2024年6月2日日曜日

19世紀末の園芸施設:12. 栽培温室--丸屋根ハウス

キューガーデンのパームハウスのような曲線形の温室はいかにも19世紀ビクトリア〜ンですよね。現代の温室はシンプルで機能的。温室の変遷は、コルセットやクリノリンを着けた当時の装飾いっぱいのドレスから現代のユニクロファッションへの変化に通じる? でも、機能を求めず愛でるだけなら、ビクトリア〜ンな温室はとても魅力的ですよね。

ここでは、曲線屋根の機能について解説しています。当時の被覆材はガラスなので、曲線にする利点は少なかったようですが、今はプラスチックフィルムで簡単に被覆できるので簡便なパイプハウスはどれも丸いかまぼこ屋根ですね。

  HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

栽培温室

曲線屋根のハウス

曲線屋根のハウスは栽培に最も適した形式だと、さまざまな場面で称賛されてきましたが、その主張を注意深く検討してみれば、利点よりも欠点の方が圧倒的に多いかもしれません。


他の条件が同じであれば、曲線屋根は間違いなく他のどの屋根よりも太陽光線をハウス内に入れるはずです。
しかし、太陽光線は実質的には平行光としてに地球上に到達していることを忘れてはいけません。 そのため、直線屋根と違って曲線屋根は光線が屋根全体に直角に当たることはありません。つまり、次のようになります。


図 30. —曲線屋根に当たる太陽光線を示す鉛直断面図。


図 31. —直線の屋根に当たる太陽光線を示す鉛直断面図。

図 30のように、屋根の中間高さにおいて太陽光が直角(90°)に入射した場合、光線が屋根の下部や上部近くでの入射角度は徐々に小さくなることがわかります。


ただし、入射角が 20° 、 30° と変化しても透過する太陽光線の量を大きく減少させることはない点を考慮すると、これはさほど重要なことではありません。

図 30 のように、曲線の中心点を後壁の底部に置いた場合、屋根の上部は水平に近づき、屋根の下部は垂直に近づくため、雨が降ると屋根のトップやその周囲のすき間に雨が流れ込みやすくなりますし、雪溜りを形成することにもなります。
もちろん、これは、曲線の中心点を後壁の底部より下や後ろにすることで解決できます。次のようにします。

図 32. - 曲線屋根の半径を決定するモードを示す鉛直断面図。

こうすれば、極端な垂直部分や水平部分が発生しません。
しかし、たとえこうしたとしても、カーブの一部を遮って換気口を設けることは困難です。


図版 42 直線の屋根に半球形の屋根のキューポラが付いている。


曲線屋根のフレームは木または(小規模なハウスの場合は)鉄のいずれかで組みますが、屋根が直線の場合よりも組み立てが面倒で費用もかかり、横方向に発生する力を克服するのはそれほど容易ではありません。
誘引用のワイヤーは曲線フレームにそれほど簡単には固定できません。屋根の曲線に正確に沿わせたいなら鉄の垂直ロッドをフレームに追加する必要があり、より重くなります。

被覆に曲げガラスを使用すると、初期費用がはるかに高くなるだけでなく、修理にも費用がかかります。さらに平らな板ガラスよりも温度の変化に弱く破損しやすいです。

これらの欠点を回避しようと平らなガラス板で曲線の屋根を覆うとすると、小さなガラス板を使わなければいけません。そうしないと屋根の曲線に沿わせることができなくなります。
どちらの場合も、実際にカーブの半径が非常に大きい場合を除き、見た目は悪くなります。

曲線の骨組みのリブ(補強材)上を平らなガラス板で覆うことも容易ではありません。

概して、曲線形状のハウスは特徴的な形を印象付けるため、または大きなウィンター ガーデンハウスや壮大なヤシの温室(パームハウス)等、いくつか例外的に導入されることはありますが、通常の栽培目的ならば曲線の屋根は必要ではないと考えられます。 直線で構成された構造が適しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

19世紀末の園芸施設:27. 塗料

    体に悪い鉛白から体に良さそうな亜麻仁油まで、いろいろな材料を使って温室に塗装がされていたことを知りました。今も温室の部材の維持管理は大切ですが、それよりずっと手入れの手間がかかってそう。 HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES....