2024年5月6日月曜日

19世紀末の園芸施設:10. 栽培温室---両屋根(スパン)ハウス

現代でも最も一般的な温室屋根形状である両屋根タイプのハウス(スパンハウス)の記事です。現代の商業温室ではこれを大きく、かつ多連棟化して大面積にしています。それに比べると、19世紀の両屋根ハウスは面積も高さもかなり小さめで、今で言うところのホビー用温室、家庭菜園用温室といった趣です

  HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

栽培温室

両屋根(スパン)ハウス

立て掛け式に次いで、両屋根(スパン)タイプのハウスは自然で利点の多い様式です。 

以下のような場合、特に有用です:

—利用できる壁がない、または壁を不要とする場合。
—南壁に対して直角に建てたい場合や、立て掛け式ハウスとの組み合わせで建てたい場合。
—太陽光の遮蔽をできるだけ少なくするために、最低限の高さにしたい場合。
—植物を可能な限りガラス面に近づけて栽培する必要がある場合。
—あるいは、ハウスを南北棟にして、ハウスの各面から同じ量の太陽光線が入るようにしたい場合。

両屋根ハウスは通常、棟方向を南北(南北棟)にして、植物のあらゆる面に太陽光線ができるだけまんべんなく当たるようにします。

あるいは、ハウスの片側をより暖かくして、もう一方の側よりも多くの太陽光線を受け取るようにしたい場合は東西棟にすることが多く、そのようなハウスは多様な植物を栽培する場合に非常に役立ちます。

両屋根ハウスの一般的な形式を図 24 に示します。


図 24.—正面にガラス窓を備えた両屋根ハウスの断面図。

これは、2フィート' 6インチ" (75cm)のレンガ造りの側壁上に2'フィート 6"インチ(75cm)の垂直のガラス窓が設置されています。すなわちハウスの軒高さは1.5m、ハウスの幅は3m程度といったところです。

ハウスの側面が垂直のガラス窓であれば、それを下部の換気口として開けることができます。特に悪天候の場合や外気が冷たくて、植物に当たる前に温湯パイプ上を通過させて暖める必要がある場合に、レンガ造りの壁にある換気口の代用や追加装置として使用できます。

一方、屋根の棟の両側に設けられた天窓のガラス窓、または棟の片側に連続して設けられたガラスの天窓、あるいは棟の両側に連続して設けられたガラスの天窓は、ハウスの環境や栽培状況などに応じてスイングして開けることが可能です。

側面にガラス窓がない場合は図 25のようになります:—



図25.-両屋根ハウスの断面図、側面にガラス窓なし。

これは実質的には(図 22のような)立て掛け式で屋根部分が両屋根になったようなものです。

屋根部分は図24と同じですが、下部の換気はレンガの壁に設けられたフラップ、あるいは開閉スライドなどによって行われます。

軒までの高さは 4' 0" (1.2m)と記されていますが、この高さはハウスの用途に応じて変更できます。ハウスの幅は図24と同様、3mといったところ。

この寸法であれば、展示台や盛り土で嵩上げしたボーダーか栽培ベッドが適していることがおわかりいただけるでしょう。

図 25と図 24でハウスの幅と長さが同じあれば、図 25の方が建設コストがかからないでしょう。

両屋根ハウスの別の形式を図 26 に示します。


図 26. —ガラスの高い側面を備えた両屋根ハウスの断面図。

これは、図 24 と同様ですが、側面は地面から直に立ち上がった高さ6 フィート(1.8m)のガラスで、その面の下部と天窓で換気されることを示しています。

このハウスは以下の場合なら有利になります。

—内部の温度が急激に下がらないようにするために、かなり大きな内部空間が必要な場合 。

—無暖房の施設で、太陽光線をできるだけ壁で遮ることなくとり入れなければならない場合。

—大きな植物を屋外側のボーダーに植える必要がある場合。


図 27 は、より大型で特徴的なスタイルの両屋根ハウスです。


図27. 大型両屋根ハウスの断面図

これは、ルーフランタン(明り取り用のキューポラ)が屋根から立ち上がっていて、そのフレームがあることで太陽光線がさらに遮られますが、大規模で重要度の高い施設では、このような形式が必要とされることがよくあります。

