2021年12月4日土曜日

清々しく日当たりの良い庭:果樹園・蔬菜園・薬草園「The Gardeners Labyrinth」第6章

第6章では、古代より、庭は植物にも人にも清々しい空気や風や日当たりが求められていたことを述べています。16世紀の庭は、後世の壮大な意匠的庭園より、果樹園・蔬菜園・薬草園といった実用的な側面が強いので、家庭菜園好きには嬉しいです。 

 第6章 庭の利益となるもの、植物と同様に人間にとっても有害なもの。そして庭を所有者の家の近くに配置すべき理由について。 

 都市の近くで遊んでいる土地ではすべて、果樹園と同様、庭(蔬菜園、薬草園)も所有者が頻繁に通って管理することが求められるので、家の近くに配置するべきです。

庭には特に手間をかけ、畜糞をうまく施用しなければなりません。 畜糞の排液(液肥)と堆肥を与えることで、その土は自ずとハーブ(蔬菜・薬草・花)を生産してくれるようになります。

 庭に適した空気は、澄んでいて温和であることが最も良いとされます。良い空気は、庭のハーブを元気に育てるだけでなく、庭の散歩に喜びと快適さをもたらします。

 逆に、たて穴や側溝などから立ち上る蒸気が混じった邪悪な空気は、その庭で成長している植物やハーブを弱らせて腐敗させるだけでなく、庭を歩く人を息苦しく、ぼんやりさせます。

 それに加えて、刺すような風や霜は、植物に害をおよぼし枯らしてしまいます。

 Avicenna*は、空気について、太陽が沈むとすぐに冷たくなり、太陽が昇ると急速に熱くなり、どちらも人間にとっては刺激的かつ健康的であると書いています。 

 *(980-1037)ペルシャの多才な人物で、イスラム黄金時代の最も有能な医師、天文学者、思想家、作家の一人であり、近世医学の父と呼ばれる。(wikipedia) 

これに反するものは、人と植物に逆に働きます。 さらに悪化した空気は、直接吸い込むと心臓を縮みあがらせ締め付けるかのようです。

 こういった報告に加えてナポリの学識者ルティリウスは、「汝らの繊細さや健康には、低い谷からの霧や夜霧がたつ場所を避けるように」と述べています。それは人間と植物の両方を悩ませます。

 風の一般的な性質を書くつもりなので、ここではあまり異議は唱えませんが、最も単純な事柄について記しましょう。

 まず、東風と西風は、暑すぎず寒すぎない、中庸の性質を持っています。 このうち、東風はより乾燥していることが知られています。 さらに、東風は西風よりも暑いことが多く、古代の報告によると、西風は東風よりやや湿っています。 賢人フロレンティヌス**や他の経験者が断言しているように、ギリシャの法則として、すべての風の中で庭に利益があるのは南西の風であるとされ、特に賞賛されています。

 **フロレンティヌスは395年から397年までローマのウルバン県知事を務めたローマの政治家。(Wikipedia) 

 さらに、この空気が温和で穏やかであれば、その場所は健康的です。寒い国ではそれは南東風なので、庭の区画は南西ではなく南東に配置する必要があります。

同じように、樹木とハーブ類の両方が生える土地の場合、庭をこれらの2つの方位(南東、南西)からはずれた区画にすると、少なくとも、南東面、南西面でなく、最も大きくて高い丘に挟まれた区画の植物や立木は極度の寒さが長く続くと凍り枯れます。さもなくば、北面で太陽の快適さから程遠い庭の区画や、その他、太陽が低く弱く照る北西の区画も同様、植物や立木は凍り枯れます。

偉人カトは、もし可能なら庭は丘のふもとに在るべきと言っています。そして、南に向いた特に健康的な場所の庭を手に入れるか、そこに庭を作ることを勧めています。

北の高い丘を背にして南東〜南西に向いてひらけた庭は一日中快適であり、一年中四季折々、甘い果物を生産することができます。

しかし、暑い地域や国では、庭の配置はむしろ北東〜北西の向きに配置します。このような配置は、心身の健康と活力に役立ち、利益と喜びをもたらします。

沼地または湿地の近くに庭を配置することは、どこでも嫌われ、拒否されると思います。 たとえ庭が南または西の望ましい向きで、毎年夏乾燥しやすくても 、沼地または湿地の近くなら、沼地や湿地の周りの空気が集まり再び降りてくるので、邪悪な害虫の発生を引き起こし、庭に大きな害を及ぼします。

また、庭地の近くまたは周囲に水場、ゴミ場、あるいは側溝があるなら注意を払う必要があります。 大部分の場合、これらが不快なものを蒸発させたり呼吸させたりすることがあってもなくても、それらは人間と植物の両方に有害な可能性があります。 非常に多くの滞水域と沼地も同様の特性を呈します(むしろそのような特性です)。 そのため、所有者が選択できるのなら、庭や果樹園は滞水域や沼地の近くに配置することを控えることが、(このことを知っている)熟練者からの助言です。

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