16世紀のラデッシュ/ダイコンは現代のものと似て非なるものだろうと思います。数百年の長期にわたって連綿と選別されてきたのですから。でも、本章の栽培法や楽しみ方はやってみたくなっちゃいます。
第2部26章 ラデッシュ/ダイコンの播種と栽培に必要な管理技術と知っておくべき秘訣
身近なガーデンラデッシュ(栽培種のラディッシュ/ダイコン)は、私が書く説明よりも人々によく知られています。あらゆる人、金持ちも貧乏な人も都会の人も田舎の人も食事をとると胃が疲れたりムカムカしたりする時は、根をある長さに切り揃えるか円形にスライスして食べることで食欲を取り戻します。その際、塩で味付けして、柔らかくなるよう上下の<顎?>でよく噛んで食べます。
ラデッシュを育てるためには(コルメラの教えに従えば)、以下の方法にならって熱心に世話する必要があります。
まず、タネを蒔く前に栽培ベッドをよく耕して、糞を入れて上手に混ぜ返します。根がある程度大きくなって地中から伸び出して剥き出しになると太陽や外気に晒されるので、土を盛り上げて根の周りに丁寧に積み上げます。
その後、さらに成長するとキノコのように硬くて中空になるので、プリニーが報告しているように、土をゆるくして湿らせます。
有能なルティリウスは(彼の農業書の中で)ラディッシュは砂と砂利の固い土地を嫌い、湿気の多い気象を好むと言っています。 さらに、ラディッシュはベッドに十分な間隔をとって播種するべきであり、直近の雨すなわち新らたに雨が降った後に深く土を耕します。たまたま湿った場所以外はすぐに水をまきます。
土にタネを蒔いたらすぐに丁寧にレーキで土を軽くかけて覆い、糞を入れたりベッドにわらをかけたりしないようにします。ただし、コルメラは例外として、後で述べるように、穀類のもみ殻だけは使うことがあります。
園芸に熟練した人々によれば、ラディッシュは気ままに播種されるよりも整然と植え付ける方が良く生長します。播種するにせよ植え付けるにせよ、長く収穫し続けたいなら年に2回、2月と3月上旬に行います。さらにずっと早くから収穫したいなら、8月から9月中旬まで播種や植え付けができます。
この時期に播種や植え付けをする方がはるかに優れていることは間違いありません。なぜなら、寒い季節のラデッシュは特に根が成長し大きくなるからです。と同時に、柔らかくなります。それ以外の太陽光がたっぷりある暖かい季節には、栄養は葉と茎の方に駆け上がるからです。
しかし、私たちの冬の気象は厳しいので、冬越しのこの方法は苦労するばかりで私たちにとってはほとんど役に立ちません。ラデッシュは厳しい気象をうまく乗り切ることができないからです。いったん霜で傷害を受けると枯れるかその後死んでしまいます。ただし、学識者プリニーの記述では、ラデッシュは冷涼な気候自体はとても好むと書かれています。ドイツでラディッシュを見たことがありますが、これは直径が幼児の胴体ほどの大きさに成長していました。
巧者アリストマッカーズは(彼の農業書の中で)、冬の間ラディッシュの葉を折って取って捨て、土を株の周りに高く積み上げて栽培ベッドの中にできたくぼみの溝に水が貯まるようにすることを勧めています。 そうすれば根は肥大し、夏に大きく成長します。
いずれにせよ、冬の間も根が成長できるのならば、(先にナタネダイコンの章で述べたように)冷気と霜が根を肥大させ甘くすることは確実です。 ラディッシュの場合、冷気は葉ではなく根を肥大させますが、(テオプラストスが言うように)そのほかの多くの植物では冷気により根はワックス化し、その後固くなってしまいます。
ラディッシュがトウ立ちする前に葉を折りとってしまうえば(プリニーが記しているように)根はより甘く美味しくなります。
そして、ラディッシュの葉は小さければ小さい方が、より柔らかくおいしい根になります。塩水か塩酢水でかん水すれば、根の中に含まれている苦味を追い出すことができます。
プリニーが書いているように、ラディッシュに栄養を与え根を柔らかくするには、頻繁に塩酢水か塩水で水やりすることです。
エジプト人は炭酸ナトリウムで水やりしましたが、その結果、根は甘くおいしい称賛に値するものとなりました。それは柔軟な組織と厚い外皮を持ち、味はシャープですが、食べると美味しいものでした。 根を地表上にむき出しのままにして軽い土で十分に覆っていないと、先に述べたように、硬く粗くなり、(キノコのように)中空になります(スが入ります)。