このようなハウスは、果樹用ハウスとして使用されることもありますが、厳密には栽培に向いたハウスとは言えません。

この軒高と全体的なプロポーションから、展示用ハウス、花の回廊、園芸遊歩道、コンサバトリーなどとして使用する方が適しています。

両屋根ハウスのまた別の形式は、屋根勾配が複数で構成されたタイプです。それは二つの勾配で構成された立て掛け式ハウスほどの利点はありません。


こんな感じの屋根(2つの勾配)の両屋根ハウス。

一般的な高さの展示台を内部に備えた植物ハウスとして使用され、ガラスの側面が実質的に地面から直に立ち上がって屋根面まで達している場合、展示台の高さより下のガラス面は役に立たないだけでなく、高さのある展示台がガラスの視界を遮ってしまうので外観的にもあまり美しくありません。

また、この形式のハウスで効率的な換気を行うのは簡単ではありません。

屋根の下側の勾配は、「5-1, 5-2.屋根の傾斜」の項で述べた原則に従えば、ほぼ確実に急勾配になります。 屋根面下近くにある植物にはかなり適していますが、ハウスの中央部付近にある植物はガラスから遠すぎることになります。

通常のホットハウス(暖房ハウス)として使用するには、このような形式に大きな利点はありません。

このハウスは、例えば換気開口部に合わせて2フィート(60cm)の小壁を設けるなどして下部の換気をより簡単に実現できるようにすれば、ブドウ栽培にかなり適していると言えるでしょう。

また別の形式は、屋根自体が実質的に地面から直に立ち上がっている形式であり、図 25において小壁と下部換気装置が省略されてたものと言えます。

太陽光線は確かにハウス内部のあらゆる場所に届きますが、側面近くの地面は栽培に不適切になる傾向があります。

もちろん、他の両屋根ハウスの屋根と同様に、上部の換気は簡単ですが、下部の換気、すなわち、冷気が葉に触れる前に温水パイプの近くを通過するような換気は難しいです。

このようなハウスは安価に建設できるかもしれませんが、効率的とは言えません。

曲線形状の両屋根ハウスは特化したセクションを別途設けます。

立て掛け式ハウスでは、太陽光線は主に植物の片側にしか当たりませんので、そこに動かさずに置いておくと、植物の一部には直接光がまったく当たらないことになります。

しかし、両屋根式であれば、光線は植物の両側から当たるので、より均一な成長が期待できます。

他の条件が同じであれば、両屋根式での熱は立て掛け式のほど保持されません。

これは、棟が東西方向である場合、特に当てはまります。放射熱は、レンガの壁、特に鉢植え小屋、炉室、キノコ小屋などでは壁は熱を遮蔽しますが、ガラスの屋根面やガラスの北側の側面からは熱が逃げやすいためです。

したがって、同じ気候の場所で両屋根ハウスが立て掛け式ハウスと同じ室温を実現するためには、より多くの暖房熱量を必要とします。

両屋根ハウスの屋根面積は、同じ勾配角と幅を持つ立て掛け式ハウスの屋根面積と同じですが、当然のことながら、屋根の最低点(軒)と最高点(棟)間の高低差は立て掛け式が2 倍になります。 

したがって、ガラス面の近くにおく必要がある植物にとっては両屋根ハウスの方が有利であり、立て掛け式で必要とされるような高い展示台を設ける必要がないことがわかります。

一般的な幅(3m程度?)の両屋根ハウスは、同じ幅の立て掛け式ハウスのような1本仕立ての長い垂木が必要ありません。

ハウスの内部および外部の床面の基準高さについては、排水、ストークホールの深さ、外観、建築上の要件、視界や光を遮蔽する物、コストの面で、「9.立て掛け式ハウス」のセクションで述べたのと同じ注意が両屋根ハウスにも必要です。この形式のハウス(温室)の存在理由は、他の形式のガラスハウスとともにすでに述べたところです(「6. 園芸ハウスの周囲と場所」を参照)。

2024年4月21日日曜日

19世紀末の園芸施設:9. 栽培温室---立て掛け式(LEAN-TO)ハウス

 温室の1種、LEAN-TO House。LEAN-TOって、差し掛け?壁掛け? ここでは立て掛けにしました。

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栽培温室

立て掛け式ハウス

この形式のハウス(温室)の存在理由は、他の形式のガラスハウスとともにすでに述べたところです。 (「6. 園芸ハウスの周囲と場所」を参照)

