2024年1月2日火曜日

19世紀末の園芸施設:1. 冒頭とアマチュア向けのヒント

19世紀末の園芸施設・温室そのものに特化した本です。
じっくり読んでみたいと思っていました。
ネット上のあちこちでも引用されている魅力的な図がいっぱいあります。
図版は123個も掲載されています。それ以前の時代の挿絵数に比べると圧倒的な多さで、19世紀から20世紀にかけての科学が進歩した時代が感じられます。 

Horticultural Buildings. By F. A. FAWKES.  London, 1881


はじめに

ガラス温室の建設に関する本書で、天文学、気象学、太陽光線などの基礎知識を述べるのはスペースの無駄であると考えられるかもしれません。しかし、物理学の一部は園芸の基礎であるばかりでなく、自然法則の知識がなければ適切に栽培することは不可能であるということがわかるでしょう。

ガラス温室はガラスで覆われた一見単純な構造物です。正しい物理原理を理解すれば、その原理を適用するのは比較的簡単でしょう。


本書の特徴

本書で採用されている方式や様式は、明瞭でかつ参照のしやすさを考慮して選定しました。本書は各「項」に分割されていて、さらにそれらを「セクション」にまとめています。 通常、「項」と「セクション」の両方を示す見出しがページの上部にふってあります。

一般的な事項の後に、天文学や太陽光線の基本原理について解説されていることに注目してください。

ガラス屋根、側面、敷地などと基本原理の関係について解説しています。あらゆる種類の栽培施設、コンサバトリー、あるいは住宅と補助的な建物の組み合わせで栽培するための一般的なヒントが含まれています。

施設のさまざまな部分、内装設備、必要な付属品などの詳細についても解説しています。暖房の一般原理、装置、およびその部品に関する説明を目立つように先に述べています。最後に、気象計器や法的ポイント、保険に関する情報を追記しています。

必要に応じて図や表を入れています。豊富な索引、詳しい目次、表および図のリストの参照ページ箇所がすべて適切に表示されています。

多くの図やセクションには、通常の単なる任意の目盛線ではなく、特定の縮率(1フィートに対して1/8インチや1/16インチなど)に揃えて作画されており、縮率が明記されています。これは、アーサー E. スミス氏が始めた方法で、作者のスケッチを木版上に投影することによって簡単に正確な縮率が実現されるものです。この方法では、作画ツールの下に縮尺のためのコロジオンフィルム(湿板写真のフィルム)を使う必要がないため、作画者自身がプレートの固定をする必要がなく、印刷者を介さずに、自分の作品を任意の縮小率または拡大率で木版上に確実に複写することができます。 手作業で複写する方法のような欠点がありません。

わかりやすくするために、専門的な内容は可能な限り避けて書いています。すべての記述において、「ハウス」という言葉は「園芸用の建物/園芸施設」を指します。特に明記されていない限り、「住宅」のことではありません。

間接的に関係する事柄についてもあらゆる情報を書き入れています。 しかし、植物の栽培に関することはすべて省略しています。本書では、庭師の領域を侵害することは望ましくないと考えたからです。

同じ情報が複数回繰り返し書かれていることにお気づきになるかもしれません。単なる相互参照では十分でない場合に限り繰り返し書いています。異なる項やセクションは必然的に互いに重複する部分がありますが、そのような重複がある方がわかりやすいでしょう。


アマチュア向けの一般的なヒント

以下のヒントは、おそらく人生で初めてガラスの被覆下で植物の栽培しようとするアマチュアの人に役立つでしょう。

まずは自分がどんな植物をどれくらい成長させたいのかを明確にしましょう。このアドバイスは、大規模な施設を所有している人でも、郊外の小さな2軒続きの長屋を賃貸で借りている人にも同じように当てはまります。

奇妙に思われるかもしれませんが、この点はまったく失念されていることがほとんどです。この問いに対して、少々苦労してでも実践するか、簡単にできることに限定するか、どちらを選択するかはさほど重要ではありません。

確かに、これは最初に考えるべき問いですが、あまりにも当たり前のありふれた質問です。

この質問は次の質問「建設費の予算限度額はいくらですか?」に含まれるでしょうが、この質問を「決めた金額または最小金額で建設できる面積は最大いくらか?」と考えてしまうと、重要な点を間違える危険性があります。ひとたびこの考えに基づいて建設すると、大量の間違いが生じ、必然的に広範囲にわたって問題が発生することになります。

提案された園芸施設を建てるのに金銭的な問題がない場合は、ぜひ提案されたとおりに建ててください。ただし、無駄使いはしないでください。一方、初期費用や運営費が自分の懐にとってあまりにもかかりすぎる場合はこの提案を排除してください。

計画を立ててみてコストがかかりすぎると判明した場合は、機能を落とすのではなく規模を縮小するようにしてください。当然必要な機能はうまく取り入れるべきです。適切に建設され効率的に作業できる長さ30フィート(9m)の施設は、同じ費用で建てられた長さがその2倍ある施設にくらべてはるかに価値があります。そういった機能を落とした施設は建設中に手抜きがあり、その後注意を必要とすることの半分にしか対処できません。

自分が何を栽培したいのかについて漠然とした考えしかない場合、すべての課題を自分で検討しなければなりません。傾斜の向きや環境、土壌、排水性、目的に応じた最適なハウスのタイプ、最適なハウス形状、暖房装置、内装設備、およびあなたにとって必要な付随条件など、場所と環境を調査します。まるで子供がパズルを組み立てるように実践して、すべてのピースが最終的に調和して収まるようにしましょう。

その際、ぜひ庭師と相談してください。庭師は提案されているガラス温室を使用することになり、おそらく所望の目的に適したものについて鋭い考えを持っているだけでなく、計画中に彼が議論することで建設される施設により関心を持つようになるいうことを忘れないでください。同時に、ひねくれた、または根拠のない信念や概念を持っていないかということにも注意してください。庭師もただの人間です。

以上のヒントは主に栽培用の施設に当てはまります。もし検討中のハウスが植物を育てるのではなく、植物を見せることを目的としているのであれば、その美しさと調和する建築や芸術、装飾や建具、機械や素材の美しさを優先せねばなりません。このテーマについては「鑑賞展示施設」の項で詳しく扱っているのでそこを参照してください。


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