2022年11月15日火曜日

Buck's Horn(バックスホーン), Strawberry(イチゴ), Mustard Seed(マスタード):「The Gardeners Labyrinth」第50章

 大人も子供も大好きなイチゴの章です。当時も愛されていたことがうかがえます。当時のイチゴはイバラの実くらいの大きさだったようですが、赤だけでなく白い実もあると書かれています。

イチゴのほか、 日本ではあまり見かけないイタリア野菜のバックスホーン、ホットドッグにつきもののマスタードシードを採るマスタードもあわせて解説されています。

第2部18章 バックスホーン(エルバステラ)、イチゴ、マスタードシードのタネ蒔きと栽培に必要な管理と技術。

バックスホーン/ハーツホーン

イチゴ(左がレッドストロベリー、右がホワイトストロベリー)

マスタード(引用書にはたくさんの種類のマスタードが掲載されています。その中の4種。)
The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。

[バックスホーン]

バックスホーンあるいはハーツホーンは葉に甘味があり、やや塩味(苦味?)がしますが、今日では庭に植えられ、毎年サラダとして楽しまれています。蒔く前にわずかな労力しか必要としません。前に整備されていれば、このバーブのために土を耕したり整えたりしないでも十分育ちます。

しかし、園主がこのハーブを厚く茂らせ、見た目もきれいにしたい場合は、頻繁に葉の先端を切り取り、頭部にある程度重さをかけるか、足で適切に踏む必要があります。そのように上手に栽培すれば、このハーブは下向きに成長し、面積を広げ地面を覆います。

このハーブに特別な風味や味はありませんが、夏のサラダに好んで用いられます。

[イチゴ]

イチゴを大地で栽培するには労力と熱心さが必要です。

単独でベッドに植えられるよりも、むしろ他の植物の影の下で成長することを望んでいるという点で、イチゴは庭のいくらか影のある場所に植えられるのを好み、場所の節約になります。

高い木の陰に植えれば、イチゴは地面を手入れしなくても繁栄してくれます。

ここで、イチゴの驚くべき無毒性について記しておきましょう。

イチゴは地表を這う性質を持っていて、さまざまな毒物がイチゴの上を這い回りますが、イチゴは決して有毒な伝染病に感染しません。特筆すべきは、このハーブ (の特性) には毒との親和性がないことです。

庭師の熱心な栽培によってこのハーブは非常に大きく成長し、生垣のイバラの実のようなきれいで大きな実をつけます。このことから、ヴァージリアヌス・セルイウスはイチゴを地面のマルベリー(桑)と呼んだのでしょう。

熟練した人たちは、熱心さと管理によって、本来の赤い色から目にもおいしい真っ白な実を作りました。

[マスタードシード]

マスタードシードは肥えた土地に蒔かれることを好みます。冬の前か後に細かい粉状の塵が混じった土に播種します。地上に出てきたら頻繁に雑草を除草し、水をやる必要があります。

ただし、マスタードシードは勝手にどんどん増殖し広がっていくので、あまり厚く蒔いてはいけません。

マスタードシードはいったん大地に根を張ったら、その後は根ごと引き抜くのは難しく、種子は5年間保管することができます。新しい種子ほど種蒔きにも食用にも適しています。

種子は歯で噛み砕けるのが良い点だと認識されています。

種子は中が緑色や白色がありますが、もし白色ならその種子は古く、播種にも食用にもできません。

食用に種子を保存しておきたいなら、本葉が芽生えたらいったん引き抜いて、その苗を十分距離をとって植えつけます。 それによって地上部が茂り、より広く成長します。なお、種子を収穫したい株は1回植え付けたらその場所から抜いたり植え替えたりすることはできません。


バックスホーン、イチゴ、マスタードシードの薬効と使用方法。

[バックスホーン]

バックスホーン/ハーツホーンには熱と乾燥の性質があり、そのため、これを飲むと、腹の締め付け感が消えます。そう、これを使用すれば、関節の痛みを和らげ、関節を強化し、関節内の邪悪な物質を排除します。

