2022年1月23日日曜日

タネ蒔きの準備、ベッドの成形:「The Gardeners Labyrinth」第13章

 11章でタネを蒔くベッドの土を準備したので、次はタネ蒔きかと思いきや、12章では園亭に寄り道でしたね。13章では注意深くベッドを成形します。タネを蒔くには念を入れて用意周到です。通路に排水溝を設けるなど、技の効いた解説もありますよ。


第13章。栽培ベッドの区画配置と適切なベッド周囲作り、および、タネまきやタネの選定と保管、さらに除草について。 


第13章の挿絵では、当時の男性のチャームポイントであった足のよく見えるタイツ姿の庭師がベッドを作っています。左はレーキをかけて均しているところ。右はスペード(シャベル・スコップ)で耕起してます。ベッドの長さは3.6mほど。すべてが人力ですから菜園のベッドサイズとしては見た目にも作業的にもいい感じではないでしょうか(非力な私には3.6mでも長過ぎですが)。


区画はよく耕起して、前もって良質な畜糞で肥沃にしておきます。糞を入れた土壌は、地面に設定したラインに沿ってベッドが見栄え良くなるよう成形して、ベッドの境界がわかるようにします。このベッドというのは、(コルメラが見たように)前もって畜糞を施肥して新たに作られたもので、土塊は砕かれ石は除かれた状態できれいにレーキがかけられ、3フィート(90 cm)幅で、庭の所有者または庭師が望む長さに巧みに成形されたものです。

しかし、特にその成形された幅は、除草する人の手が真ん中にまで届く幅になっています。少なくともベッドのそばに行って不要な野菜や草を除草するのは、タネの発芽時期や植物の植えつけ時期の間になります。

これを行うため、ベッド間の通路は(一人の人間が歩ける)適度な幅とします。その通路に沿って行き来すれば、最初にベッドの幅の半分を不自由なく除草し、次に残りの半分の幅を除草することができます。

(ナポリの偉人パラディウス・ルティリウスに従えば)ベッドでの踏み固めは狭くなければいけません。ベッドの長さは12フィート(3.6 m)で、区画が大きい場合の幅は6フィート(1.8 m)とし、ベッドの真ん中に容易に手が届くか、または少なくとも不自由なく、作業者がスピーディに除草できるようでなければなりません。

高い技術力を誇ったナポリ人は、湿った水っぽい(排水の悪い)庭の場合、ベッドは2フィート(60 cm)の高さに盛り上げ、そこに蒔いた種子がより良く繁栄し、成長するようにしました。 しかし、乾きがちな土地では、ベッドは1フィート(30 cm)の高さがあれば十分です。

ベッド間の踏み固められた小道は、適切な深さで平らである必要があります。それによって、ジョウロでベッド上面に穏やかに撒かれた水は、この小道に落ちると、簡単にベッドに浸み入って、植物の根へ水分と養分を与えます。そして残りの余った水は、水を必要としている他の通路や小道へ容易く流れます。それにより小道に沿って迅速に水が補給されて行き、すべてのベッドの水分状態がはるかに良くなります。最終的に余った水が小道にあれば、小道の真ん中に作られた傾斜した溝を通って、ベッドの区画からある程度離れたかん水目的のために作られた便利な場所に貯水されます 。

そして、この方法はベッドの役にも立ちます。強烈な雨が降り、水をすばやく運び去るこの溝がなければ、夜のうちにベッドが壊れている可能性があるからです。

こういったすべての考え抜かれた方法をもってして、庭師または庭主は、安心して土へタネを蒔くことができます。

こういったベッドの土にタネを蒔いた後、空気の透明度(晴天)または穏やかさが一定の日数続く可能性があるかどうかにも注意を払う必要があります。

なぜなら、気温と天候に恵まれて、日当たりの良い暖かい場所にタネを蒔いた場合は最も早く発芽して、土壌から芽が出てきます。そのためには、タネは新しくて良いものでなければいけません。タネの年齢(保存年数)を調べて知っておくことは大変役に立ちます。

したがって、庭師や庭主は誰でも、(M.Catoが言ったように)土壌に蒔かれる種子が古すぎず、乾燥しておらず、やせておらず、枯れておらず、また偽物でなくこと、そして、ふっくらとして新しく、水分があることをあらかじめ注意深く入念に調べておく必要があります。

庭師はタネについてこういった点を覚えていて、タネを蒔くときに思い出します。タネを蒔くときの風は北風ではなく南風または南西風で、特に寒い日でないことにも前もって注意すべきです。

なぜなら、(すべての技術報告書にあるように)そのような北風の季節や特に寒い日の土壌は蒔かれたタネを受け入れて栄養を与えるのが困難だからです。北風や寒い日のある土地では、そのような気象とは逆の、晴れて適度に熱い日が数日続く時期にタネを蒔きます。

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