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2025年5月9日金曜日

19世紀末の園芸施設:36. 通路

通路は庭を楽しむ重要な要素ですよね。回遊式庭園とか、歩くだけで楽しいですものね。温室も通路の大切さは同様で、狭い温室だからこその工夫が解説されています。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

通路

園芸施設の内部の舗装には、恒久的なものと取り外し可能なものの2種類があります。

恒久的な通路

恒久的な通路は、石、スレート、レンガ、タイル、コンクリート、あるいはセメントで造ることができます。

石の通路は非常に耐久性があり頑丈ですが、スレートの通路のような利点はありません。スレート通路は湿気を逃し、清掃が容易です。しかし、スレート板は一般的な石の舗装板よりもはるかに高価です。

レンガが使用されることもありますが、通路としてとても満足する材料とは言い難いです。レンガは不規則に摩耗しやすく、良質のセメントで目地を埋めないと、継ぎ目が開いてしまいます。

厩舎で使用されているようなガラス質の青レンガも時々使用されます。

これは(下の図のように)縁が斜めにカットされているため、組み合わせると小さな横溝が連続的に形成されます。

https://www.flickr.com/photos/internetarchivebookimages/20171290883/in/photostream/

促成栽培用のピットやその床は常に湿気にさらされる可能性があります。そのような場所では、この舗装方法は非常に有効ですが、見た目が悪く、歩き心地もあまり良くありません。

タイルは、園芸施設の通路を施工する際に最も好まれる材料です。施工業者は通常、使用する6インチ (15 cm) または9インチ (22.5 cm) の赤と淡黄褐色のスタッフォードシャータイルを使用します。これを良質なコンクリートで作った床の上にセメントで丁寧に対角線方向に敷き詰めると、手頃な価格で、非常に整然としていて、耐久性があり、多孔でない、掃除が簡単で、見た目も美しい通路が完成します。

経験の浅い作業員によって不適切な敷設がなされると、いつまでも悩みの種となります。継ぎ目が開き、タイルが摩耗して緩み、ガタガタになり、見栄えが悪くなります。これらの問題を解決するには、タイルを取り外し、床を水平にし、適切に敷き直す以外に方法はありません。

一般的な栽培用ハウスにおけるタイル張りの通路については以上です。

コンサバトリーなどの展示鑑賞用ハウスでは、幾何学模様で高品質のタイルが求められ、ミントンタイルのような精巧なモザイクタイルがよく使用されます。(64~65ページ参照)

コンクリートの通路も時々採用されますが、表面を滑らかにするのが難しく、費用も通常のタイル張りの通路とほぼ同じため、コンクリート単体の通路はほとんど推奨できません。

セメントは通路に非常に適した材料ですが、コンクリートの床に敷設する必要があり、費用も良質なタイル張りの通路とそれほど変わりません。そのため、一般的にタイル張りの通路の方が好まれます。

石、スレート、コンクリート、セメントの通路では、採用した材料が自然な縁取りを形成しますが、タイル張りの通路では、縁に何らかの保護が必要です。

矮小な壁や温水管を覆うのに使用される格子でタイル通路の縁が保護されますが、そうでない場合は、石の平板または成形品、縁に沿って敷くことができるスレート板、あるいは特別に作られた縁取りタイル(いくつかの標準的なパターンがあります)のいずれかで縁取りする必要があります。


取り外し可能な通路

取り外し可能な通路は、人が足で踏むと損傷を受ける可能性のあるブドウなどの植物が植っているボーダー上に敷設するために必要です。

ボーダー上を人が直接踏む場合も土の上に敷かれた通路の上を歩く場合もかかる体重は同じですが、その体重は通路の上を歩く方が、通路がなく直接踏む場合よりもはるかに広い面積に分散されます。

この目的に適した格子状の木製通路は、4.5 x 1.125インチ ( 幅11.25 x 厚さ2.8 cm) の当て木を横方向に四つ、3/4インチ(1.875 cm)の間隔をとって、各端をきちんと段違いに交差させてつける(すのこを縦横に組み合わせたようなもの?)ことで簡単に作ることができます。

通路の堅牢性と耐久性を高めるために、これを間隔をとって並べた小さなレンガの支柱で支えるようにすることもできます。

この通路は、スレート、石、タイルほど耐久性はありませんが、最も安価で恒久的にも取り外し可能なものにもすることができます。

上記の格子状の木製通路の代わりに、装飾用の穴あきの鋳鉄板を通路として使用することもできます。しかし、鉄ははるかに耐久性が高いものの、高価で、錆びやすく、滑りやすく歩きにくいという欠点があります。

鉄製でも木製でも取り外し可能な通路は、通路下の土壌も利用できるので、恒久的な通路よりもボーダーをより広く利用することができます。つまり、ボーダーとして利用できる幅が広くなるので、通常よりも幅の狭い施設を建てることが可能になります。


一般的な注意点

ハウスはタイルなどの堅い素材で舗装できますが、取り外し可能な格子状の木製通路でさらにこれを覆っていることもよくあります。これは、洗濯婦が洗い場で履いた昔ながらの泥除けの木靴と同じ役割を果たしています。

コンサバトリーや花室の通路は、急速に舗装されるようになりつつあり、そこに椅子1、2脚とテーブルを置くのが適切で便利です。(「コンサバトリー」の項、63ページ参照)

堅い素材を通路とする場合は、排水の問題を忘れないようにしてください。

結露や散水で水分が通路に落ちやすいので、通路にわずかな傾斜をつけて水分が溜まらないように配慮する必要があります。

複数のハウスが組み合わされた建物の場合は、可能であれば通路をすべて同じ高さにすることをお勧めします。応接室からコンサバトリーへの入口を設ける場合、高さのある敷居がない場合は、コンサバトリーの通路は応接室の床より約2インチ (5 cm) 下になるようにしてください。そうすることで、コンサバトリーから応接室へ水が流れ込む危険がなくなります。

通路の幅は状況によって異なります。

栽培用のハウスは展示用ハウスにあるベンチ、ベッドや矮小壁といったものがないので、通路幅は2フィート6インチ (75 cm) で歩行に十分です。しかし、高さが地面から2フィート6インチ (75 cm) までのものが何かある場合には、通路をもう少し広く、例えば2フィート9インチ (82.5 cm) あるいは3フィート0インチ (90 cm) にします。

ハウスが小さく、利用可能なスペースを1インチたりとも無駄にしたくない場合は、例え横に障害となる物があっても、2フィート6インチ ( 75 cm) の通路で十分でしょう。

一方、大面積の大型植物用のハウスの場合、展示ステージ間の通路幅が3フィート6インチ(約90cm)あってもコンサバトリーの通路としては広すぎではありません。なお、通路の幅と位置は展示ステージの配置に大きく左右されます。

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