2023年5月14日日曜日

19世紀流菜園の堆肥作り:ウォルター・ニコルのキッチンガーデン

ここでの「肥料」は有機肥料、堆肥のことです(化成肥料が一般に使われるようになる前の時代だから)。

日本だと人糞や魚粕が肥料に含まれそうですが、乳製品や肉の消費の多いお国柄なので人糞や魚にまで手を出す必要はなかった?また鶏糞も記述にないです。

堆肥の病原菌や耐性菌の人への危険性については16世紀同様19世紀も無邪気で何も書かれていません。

第3章 堆肥肥料とその使用方法について。

家庭菜園で好まれる肥料(堆肥)には、馬糞、牛糞、豚糞、羊糞、鳩糞、すす、石灰、ローム質泥灰土、貝殻の泥灰土、海藻、木灰、ハリエニシダの灰 *、シダの灰、石炭灰、腐葉土、およびキャベツの葉・茎・雑草等植物残渣の腐食土があります。これに、とても効果的なものを加えることができます。それは液体ですがもっとも養分に富み、野菜が必要とする栄養成分のほとんどを含んでいます。すなわち畜糞の堆肥塚から出てくる排液です。

-----

* 私は、ハイエニシダの灰だけで野菜の生産が5〜6倍になるという驚くべき効果を目撃したことがあります。その場所の一部にハイエニシダの灰を施用しました。施用した区も施用しなかった区も似た性質の土壌(硬くて湿った粘土質のローム)だったので、効果の違いは明白でした。その効果は数年持続し、また、その後に植えられた材木用の樹木でも効果がありました。

-----

肥料は単独または混合して施用されます。しかし、後者の方が最適であることは確実で間違いありません。確かなことは、適切な発酵が行われていないと、その影響は果物や野菜にいやな不快な風味を与えることになります。不適切な量を施用すれば、作物はかなり不健康になり、どの植物の樹液も汚染されてしまいます。

馬小屋の糞、海草、石灰、腐食した植物残渣を混合したものを3、4ヶ月野積みにして、その間に2、3回切り返せば、ほとんどの庭地にとって優れた堆肥になります。牛糞、豚糞、羊糞に煤やその他の種類の灰を混ぜたものも同じです。鳩糞、泥灰土、腐食植物残渣もよく混ぜると、重土向けの最適な堆肥になります。また、鳩糞を控えめに使用すれば軽い土にも使用できます。

牛の糞、つまり乳牛や去勢牛の糞や豚糞で、わずかに発酵しているものは、軽くて熱性の土壌に非常に適した肥えた肥料になります。乾燥しやすく吸収力のある土にとっては、これより優れた肥料、これより長く持続する肥料はおそらくないでしょう。その理由は、他の糞に比べて水分を長時間保持し、発酵が遅いからです。

鳩糞、石灰、すす、灰などは決して単独で施用してはいけません。その必要量は比較的少なく、他の物質と混合しないと均一に撒くのが困難です。しかし、これらは一般に、良質の土、芝生、草地、または牛やその他の冷たい性質の畜糞の堆肥に与える必要があります。堆肥を与える土壌の寒さ、熱さの性質に応じた量を施用します。堆肥が一体になるよう十分な時間をとって完全混合するようにします。

泥灰土(marl)は、ほぼすべての土壌に適した優れた肥料です。そして、あらゆる種類の牛糞や腐食植物残渣と同様に単独で適切に施用することができます。貝殻の泥灰土(シェルマール)と呼ばれる種類が大変好まれます。強性の土にはたっぷりと施用すべきですが、軽い土には控えめ施用します。ローム質のなら軽い土の土地に最も適しています。

馬糞は単独で施用する場合、あまりに生の状態で使用したり、発酵させすぎたりしてはいけません。

通常、2 ~ 3 週間野積みして、その間、1、2回切り返す必要があります。この状態であれば1トンは温床で使用された1年経過した堆肥3個分に相当します。

この肥料、実際にはどんな種類の糞でも、単独で使用する場合は、耕すまで決して野積みした堆肥塚から栽培地に運び入れてはいけません。空気にさらされると有効成分が蒸発し、効果が薄れてしまうためです。