立て掛け式ハウスは一般的に次のような場合に利用されます。 

— 壁や建物がすでに存在し、それに面してガラスハウス(ガラス温室)を配置したいとき

— 単独ハウスまたは複数組み合わせたハウスを南向きで作って、北側はレンガで保護したいとき 

— 栽培上の理由などからこの形式を必要とする場合。


南向きの立て掛け式ハウスは両屋根ハウスよりも暖房が容易で、その他の条件が同じであれば、他のどの形式のハウスよりも建設費が安くあがります。 立て掛け式ハウスは、たとえ真南に配置して建設していても、最も暑い時期には、早朝と夕方の日射は入らないということを忘れてはいけません。

また、植物を移動できないなら、立て掛け式ハウス内で植物にぐるっと太陽光線を当てることはできません。

立て掛け式ハウスの最も一般的な形を図21に示します。

図 21.— 正面にガラス面のある立て掛け式ハウス(断面図)

このハウスの正面は約 2フィート 6インチ (75cm) の高さのレンガの壁に垂直に2フィート 6インチ(75cm)のガラス面が載っていて、この面の高さは合計約 5フィート 0インチ (1.5m) になります。

このタイプのハウスはどれも、正面の高さは数インチ(10cm)程度の違いはあっても、ほとんど(1.5m)前後で、どのような植物の栽培にもほぼ適します。

植物にとって、正面のガラス面の高さが2フィート6インチ(75cm)であるのはとても好都合です。ブドウのつるなどはガラス面に沿わせるように誘引して育てる必要がありますが、その必要高さに合わせるようにボーダーや内部の栽培ベッドの高さを調整すれば十分対応できます。

この形式のハウスの上部の換気は棟にヒンジで取り付けられたガラス窓によって行い、下部の換気は正面の壁に造られた溝プレート部にはめ込んだスイングするガラス窓によって行われます。

もちろん、場合によっては、点線で示すように、このガラス窓を固定窓とし、レンガの壁に換気口を組み込むこともできます。

または、特に悪天候の寒い時などで、流入した外気を植物にあたる前に温める必要がある場合には、両者(換気と燃焼暖房)を使って、正面壁のすぐ後ろに設置した温湯パイプの近くに外気を通すようにすることもできます。

図22.— 正面にガラス面がない立て掛け式ハウス(断面図)

別の立て掛け式ハウス( 図22)は、図21と同じ形状ですが、正面に垂直のガラス面がありません。

下部の換気はレンガ造りの壁に設けられたスイングシャッターによって行われ、上部の換気は棟にヒンジで取り付けられたガラス窓のサッシによって行われます。

正面の壁の高さは約 4フィート 0インチ (1.2m) が適切です。これは、栽培ベッドなどを置くための棚を設置するのに十分な高さであり、また、ガラス面近くで育てられるブドウの木などを植えるためのボーダーやハウス内の栽培ベッドを高くする際には十分な低さだからです。

図22のハウスは図21と同じ面積でも、いくらか安く建設できます。

図22のハウスは正面の高さが低いので、植物が育つ土壌と屋根の立ち上がりの間に最小限のスペースを必要とする樹木などにとっては有利であることがわかっています。

もちろん、ハウス内の正面付近に栽培ベッドは作らないことが前提です。


別のタイプの立て掛けハウスを図23に示します。

図23. 幅が狭めの立て掛け式ハウス(断面図)

このタイプのハウスは、1つか複数の傾斜角で構成された屋根、換気口が備えられた非常に低い正面壁、および図21, 22と同様に上部に換気窓があります。

メインの最も急勾配のガラス面は、フレーム付きのはめ込みで作られている場合があります。その場合、非常に大量の外気をハウスに入れる必要がある際には取り外すことができます。

このタイプは、ハウス内の後ろ壁側にある果実を保護するのが目的であり、ハウスの幅は狭くせざるを得ません。そのため、ガラスと後壁そばに植えられた果樹の間に最小限のスペースが確保できるよう、屋根は理論的に推奨される(太陽光の最適入射角度)よりも急勾配になっています。これにより、ハウスの主要空間に無駄が生じないようになっています。

このようなハウスは、高さ 2 フィート (60cm) で、地面の6 インチ(15cm) 以内のところまで届く垂直のガラス面を正面に取り付けるとガラス面のすぐ前でイチゴなどを栽培できて、有利な場合があります。

外側と内側にボーダー(栽培区)を設ける場合、できるだけ遮光部分を少なくするために、正面壁の一部に鉄の柱とスレートのスラブを設ける場合があります。 (「レンガ工事」の項を参照のこと)

