2022年10月29日土曜日

Purslane(パースレーン/スベリヒユ)とRocket(ロケット):「The Gardeners Labyrinth」第48章

パースレーン(スベリヒユ)は洋の東西を問わず広い地域で古くから食されてきました。ヨーロッパ中世の人気ヤサイであり、日本でも最古の農業書に載っています。洋風でも和風でも中華でもエスニック料理でも使えるヤサイなので、もっとたくさん市場に出回るといいな〜と思います。(日本の保存方法「ひょう干し」とはひとあじ違う保存方法も書かれています。)

第2部第16章 パースレーンおよびロケットの播種と栽培に必要な技術と管理



The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。
左がガーデンパースレーン、右がガーデンロケット。

<<パースレーン>>

ガーデンパースレーン(スベリヒユ)は丁寧に植えられていれば、一面に広がり、より厚い葉を収穫できます。

このハーブは耐寒性がないため、2月から6月の間に播種する必要があります。

パースレーンは古い糞を混ぜてよく耕したベッドか、非常に肥えた土地あるいはキャベツや玉ねぎ、ネギの間に播種します。

そして、この楽園でパースレーンは一年を過ごした後は、庭師を苦労させることなく、毎年自発的に生えてきます。ただし、毎年確実に収穫したい場合、生育の最後まで頻繁に水やりすれば大きな成長と厚い葉が得られるでしょう。

種子は茂りすぎていない木陰に蒔かなければなりません。そうでない濃い木陰の下では成長が悪く、葉が小さくなります。

パースレーンはガーデンハーブの 1種で、油、酢、少量の塩と一緒にサラダとして最初に出されます。おしなべて金持ちの食卓で贅沢好みの美味しい料理として、多くは冬の食卓で最初に出されます。 

次の方法で保存します。

根を取ったパースレーンの最も大きい茎と葉を集めます。その中の (軽く腐敗して枯れている)小さな葉柄はとって水できれいにして細かい砂を完全にすすぎ取ります。それを吊るし、汚い葉や壊れた葉があればすべて除去します。

それを長い間、ある程度枯れるまで日陰で乾燥させます。そうしないで横に置いたままだと(大量の湿気によって)カビが生えたり腐ったりするからです。

その後、これに酸っぱいぶどうで作った果汁(バージュース)をそそぎ、フェンネルの緑の茎葉を厚く散らしかけて、ガラスコーティングされた土鍋に入れます。ガラスコーティングの土鍋がなければきれいな木の器に入れます。

この後、その上に塩を十分にまぶし、その上に再びフェンネルの緑葉を置き、パースレーンをさまざまな方向に並べて敷き、さらに塩とフェンネルを満たし、この上にパースレーンを敷いて、厚くフェンネルを撒き散らします。このように層状に重ねて土鍋の中で落ち着かせます。

これがすんだら、酢2にバージュース1の割合で作った調合液を器の口の縁までいっぱいに注いで容器を満たします。

この調合液はいわばピクルス液、ソース液であり、最後に蓋をしてきつく閉じます。これを日が当たらない乾燥した場所で保管します。少なくともそのような場所であれば、中の物は確実にかびくささやかびを回避することができます。

パースレーンが上に浮かずに、常にこの漬け液に十分浸かっているようにします。料理に使用する時には温水またはワインでまずパースレーンをきれいにしてから油を注ぎます。

これは高級料理として食卓に出され、食事に来たゲストの食欲をそそります。

<<ロケット>>

ロケットはレタスのサラダに入れます。ロケットと逆の気質をもつレタスの特性を和らげることができるので、結果的に、ロケットなしのレタスサラダを肉と一緒に食べることはめったになくなりました。このように良い組み合わせのサラダは人々の食欲をよりそそり、より多くの健康をもたらします。

