太陽光が最も多く透過するガラス温室の屋根勾配について丁寧かつ論理的に解説されています。今はガラスよりもプラスティックフィルムが主流です。透過原理は同じでしょうが、フィルムは柔軟性があるので、ここまでシビアに屋根勾配を気にする人は少ないかも。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
屋根の傾斜
屋根傾斜角度の測定
屋根の勾配とは、軒または屋根部の最下点を通る水平線と屋根面の間の角度です(図10を参照)。
ハウス前面の垂直高さの合計を A C 、ハウス後面の合計 を B D として、A を通る水平線を引きます。
次に、点 A を中心としてこの水平線上に分度器を当てます。このとき、30°勾配の傾斜屋根が必要な場合は、分度器で30°とマークされた点と交差する線 A E を引きます。 40°勾配の傾斜屋根が必要な場合は分度器の40°とマークされた点と交差する線 A F を引きます。
A を通る水平線がいろいろな屋根角度を測る際の基準線であることを覚えておいてください。後壁の B D を基準線とすると、当然間違いが生じます。
こうして、屋根の勾配を容易に確認することができます。
図10ー屋根角度を決定する測定方法。
後壁の高さとハウスの幅が変われば、当然屋根の勾配も変化します。
表 V は、ハウスの幅の違いによる傾斜の変化と、ハウス前面垂直高さよりも上にある後面の垂直高さの変化を示しています。
勾配としては実用上低すぎると思われる箇所は空白にしています。
前面の垂直高さとは、屋根が立つ前の垂直部分の高さ (通常、一部がレンガ壁で、一部がガラス面で構成されています) を意味します。
次の表は、1フィートあたり 6 インチから 15 インチの立ち上がり勾配の屋根で役立つでしょう。
表 IV.—屋根の角度
表 V.—屋根の角度測定
太陽光線の最適透過率
ブーゲーの表 (「太陽光線」の項を参照) によれば、太陽光線の入射がガラス面に対して直角に近いほど、透過率が高くなることがわかります。
したがって、生殖成長(開花)やその他の目的で可能な限り多くの太陽光を入れたい場合、指定する日またはその前後で最大量の太陽光が得られるような勾配の屋根を建設する必要があるでしょう。
ここで、太陽光線量を 1,000 、A B がガラス板を表すと仮定します(図 11) 。
図 11.—ガラスを透過する際の太陽光線の損失量。
外側の半円に書かれた数字は反射によって失われる光線量を示し、内側の半円に書かれた数字は入射角を表しています。
この図から、太陽光線が 60° から 90° の間の任意の角度でガラスに当った場合、太陽光線量 1,000のうち約 25 、つまり 2.5 パーセントだけが透過しないことがわかります。
これにより、ガラス面に対する鉛直垂線の±30° までの範囲なら光線の損失を最小限に抑えることが可能ということになります。
さて、もしガラス屋根面がその場所の緯度に等しい角度で南に傾斜していれば、例えば春分の日には、どの角度よりも多くの太陽光線がその屋根を透過することになります。
しかし、上の図によれば、いずれにせよ、 20° の増減は安全範囲内であるため、北緯51° のロンドンに建てられるハウスの屋根が太陽光を直角に受ける場合の屋根勾配は51°ではありますが、 屋根を透過する光線の量に実質的な違いは小さい、51°±20°、すなわち、31°から71°の間の任意の角度で屋根を建設できるでしょう。
このように、屋根の勾配に幅ができるため、他の点を考慮する余裕が生まれます。
ただし、最高の透過率を望み、ガラス屋根が一年の特定の日の南中時に太陽光を完全に直角で受けたい場合、私たちにできることは次のとおりです。
その場所の緯度を取得し、そこから春分点と秋分点の間の太陽の偏角を引くか、それに秋分点と春分点の間の太陽の偏角を加えて、屋根の傾斜角を決定します。
このことは、添付の図から自明です。
図12.-屋根の傾斜と緯度との関係
A B D C は、北緯 51 °の地点(ロンドン)に建てられた温室の鉛直断面を表します。
屋根 A B は基準線に対して 51 ° の傾斜で建設されます。
矢印は、屋根 A B に直角に当たる太陽の光を示しています。
この図は、赤道 F G が黄道面と一致すると仮定して描かれています。
2 つの平面は 3 月 21 日(春分)と 9 月 23 日(秋分)に互いに交差するため、この図はこれら 2 つの日付 (つまり、春分と秋分の日) についてのみ正しいことになります。
しかし、同じ緯度 51 ° で、たとえば 8 月 15 日にガラスに対して直角の太陽光線を受けたい場合、屋根の仰角を求めるには。。。
緯度 51° から 8 月 15 日の太陽の赤緯 14° を引いた値37° が屋根の仰角、すなわち屋根勾配になります。緯度が1°違えば屋根勾配も 1° 変化するので、次のようになります。 表 VI は、スコットランド北部とイングランド南部の間の任意の緯度において8月15日の南中時に太陽光を直角に受ける屋根の傾斜度を示しています。
(赤緯は春分・秋分の0°、夏至の23°、冬至の-23°の間で毎日変化する。8月15日の赤緯は14°。)
表 VI.—さまざまな緯度における屋根勾配。
しかし、8月15日は昼が最も長い日(夏至)の約8週間後であるため、太陽光は4月27日頃すなわち昼が最も長い日(夏至)の約8週間前にも、屋根に垂直に降り注ぐことになります。
この勾配であれば8月15日といった真夏でも太陽光線は約 10°偏向するだけなので、前述したように(±20°の幅は許容できるので)、この偏向は重要ではありません。
したがって、上記の表は、緯度毎の屋根の最も好ましい勾配を示していると考えることができます。
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