立て掛け式ハウスにはまた、図22に似ていますが垂直な正面壁が全くなくて、屋根が直に地際から立ち上がっているタイプもありますが、あまり見かけません。

もちろん、その利点は、太陽光線が地面に直接当たることであり、地際から立ち上がっているガラス面の近くのボーダーや栽培ベッドで、丈の低い植物を栽培できることです。

逆に、この事が欠点となる可能性もあります。正面のボーダーや栽培ベッドの土壌を葉陰で保護することができるないかもしれません。場合によっては低めの壁を設ける方がよいこともあるのです。低めの壁が正面にあれば、土壌を日陰にすることができます。

これに加えて、このようなタイプの立て掛け式ハウスでは、通常、上部の通気は可能ですが、下部の通気は困難になります。 この場合、十分に換気する唯一の方法は、ガラス面をサッシにして、垂木と平行に開くことができるようにすることです。

下部から屋根上部へ通気する、この換気方式は、特にハウスが暖房されていて、入ってくる冷たい外気が葉に触れる前にその温度を上げたい場合には、必ずしも適切であるとは言えません。

すべての図(図21〜23)で、ハウスの内側の地面高さと外側の地面高さは同じとして示されています。

しかし、もちろん、この内外の地面の高さを違える必要があるかもしれません。例えば、障害物を最小限に抑えるためにハウスを部分的に低くしなければならない場合や、排水不良やストークホールを必要なだけ下げることができない場合など、ハウスを高くしなければならないことがあります。

また、建築上、内側の地面高さを外側の地面高さよりも大幅に高くする必要がある場合があります。ハウス内部の地面から屋根の立ち上がりまでの高さを増やすことなく、見た目の良い外観にしたい場合がよくあるからです。

この場合、ハウス内側の地面高さは小さめの壁の高さにして、外側の地面高さはそれより 2フィート 6インチ  (75cm) または 3 フィート (90cm) ほど低くなるようにします。その結果、ハウスの正面の垂直高さは外側から見ると 8 フィート (2.4m) ですが、内部の正面の垂直壁の高さはわずか 5 フィート (1.5m) におさえることができます。

また、他の条件が同じであれば、ハウスの地面を低くする方が、ハウスの地面と外部の地面をほぼ同じにするよりも費用がかかるということも忘れてはなりません。土地の排水性に関してよく知っておくことです。

2024年4月7日日曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:10年遅れの瓶詰めブーム

2015年ごろ、メイソンジャーで瓶詰めサラダ、流行りましたよね〜。

私は10年遅れで空前の瓶詰めブームです(笑)

ガラス瓶に肉や野菜やハーブ、スパイスなどなど、何でもかんでも詰め込んで、電気鍋で湯煎・スチームしています。庭から収穫できた柿(干し柿)、イタリアンパセリ、チャービル、フェンネルも突っ込みます。

こんな感じです(この動画はちょっとワイルド)。


電気鍋はアイリスオーヤマの電気圧力鍋(PC-EMA3)。以前に7000円台で購入したのですが、圧力鍋機能を使ったらすぐに内釜が変形して圧力鍋としては使えなくなりました。しかし、普通の温度調理、無水調理は可能です。(今は電気鍋の値段も上がっていてびっくり!)

電気鍋には径が6〜8cmくらいのガラス瓶が3本入ります。

最近は電気鍋いっぱいに作る必要もなくなりました。ガラス瓶だと1〜2人前にはちょうど良い大きさですし、材料を瓶に直接、計量しながら入れていけて器やボールを汚す必要がないし、そこそこ保存も効きます。冷えると蓋が凹んで、開ける時に空気が入って蓋がポコンともどるのも楽しいです。

瓶の湯煎は電気鍋ならコンロ(この動画は焚き火!)と違っておまかせしておけて安心。手羽などの骨つき肉は、熱をよぉーく通すため3時間湯煎するので、タイマー付きの電気鍋でないと作る気にならないですよね。

おでん、肉じゃが、茶碗蒸し、蒸しパンやおこわ(この場合は蓋をせず、アルミフォイルをかぶせて)もOKでした。しばらく、このマイブーム続きそうです。

豚のすね肉とフルーツ(干柿)など。
シシャモとアスパラ、ニンジン。
キャベツのフラン
キャベツ・アスパラ、ジャガイモのコンソメ煮(アスパラの色は悪くなります。)



