2022年4月10日日曜日

16世紀のかん水方法:「The Gardeners Labyrinth」第24章

第24章は、16世紀のジョウロやポンプなどによる水やり事情が解説されています。今でも馴染みのある井戸の手押しポンプや手動で加圧する散水ポンプが、庭の栽培ベッドの配置も合わせてわかるような挿絵で描かれています。今は系統電源や太陽光発電などで電動ポンプを動かす時代ですが、人力のポンプも何だか楽しそうに思えてきました(毎日の仕事となると辛いでしょうが)。

第24章  庭のベッドに水をまくのに適した時間、どのような水が植物に必然的に使用されるべきであるか、そして最近発明された水やりに最適な様々な容器について。

月齢に合わせてベッドにタネを蒔いたら、(空気に十分な湿気がない場合)水やりに注意を払う必要があります。土の性質が良くても、非常に乾燥していて雨が降らない場合、種子も芽を出したばかりの柔らかい植物も萎び枯れてしまいます。

そのため、庭師は誰でも自分の庭の土の性質と状態を慎重に調べる必要があります。土自身が非常に湿っている場合、乾きすぎている場合、両極端について学ぶべきです。 庭のベッドの水やりは、もっと熱心に、もっと勤勉に、そして必要に応じて頻繁に行います。

そこで、庭主や庭師すべてにとって必要な季節毎の指示を解説いたしましょう。(私の書いた指示は)特に目新しいものではありませんが、生育中の植物に水をやるのに必要な日時について述べましょう。 あらゆる作物の最も若い植物体を見れば、干ばつの後や夏の旱魃が起こるような暑い日が長く続くときに、主に水やりが必要であることがわかります。それは、大犬座またはシリウスの上る頃、私たちの国では一般に7月17日頃にあたります。

そして、栽培ベッドへの水やりは、(プリニーが述べているように)朝の日の出の直後と夕方なら土に太陽の熱が少し残っている時に行うべきです。

本著者がプリニーと同じことを主張する理由は、正午のようにその日の暑い時間帯に水をまくことは、水が太陽熱によって熱くなっているので、植物の若く柔らかい根を煮てしまうからです。

そして、栽培ベッドへ水をやる際に、庭師は特別な注意と配慮を払う必要があります。庭師は植物を濡らしすぎないように注意し、少なくとも水をやりすぎて植物が膨れすぎないようにします。やりすぎると、その後、植物体を守っているワックス成分が弱くなって死んでしまいます。

植物の水やりに最もお勧めの水は、川から引き込んだり、川から流れ出たりしたものです。その他、狭い小川の満ちたり引いたりする水、あるいは湧き水が流れ込んで一方向に流れている軟水です。

しかし、庭師が特に深い井戸から汲み出した井戸水、または深い穴から汲み出した水を使用するしかない場合は、この汲み上げた水を2、3日間、または少なくとも 一定時間、太陽熱で暖めるために、戸外に置きます。少なくともこの水は、汲み上げたばかりの生水で、かつ冷たいので、水やりやベッドに散水したりすると、柔らかい若い植物を弱らせ枯らしてしまうおそれがあります。

植物の年齢もまた、水やりが必要な時に、どれくらい湿らせるべきかを庭師に教えてくれます。新しく出た柔らかい若い植物の場合は少なめでやさしい水やりが必要であり、 成長したハーブ類は適度に温かい水をたっぷりやると喜ぶでしょう。

そして、この水はじょうろまたは他の方法でベッドにやさしく振りかける必要があります。散水後、若いハーブの根が水を吸い上げるのを確認できるでしょう。早すぎたり多すぎる過剰な水やりになったりしてはいけません。適切な水やりによって、植物はむしろ克己精神を保ち、土壌の通気も可能となります。

一瞬でベッドに十分な水が行きわたることはないので、適切な水やりのためには、土壌と植物が吸水するように、水をそっと振りかけます。水と一緒に植物に肥料を与える場合、母乳や栄養のあるパップ(幼児・病人用の柔らかい食べ物)のように与えれば、若いまだ軟弱な植物はすくすくと成長するでしょう。そうでない性急な水やりは、若いひ弱な植物を非常に困らせ、死の危険にさらします。

太陽の下に置いた水に庭主や庭師が適度な量の糞を混ぜた水は間違いなく大いに役立ちます。この混合水で穏やかに水やりしたり広く散水したりすれば、同時に、若いひ弱な苗や成長中の若いハーブに適切な栄養を与えることにもなります。