偉人ガレンは食物に関する自身の著書の中で次のように述べています。

ロケットなしのレタスやパースレーンのサラダを食べる人は誰もいませんし、逆に、レタスやパースレーンの入っていないロケットサラダもありません。。

片方は性的行為を冷やして害を及ぼす一方、他方は温める効果があるので人に有益となります。

ロケットは夏と同様、冬にもタネを蒔いたり植え付けたりできます。ロケットは寒さにも、その他の天候不良にも耐えてくれるので、タネまきやその後の栽培に手間がかかりませんが、 頻繁に雑草を取ることは強く望まれます。なお、砂地や荒地にタネを蒔く場合は、前もって十分準備しておかなければいけません


パースレーンおよびロケットの薬効と処方。

<<パースレーン>>

パースレーンは第3度の冷たさと、第2度の湿気をもっています。鎮静や潤すためには生の緑の葉を使用することをお勧めします。(乾燥したものの用途と効果は限られます。)

パースレーンは適度な冷たさがあるので、頻繁に当てて冷やすことで熱気や胆汁質のイライラ熱を和らげ、灼熱に苦しむ人を助けます。

そして、酸っぱいものを食べて驚いたりイライラした歯(歯がしみることでしょうかね?)はパースレーンの新鮮な葉を食べるだけで直す効果があります。

パースレーンのジュースを帯状疱疹に当てれば効果があります。性行為の抑制および睡眠の軽減にも効果があります。

このハーブはお腹の虫(寄生虫)を追い出し、ワインと一緒に飲めば危険な赤痢の下痢を緩和します。

パースレーンの煎じ薬を口の中にしばらく含めば、歯の痛みがなくなります。体表面の炎症にジュースを塗れば改善します。

胃のむねやけやつかえのある人は新鮮なパースレーンを食べることですっかり良くなるでしょう。

パースレーンのジュースを飲めば内臓の熱を強力に冷やします。その葉を食べれば、秘部の潰瘍を改善します。目には危険ですが、体をいくらか冷やす効果があります。

パースレーンの膏薬を作って大麦の粉(大麦ミール)と混ぜて、熱をもつ潰瘍に塗布すると(体内で潰瘍が腐る恐れがある場合)大きな効果があります。一つの四肢から他の四肢へと広がる内部の強烈な熱がある膿瘍であるなら、大いにその症状を和らげてくれます。

パースレーンはまた、潰してワインと調合すれば、頭の潰瘍を取り除き、頭をすっきりさせます。

これを塗ると目の腫れが和らぎ、吐血が抑えられます。

ただし生で食べると、胃の中はじめじめした胃液で満たされてしまいます。

毎日食べれば、性行為への欲求が和らぎます。

酢と一緒に食べると、焼けるような熱が取り除かれます。 

大麦ミールと一緒に潰した葉を加熱して胃に当てれば、月経痛の女性へと効果と同様、胃を温め、短時間で痛みを消してくれます。

口の中でパースレーンをかじると鼻血に効果があります。額にジュースを塗っても同じ効果が得られます。

パースレーンを大麦ミールと混ぜて膏薬にして貼れば、頭痛がなくなり、目の熱が消え、危険な赤痢の下痢が止まります。腎臓も膀胱もどちらも丈夫にします。

ジュースにして飲めば、焼けるような熱を和らげ、お腹の虫を駆除し、吐血を防ぎます。

glister wise(意味がわかりませんでした。)でジュースを処方すれば、女性の腸(膣のこと?)内の擦り傷を和らげ、頭から蒸留水を処方すれば内部のプライベートな部分の苦痛を和らげます。

パースレーンのジュースをバラのオイルまたはオリーブオイルと一緒に頭に塗ると、日射病による頭痛や爆風によってできた危険な傷に効果があります。猛暑下、大麦ミールと一緒に塗れば熱さを強力に和らげてくれます。