19世紀末の園芸施設:8. 排水

 雨の多い日本、小さなハウスでもフレームでも畝でも庭づくりでも排水は大事ですよね。

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排水

一般的な注意事項

土地の排水性に関して知るべきことはたくさんあります。

排水性に関して知るべきことには演繹学や力学の知識とともに地質学的データが含まれます。が、これらは庭師にとって有益であるものの、本書では関係が無いものです。

したがって、有用な表を 1 つまたは 2 つだけ示し、いくつかの一般的な注意事項とその解説をした後、園芸施設に関連する排水についていくつかの実践的な解説を提示するにとどめようと思います。

排水を計画する際、ハースト氏は表 8 に示す数値を提唱しています。 1時間あたりの水量を表わしたものです。この水量に合った排水設備を設ける必要があります。


表 8.  さまざまな表面で想定される水量(1時間あたり)

土壌が緩くて浸透性の高い、開けた見通しの良い土地では、降雨量の約 3 分の 1 は水路へ流れますが、残りの 3 分の 2 は地面に吸収されるか、地表面から蒸発します。

表9 は土地の排水性能に関するデータを示しています。


表 9 土地 (Molesworth地区)の排水性能 

土壌表面の排水性は下層土の種類および地層の方向を合わせて考慮する必要があります。

庭が南に向かって傾斜していても、下層土が水はけの悪い土ならば表面の排水性の良さが発揮されない可能性があります。

地中に湧き水があると、冷却効果を引き起こす可能性のあることにも注意する必要があります。

土地の排水には表面排水やガレキで被覆して行う排水がありますが、主にパイプ管による排水が採用されています。

枝分かれしたサブの排水管がメインの排水管となす平面上の角度は、多くの場合 90°ですが、サブとメインの接合部を作る前に、前者(サブ排水管)を緩やかに湾曲させて、接合時にサブ排水管の内容物がメインの排水管の内容物と同じ方向にスムーズに流れるようにする必要があります。

さらに、前者(サブ排水管)はできる限り後者(メイン排水管)へ確実に落水するようにすべきです。

特に粘土質または重い土壌の庭の排水では、縦坑を中央に掘って、地面のすぐ上にドームの上部を立ち上げて、しっかりとしたトラップドアで覆ったマンホールにすると効果的なことがよくあります。

庭のさまざまな場所からの排水がこの縦坑へ排水されるよう、流入口の排水管よりも低いレベルにオーバーフロー管を設ける必要があります。

トラップドアを開けると、すべての排水管が適切に機能しているかどうかを簡単に確認できます。こうすれば、どの排水管が詰まっているか、発見が容易になります。

・・・いわば排水桝のことでしょう。以下の図のような枡に立ち上がりをつけて、格子の蓋(トラップドア)をかぶせればここでの説明通りになると思います。

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園芸施設の排水

地面がいずれかの方向で建物に向かって下がっている場合、注意が必要です。特に吸水性の悪い下層土の悪い場合には、地表排水だけでなく地下排水にも適切な備えを施し、水がストークホール(ボイラーの炊き口)、メインパイプからの排水溝、ボーダーなどの人工的に作った貯留域に流れ込まないように注意する必要があります。

ストークホールなどがあって、その低地に水が入らないようにする手段がない場合は、トタン製のタンクを地中に埋めて、その中にストークホールを作る(こうして水の浸入を防ぎます)かまたは桝を沈めてそこに排水します。

コンクリート、硬化レンガ、水硬性セメント、またはこれら 3 つを組み合わせて、ストークホールから水が浸入しないようにしようと考えるのはまったくナンセンスです。

もちろん、ストークホールの排水が容易ではない場合には、もう 1 つ別の方法があります。つまり、ストークホールをそこまで低くしなくてすむように、ハウスの床を周囲の地面よりも高いレベルにすることです。


排水問題への対処法を決定するときは、屋根からの雨水パイプ(樋)の最適な位置をメモしておくことをお勧めします。縦樋を決して排水管に直接接続してはならず、格子桝(格子の蓋の着いた桝)に排出する必要があります。こうすれば、縦樋中を雨水とともに流れ落ちてくるゴミを簡単に除去できます。

園芸施設に排水管を施工する場合、厩舎やその他の屋外小屋などからの余剰水を排出する排水管もそれらに結合しなければならないことがよくあります。

園芸用ハウスの排水の問題はハウスへの給水と非常に密接な関係があるため、上記の説明と併せて雨水の収集、貯留、分配に関するセクションも一緒に読んでください。

2024年3月30日土曜日

19世紀末の園芸施設:7. 整地・測量

傾斜のある庭に小さなハウスや小屋を作る際にも参考になりそうな解説でした(経験のある人には至極当然な事でしょうが)。

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レベリング(水平の出し方)

