低設温床の特徴
園藝之友 第2年第6号 (1906年)
促成栽培(四)底設温床と高設温床の得失
明治時代は温床で商業生産されていましたが、今から見るととんでもない代物で、以下の引用にあるように、急激に温湿度が変化する極小空間(高さ30cm・幅1m・長さ2m程度)で、経験と勘の堆肥発酵との組み合わせ。熟練した人でも一人で管理するのは温床10個が限界だ、と別記事に書いてありました。庭先の趣味の1箱ならわかりますが、商業利用はさぞ辛かったろうと思います。その後、本格的な促成栽培を目指す農家は温床から温室へと急速に移行していきます。
イラストに描いたように、穴を掘って発酵材料を入れるタイプの低設温床の特徴が述べられています。↓↓↓
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低設温床の特徴
低設は穴を掘るのに多くの労力が必要な点が欠点である。低設は雨天続きや降雨後に冷水が地中に浸入することで温床内の熱を急に奪い、温床温度の急激な低下を招き、作物を一夜にして枯死させる。その実例として、冷水の浸入による温床温度の急激な低下と土壌の湿潤化が相まって一晩でキュウリやインゲンが枯死した例がある。また、降雪後の融水の浸入のため温度低下を招き、キュウリやカボチャの苗が枯死した例がある。冬期間、温床栽培の危険性はこのように、雨水は非常に冷涼で降雨が数日に渡り蓋を開けることができない。その場合、暖かく湿潤な空気が温床内に充満するので、キュウリは軟弱徒長し、その後晴天になると日光の直射を受けて葉の周辺が収縮枯死し、結局全体の衰弱を招き、良好な結果をあげることができなくなる場合が少なくない。
低設内の作土は乾燥することが少なく、いったん湿潤になると容易には乾燥させたり適温にすることが難しくなる。底面や側面からの放熱量がどれくらいであるか調査試験で明らかにされたものはないが、我々が厚さ4寸(12cm)の栽培床の温度を測った結果は次の通りである。
表面からの深さ 1寸(3cm) 2寸(6cm) 3寸(9cm) 4寸(12cm)
温度 20℃ 25℃ 28℃ 32℃
常に熱は上昇する性質を持ち、下層の発熱材料からの熱が床土を暖めているにもかかわらず、わずかな深さの違いで実に12℃も温度低下している。すなわち、発熱材料に接している土壌が如何に温床内の熱を奪っているか想像できるであろう。
また、低設は作業をするのが困難で作物の移植は身体を地面に横たえなければ行うことができない不便なものである。
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