2022年12月4日日曜日

Onion(タマネギ):「The Gardeners Labyrinth」第52章

昔のタマネギは今の園芸種と違って野生的で薬効成分が強かったのか、あるいは現代のように薬をたくさん飲んでいない当時の人にとっては効き目が強かったのか、タマネギの効果だけでなく生や多量に食べる弊害についても注意が書かれています。また、ウリのタネの中にタマネギのタネを入れて蒔くといった古代の農法についても言及されています。その方法はその後すたれたみたいですが。

12月に入って寒くなりました。ここに書かれているようにタマネギとハチミツの取り合わせで寒い季節を乗り切りたいものです。

第20章 オニオン(タマネギ)の高度な播種と栽培のために必要な技術と管理。

左がホワイトオニオン、右はロンギッシュスパニッシュオニオン
The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。


タマネギが、多層の薄皮で囲まれたコンパクトな球体(球根)を持っていることを知らない人はいない(と私は信じています)。

古代の農夫たちは(コルメラが証言するように)これらをタマネギと名付けました。なぜならタマネギは 1つの丸い球根で育ちますが、ニンニクのようにそこにたくさんの球根が形成されることはないからです。(Onion<--One-on?)これが農夫のタマネギと名付けられ、今日まで親しまれています。

大部分のタマネギは、1 月、2 月、3 月にタネを蒔きます。よく施肥して湿った肥えた土に播種し、入念に刈り込んで、ある程度の高さまで伸びたら、4月に引き抜いて株同士お互いに十分距離をとって移植します。これらがさらに成長したら丁寧に除草する必要があります。頻繁に手入れすることでより大きく成長します。(吹き荒れる風の時には)風を防ぐようにします。

有能なナポリ人ルティリウスは、タマネギは頻繁に耕してレーキをかけ、糞を施肥した湿った肥沃な土に播種すると書いています。そして農業書の中でギリシャ人のソティオンが言っているように保護してやることも大切です。

冬の寒さや霜でタマネギが腐るかもしれないので、事前に掘り上げておく必要があります。(熟練者のコルメラが言うように)その後、土には施肥して、その後2日以内に平らに均し、すべての根と不要なハーブは除去するか栽培ベッドに踏み込んで、まず一掃しておきます。

こういった管理は、3月の穏やかで快適な日の、南〜東の風が吹いている時に行います。そして、うまくにその土に蒔きます。その際、(プリニーの考えに従えば)セイボリーを間に植えることで、タマネギはますます繁栄します。

有能なギリシャ人のソティオンは、タマネギを植える庭師に、緑の葉の上部とすべての細根を(植える前に)切り取って、大きな球根に成長させるようにとアドバイスしています。

その他、大きな球根にするために根元近くの葉を引き抜くだけの方法もあります。その方法では、球根以外のどの部分にも樹液が送られないので、球根部が大きくなります。

しかし、この場合(ルティリウスの考えに従えば)このような方法での配置として株は栽培ベッドにまばらに植えるべきであり、プリニーが指示したように少なくとも4回は除草とレーキがけを行う必要があります。

彼はまた、地面にタネを蒔く前には地面を3回掘り上げ耕すように、と教えました。

庭師が月の欠けていく時にタネを蒔くと、タマネギは小さくて酸っぱいものになるでしょう。月の満ちていく時に蒔けば、丈夫か大きく、酸味のあるしっとりした味がするものになります。

しかし、忘れたり無視してはしてはいけないことは、すべての種類のタマネギで、通常、丸いものよりも やや長くて尖ったもの、白いものより赤いものの方が酸味が強く、緑(生)のものより乾いたもの、茹でたものよりも生の方が、また、味つけたり塩を振ったものあるいは水に浸したものより新鮮なものの方が酸味が強くなります。

庭師や菜園主は、はるかに大きなタマネギを収穫するでしょう。植え替え用の場所や空間があるときに、タマネギをよく手入れされたその土の上に20日間あげておき、太陽熱ですべての水分がなくなるまで太陽にさらして長く乾燥させます。