レベリング(水平の出し方)は園芸用ハウスの建設、排水、庭の設計に関連する非常に重要な事項であるため、必要な装置、基本原則、そしてハウスへの適用法について述べるべきことがあります。

測量具

庭師/園芸家は、レンガ職人が普段使っているような下げ振りと水準器、竿とひも、測定棒、通常のガンターチェーン、 水平器(図13に示す)、そして 2本のレベリングスタッフ(票尺 、木製や金属製の目盛りのついた測量用の木製や金属製の棒)を持っておくと便利でしょう。 ガンターチェーンは長さ 66 フィートで、通常は真鍮のリングまたはタグで 10 個ずつにグループ分けされた100 個のリンクで構成されています (1平方エーカーは 100,000 平方リンクであることを覚えておいてください)・・・今はスチール製の巻尺に取って代わられました。

図13.-水平器

「道具小屋」のセクションで説明するツールなども参照してください。

測量の基本原則

地球は球体で、その表面は半径 3,956.5 マイル(約6367Km)の円周を形成しています。 したがって、地上で測った測地線は一見直線ですが、実際の測地線というのは当然、この円周の一部(曲線)のはずです。

表7 は 100 から 1,000 ヤード(91〜914 m)で実際のレベルより上にある見かけの高さを示しています。

表7  見かけのレベルと実際の違い(1ヤード=0.9144 m, 1インチ=2.54 cm)

大気の屈折についてもレベルの補正が必要です。大気の屈折は変化しますが、一般に1/7の曲率補正で求められます。屈折により対象物は実際よりも高く見えるため、曲率補正の1/7 を差し引く必要があります。

これらの点について説明すべきですが、曲率や屈折による誤差は水平をとりたい地面の中心に水準器を配置して測量することで回避できます。具体的に説明すると、

(図 14) A と E の間の真のレベルの差を見つける必要があるとします。まず、距離全体を適宜複数のレベル調整区間に分割します。この例では、A C と C Eの2区間に分割しています。:

図 14.  長距離測量の方法


レベリングスタッフ(票尺)を点 A と C に固定し、測定器をそれらの中間に配置し、2 つの票尺の読み値を記録します。

その後、この操作を C と E の間で繰り返します。

AとCの後視の合計とCとEの前視の合計の差がAとEのレベル差を表します。

したがって、A と E の間の読み取り値は次のようになると計算されます。

後ろから見て後ろが前を超えていれば、地面は上がっています。 前から見て前が後ろを超えて見えれば、地面が下がっています。

測量する距離が長く、中間点を都合よく取れない場合は、曲率と屈折で補正する必要があります。

しかし、これは、 (配水タンクと遠く離れた給水源を結ぶ、などといった)特定の場所について正確な高低差が必要な場合でない限り、園芸ハウスや庭園でその必要性が発生する可能性は高くありません。


整地面が地面に近い場合は、次の方法が採用できます。

- 水平距離方向にペグを地面に打ち込んでいきます。

通常レンガ職人がペグを打つ間隔よりもかなり短い間隔で水平を取っていく必要があります。 (図 15 を参照):--

図15. —短距離での測量の方法。

No.1のペグを固定点として、水平器の気泡管の泡が中心にくるようペグNo.2を上げ下げして水平をとります。

それから、同様にNo. 2を固定点として、No.3を上げたり下げたりします。 No2と同じレベルになるまで上げ下げします。次に、No. 3 を固定点として、No. 4で・・・と、 操作を繰り返します。 

この方法で、100 フィートや 150 フィートまでの距離なら非常に正確かつ迅速に地面に水平をとることができます。


園芸用ハウスにおける整地

起伏があったり傾斜が続く場所でどこに園芸用ハウスを建てるかを選定する際の重要な点は、可能であれば北側に土地の盛り上がりや防護物があり、くぼみがないか、であり、いずれにしても、南側に障害物があってはいけません。

もう一つ重要な点は、ハウスからの排水が容易になされるようにすることです。

地面がハウスの長さ方向にはかなり平らで、横方向にだけ凸凹がある場合、人為的に地面を平らにする必要はほとんどありません。

一方、ハウスの長さ方向に地面が平坦でない場合は、いくつかの方法があります。

ひとつめは、図16の A のように、ハウスの床のラインを地面の最高高さに揃えるように作ることです。 

図16.— 盛土されたハウスの鉛直断面図。


2つ目は、ハウスが非常に長く、かつ、残土を入手することも残土を捨てることもできない場合、それ以外の条件が変わらなければ、図17のように半分削って半分盛土することで水平を得ることができます。:—-

