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2021年7月25日日曜日

ガーデンウォールの構造と環境

 WALTER NICOL 著「FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER」は、18世紀末から19世紀初頭に出版された園芸書で、ミセス・ラウドンより1〜2世代前になります。1802年に出版された第3版は、以下の構成になっています。

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THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.

「促成栽培、果樹園芸およびキッチンガーデン」

WALTER NICOL 著 第3版、1802

BOOK I果樹および蔬菜の促成栽培:アスパラガス 、葡萄、桃、キュウリ、メロン、パイナップル、桜桃、マッシュルーム、およびイチジク、ネクタリン、イチゴの促成の理解とともに、グリーンハウスの管理

BOOK II:壁栽培と果樹園の果樹

BOOK III:蔬菜、サラダ野菜、ハーブ類

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この暑い時期、BOOK Iの促成栽培(温床や温室)の話題は暑く感じられるので、まずはBOOK IIBOOK IIIからメモしたいと思います。BOOK Ⅰは涼しくなってからのお楽しみ。


BOOK IIの第1章では、果樹の壁栽培やエスパリエについて書かれています。壁栽培は、果樹の寒さ対策として太陽熱を壁の南面で利用することが第1の理由でしょうが、異民族が地続きに住んでいるところは都市自体が城壁で囲まれていたりするので、そういった安心感が根底にあるのでは?と思います。日本だと防風林はありますが、果樹園や菜園だけをがっつり壁(ガーデンウォール)で囲むのは聞いたことがないような(私が知らないだけかもしれませんが)。。。しかし、日本でも現代の増える鳥獣害対策や暑熱対策としての壁面緑化などのヒントにできる点があるかも。

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BOOK II壁栽培と果樹園の果樹

第1章 果樹ボーダーの作り方、壁面、エスパリエなど、果樹の植え付けと仕立て方

 第1節 ガーデンウォールとエスパリエの構造と環境について

これは非常に重要な問題です。寒さから守るシェルター機能や良質の土がない庭は、果物の生産にとっては荒野と同じと言えます。したがって、場所の選択には細心の注意が必要です。

庭がシェルター機能と良好な土壌の両方を備えていることはまれです。 しかし、私からすれば、土壌は、次の理由で、シェルターより備えるのが容易なはずです。完璧な庭では、特に果樹のボーダーにさまざまな種類の土壌が絶対に必要です。 土壌がひどいものだったとしても、数か月の間に何とかその土壌を改善することは不可能ではありません。 しかし、シェルターが必要な場合、たとえ土壌が良くても、生産できるようにするためには何年もかかります。


素晴らしい庭*は確かに大変贅沢なものです。完璧な庭を望まず、果実の収穫を期待しないなら、素晴らしい庭を作り果樹を植える費用を支出する必要はありませんが、ご推察の通り、この国ではシェルターなしで完璧な庭になることは決してありません。土壌は悪いが、寒さから守られた環境の庭の方が、土壌は良いがシェルターのない場所に作られた庭よりも好ましいのはたしかです。土壌は数か月で改善できますが、シェルターはおそらく一生でかかっても改善されないからです。

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*ウィームス城の庭は、樹高30 m の植林地の真ん中にあります。 庭作りと低木のためにその地面が整備されました。 現在、壁の内側にある土の少なくとも半分は畑から運ばれた土です。 果樹のボーダーはすべて完璧に作られており、大体が岩から切り出されたものです。 どれも90 cm以上の深さがあります。 土壌は素晴らしいが環境は悪かったので、シェルターのためだけにこれが作られました。 庭作りは始めてから16ヶ月以内に完了しました。

ウィームス城の庭は、著者のWALTER NICOLが手がけた大掛かりな庭園で、当時の絵(右上側に壁で囲まれた果樹園があります。)や現在の様子をネット上で見ることができます。https://www.wemysscastlegardens.com/about

壁の基礎部は深くしっかりと造られて、ボーダーに植えられた果樹の根が壁の外へ出ないように見えないところも管理されます。

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庭にとって最も幸運な環境は、南、南東、または南西の側面を持ち、壁から約 90 mの距離にある植栽地で四方を囲まれた、緩やかに隆起した丘です。 この場合、庭の幅と庭の長さの比率が3分の2で、長さ方向が東から西に伸びる四辺形にする必要があります。 これは、最も見映えがよく、かつ最も推奨される庭の形であるからだけでなく、 正方形にした場合よりも南側の長さが長くなるからです。 庭が非常に広大な場合は、南北に走る壁でさらに均等に分割します。


前述の植栽地と壁の間には、背の低い低木、歩道、植樹用のボーダー帯を作る必要があります。 四方の壁面は果樹で覆うことができます。


レンガは確かに庭の壁に最適な建設材料です。 石よりも果樹の誘引に適していることと、木に優しいという両方の性質があるためです。壁をレンガだけで造ることができない場合は、少なくともレンガで裏打ち**する必要があります。 しかし、レンガが全く調達できず、壁を石だけで造らざるをえない場合は、一般に見られるような粗く不規則な方法で建造してはいけません。 石を15 cm 以下の層にして、きちんと積むべきであり、表面のある程度の部分は鉄材で覆い、風の強い時に誘引されている木が波打って壁で樹皮を傷つけられないように、ある程度滑らかにしておかなければなりません。

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** レンガで庭の壁を構築することの妥当性について、最近いろいろなことを聞きます。上で述べましたが、レンガは確かに最高の材料です。 この本の初版で、5年前(1797年)に私はそう言いました。そして、かなり広範囲にわたる私の実践経験から、私は今、これに意見を追加しましょう。 黒いホイーンストーン(チャートと玄武岩で構成される石)はレンガの次に好ましいの素材であると、私は完全に納得しています。これはあながち根拠のないことではありません。なぜなら、黒色はどの色よりも熱を吸収し、黒いレンガが優れていることが証明されているからです。 しかし、この種の石は軟石類よりも空隙が少なめです。さらに、レンガは一般にどんな石よりも多孔質であり、その結果、水分をより吸収しやすいことがわかっています。 それはまた、どんな種類の石よりも早く水分を排出することになります。 したがって、おそらく、特別に完璧な庭の最高峰に到達したいのであれば、ホイーンストーンではなくレンガの壁にすべきでしょう!

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