有能なギリシャ人ソティオンの教えの後、ルエリウスは (パラディウスから引用した際)間違いを犯して、タマネギをディルと間違えたようです。ディルの球部も土に再び植える前に表皮をむいてよいものを選ぶことができます。そして、もし手の幅の間隔を空けて植えれば大きなタネを採集できます。

完全に熟す前に球根部を食べるには、より甘くするために、キュウリ、ウリ、メロンの若い株の間の湿った土に播種する必要があります。


菜園主が正しく管理して、適期に種子を採取する場合:

緑の茎が高く伸びて大きな頭(ネギ坊主)が出てきたら、木製の小さなフォーク2つで支えて、両側で固定してやります。 (コルメラが言ったように)茎は支柱により直立しています。大きな風で頭を互いにぶつけて、地面上にタネがこぼれて失われることはありません。

ギリシア人のコルメラやルティリウスが言ったように、タネは黒い色をしているので集めるのが面倒ではありません。

ネギ坊主には種子が入っていますが、月が欠けていく日の晴れて暖かい時にタネを採取する必要があります。

葉が自ら枯れて乾燥し始めると種子は黒くなり始めます。そうしたら根ごと株を引き抜かなければなりません。これをガーランドのように編むか束ねて、日に当てて乾かし熟成させます。

(前述のソティオンが記しているように)以下のようにすればタマネギは長期間腐敗することはありません。すなわち、タマネギを熱湯か、(プリニーの述べているように)塩辛いお湯に入れます。それから、完全に乾くまで暑い日差しにさらします。それを麦わらで隠したり覆うなどしてそのままワラに埋めておき、決してどの部分にも触れないようにします。

多くの場所ではタマネギは煙の中や火の熱に近い煙突に吊るされています。そのようにして長期間保存されています。

古代や農業書の熟練した書き手たちは、次のように述べています。

素晴らしく大きなタマネギがほしいなら、タマネギのタネをウリのタネの中に入れます。それを湿った栽培ベッドに埋めて、大きくなるよう糞を入れてよく耕すとタマネギの球根は大きくなるでしょう。あたり全体の土を掘り起こす際、小さい球根は土を盛ったり持ち上げたりすれば球根も持ち上げられるでしょう。しかし、その際、前に私がリーキ(ネギ)の章で述べたように、球根を地面から完全に持ち上げないこと、または根が完全に引き抜かれないようにします。

菜園主はまた、木製の棒でタマネギの球根をあちこち突き刺して、その穴にウリのタネを入れて、よく手入れした土に埋めれば、同様のものを手に入れるでしょう。

しかし、ここで、次のことは省略してはいけないと思います。すなわち、適時にタマネギを播種すれば球根は大きくなりますが、種子の量は少なめになるでしょう。

しかし、庭師が小さな球根を植えた場合、その球根はいずれ注意深く乾いた状態にした後、丸い茎が生えてきます。

これらに加えて、タマネギを地中から引き抜いて、地面に置くか、ひもにぶら下げれば、空中でより長く傷まずに保管できるでしょう。

しかし、アリストテレスを信用するなら、夏至の時、タマネギはペニーロイヤルや他の多くのハーブと同時期に繁栄します。それらの繁栄のまるで、一方は土から栄養を取り、もう一方で空気から栄養を取っているかのようです。

しかし、タマネギは軽く芽を出して伸び、地中から球根が出てきます。そして球根の中の湿気によって美しい緑の葉を伸ばします。しかし、茎が完全に成長し終わると、その球根は萎びてしまいます。

それについてプリニーは、ナッツとは逆でタマネギでは強い風味を和らげていくと書いています.