図 17.—半分が削土、半分が盛土されたハウスの鉛直断面図。


3つ目は、地面の傾斜やハウスの長さが極端すぎて上記の方法が実現不可能な場合は、図 18 に示すようにステップを切る方法を導入できます。

図18.—階段状のハウスの鉛直断面図。


この場合、ボイラーは最下端の最も低い地点に設け、ハウスに湯を容易に供給できるような深さと位置にしなければなりません。

この 3つ目の方法は、敷地内に異なる高さの通路ができるので一般に便利でありません。可能なら回避すべきです。 (「通路」のセクションを参照してください。)

(排水が困難など)何らかの理由で栽培用ハウスのレベルを全体的に上げる必要がある場合は、手押し車が利用できるように、階段状ではなくスロープ状の通路にすることをお勧めします。そうすれば、手押し車をスムーズにハウスへ入れることができます。

いかなる理由があっても、ガラスと木組部分のラインを図 19、20 のように地面の傾斜に沿ったものにしてはいけません。 :—

図19.—ハウスの標高が平坦でないハウスの鉛直断面図 (悪い例)。


図20. - ハウス自体が平らになっていないハウスの鉛直断面図 (悪い例)。


著者はこのようなハウスを見てきましたが、日常の園芸作業にとって不自然で、不便で、恐ろしく使い勝手の悪いものです。

図20のような長い通路が作られることはあります。 なお、図18に示すようにドアの位置は地面の傾斜に沿うようにする一方で、屋根はステップ状に高低差をつけていれば、際立って見映えのするものになるでしょう。その良い例として、クリスタルパレスからロンドンとブライトン駅につながる長い通路があります。

以上の注意事項はすべて、単独のハウスの場合だけでなくハウスを組み合わせた場合にも当てはまります。

ただし、組み合わせる場合、それを構成する個々のハウスは、可能なかぎり同じレベルにすべきです。

ただし並んだハウスのラインは、並びごとに異なるレベルにすることができます。

実際、レベルを合わせるためにコスト、見た目、実用性などを犠牲にするわけにはいかないでしょうが、可能な限りレベルを合わせるように努めてください。

コンサバトリーや園芸施設の床面ラインは応接室のレベルと合わせる必要がないなら、排水を促進するために地面から 2 段か 3 段高くすべきです。

住宅とつながったコンサバトリーの床面の高さは、マットの厚さ程度のわずかな違いでなければいけませんが、連接する応接室のレベルよりも低くしてはいけません。 (「通路」と「展示ハウス」の項を参照してください)。



2024年3月28日木曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:春真っ盛り

春めいてきたなぁと思っていたら、まもなく桜の開花宣言が出て、春真っ盛りです。

ここ福岡では4月中旬には蚊が出てきて、4月末には初夏の装いになります。行く春の早いこと!虫ガードせずに庭に出れるのもあと半月のお楽しみです。


ビオラ。冬から楽しませてくれてます。

クリスマスローズ。今年は切花にできるくらい茎が長い。

水耕栽培の後、庭に植えていたヒアシンス。やっぱりいい香り。

春の雑草もたっぷり茂ってくれています。

イタリアンパセリも茂って、料理に大重宝。

ソラマメに今のところアブラムシは来ておらず。逃げ込み収穫できるでしょうか?

桑も芽吹いています。実がたくさん収穫できますように。









2024年3月13日水曜日

19世紀末の園芸施設:6. 園芸ハウスの周囲と場所

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ハウスの周囲と場所

まずは、ここで取り上げられているハウスは次の3タイプです。


立て掛け式ハウスの例



3/4スパンハウスの例



両屋根ハウスの例


園芸用のハウスは通常、太陽光を最大限取り入れることができるように配置する必要があります。

太陽が毎日最大高度に達する時(南中時)の太陽の位置 (「天文」の項を参照) は、地平線の南点と天頂を結ぶどこかの位置にあります。 実際、イギリスでは15 ° から  62°の間の高度になります(図3, 図4)。 したがって、立て掛け式のハウスを建てる場合は、他の条件に問題がなければ、東西方向の壁に立て掛けて南向きに建てるべきです。

