2021年11月28日日曜日

水流れる庭:古代ローマから16世紀へ「The Gardeners Labyrinth」第5章

古代ローマでもイスラムでも庭に水の流れが積極的に取り入れられました。中世そして本書の16世紀においても水の流れる庭園は讃えられています。現代でも湧水や井戸、雨水タンクがあるといいですよね。水道代は高いので。



第5章 庭園の区画の配置と設置、庭園に必要な水の恩恵、その他有益な事柄について。

都市の近くに庭を作ることが当然必要です(と、Varroは言っています)。また、都市は甘く香るあらゆる種類の花のほか、ポットハーブや根菜類を大いに求めています。

市場に出すまで時間がかかる遠く離れた不便な場所にある庭園はどれも出荷がかなわず、その役割を果たすことができません。

カトは、都市の近くに作られた庭園を非常に賞賛しています。そこでは、ブドウの若い木とヤナギまたはコリヤナギの木が水辺の近くや湿地に植えられています。
そして、川水や湧水が庭地を流れています。
ここの非常に上手に肥料が施され整えられた広大な土地に、多くの薬草のタネが蒔かれました。さらに、人々が食するあらゆる種類の果樹が適切な時期に高度な技術で植えられました。
この巧者カトはまた、「都市の近くに造られたこの庭はどこも甘く心地よい香りの木とともに、ガーランドやポジー用の花、丸々として美味しい根菜類がある」、と書いています。「あらゆる種類のバラ、スイートジャスミン、大陸ノバラ、ギンバイカの木といったすべての植物が然るべき時期に種蒔きや植え付けされている。」

なお、ポットハーブやヤサイ専用の庭園(蔬菜園)は特に良質の土が必要です。十分に湿っていて、畜糞がよく混合されているかまたは巧みに施されている必要があります。

可能であれば、あるいは選択の余地があるなら、庭の区画は、納屋、干し草のロフト、厩舎から遠く離れた場所にすべきです。(植物にとっての敵である)藁のもみ殻やほこりで植物は酷く苦しんだり枯れたりします。偉人Florentinusが農業に関する彼のギリシャ語の指南書の中で述べているように、たくさんの藁が風で外へ吹き飛ばされ植物に落ちると、植物は傷つき大いに苦しみます。これについて、彼は「藁が落ちてくる際に植物に傷を付け葉が裂かれる。それによってどうしても熱傷を生じるからだ」と言っています。

適切に畜糞が根に施肥されることによって、どの庭園も繁栄します。
なお、木の枝や葉といった植物性の残渣を庭土に施用することは、熟練した庭師にしてみれば植物にとって益のない邪魔なことで、とても許せないことです。

立派な庭園というのは、区画が最適に称賛される配置になっているものです。いくらか傾斜のついた平地で、湧水の流れでいくつかの部分に分けられているような土地です。
ただし、庭の区画を流れるこの水路は、決して大きくなくてよいのです。

そして、庭園にかかる労力と管理が少ないことは、労力と管理が大きくかかる場合よりも多くの収穫をもたらし、労苦を全く感じさせないものです。

水路あるいは小川を楽しみたいので、少量の流水をもたらす井戸があるのは庭園にふさわしいことです。その流れは、若い木や草に甘水をまき散らし、特別な栄養を草木に与えます。

庭に井戸がない場合は、庭の便利な場所に深い穴を掘ります。
庭師にとって穴掘りは苦痛な労働かもしれませんが、そこから水を引くことができます。

プリニーが報告しているように、庭地には頻繁に水をまく必要があります。そうすれば、土に蒔かれたタネはすべて素早く発根し、かつスピーディに根を伸ばします。

水の湧き続ける穴は犠牲を払ってでも手に入れるべきものです。同じことをコルメラはこう言っています。「井戸を掘ることは、秋分の収穫前の9月のうちに太陽が乙女座に移動し占領するようなものだ」と。--->占星の知識がなくてわかりませんが、乙女座は初秋の収穫を意味する?

井戸となる湧水の場所を発見するには徹底的に調査します。その調査時期は、夏の長い干ばつ期間で、当然土に雨による湿り気が見られない時期が良いのです。


庭に井戸や湧水の穴を掘ることができない場合:雨水を貯めるために、レンガと石灰で底の平らな四角い穴または水槽を作ります。

これにより最も暑い夏の日にも、庭の栽培ベッドに水をやることができます。

しかし、これら対処方法のどれもうまくいかず、庭の地形の関係でうまく作れない場合は、パラディウス・ルティリウスの心を持って忍耐強く、さらに3〜4フィート(0.9〜1.2 m)深く掘り進めます。

専門的にきちんと管理され播種された栽培ベッドを低く作ることによって、夏の日の干ばつ時期に備える方がよいかもしれません。

それに加えて、庭地では、通路や畝間に水が溜まっているときに、あなたの判断であちこちに深い側溝を掘り、水が順次流下して行くようにすれば、水の流れは庭の低い場所や末端に作ったピット穴へと誘導され貯水することができます。

ここでさらに学ぶこととして、湿り気が望めないような庭の区画の場合は、冬の耕うんと植栽は南に向いて開けた場所で行い、北の1/4は夏のための場所として適切に区分けして側溝を配置する方法があります。

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