多くの熟練した庭師はより甘い風味のタマネギやニンニクを得るために、ガーランド用に栽培している花(特にバラ)の近くにタマネギやニンニクを播種していたと知っていました。

そして古代の偉大プリニーの助言によりこのことが行われていました。これは(私の意見では)従うに値するものです。

 確かに、非常に驚くべきことには、他のすべてのハーブの中に唯一タマネギが存在するなら、プルタルコスが書いているように、月のダメージを受けず、逆に増大して、月の力を減ずる効力があります。

緑になって芽を出した玉ねぎは月の衰退期または月齢の最後の1/4期には、月は光を増しますが、タマネギは逆に枯れて腐ります。

そのため、昔のエジプトの司祭たちは宗教的な食事にタマネギを入れることを拒否しました。タマネギと異なって、果物、ハーブ、木、および獣は星の状況によってダメージを受けたり、力を減じたり増したりしますが、タマネギだけは月の回転の逆の影響を受けているからです。

コルメラは以下のような準備方法でタマネギを冬まで保存しました。

すなわち彼は芽が出ていないタマネギ(オニオン)か緑色の葉が現れているシーオニオン?(どちらも似ている)を選んで、これらをまず暑い太陽の下で乾かし、その後、日陰で再び冷まします。これにタイムとセボリーをまき散らして、きれいに並べ、土鍋の中のワラで挟みます。そして、酢3対塩水1の割合の液体を注ぎました。

彼は、その液体に沈むか、沈むよう押さえたタマネギに一握りのセイボリーを(同様な方法で)まき散らしました。タマネギがその液体を吸い干して乾いたようになったら、この混合液を注ぎ足し容器を満たしました。そして、使えるようにするため適切な場所にその容器を置き、保管しました。

幼稚に思われるかもしれませんが、次の一点は省略できません。すなわち、学識者のカトーは次のように書いています。タマネギのジュースで描かれたり書かれた文字は見えませんが、その紙が火で加熱されると書かれた文字が鮮やかに現れます。

結論として、タマネギを8月中旬に赤土に植えれば、次の年、茎は高く伸びてタネができますが、四旬節*に食するために植えたものはその点劣り気味になるでしょう。*四旬節:2023年は2月22日から4月6日まで。


薬草としてのタマネギ。

ギリシアの偉人ヒポクラテスはタマネギを食べることよりもその見た目を賞賛しました。タマネギは熱くて燃えている性質をもつので、見た目には良くても体には悪であると言っていました。

けれども私はここでタマネギの薬効をいくらか主張するつもりです。そのうち、一部はギリシアの、一部はラテンの著者たちからの引用です。彼らは抜け目なく最も熱心に農業の秘訣を探索する薬学者のような人たちです。

ガレノスが指摘したようにタマネギは 4度の熱質を持っていて粗い性質です。

ギリシア人のソティオン (農夫であり医者でした) は、蜂蜜と一緒に柔らかいタマネギを毎日空腹時に食べる人は健康を維持できると書いています。

ソティオンはさらに、タマネギは潰瘍を修復し治癒すると報告しています。

これらに加えて、太陽の下でタマネギで熱心にこすれば体の化膿した箇所を消し去りますし、タマネギのジュースを耳に落とせば耳鳴りに効果があります。

タマネギを塗れば喉の腫れを和らげ、残火で熱くローストして油と一緒に食べれば咳を和らげます。

ローストしたタマネギを蜂蜜と一緒に食べると、胃の不調の苦しみを取り除きます。

タマネギを生で食べると、体の水分を乾燥させすぎて臓器や四肢に害を及ぼします。

またタマネギは生で食べると喉の荒れを引き起こし、胃もたれにします。

しかしながらタマネギは痔に酢と一緒に塗れば、短時間で痔を和らげます。

タマネギのジュースはハチミツと一緒に目にそそげば、目をきれいにします。痛みやかすみを除き、血走った目を修復します。

禿げにタマネギのジュースを塗れば、熱が逃げるのを回復してくれます。

緑の(生の?)タマネギを酢と一緒に塗れば三日以内に狂犬病の咬傷を治すと断言しているものがあります。しかし、私はむしろ、タマネギのジュースをルー、塩、およびハチミツを加えて一緒に叩いたものをうまく処方する方が良いと思います。