一年のうち、太陽が東からやや北に寄った方角から昇り、西からやや北に寄った方角に沈む時期(図7)には、当然のことながら、日の出後と日没前の両方、太陽光が遮られる時間帯が生じます。

この問題を避けるために、壁が高すぎなければ、4分の3スパン(スリークォーター)ハウスにすることができます。

北側に壁があればどんなハウスの内も周囲も、冷気からかなり守られるでしょう。

壁のない屋外の吹きさらしに建設しなければならない場合は、通常、両屋根(スパン)ハウスが最適であると考えられます。

この場合、棟は南北方向とし、側面が東と西に向くことになります。

こうすれば、ハウスの各面が太陽光を適切に受け取ります。東側面に太陽が当たるのは午前全部と午後の一部の時間帯となり、西側面に太陽光が当たるのは午前の一部と午後全部の時間帯になります。

場合によっては、この両屋根ハウスを90°回転させて、棟方向を東西方向とし、側面を北と南にすることがあります。

この場合、当然のことながら、ハウスの南側面の方が太陽光線を多く受け取り、北側面はずっと涼しくなります。

したがって、必要な太陽光の量が異なる種類の植物を同じハウス内で栽培することができます。

しかし、土地の選定上、制約を受けることがしばしば起こります。

立て掛けハウスの場合は真南に向けるのではなく、真南より東または西寄りに向くような壁に立て掛けるべきでしょう。

ハウスの東端は南に近いほど早朝の太陽が入ってこず、東端は北に近いほど午後の太陽が失われるということを覚えておかなければなりません。

壁が東西方向から大きくずれている場合、その対策の 1 つは、3/4スパンハウスを建てることです。そうしないと壁によって光線が遮られます。 

壁が東西方向ではなく、完全に南北方向のこともあります。

その場合、いくつかの対策があります。

両屋根ハウスを建設するなら壁はかなり低くてかまいません。 あるいは、3/4スパンハウスを建設することもできます。

あるいは、そのようなハウスを建てるには壁が高すぎて、立て掛けハウスしか建てることができない場合があります。その場合、ハウスが壁の西側にあるほど朝日の当たらない時間が多くなり、ハウスが壁の東側にあるほど午後の太陽が当たらない時間が長くなります。 

あるいは、まったく別の場所を選定しなおすのも手かもしれません。

複数のハウスを組み合わせて建設する必要がある場合もこれまで述べた原則がおおよそ当てはまります。


東向き、西向き、北向き、南向きの壁で四方を囲まれた庭の場合、立て掛けハウスまたは 3/4スパンハウスは4面のどの壁に建設しても問題ありません。

太陽光の量やハウスに当たる時間には4タイプがあります。

南の壁にあるハウスは、最も長い時間、最大光量を受けます。

西の壁にあるハウスは朝日はほとんど当たりませんが、午後の太陽はすべて受けます。

西の壁の、燃焼暖房がない(またはほとんど暖房を利用しない)ハウスは、早めに換気窓を閉めることによって午後に受けた太陽熱を保持し、夜間の温度低下を可能な限り抑えることができる点で有利だと考えられます。

東壁のハウスは西壁のハウスと同じ量の太陽光を受けますが、午後ではなく午前中に太陽が当たります。

北壁のハウスは日射量が最も少なくなります。特に涼しいハウスを必要とする場合に建てられます。

すべての説明において、例えば、西ハウス、西壁 (参照) といった表現は、西向きのハウス、西向きの壁を意味しています。


こういった配置の問題を検討する際には、栽培している植物の栽培方法、自由に使える土地の広さ、園芸用ハウスの形状、スペースの経済性、構造のコンパクトさ、アクセスのしやすさ、その他、その土地の状況や付随的な条件に大きく依存します。 

視界を考えた場合、木やその他の物体が太陽光線を遮る可能性がないかどうか、注意して観察する必要があります。

レベル(高低差)や排水などの問題も、非常に注意深く調べる必要があります。

栽培専用のハウスであっても、身内の女性が興味を持ち、時々訪れることが予想される場合、彼女たちの快適さと利便性を考慮して敷地を選定すべきです。 

19世紀末の園芸施設:10. 栽培温室---両屋根(スパン)ハウス

現代でも最も一般的な 温室屋根形状である両屋根タイプのハウス(スパンハウス)の記事です。現代の商業温室ではこれ を大きく、かつ多連棟化して大面積にしています。それ に比べると、19世紀の両屋根ハウスは面積も高さもかなり小さめで、今で言うところのホビー用温室、家庭菜園用温室といった...