ルティリウスが述べているように、ラディッシュには雌性と思われる種類があります。これはとても味がシャープで、葉はより小さく、見た目にはよりきれいな緑色をしています。
甘味のある根を楽しみたい場合は、偉人フロレンタインの助言と考えに従って、種子を 2日前にハチミツ水かキュイット(元の量の 3 分の 1 に煮詰めたワイン)、または砂糖水に浸してから日陰で乾燥させ、整然と播種します。
優れて立派な根にしたい場合は、根がある程度大きくなった時に(ナポリのルティリウスの教えに従って)中心の2枚の葉だけを残して他はすべて摘み取り、この2枚で成長を続けさせます。そして、地上部を頻繁に土で覆うようにします。そうすれば、根に液汁が行き渡り、より甘く美味しい根に生長します。
根を驚くほど大きく育てた経験談としてプリニーは次のようなうまい方法を述べ教えています。大きなディブル(タネ蒔き棒)を手に取って、土に6本の指の深さの穴を作り、新鮮なもみ殻で満たします。その上にラデッシュのタネ1粒を糞と軽い土と一緒に蒔いて土で覆います。こうすれば、根が成長して穴のサイズまで大きくなるでしょう。
熟練した経験者はラディッシュの良さは葉でわかると言います。(それによれば)葉が甘いほど、根はより柔らかく美味しいのであり、同様に根の表皮が薄ければ薄いほど、口に入れた時美味しいと教え示しています。
8月末から9月中旬まで、よく整えたベッドにタネを薄く蒔き、芽が出た後は葉を切り落としつつ雑草を丁寧に除草し軽い土で株周りを覆い、頻繁に塩水でかん水すれば、肥大するだけでなく、食べると柔らかくて甘い根になります。塩漬けにすればラディッシュに含まれる苦味が大変和らぎます。私たちは習慣的に塩と酢で食べています。
そして、植物は日陰よりも日当たりの良い場所の方が適しています。日陰は根の成長を非常に妨げます。
園主がたまたま乾季にタネを蒔く場合は、栽培ベッドに厚めに播種し、軽く水をやって地面を湿った状態にして播種します。
適度な草丈に成長したら、そして、前日に雨で地面が湿っていれば、間引いてよく耕して整えた栽培ベッドに移植します。丁寧に植えたものはより大きく、より美味しく生長します。
ラディッシュは菜園にあって害を受けることはありません。テオフラストスはエルウムと名付けられた<?不明>の間にある栽培ベッドにタネを蒔くことを勧めています。
ほとんどのハーブ類に関するその他の貴重な助言は本書の第1部で学ぶことができます。それらのほとんどは私が古代の書物から集めたものです。
ラディッシュの苦味は外皮が厚いほど増すことを忘れてはなりません。有能なプリニーが言っているように、
これはまた歯を摩耗させたり欠けさせたりして、歯を傷つけると書いています。
しかし、ここで思い浮かぶのは、非常に有益であり、ワイン醸造業者が尊重すべき秘訣です。プリニーがそれについて自在に語っています。
ワイン醸造業者がスライスしたラディッシュを腐敗した(発酵の進んだ)ワインの入った容器に入れれば、短時間で悪臭と臭気(そのようなものがワインに含まれている場合)をすべて引き出します。そして、発酵による酸味を根が完全に消し去ることができない場合は、直ちにこれを取り出して(必要に応じて)順次新鮮な根のスライスに入れ替えます。
このことはしょっちゅう実証されていて、間違いのないことであり、この秘訣を理解することで多くの人に利益をもたらしてきました。
間違いなく非常に驚く秘訣があります。それはラディッシュを決してブドウの木の近くに植えたり近くで育てたりしてはいけないということです。ラディッシュとブドウの木との間には致命的な憎悪関係があるためです。ブドウは成長したりつるの向きを変えたり、枝に巻きついたりするにつれて、そばでラディッシュが急速に成長するをひどく嫌がり憎むようになります。
学識者のプリニー、ガレノス、ナポリのルティリウスの言を信用するなら、彼らはこのことを熱心に指摘していたようです。
そしてここで述べている事象はキャベツとブドウの木との相性について前に述べたことに似ています。すなわち、両者の中に隠された不和の性質があるので、場所を変更し、しかも完全に取り去った後でもラディッシュとブドウの木は一緒にしても決して喜ぶことはありません。