ディオスコリデスの考えによれば、このハーブは結びつける性質を持っているので、赤ワインに入れて摂取すれば危険な下痢に対して効果があります。

ある報告によれば、バックスホーンまたはハーツホーンの4本の根を念入りに首にぶら下げたり、両手の脈をとる場所に結んだりすれば、短時間で熱を鎮めたり、少なくとも足の熱や灼熱感を和らげてくれます。

その実はハーブのイチゴと同様、3度の冷却と保湿の特性をもっています。このハーブ自体は1年以上持続することはありません(多年草ですが、冬にはいったん枯れるということ??)。

[イチゴ]

ヴィゴニウスの書物で、イチゴの葉は特に冷たい性質をもっていると断定しています。このハーブにザクロのワインと少量のローズウォーターを混ぜたジュースは熱をもった膿瘍に(でき始めと肥大中のどちらでも)驚くほど効果があります。

白ワインおよび少量の砂糖と一緒にイチゴの果実を食べると、脾臓の硬さや腫れを驚くほど改善してくれます。この果実ジュースをハチミツと一緒に摂取し、葉はいろいろな時にお風呂で使用すると、結石に対して最も効果があると言われています。

葉と根をきちんと処方すれば、潰瘍も傷も治してくれます。

これはまた出産(陣痛?)を引き起こしたり、赤痢の血の混じった下痢を抑えたり、利尿効果があります。この葉と根の煎じ薬を飲めば、肝臓の炎症を和らげ、腎臓と膀胱どちらも浄化します。

もし誰かが腰のひどい苦痛や痛みでひどく苦しんでいるなら、イチゴの葉を3つかみか4つかみ取って、柔らかく煮て、お風呂に座って、下半身を下から上に(その葉と煮汁で)よくこすります。

そのあと、暖かい布で身体を完全に拭いて乾かして、以下のように準備した軟膏を塗ります。 

マーチ・マローの軟膏を1オンス(28 mL)取り、これに0.5オンス(14 mL)の石蜜と1ドラム(常用ドラムなら1.77 g)のワックスを混ぜて、弱火で軟膏を作ります。

これを患部に塗れば、腰の痛みが和らぎ、凝った箇所が柔らかくなるだけでなく、利尿作用があります。

イチゴの葉と根の煎じ薬を口に含み、歯を洗ったり歯茎をこすったりすると、歯茎を強化して歯のぐらつきをなくすだけでなく、頭からの蒸留(のぼせ?)を抑えます。

夏にイチゴの実をクリーム、砂糖と一緒に食べると、素晴らしいリフレッシュ効果があると考えられています。ワイン、砂糖と一緒に食べるよりもこの方法の方がもっとお勧めできます。

このような方法は、胆汁症(イライラ性)の胃や胆汁症の顔色の悪さを驚くほど冷やし潤してくれます。

イチゴの実を押し潰して作ったジュースとオオバコの蒸留水をそれぞれ 8オンス(224 mL)ずつ加えた混合物に 2オンス(56 mL)のバラのハチミツ、1オンス(28 mL)のマルベリー(桑の実)のジュース、白いギリシャ(?)の樹脂、およびザクロの花をそれぞれ1ドラム(常用ドラムなら1.77 g)ずつ加えてよく叩いて混ぜ合わせた後、これで何度も口の中を洗ってうがいすれば、短時間のうちに喉の膿瘍を取り除いたり片付けたりしてくれます。

イチゴの実から得られるそのほかの薬のなかでも、イチゴの実から搾ったジュースやワインは、肝臓の熱によって生じる顔の大きな赤み、斑点、赤い吹き出物を取り除くための最高の治療薬です。 目の赤みや斑点、頭部からの熱い蒸留(のぼせ?)は、イチゴのジュースやワインを何度も点眼すれば、症状を和らげ癒してくれます。

イチゴの根と葉をワインで煎じた薬は、いろいろな朝に空腹時に服用すれば黄疸に驚くほど効果があります。

根だけを使った煎じ薬を飲むと、肝臓の熱をやわらげてくれます。従って、朝にこれを飲んで昼にこのハーブ(イチゴ)を酢と少しの白胡椒で食べれば、腸内ガスを簡単に出す効果が非常にあります。

