2023年9月25日月曜日

19世紀流栽培 ジャガイモ:ウォルター・ニコルのキッチンガーデン

 16世紀の園芸書では見当たらなかったジャガイモ。19世紀には重要な作物となって、病気も広まるくらい。さすが当代きっての園芸家ウォルター・ニコル先生、まだウィルスが知られていなくても、感染した植物が現れたらすぐにすべて処分しろ、と適切なアドバイスをなさっています。

第4章 キッチンガーデンの野菜の栽培 
第20節 ジャガイモ


ジャガイモはほぼどんな菜園でもたくさん収穫できますが、軽いローム土で最もきれいなイモが収穫できます。 ジャガイモを栽培するために土に肥料を施すこともあれば、施さないこともあります。 施す場合は、通常、土壌の性質に最も適した種類の肥料として、いずれかの畜糞を適度に施肥します。

ガーデンニングをする目的は、時に作物を切り替える場合を除いて、一般には促成栽培するためです。その目的のために何か早生品種を暖かいボーダーや寒さを防げる場所に、ジャガイモを3月初め頃、条間18~20 インチ(45~50cm)、株間 6インチ(15 cm)で植え付けます。 早いほど悪い結果の可能性が高くなります。たとえかなり早くに植え付けても、寒い中で芋片が生長し始めることはほとんどありません。また、強い霜や多量の湿気が続いた場合、芋片は大きなダメージを受けることになります。

メインの本作には、露地に、土壌の種類と質に応じて20〜30インチ(50〜75 cm)間隔の畝に株間6インチ(15 cm)から12インチ(30 cm)で植えます。3月中旬から5月上旬までならいつでも植えることができます。株分けした小イモは通常、3 インチ(7.5 cm)の深さに埋めます。 先端が丸いディブルで地中に押し込むか、あるいは筋状に作った穴に埋めていくこともできます。 軽い土壌なら前者の方法で、硬い土壌なら後者の方法に従います。

除草してきれいに保ちます。 そして、草丈が3インチ(7.5 cm)に達したら、茎に少し土寄せし、9〜10インチ(22.5〜25 cm)になったら、十分に土寄せしましょう。その後に出てきた雑草は手で抜きます。 根が伸び始めた後は鍬を入れないでください。

種イモとするジャガイモの切り方に関して多くのことが言われてきました。丸ごと植えることを推奨する人もいれば、芽が一つ付いた芋片にカットすることを推奨する人もいます。 植える2~3週間前に切る人もいれば、切ってすぐ植える人もいます。 私の方法はこうです。 大きいものは4つまたは5つに切り分けます。 中型のサイズは2つまたは3つに切り分けます。 そして小さな芋はカットせずまるごと使います。 カットして24時間経過後、 48 時間以内に植え付けます。そうすれば、芋片は適度なサイズと活力を保ち、無駄がないでしょう。 腐敗を防ぐために十分に乾燥させますが、即時の植生*を防ぐほど乾燥しすぎないようにします。

シュートを植える方法が正に流行しています。 ひとつ、私はこれを何回も公正に試してみましたが、ほとんど役に立たないと確信しています。

葉巻きは病気であり、ジャガイモの栽培者に多大な損害を与えていて、おそらくまだ有効な治療法も発見されていません+。

この原因についての第1の意見は、子球の芽に虫が入ったことによって引き起こされたと考えられています。しかし、同じ根からきれいな茎が出ることもあれば虫が入った茎が出ることも頻繁にあります。この状況がずっと続いているのは明白です。

2番目の意見は、重すぎるまたは湿った土地に植えたからというものです。

3番目の意見は、極度に肥料の乏しい荒れた土地に植えたからというものです。

4番目の意見は、同じ土地にジャガイモをしょっちゅう繰り返し作ったからというものです。

です。

そして最後に、最も一般的な意見として、種芋を変更しなかったからというものです。

-----

* 国内のさまざまな地域で昨シーズンに行った比較観察から、不作のときに(食用とするジャガイモを)スコップで掘り出して、芽や株分けを取り出すことは有用であると私は確信しています。 食用部と植え付け用の部分以外、根の残りの部分は牛や豚の飼料として利用することができるからです。ただし、(ジャガイモを収穫する)スコップは最も深く掘れる種類のものを使うべきであり、すなわち植え付け用には直径 1 インチ(2.5 cm)以上の半球でなければいけません。 浅いところの子イモは弱すぎるでしょう。