このため、アンドサイドはラディッシュとキャベツがワインによる酩酊に対する唯一の治療法であると断言していました。ギリシャの古代人にとってワインを飲む際にラディッシュと一緒に飲むのは一般的なことでした。キャベツの章で前に述べたように、一般的にこのように使用されていれば、それは驚くべきことではないということになりますが。
昔、ラディッシュは酩酊を防ぐ前菜の役を果たしていて、とても有用とみなされていました。ギリシア人のモスキオンはラディッシュを賞賛する偉大な書誌を書き残しました。そうです、ギリシアではラディッシュを食事の前に食べることが非常に好まれていたので、アポロ神殿のデルフォスではラディッシュは金、ビートは銀、ナタネやカブは鉛に相当すると見なされていました。
ラディッシュはまた<?>を非常にきれいに磨くと言われています。ラディッシュを塩の山に入れれば、水っぽい漬物に変えて量(かさ)を減らします。
結論として、ラディッシュは抜き取って移植するとその苦味がなくなり、外皮は特においしくなります。
ラディッシュは成長しすぎていない新しいものを収穫します。従って、そのようなものを食べる機会がめったにない場合では、軽率にそれを否定したり、使用しなかったりします。
最後に、学識者ペトルス・クレセンティウスが(彼の農業書で)書いているように、ラディッシュビネガー(大根酢)を作る方法を述べるのは有益だと思います。
(彼が言うには)ラディッシュの根を乾燥させて微粉末にし、ワインを入れた容器に入れ、(十分に力を込めて混ぜ合わせた後) 数日間静置します。
こうすれば、ラディッシュビネガー(大根酢)を楽しむことができます。これは非常に称賛すべきもので、腎臓の結石やその他の多くの痛みを伴う苦痛を溶解して消してくれます。
ラディッシュの薬効と使用方法
ガーデンラディッシュ (栽培ラディッシュ)は、学識者の教えに従えば、3度の熱性と2度の乾性を持っています。しかし医学的には野生のラディッシュの方が薬効が優れています。
ラディッシュが持っている1つの欠点 (医療的な点で) は、夕食の後に何度もげっぷを生じる点です。この不快さや不便さの対処法として、ヒソップかタイムかオレガノの枝、または純粋なオイルと一緒にラディッシュの根を食べることができます。
この方法で対処することで、ラディッシュの根は人の健康と体に驚くほど多くの効果をもたらします。
ここでさらに学びましょう。賢者によって書かれたその他の不都合は食事の前か後にラディッシュを食べれば、息切れや胃もたれを生じ、脳、目、そして理性を鈍らせるということです.
ギリシアの偉人フロレンティヌスは(彼の農業書の中で)次のように書いています。ラディッシュは痰性の病気に非常に効果があり、腎臓の結石や尿路結石を驚くほど治癒します。特に白ワインと水でラディッシュの皮を煮て朝と晩に飲むか、ラディッシュの皮をすりつぶして濾して朝、空腹時に飲むようにします。患者は特定の日数の間、これを続けること。
白ワインに8時間浸した後の新鮮な皮をメドラーの木の仁の粉末4分の1と一緒に飲んでも効果があります。
ラディッシュを朝、空腹時に用意したぬるま湯と一緒に摂取すると、嘔吐を引き起こします。そのため、医者はラディッシュの根よりもむしろ種子を煮て使うように指示しました。
根をオリーブオイルと一緒に食べると、オイルはガスを生じさせて苦しめることがないため、ラディッシュに起因する胃のげっぷを抑えます。
ラディッシュのジュースをキュイテ(煮詰めたワイン)と一緒に飲めば、王様の悪(結核性リンパ節炎)を治します。ハチミツ水と一緒に飲めば、咳を和らげます。それを上手に塗れば、短くつらい呼吸を整えてくれます。
ラディッシュの根は毒に対して非常に効果があるので、空腹時に摂取すれば生き物に毒害が及ぶことはありません。
私が本書の第1部で述べたように、ラディッシュのジュースを手に塗れば、恐れることなく蛇を扱うことができます。
耳にラディッシュのジュースを落とせば、気息音や耳鳴りをやわらげます。ハチミツ水と一緒に飲むと、黄疸が回復します。
キャベツの代わりにラディッシュの葉を粥に入れて煮て、さまざまな時に食べれば、肝臓と精巣の不全を治します。