タマネギを頻繁に食べると、胃の中をより熱く乾燥させるので、胆汁質に害を及ぼします。

しかし、バラバラにして余分な体液を消費してくれるという点で下痢質には大きな利点があります。

熾火でローストしたタマネギに大麦の粉をまぶしたものは、目の下垂を抑え、秘部の潰瘍を和らげます。

さらにこのジュースは母乳と一緒にして耳に落とせば、耳の痛みと雑音を改善すると言われています。

これはまた、水を飲んで急にむくんだ人に与えることも多いです。

そして赤痢の危険な下痢に苦しめられている人たちにはタマネギをたっぷりと与えます。

そしてこれは腰の痛みに驚くほど効果があります。そのジュースをフェンネルのジュースといっしょにしたものは筋肉と皮膚の間から始まるむくみの水を排出し、和らげます。これをルーおよびハチミツと一緒にしたものはまどろみと眠りを回復し、そして、樹脂かイチジクと一緒に膿瘍に当てれば、膿瘍は熟して素早く開きます。

熱い燃えさしの下でローストされたタマネギを朝と夕方に食べれば、胸の痛みを和らげるだけでなく、重い体液(痰?)を簡単に吐き出させ、胃を浄化します。

タマネギをハチミツおよび塩と混ぜてイボに塗ると、イボは根元からすぐに取れます。

タマネギを頻繁に使用するとその刺激物によって、胃の中に悪液質を発生させ、喉の渇き、腫れ、息切れを引き起こし、頭痛を生じ、その煙(漂う邪気、臭気?)が頭に上昇し、脳に害を及ぼすため愚かになります。

そのために、日常的にしょっちゅう理性を乱用し、恐ろしい夢を見るようになります。

もし病気から抜け出したばかりの弱っている人がタマネギをたくさん、特に生で食べた場合、体にとって何の栄養にもなりません。

ガレノスからの引用を付け加えると、タマネギを 2回水に浸し、それぞれ水を変え、3回目の水で沸騰させて食べれば、非常に良い栄養となります。脂肪の多い肉と他の心地よい香辛料を加えて煮た場合、ジュースの悪さはもはや残っておらず感じられませんが、それらは緑(生)のものよりも効果は弱いです。

適切に使用するならば生のタマネギは薬草学の規則どおり、粗雑で湿った体液を加熱して取り去り、静脈の道を開き、出産予定日や尿を誘発し、食欲を増進させます。また、そのジュースを鼻腔から吸い込むかまたは鼻にその香りを受ければ、驚くほど頭がスッキリします。

若くて柔らかいタマネギをハチミツと一緒に毎日空腹時に食べる人は、完全な健康と強さをより長く維持できるという点で、タマネギの風味を嗅ぐよりも食べることをお勧めします。

タマネギのジュースは、顔だけでなく体の白い斑点も取り除きます。

このジュースを雌鶏の脂と一緒にして塗れば、ストレート シューによるかかとのしもやけの潰瘍を治癒します。鶏の脂を混ぜたジュースを塗れば、顔の赤みやシミを取り除きます。酢と一緒に潰して、かさぶたの場所に塗れば、かさぶたを治癒し透明な肌に戻します。

ワインまたは水でタマネギを茹で油で炒めて、へそに膏薬にして貼れば、子供のベッドで女性に起こる痛みの発作と出血(破水?)を和らげます。タマネギを熱い燃えさしの下でローストして、ぬるま湯(?)およびユリの油と混合して膏薬の形で膿瘍に塗布すると、すぐに膿瘍を壊して溶かし流します。


タマネギの蒸留水のお勧めの治療法。

タマネギの蒸留に最も適した時期は、収穫期の最初の月(9月?)です。というのも、その根を細断し上手に蒸留する必要があるからです。

この蒸留水を 4 ~ 5回、一度に 2オンスの量飲むと、狂犬や他の獣に噛まれたことによって生じた腫れが治ります。

この蒸留水を鼻から吸い込めば、ひどい頭痛を和らげます。

この蒸留水で歯をこすったり洗ったりすると、歯の痛みや苦痛を和らげてくれます。

これはまた、頭の禿げた箇所に塗るとそこに髪の毛がはえてきます。この蒸留水を飲めば虫(寄生虫)を追い出します。


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