+ 私はたった今知ったところですが、エジンバラ近郊の尊敬すべき紳士は葉巻きの原因は種芋が熟しすぎていることにあると、実際に自分で行った実験から、確信しています。 彼は、この病気の治療法として、種芋にするジャガイモは5月15日以前に植えるべきではないとアドバイスしています。 そして、種芋用のジャガイモは料理用のジャガイモよりも緑化した状態のものを掘り上げるべきであるとしています。

-----

いずれにせよ、これは病気であり、誰もが治療に努めるべきです。そのためのヒントとして以下のことを提案します。価値があると思われる場合には、素直に適用し改善されることを願います。

最初の意見としては、実際の原因は昆虫だろうか、それとも未知の原因によって芋片が病気になった結果だろうか、考えてみる価値があります。

原因が昆虫だなんて、私には考えられません。

しかし、それが子イモまたは根の病気から進行する可能性については、しかるべき理由があるように思います。

この病気の原因は、霜、湿気、カビ、または過度の乾燥による種芋の損傷によって発生する可能性があります。

そして、病気にかかっていない種芋、シュート、子芋からは、清潔で新鮮でよく成熟した種芋と同様に、健康に育つことが期待され、将来そうなることもよく理解されています。

2 番目と 3 番目の意見に関しては、実際のところ、それらは同じことを言っています。

どちらもその環境がジャガイモの性質や傾向に適していないことを示唆しています。

ただ一つ言っておきたいのは、植物が成長を妨げられれば、原因が何であれ、必ず病気が起こるということです。

ジャガイモのように成長の早い一年生植物では、この症状は他の植物よりも早く発見できます。

4番目の意見に関しては、それは確かに説得力があると思います。

野生種でない食用の園芸種は同じ土壌で連続して同じものを栽培した場合、多かれ少なかれ変化していくものです。故におそらく今後も変化していくと推測するのが合理的です。しかし、場合によっては、ジャガイモがサイズと形状は退化するものの、葉巻きすることなく同じ場所で連続して何シーズンも栽培し続けられているので、葉巻きの原因ではないと証明できます。

最後の最も一般的な意見に関して言えば、 種芋を変更したいとなると、それによって、1 つの農場から別の農場へあるいはあるの国や地域から別の国や地域へ種芋を移すということになります。 それはこの問題の長所と短所の両面について多くのことが言えるでしょう。

しかし、お断りしておかねばなりませんが、これが原因であるという確信を私にもたらすものでは決してなく、実際、それが作用する原因であるという可能性は最も小さいということを、断固として言わなければなりません。

それどころか、葉巻きは、この誤った概念によって、これまで知られていなかった場所にもたらされることがよくあります。

しかし、種芋は、たとえかなりの範囲であったとしても、ある地区や国から別の地区や国に運ばれるのと同じように、同じ農場や庭内でも変化するのではないだろうか?

ジャガイモはワインが海で運ばれるか陸で運ばれるかによって変わるように、土に植える前に改良できるでしょうか?最後に収穫したものと異なることが起こりますか?

そんなことは決してありません。

ある土地から種芋を持ってきた者は、何の理由もなく、彼が一度も見たことのない、本質的に異なる種類のものを植えることになると確信できますか?おそらくそのようなことは起こらないでしょうその種芋の親芋とまったく同じイモとなるでしょう。

したがって、私は、感染した植物が現れたらすぐにすべて処分することによって、健全な小芋を保つよう何としても苦心すべきと考えます。

植えるまでは霜、湿気、またはひどい干ばつから守ります。 弱っていない、重要でないタネイモを植えます。通気が良く、よく粉砕されて、適度に栄養豊かな、中程度の質感の、軽めの土に十分なスペースを確保して植えます。

雑草は避けます。

この病気に付随する不安を克服するために適切な見識が必要です*。

-----

* 読者はこの問題について、私が書いた次のようなタイトルの論文で詳細を知ることができます。「植物の病気の原因とその治療法や予防のヒントを探る。」 最近エディンバラで出版しました。

-----


0 件のコメント:

コメントを投稿

19世紀末の園芸施設:10. 栽培温室---両屋根(スパン)ハウス

現代でも最も一般的な 温室屋根形状である両屋根タイプのハウス(スパンハウス)の記事です。現代の商業温室ではこれ を大きく、かつ多連棟化して大面積にしています。それ に比べると、19世紀の両屋根ハウスは面積も高さもかなり小さめで、今で言うところのホビー用温室、家庭菜園用温室といった...