このハーブを(大いなる目的として)落っこちて泣いている乳児のへその上に塗って、このハーブを噛むか沸騰させた汁を飲ませれば、その痛みや歯のぐらつきを止めます。

生のジュースを食せば、口腔内の穀粒や潰瘍および歯茎の腫れを和らげます。

ギリシアの農業書の著者であるレオンティノスは、パースレーンの葉を喉の渇きに苦しんでいる人の舌の下に含ませれば、頻繁な喉の渇きを和らげると書いています。

そしてプリニーは、そのジュースをイボやコブに何日も塗れば、イボ・コブが取れると書いています。

彼はまた、乳房や痛風の炎症はパースレーンとハチミツのジュースによって和らげ、癒すことができると書いています。

前述したプリニーの報告によると、このハーブの根を糸で(首の周りに)ぶらさげると、口蓋の落ちる痛みを取り除きます。これは、彼が書いているように、イタリアの裁判官に起こったことのようです。

<<ロケット>>

ロケットは第2度の熱と湿気の気質をもっています。その種子と葉だけが薬用に使用されます。

このハーブは茹でて食べれば、男性の精子を増やします。アイギネタは目撃したこととして、ロケットは加熱することで大きな薬効を得ることができ、精子を増やし、従って性行為への欲求を刺激するはずだと言っています。 なお、(頻繁にそれだけを食べると)頭痛とめまいを引き起こします。

ロケットは強烈な熱を発生させ、頭痛を生じますが、レタスとビーツと一緒に煮たガーデンロケットは害を及ぼすことはなく機能して、授乳中の女性や乳母の母乳を増やします。

ロケットを食べ、そして膏薬のように塗ると、尿が出て、お腹がゆるくなり、胃が楽になり消化を助けます。

雄牛のゲージ(睾丸?)と混合したロケットのジュースは、黒い傷跡を白く戻し、このジュースを蜂蜜と一緒に塗れば短時間でニキビや顔の凸凹(あばた)を修復します。

このジュースか種子をハチミツと混合して、頭に塗って頻繁に食事と一緒に摂取すれば、頭の Nits( ?)と虫を駆除します。ただし、ロケットを頻繁に使用すると腹を掴まれたようになります。

ロケットの根を柔らかく煮て潰し、折れた骨や打撲傷のある骨に膏薬のように用いれば、痛みを和らげます。

砕いた種子をワインに入れて飲めば、毒獣の咬傷を癒します。

有能な医者は、ロケットの葉3枚を左手で集め、沸騰水で煮た後、ハチミツを混ぜ合わせて飲むと、黄疸と精巣の硬くなった腫れものに対して驚くほど効果があると報告しています。


パースレーンの蒸留水の優れた薬効。

パースレーンの茎や葉は5月末頃に蒸留器(バリー マリー)で蒸留します。

パースレーンの蒸留水は朝晩、一回につき 3オンスを3、4日間飲むと、吐血や危険な赤痢の下痢を改善します。

この蒸留水を一度に同量(3オンス)飲むと、下痢を抑え、熱く乾いた咳が止まります。これは、肝臓の熱に対して効果があり、喉の渇きを止め、疫病を癒し、息切れを取り去ります。

この蒸留水は乳幼児の熱と虫に対しても効果的で、朝と晩1回につき2オンスまでを飲ませます。

パースレーンの蒸留水2オンスにオオバコの種子を一晩浸し、これをスポンジにたっぷり浸して、舌を 1 日に 3、4回洗浄します。熱中症やその他の病気の高熱によって暗闇(意識不明?)に陥りますが、これは短時間で回復します。

この蒸留水をそのまま飲んだり飲み物に混ぜて飲んだりすれば、炎症を起こした血液を冷やし、膀胱の痛みを和らげます。

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おまけ

山田養蜂場さんからのDMでいただいた美女ナデシコのタネを蒔きました。タネ蒔きは月が満ちていく時期に、と「The Gardeners Labyrinth」にさんざん書かれているのに、すっかり忘れて満月の10月10日に蒔いちゃいました(笑)。そのせいか単なる栽培下手か、かよわく生育しています。







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