2024年2月25日日曜日

19世紀末の園芸施設:5-2. 屋根の傾斜(さまざまな要件)

温室に太陽光を出来るだけ多く取り入れるにはガラス屋根の傾斜角度が肝心とされています。温室は値段が高くて手が出ませんが、手作りのコールドフレームに応用しようと思案中。 


HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

屋根の傾斜

さまざまな要件

前述の屋根勾配の決定方法は、ほぼ暖房が不要な場合、すなわち、理想的な気候下で太陽熱だけで無暖房栽培できる場合に適用すべきものです。

たっぷりの燃焼暖房をしなければならない(温室)ハウスでは、採光に最適な屋根の勾配よりも他の要件を優先して検討する必要があります。 

優先的に検討すべきものには次のようなものがあります:

 ✔️ ハウスの後面の壁の高さ。

 ✔️ ハウスの前面の壁の高さ。 

 ✔️ ハウスの幅。

 ✔️ 建設上最適な屋根の傾斜。 

 ✔️ 屋根の傾斜が暖房に及ぼす影響。

 ✔️ 植物から屋根までの距離。 

 ✔️ 結露や水滴に対する屋根の傾き。 

 
既存の後壁の高さが変更できず、温室の幅も土地条件によって変更できない場合でも、前面の垂直の壁の部分を高くしたり低くしたりすることで屋根の勾配を調整できます。 

温室の前面の壁の高さや温室の幅を変えることができないハウスで、希望する屋根の傾斜を実現しようとすると後ろの壁の高さが足りない場合もあります。

このような場合は、希望する傾斜角度の屋根を作り、同じ角度で落とすとちょうど後ろの低い壁の頂点に達するように棟を設けることで解決することがよくあります。 (図 29 (後の項で表示)を参照)。  

もちろん、この場合は長めの垂木が必要で、棟を設けることができない場合は、屋根の上部と壁の上部の隙間となるスペースを垂直のガラスのスパンドレル(窓小間)で埋める必要があります。 

屋根は、構造上の強度を満たさない傾斜にしてはいけません。 

例えば、ガラス屋根の傾斜が約 26°、つまり 1 フィートにつき6 インチの高さよりも傾斜がゆるいと、雨がラップ(屋根のガラス板とガラス板の重なり部分)の下に流れ込みやすいことが経験的にわかっています。 

場合によっては、特に両屋根タイプのコンサバトリーでは、垂木に設置する丸太の強化梁は 30° の勾配の屋根に導入するのが1番簡単なので、30° の屋根勾配にするのが便利です(「展示ハウス」の項を参照のこと) 。

 本書の別の項で示すように(「暖房」に関する項を参照)、ハウス内の空気は可能な限り均一に加熱暖房することが重要です。 

なぜなら、樹液は植物の最も高い部分へ流れるだけでなく、最も熱が存在する場所へも流れる傾向があるからです。 
そのため、温室の屋根の勾配がきつくなるほど、熱気が温室の上部付近に溜まりやすくなるので、ブドウなどの植物は樹液がツルの高い部分へ上昇し、低い部分に悪影響を及ぼします。 

 太陽光が適量ある場合、ハウスの屋根の勾配が低いほど、屋根の上部と下部の間で温度差ができにくくなります。 また、植物をガラス面からあまり離して栽培しないことが望ましく、屋根の勾配を決定する際にはこの点に十分な配慮が必要です。 この辺は、クリアなガラスの大型ハウスが建設できる現代にはそぐわない箇所だと思います。

また、勾配が緩いほど、水分が凝結して葉に滴る可能性が高くなります。 

勾配がきついほど、ブドウなどの栽培で使用する垂木の長さも長くできます。 

排水に関する屋根の要件については別の項で解説します (「排水」を参照) が、屋根に積もる雪の重さは気候に応じて、1平方フィート当たり 3 ポンドから 10 ポンドまで変化することに注意してください。  

屋根の勾配は施工にも影響します。屋根が適切に連結されていないと、屋根勾配の高低が横方向への大きな力になる可能性があるためです。 

屋根勾配は、壁で果実を保護するだけでよいなら、適切な勾配から逸脱することも可能です。 (「ウォールツリープロテクター」の項を参照してください。) 

当然のことと思われるかもしれませんが、大きな熱(高温)が必要なハウスでは、植物はガラス面の近くに来るようにすべきであり、温室は低く建てられ、屋根の勾配は 26 °、つまり 屋根長1フィートあたり6 インチの立ち上がり勾配が非常に適しています。 

果実を成熟させる目的で太陽光線を多く取り入れたい場合、既出の表 VI によれば、屋根の傾斜角は 36° から 44° までになります。 

一般的な目的の場合、および他の条件が制約条件となる場合は、26° ~ 44° の範囲とします。 

また、壁際の果樹(ウォールツリー)の保護などが目的なら、極端に幅が狭くて背の高い形状のハウスにすることもできます。その場合は、必要に応じてより大きな勾配を採用することもできます。 

異なる勾配の屋根を組み合わせたハウスの屋根や曲線形の屋根は、別のセクションで取り扱います。 

 

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