠を伏せ、低設温床と同じガラス戸で覆い、板囲いの内側に厚さ9cmほど藁を入れ、低設と同様の発熱材料と肥土を載せて播種・開花させるものである。または、底面に厚さ15cmほど藁を敷きその上に発熱材料を置く。
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