また、イチゴの実を食べると、喉の渇きを止め、冷ましてくれます。イチゴの実は胃に効果がありますが、特に胆汁質の人(イライラする人)に効果的です。

[マスタードシード]

マスタードシードは4度の熱質・乾質をもっています。ナタネに似ていますが、ナタネの種子はもっと苦く、マスタードシードは酸味があります。

マスタードシードの良さはそれを潰すことによって引き出されます。(新しく集められたものでなくても)白色で内部が湿っている種子が利用するのに適しています。

これは熱をもたらす効果と熟成の効果があります。

マスタードシードは、有能なディオスコリデスが報告しているように、衰弱した人を暖め、力を引き出す効果があります。

エヌラ カンパーナ(ヒマワリ科キク科の植物)の新鮮な根と一緒にマスタードシードを潰して膿瘍に塗れば、痛みなく膿を出すことができます。

マスタードシードを酢と一緒に潰したものを毒獣の咬傷に処方すれば、すばやく治してくれます。

マスタードシードを噛んで舌の下に含めば、舌の麻痺を治します。この種子は、体のあらゆる部分で発生するどんな種類の麻痺にも効果があります。リネンの袋に種子を詰めワインで煮たものを麻痺した患部に当てますが、特に病気の初期に使用するのが効果的です。

この種子を潰してクミンおよびイチジクと一緒にさまざまな朝に摂取すれば、腫れに届き治癒します。

この種子を水、ハチミツと混ぜたもので何度もうがいすれば、口腔内の水ぶくれや口内炎を改善し、喉の腫れを和らげます。

マスタードシードのジュースはさまざまな朝の空腹時摂取すれば、記憶力を高めます。この種子から抽出した油は、冷えた痛風の発作、坐骨神経痛、および弱った筋に対する最高の軟膏です。 

マスタードシードのジュースを点眼すると、目のかすみや斑点、もやが消えます。これを食べれば、のどの渇きを生じ、性行為を引き起こします。

毎朝空腹のまま一回につき2粒のマスタードシードを飲み込めば、その日は病気から解放されるでしょう。

マスタードシードの種子をワインで煮たものを飲むと、息苦しさが和らぎます。

この種子の粉末を鼻で吸い込むと、くしゃみを鎮めるだけでなく、脳を驚くほど浄化し改善します。

同量のマスタードシード、ピレトリウム(夏白菊)、ショウガを潰して、バラのハチミツとよく混ぜた後、これで口をすすぎ、しばらく口に含んでおくと、脳の悪い体液を驚くほどきれいにします。その悪い体液によりひどい頭痛が最もよく起こります。

これは口蓋垂の落ち込みや喉の潰瘍も改善します。

(ディオスコリデスが書いているように)マスタードシードを食べれば、頭部に集まった体液(痰)を口から排出し浄化します。

このハーブのジュースを水、ハチミツと混ぜて、これでうがいし口の中にしばらく含んでいれば、あごに長年ある固いこぶや腫れを取り除きます。

その粉末を鼻で吸い込めば、頻繁に生じるくしゃみを癒します。そのような病状に効果があるだけでなく、子宮の窒息(収縮?)や流産に効果があります。

そして、頭のぼんやりした状態や頻繁に眠ってしまう症状(先に示した頭)に対しては、この種子の軟膏や塗布剤が有効です。

マスタードシードをワインで煎じたものをしばらく口に含むと、冷たさによる歯の痛みが和らぎます。

これを飲めば、膀胱の結石を破壊し、出産予定日(?)をもたらします。

澄んだ歌声を切望する人は、マスタードシードの食事を取り、(それを蜂蜜で処理して)マスタードシードの小さなボールを作り、毎日1ボールを摂取する必要があります。 そうすれば、短時間でクリアな声を手に入れることができます。


イチゴおよびマスタードシードの植物(マスタード)の蒸留水の薬効

[イチゴ]

イチゴの蒸留に最適な時期は、その実がほぼ熟しているが熟しすぎて柔らかくなっていない時です。蒸留器バリー・マリエで蒸留する前に、集めた実に砂糖をまぶしてカビが生えるまでグラスで覆っておきます。 

