2022年1月10日月曜日

中世から人気の園亭:「The Gardeners Labyrinth」第12章

今で言うトンネル状のトレリスが園亭(今だとVertical gardening? やや古風な日本語だと緑廊?)として中世から人気がありました。16世紀の本書でも作り方が解説されています。 その姿はイラストで一目瞭然です。

第12章  歩道や通路を巧みに配置した園亭作りのための様々な骨組み(フレーム)について。

The Gardeners Labyrinthの挿絵

針ケ谷鐘吉、西洋造園史(上は凝ったフレーム。下はブドウで覆っています。)


ジュニパー*のポールかヤナギにコリヤナギを伸ばすか結ぶかして、庭に骨組み(フレーム)を作ることができます。骨組みは結んで四角かアーチ状にした後、ブドウ、メロン、あるいはキュウリが伸びてこの骨組み全体を覆うと、日陰ができて、その下を歩く人や座っている人を太陽の熱や眩しさから守ってくれます。*バーブでお馴染みのジュニパーベリーが実るヒノキ科の常緑高木。

ほとんどの庭で見かける、骨組みのある園亭は、さわやかで、快適で、楽しみに満ちたものです。

これらの2種(四角かアーチ状)は、自立タイプにするなら、地中にポールの四分の一を刺し入れるようにします。あるいは壁に立てかけるタイプにします。その近くに美しいローズマリーまたは赤いバラを植えて、上へと這わせ、アーチ状に曲げます。(私が前に言ったように) ジュニパーか柳の枝のポールを使って、その下を歩く人の日陰になるようにします。

これにブドウやブリオニア、キュウリ、ひょうたん、その他、上へ伸びるさまざまな野菜を誘引すると、伸び茂ります。そうすると、私たちはもっとたくさんほしくなるでしょう。

私はまず蔬菜・ハーブ類について述べることといたしましょう。庭師は蔬菜・ハーブ類を植えて、立体の園亭に美しく伸びるように整えます。

そのためには骨組みのその曲がったアーチの上に伸びていくようにタネを蒔いたり植えたりします。

立体の園亭用に最も好まれる植物は、上に伸びるタイプで、香りよく味わいのあるものでなければなりません。それは、上へと高く成長するか上に向かって高くシュートを出し広がる植物です。この特別な喜びと楽しみのために庭に植えます。こういった園亭は塀付き園亭と名付けられています。それらは壁に寄りかかって設置されたり、支柱(ポール)の四分の一を地中に刺して自立するよう固定します。多くの庭で、その骨組みに沿って、ローズマリー、ジャスミン、赤いバラが伸びるように設計されます。 それは成長するにつれて、園亭を美しくします。しかし、これらの植物を庭地に覆わせることはしません。地面には草丈低く成長する植物を覆わせます。

この園亭から収穫物がもたらされ、そこに座る庭主の友人たちは、大地の豊饒と平和と繁栄の神 frelyrに会ったかのように、美しい庭を見て大いに喜ぶでしょう。

曲がりくねった立体園亭の組み立てや飾り付けには、ジュニパーのポールが最適です。このポールは、10年間手入れなしで使うことができます。

しかし、ヤナギのポールの骨組みは、3年ごとに補修する必要があります。

バラの木をこの立体園亭の骨組みのポールに這い上らせようとする場合、上手な庭主や庭師は2月中旬頃、月の第1四半期(新月から上弦の月までの約7日間)に準備します。栽培前のベッドは畜糞を含まない石の多い排水の良い土壌にします。

植え付け用のバラの木も、短くて狭い(小面積の育成用の)ベッドに植え、排水の良い土壌で注意して育てますが、庭師または庭主は接ぎ穂・さし枝から殖やすこともできるので、その場合は穂先を斜めにカットします。このカットした切り枝の長さは約1.5フィート(45 cm)とします。月が満ちゆく間(新月から満月になるまでの約2週間)に、両端でねじって、ベッド深さ1フィート(30 cm)に傾斜して埋めて、排水の良い土壌でうまく育てます。