塩水と同様冷水は、どの種類の植物にとっても有害であることが知られていますが、テオプラストスは塩水の方が水やりに適している特定の植物があると報告しています。

私たちの庭のベッド用の一般的なジョウロは、狭い首、大きな胴体、やや大きな底を持ち、小さな穴がたくさん開いていて、水を入れるための適切な穴が上部にあるものです。その穴に親指を置いて空気を閉じ込めれば、ジョウロを回転させたり底を垂直に傾けたりする際に良い助けになって、水やりが必要な場所に手際よく水を与えることができます。

この種の最高級のジョウロは、庭の場所から場所へと水を運ぶのにも簡単で最適です。ロンドンの最高級の庭や現在知られているイギリスの食堂の一角で、この形が多く使われています。本体はすべて銅でできており、大きな胴体と細い首をもち、同じ銅製の丈夫な持ち手が胴体と首部に巧みに固定されており、必要に応じて庭のあちこちに持ち運ぶことができます。 

しかし、水で満たしたジョウロを真っ直ぐに持ってもっと容易に迅速に運ぶには、海外に運ばれる理髪屋の水瓶(Barbers water pot) のように、ポットの口に巧みに固定されたもうひとつの強力なリングまたはハンドルのふたが役に立ちます。それは運搬以外の役にはたちませんが、水で満たされたポットを必要な場所に運ぶのを容易にします。

しかし、これの一方に付いたハンドルは、特に、小さな穴がいっぱい開いた頭部を持つ長いパイプから水を噴出させるのに役立ちます。これは、ポンプと呼ばれることもあります。これは容器の底からジョウロの頭部まで繋がっていて、このハンドルが水をジョウロの長いパイプへと導き、容器の水がすべてなくなるまで巧みに水を導き散水します。

庭師が地下またはそのすぐそばにポンプを持っている場合は、長くて幅の狭い雨樋(溝通路)を使って、庭の全てのベッドへ水を直接引くことができます。その間の経路に沿って多量の水を必要とするハーブの根にまんべんなく十分に届けることができます。

この方法を理解してもらうために、次にわかりやすく図化しました。

[庭の雨樋を使ってポンプで水やりする方法]


水を汲み上げて、噴出口を胸あたりに設置したスズで作られた大きな噴水でベッドに散水するものがあります。水を上向きに噴出させれば、噴出口から雨のようなしずくにして植物に散水することができます。さまざまな時間にベッドの上へ散水することで、植物に十分な水分を供給します。

植物やハーブに水をやるのに、お薦めの、もっと簡単な別の方法は、噴出するように成形されたスズの大きな容器による方法です。しかし、それは分割されている点が異なります。そのため、これは同じ金属のパイプが下から立ち上がっていって、とても高くまで到達する方式です。水が打ち出される上部または末端に多くの小さな穴が付いている大きなパイプ方式で、小さなポンプ方式の後に作られたより大きなパイプによる方式です。そのパイプの地下側の末端に、小さな穴がいっぱいある錫の厚い四角いプレートが巧みに固定されていて、ポンプ当番が両手で十分押し下げることによって、水を汲み上げ、強制的に送り出します。

このようにして準備された装置は、深い容器または水槽にセットする必要があります。庭主や庭師が最初にポンプで水を汲み上げ始めようと考えている場所で、力一杯手で押し下げれば、水を上昇させ、セットした高さのパイプ穴から水が放出します。こうして、水滴が空中を落下し雨の形となって、所定の場所に十分な水が与えることができます。その後、庭師は水槽と容器を別の水やりが必要そうな場所に移すことができます。 3〜4か所で同様に行えば、庭のベッドやボーダー全部を十分に湿らすことができるでしょう。

水槽を備えたこの容器の形が容易に想像できるように、ここに忠実に描かれた図をご覧ください。

[水槽にセットしたポンプによる水やり方式]


庭に池があったり、そばを小川が流れているなら、庭主や庭師は恵まれています。木の装置(ほとんどの人はスキフ(一人でかいで漕ぐ小舟)と呼んでいます)を使って、非常に簡単迅速に庭のすべてのベッドに十分水やりすることができます。

キュウリ、メロン、ウリなどの多くの水分を与えれば最速で成長するような植物にとっては、この方法は十分ではなく、庭師は苦労するかもしれません。ウールや織りの布の端切れの片方をトングのように鋭くカットして、水を満たしたポットの底に置き、カットした端を外に垂らして4本の指の深さにします。ポットはいくらか前に傾けます。これにより断続的に水が滴ります。上記の植物の成長にしたがって滴る速度が増します。この方法を実践するには各植物に一つずつこのようなポットを用意します。この方法はフィルタリングと呼ばれています。

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