丘の上の森で育ったイチゴの実が蒸留するのに適しています。

イチゴの蒸留水を飲んだり、飲み物に混ぜて飲んだりすると、悪性の熱や不自然な発熱を和らげ、喉の渇き、肝臓や胆汁質のイライラの進行を止めてくれます。

この蒸留水を朝晩、一回につき4オンス(112 mL)飲めば、肝臓を冷やし、乳房を緩め、心をリフレッシュし、血液を浄化し、王の悪(リンパ腺の結核性の腫れ)を癒すだけでなく、腰部、腎臓、膀胱の結石を破壊します。

同様の量を飲めば、水ぶくれや口腔内の痛み、喉の潰瘍や腫れに効果を発揮します。また、この蒸留水で口やのどのうがいをすれば、強い口臭、歯茎や歯の症状の進行に効果があります。

同様に、この蒸留水を女性が飲めば、浄化し出産予定日をもたらします。

朝と夕方(または少なくとも朝に)この蒸留水を1回につき 4オンス(112 mL)飲み、その蒸留水をリネンの布に浸して、1日 2回、骨折した脚に当てれば、短時間で回復し、骨折を癒します。

毎日、朝と夕方に汚れた足を洗った後、この蒸留水を濡したリネンの布を当てれば、どんな汚れた足も癒します。

同様に、もし汚れた傷をこの蒸留水で洗うか、この蒸留水を飲めば、傷を癒します。また、この蒸留水で頻繁に顔を洗えば、顔のむくみを和らげます。

朝晩、この蒸留水を1回につき最大4オンス(112 mL)、1オンス(28 mL)の純粋なアクア ヴィテ(モルトスピリットの酒)と一緒に飲めば、この飲み物は血をきれいにするので(間違いなく)ハンセン病の人に効果があります。

さまざまな時間に使用するか、あるいは、白パンのトーストをこの蒸留水で湿らせたものを空腹時に食べてば、ただれた皮膚のうろこ状または痂皮状(スカーフ)や体表面のかさぶたが取り除けます。

この蒸留水を砂糖でよく焼き戻した後、蒸留器バリー・マリエで再度蒸留した蒸留水は、さまざまな目的にかなうものです。

すなわち、この蒸留水は目を冷やし、きれいにし、目の斑点を取り除くだけでなく、生理的欲求を慰め、毒を排出し、出産予定日をもたらし、燃えるような体液を和らげ、妊娠を快適にします。

そう、これは目に最も効果的な軟膏です。これは涙を抑え、目の中の高熱を冷やし、ぼんやりとした視界を回復します。

この蒸留水をリネンの布に浸して赤くなったニキビや顔の赤みに何度も当てれば、赤ニキビや思いに反する顔の赤みを冷やしてすっかり消し去ってくれます。

[イチゴの葉の蒸留水の素晴らしい薬効]

蒸留器のバリー・マリエか真鍮製の蒸留器でイチゴの葉を蒸留するのに適した時期は5月中旬です。 

この蒸留水を朝と晩、1回につき最大 4オンス(112 mL)飲むと、リンパ腺の結核性の腫れを取り除き、癒してくれます。

この蒸留水をきちんと飲むと、胸が楽になり、肺が浄化され、咳がおさまり、ハンセン病患者を浄化します。

朝と夜にこの蒸留水を点眼すると、目の充血を取り除き、目の熱さが和らぎます。

この蒸留水を飲めば、過度の発汗を止めます。肝臓の熱と肝不全に対してこの蒸留水ほど効果的で有益なものはありません。

[マスタードシード]

6月の初めにマスタードシードの花の付いた地上部全体を細かく刻んで真鍮製の蒸留器で蒸留する必要があります。

この蒸留水を口の中にしばらく含んで、この蒸留水で歯茎を頻繁に洗い流せば、歯茎の潰瘍を改善します。

この蒸留水で沐浴してこすれば、四肢の消耗に効果があります。これにより四肢は短時間で体力と筋力を回復します。この蒸留水で頻繁にこすって、この水が乾けば、骨の骨髄を加熱します。

この蒸留水で関節を頻繁にこすって、この蒸留水は自然に乾くのに任せれば、風邪の症状や関節の痛みに効きます。


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