2023年5月9日火曜日

19世紀流菜園の土作りⅡ:ウォルター・ニコルのキッチンガーデン

 第2章は19世紀流の培養土作りについて書かれています。「赤玉土」、「鹿沼土」、「黒土」、「桐生砂」、「バーミキュライト」、「ピートモス」、「腐葉土」、などなどはるばる遠くの土を購入して配合する現代の培養土作りに比べると、19世紀流は「粘土質のロームと砂質ローム+石灰」のシンプルなレシピで、あとは各自の地域で入手可能なもので工夫してね!って感じです。世界中の土を簡単にポチッと購入できるので、つい散財しがちな私は19世紀流を見習いたいと思います 🙋

第2章 培養土の特性と多様さ;その改良手段

多くの土地に見られるように、同じエーカー内でも異なる種類の土壌からなる土地は幸運なことですが、必ずしもそうであるとは限りません。

元々(あるいは自然に)そうなっていない場合は技術で補わなければいけません。 さまざまな果物や野菜を栽培するには、作物が完全に生育するのに適したさまざまな培養土が必要です。

しかし、特定の野菜ごとに特定の土壌を準備しようと思うのはばかげています。菜園の土壌の種類としては、限定された以下の土壌だけを考えればいいでしょう。

-- 強い粘土ロームと軽い砂壌土ローム(この 2つは主要土壌です):

4分の1を粘土ローム、4分の3を砂壌土ロームで配合した土。

半分を粘土ローム、半分を砂壌土ロームで配合した土。

4分の1を砂壌土ローム、4分の3を粘土ロームで配合した土。

これに、適切な管理と施肥を行えば、一般的な園芸野菜を最高の出来で生産することができます。

しかし、土を改善するためには、その性質を尊重すべきです。可能であれば、どんな作物も生産できるようにするのがよいでしょう。

したがって、私たちのやるべきことは、家庭菜園の土を作ったり改善する場合、果菜や果樹を実らせるのに適した培養土にして芽が出るように努めることです。

そのような土は植物の根に付着するのに十分な粘り気が必要ですが、土が結合しすぎているのもよくありません。結合しすぎた土だと、根が養分を求めて伸長・拡大するのが確実に遅くなるでしょう。

したがって、やや砂質がちで中程度の粘り気があるロームが、ここでの目的に最も合った土と見なすことができます。そしてそれには二重の効果があります。つまり、

利用価値の高い種類の食用野菜の大部分は、そのような土を好みます。それはコチコチの堅い土よりも少ない手間で作業できますし、ひどい干ばつの時もあまりひびが入ったり、乾いたりすることがありません。また、強く霜が降りた場合、柔らかい植物を押し出してしまったり栄養を排出してしまうといったことがあまりありません。

土の粘着力が強すぎると、植物の柔らかい根は地中に弱々しくしか根をはることができず、病気になり、潰瘍になり、枯れます。

土壌が軽すぎて、貧栄養の場合、そこに植えられた植物は支えに必要かつ不可欠な安定性と栄養を求めて虚しく根を遠くへ伸ばします。

健康的でよく成熟した完璧な野菜を生産したいなら、適切な土つくりに不注意や無関心であってはいけません。糞を大量に投入したとしてもその力を完全に信頼することはできません。あまりにもむやみに糞を施用すれば、食用植物の品質に影響を与え、有益とはなりません。

したがって、私たちの努力が一貫して成功をおさめることができるように、最初にこの目的に適した土壌の構成や改善に適切に慎重に費用をかけましょう。最善の判断をしていけば、この意図に完全に答える土作りができるでしょう。

ゆえに、庭の土つくりは、壁を建築する前あるいは建築中に行う方が、建築後よりも確実かつ容易に達成できます。しばしば最初の土つくりが適切に対処されていなかったことが後で判明したり、その後の費用がさらに必要になったりします。芝生、低木、歩道などが土作りの主な障害となって伐採撤去を要するはめになったりします。