潰した種子に白ワインを加えたものは、あらゆる種類の毒やその他の危険な病気に対してまさに効果があります。
そして、処罰によってひどい打撲やむち打ちのあざができた場合、ラディッシュを潰してその箇所に当てればすみやかに治してくれます。
これはまた傷をきれいにして、青じみを永続的な色に薄め、顔のにきびを取り除きます。さらに、発作が起きた時にこれを嘔吐の方法として毎日与えると、隔離を要する疫病(ペスト?)を伝染させます。
ラディッシュのジュースをハチミツで煮て酢を少々加えた後、漉して飲めば、隔離を要する疫病や精巣の不全に効果があります。
膏薬のようにラディッシュを当てると、皮膚の間に水分を供給し、硬く腫れた脾臓の症状を和らげるとディオスコリデスが証言しています。
ラディッシュは消化が良く、夕食時に肉と一緒に食べると胃が温まります。しかし、この食事の後すぐに寝ると呼吸を荒くします。
ラディッシュの種子を潰して白ワインと一緒に飲むと尿を生じ、酢と一緒に飲めば精巣の腫れを和らげます。
長年のできものにこのジュースを塗れば、きれいにし根の粉末が形成されて、中の潰瘍を吸い尽くしてくれます。
ラディッシュをミルク水またはハチミツ水で煮て温めて飲むと、長引いている咳が治ります。数日間毎日飲めば、吐き出すことによって胸のベトベトした痰を排出します。
ラディッシュの新鮮な皮をよく潰して酢とハチミツと一緒に摂取すれば、患者に嘔吐を促します。種子を潰して水と一緒に温めて飲んでも同様です。
ラディッシュの種子は排出を促すという特異な性質を持っています。そのため、これは消化できないキノコを食べてしまった人にまさに有益です。
ラディッシュの丸いフライ(?)をつめに当てると女性の不満がすばやく解消すると、巧者ヒポクラテスは書いています。
ラディッシュを頻繁に食べれば、授乳する女性や乳母にたっぷりの母乳をもたらします。
ラディッシュの根のジュースをハチミツと一緒に飲めば、出産予定日を繰り下げ、お腹の中の虫を追い出します。このジュースをハチミツおよび酢と一緒にしたものでうがいすれば、喉の腫れを和らげます。
ラディッシュの蒸留水の利用方法。
ラディッシュの根を細かく刻んで9月の初めに錫の蒸留器かベインマリー(ウォーターバス)のガラスの蒸留器で蒸留する必要があります。
ラディッシュの蒸留水を朝晩、1回につき最大で3オンス飲むと、胃での消化を助け、王様の悪(結核性リンパ節炎)を癒し、お腹の虫を殺します。
またラディッシュは食べると、すべての湿った体液やその他の消化を妨げる問題のある胃をきれいにします。さらに、あらゆる種類の内部器官の不全や腫瘍を癒します。
同様の方法と量で飲むと、肺のべとべとした体液(痰)が軽減され、精巣の腫れが改善できます。
これはまた、湿った体液の胸を浄化し、澄んだ声にします。
朝晩、この蒸留水を一度に最大3オンス飲むと、肉や飲み物による中毒を治癒します。
1回同量を飲むと、隔離を要する疫病に効果があります。出産予定日を繰り下げ、結石を排出します。
ハチやスズメバチに刺されたり毒クモに刺されたりした人が刺されて痛む箇所をこの蒸留水で洗い、この蒸留水で濡らしたリネンの布を巻けば助けになります。
この蒸留水を浴びると、横腹の刺し傷や縫い傷を癒します。
この蒸留水を目に入れると、視界を暗くして流れている体液をきれいにします。この蒸留水で頻繁に洗うことで顔のシミも取れます。叩かれてできた黄色または黒っぽいあざを頻繁にこの蒸留水でこすると消え去ります。
この蒸留水は溶かし吸収し壊す性質があるので、この蒸留水でうがいして口に含んでおくと喉の腫れや歯茎の潰瘍が改善します。
この蒸留水を頻繁に朝晩、主に就寝時に一度に最大 3オンス、 30日間飲むと、腎臓や膀胱、結石のある場所をきれいにするだけでなく、結石を壊して尿を出します。
この蒸留水を3~4週間、一度に最大3~4オンス、朝と晩の両方飲めば、皮膚の間の水分を回復し、尿によってこれを排出するので、酔っ払いの過度の酩酊を抑えることができます。
というのは、飲酒量が少ないほど、尿によって水分がより多く排出されるので、それによって酔っ払いはより早く回復するからです。
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