古いバラの木は5年毎、月が欠けゆく時に、新しく植え変えて更新します。早く根着くほど、より多くのバラが咲きます。毎年、根の周りは新しい排水性の良い土壌に更新します。乾いた石まじりの土壌以外の肥えた粘土や湿った土では接ぎ穂・さし枝も古い根もうまく育ちません。 排水性の良い土壌に、1フィート(30 cm)間隔で並べて植えると、うまく育ちます。

そのような間隔で植えれば、バラはよく繁り、多くの花が咲きます。

土にバラのタネを蒔いた場合はゆっくりと発芽します。タネは軽くて排水の良い土、1フィート(30 cm)の深さに蒔きます。3月中旬頃なら定植する場所に直播きで、2月ならより暖かい場所に、月がこれから満ちてゆく時(新月の時)にタネを蒔きます。

ここに、有名なナポリの偉人パラディウス・ルティリウスの指南書から大いに学ぶことができます。指南書にはバラのタネについて書かれています。

ある人は(と彼は言っています)、バラの花の中の黄色い穀粒(黄金色です)が、タネになるとは信じないかもしれませんが、短くて小さな梨のような形のこぶに成長します。そのこぶが茶色がかって柔らかく感じられるようになったら、中のタネは 完全に熟しています。9月にそうなります。

庭主は、排水性の良い土壌のベッドに、香りのよい花をつけるジャスミンの木、ムスクローズ、ダマスクローズ、イボタノキの木も植えることができます。これらはシュートを伸ばして、この立体の園亭の上にひろがります。それが繁茂して太陽熱を遮ってくれるだけでなく、その下の野菜を大いにリフレッシュさせて、おいしい香りをつけてくれます。

しかし、あまり高く成長しない種類のバラを植える場合は、園亭のアーチ型は人の背丈よりも高く作られることはありません。 そして、この園亭は見た目をよくするため、とても手間がかかり、注意深く世話をする必要があります。

そのためイングランドでは、(より少ない労力で済む)ブドウの木が自立タイプの正方形の骨組み上に伸び広がるように植える人が増えています。それは四半分毎の支柱とひと幅分の棒で構成されます。

園亭ができあがったようになったら、庭地の便利な場所と歩道(ここでは大きな区画を想定して話しています)として、通路を作ります。通路の幅3、4フィート(0.9〜1.2m)としてラインでレベルをそろえて平らに踏みならして、川砂や海砂を敷き入れてきれいにします。 こうすれば、雨が降って、足に土がくっついたと歩行者を怒らせないですみます。

これらの通路や歩道は良い効果をもたらします。1つは、所有者が野菜や花の茂みを入念に見ることができることです。もう1つは、疲れた心に喜びと快適さをもたらすことです。一人で、あるいは友人と過ごす際に、心地よい景色や散歩時に香る花のよい香りを庭で楽しむことができます。そして、それは楽しい風景となり、記憶を鋭くし、淀んだ精神をリフレッシュします。コウモリ型またはアーチ型のフレームの立体園亭が多くの日陰を作り、庭に向かって適切に配置された窓(この骨組みには窓をつけたものもありました)はさらに完全な景色を作って、庭全体を美しくします。

ただし、裕福な人がギャラリーのように作った狭い小道は、庭に向かって完全に開かれていて、至る所に広がるブドウの木や彼らの好きな他の木で覆われているものです。 以上、庭地での歩道や通路の利点に簡単に触れました。

もし所有者が先に述べたようにしようとするなら、経験豊かな庭師は一本のラインで巧みに通路を作って踏み固めて砂を敷いてくれるでしょう。 

0 件のコメント:

コメントを投稿

19世紀末の園芸施設:10. 栽培温室---両屋根(スパン)ハウス

現代でも最も一般的な 温室屋根形状である両屋根タイプのハウス(スパンハウス)の記事です。現代の商業温室ではこれ を大きく、かつ多連棟化して大面積にしています。それ に比べると、19世紀の両屋根ハウスは面積も高さもかなり小さめで、今で言うところのホビー用温室、家庭菜園用温室といった...