海藻を施用する場合、単純に土地にかけて使うなら、水揚げ直後に施用する必要性が上記の肥料よりもずっと大きいです。すぐに腐敗し、排液が下に流れて失われるからです。

海藻を混合して使用する場合、混合した堆肥塚は、そのため、より頻繁に切り返します。そうすれば排液が失われることはなく、堆肥の他の成分がそれを吸収することができます。

馬糞、羊、鹿、ウサギなどの糞は寒くて湿った土壌に最も適しています。これらすべて、あるいはこれらのうちのどれかに石灰を加えた堆肥を入れるのも有益であることがわかります。このような土壌には、石炭灰、鳩糞、石灰からなる堆肥も有効です。 あるいは木の灰、ハリエニシダの灰、シダの灰、厩舎の糞など、 あるいは、鹿の糞、ウサギの糞、すす、草木灰などが良い肥料になります。

堆肥は効果が高いものほど塩分や油分が含まれる傾向があり、その傾向に応じた量を施用する必要があります。

そのため、ハトの糞は馬糞よりもはるかに少なめに使用する必要があります。揮発性の塩類がより多く含まれているからです。従って、より強力な非揮発性のアルカリ塩類を一定量含む草木灰は、さらに少量を適用します。また、石灰は石灰質の中で最も強力であるため、通常は泥灰土よりもはるかに少ない量を使用すべきです。

腐食植物残渣の堆肥は単独でも混合でも使用できます。どんな土壌でも施用量に違いはありません。程度を問わず、全く傷害を引き起こす心配がありません。ほとんどすべての植物は土やそのほかの肥料の助けを借りずにこの堆肥だけで完璧に生い茂ります。

それはアンブロシア(神の食べ物の意)のようです。そして、糞尿塚からの排液は野菜にとって蜜のようなものです。ただし、後者はあまりにもたっぷりとそれに浸けすぎると、むしろ作物を酩酊させることになります。

肥料の重要性と効果**は、現在では一般的に評価、認識されています(少なくとも最近は以前よりもはるかに高く評価されています)。肥料を与えることは地球上のすべての庭師や耕作者にとって不可欠な義務であるように思われるでしょう。堆肥材料を収集する際には注意が必要で、施用する時も倹約して巧みに散布します。この目的のために、堆肥塚の排水を集めるのに井戸や貯水槽などが利用されます。そしてどんな種類の堆肥も施用する時は、施用する量に応じて均等に撒くように細心の注意を払う必要があります。

すべての動物性物質は、適切に施用すれば良い肥料になります。動物は直接、あるいは最終的に植物から栄養を得るので、それが適切に分解されると、植物の成長を促進する優れた物質となります。したがって、糞は一般に他の肥料よりも優れています。そして、含まれる油の割合が多いほど肥料価値も高くなります。

空気中の亜硝酸によって糞から粘液が生成され、それにより油分が最も簡単に削減されて、植物の必須の食べ物すなわち栄養分となります。したがって、私たちのやるべきことは、糞を注意深く収集し、注意深く施用することです。

-----

**適切に施用された場合の堆肥の効果は次のように単純に定義できます。土壌の粘性・粗さ・多孔性の改善効果です。 発酵を促進し、栄養物質を伝達し、植物の根に栄養を与えます。 それによって植物の栄養成長と生殖成長が進みます。

-----

また、糞の堆肥塚にあらゆる植物の茎、葉を投げ入れ、十分に腐るまで放置し、その後または糞の収集中に石灰、泥灰土、灰、すすなどを混ぜれば、大幅に増量することができます。堆肥塚からの排液を塚全体に頻繁にかけてやると、その効果が大幅に高まります。ドリップ*** をしっかりかけておいしく焼き上げるローストのようです。

-----

 *** ドリップたっぷりの美味しいローストは美食家から満面の笑みを引き出します。

-----

0 件のコメント:

コメントを投稿

19世紀末の園芸施設:10. 栽培温室---両屋根(スパン)ハウス

現代でも最も一般的な 温室屋根形状である両屋根タイプのハウス(スパンハウス)の記事です。現代の商業温室ではこれ を大きく、かつ多連棟化して大面積にしています。それ に比べると、19世紀の両屋根ハウスは面積も高さもかなり小さめで、今で言うところのホビー用温室、家庭菜園用温室といった...