しかし、これらを検討する上で、家庭菜園の改善から得られる確実に有利な点を優先事項として考えるべきです。家庭菜園は特に、季節の経過に従って変化し、わずかな費用で、前とのシーズンと同じようにすべての面を更新していくことができる利点があります。

多くの場合、菜園の土壌はわずかな費用でかなりうまく改善することができます。

したがって、土壌層の底が湿っていて下層土が腐敗状態になっている場合は、うまく排水することが最高の改善策の 1 つであることは間違いありません。

土がカチカチなら、小さな砂利、海砂、かなりの量の小石や貝殻、石炭の灰、石灰質の砂利、砕いたレンガのかけら*、レンガの窯の灰などを加えます。

そして何よりも、冬の間や作物が栽培されていないときは常に尾根状に土を積み上げておきます。こうすれば、天候の作用をその表面に最大に与えることができます。

土壌が養分のない砂または砂利などの場合、-- 粘土、または粘着力の強い粘土質ロームを追加し、粘土質の下層土に溝を通すか、同様に池の泥を洗掘するか、あるいは粘土質の地域に見られるような排水路を削って作るなどします。

金属物質(鉄分)が豊富で一般に鉄色に見える土壌は、フォックス ベントまたはティルと呼ばれます。これらの物質は、土壌と混合密着しているか、あるいは土壌と一緒にかなり固化していることがよくあります。かなりの量であり、これは粘着性で非常に重い土壌です。

そのような土壌は、どんな作物にとっても最悪です。改善なしには、ここでの目的に全く不適格です。

ここでの目的のため、石灰はあらゆるものに使えることがわかるでしょう。慎重に適用して、その土を頻繁に掘ったり溝を切ったりすれば。そうすると、土と石灰がよく混ざり合い、大気がそれらに十分に作用してくれます。大気にさらさなければ、石灰はそれほど効果的に働かず、土壌の細かい粒子はうまく分割されたり改善されたりしません。

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* 私は、砕いたレンガのかけらとレンガ窯の灰を混ぜ合わせた効果を目にしたことがあります。それを冷たくて湿った日陰の粘土質の土地にたっぷり与えると、驚くべきことにたった1回で肥沃になりました。粘土は焼成されると、その性質と効果が完全に変化するという証拠です。

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注意する必要はないかもしれませんが、鉄分を減らすためには土壌に含まれる鉄分の量に応じた石灰量が必要です。この量を確認するために、磁石が有用でしょう。土塊の 1 つを焼いて灰にして還元させ、粉末にして、土または残留物から鉄分の粒子を磁石で分離します。 これにより鉄と土の割合がわかります。

このようにして、土壌を改善するために必要な石灰の量を判断することができます。通常の場合、ゆとりを持って、倍量の中程度の石灰を想定すると、1 エーカーあたり 150 から 400 ウィンチェスター ブッシェルが必要量となります。

石灰を素早く、すなわち粉末の状態で施用し、最初に過剰な水分を排出するように注意しながら土壌を適切に改善していきます。

上で示唆したように、土地の畝立て(塚に積む)は、特に固い土壌で最も素晴らしい効果をあげます。地面に作物がないときに、畝立てを決して省略してはいけません。

死んだ(有機質のない)砂ロームや腐敗した砂利であっても、それらを改善することには無限の利点があります。しかし、非常に軽い砂質土壌では、この方法を過度に実行することはお勧めできません。それは一時的なものだからです。

経験によって証明されているように、塚に積むことで土壌を部分的に太陽光線にさらしたり部分的に日陰にしたりして、月に一度溝を切れば、新鮮なものを追加するだけのどんなやり方よりも早く土地の肥沃度を回復させます。

こうすれば、作物に有害な成分が土壌にたくさんある場合、大気の作用によって有害成分を排出または吐き出させることができます。特に夏や冬の休閑期間が効果的です。ただし、冬の場合は、表面をひっくり返して、できるだけ頻繁に表面に霜がおりるように注意する必要があります。そして、霜がとけるたびにひっくり返して新しい表面にしておきます。

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