お屋敷に併設された豪華なコンサバトリーの図が収められているのは本書ならではの魅力だと思います(うっとり)。しかし、日本の気候だと暑さはもちろん、湿気が住宅部にまで押し寄せてきて、えらいことになりそうです。旧岩崎邸も旧古河邸もコンサバトリーはなく、サンルームですものね。大隈邸の大温室も独立したもので、お屋敷に併設されていなかったように思います。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
観賞用温室
コンサバトリー
コンサバトリーが園芸面と建築面の両面を同時に満足することはかなり困難です。
これまでコンサバトリーはその園芸面が優先されてきました。建築家らは住宅部分に関しては多大な注意を払い、しっかりと取り組んできましたが、コンサバトリーについては、ごく少数の例外を除いて、ほとんど建築家が注目することはありませんでした 。
その結果、コンサバトリーはしばしば住宅に対する恐ろしい暴挙の様相を呈しています。
最も効果的かつ効率的なコンサバトリーを実現する上で、地域的問題から一般的な問題まで、あらゆる課題を賢く検討することが、多くの困難を取り除くのに必要です。
個々のケースについてはそれぞれの特徴に基づいて対処すべきなので、ここでは一般的な指標のみをお示ししましょう。
コンサバトリーの園芸的側面
コンサバトリーは一般的に住宅に併設されており、植物を育てるためではなく植物を展示鑑賞するために使用されます。したがって、栽培用ハウスと同じ条件がコンサバトリーに必ずしも適用されるわけではありません。
栽培用ハウスのは通常高い構造が必要で、コンサバトリーの構造要件と異なります。その結果として、主に、展示鑑賞目的と栽培目的の 2 つの機能を明確に区別しておくことが常に求められます。ただし、両方を建てる十分な敷地がない場合は除きます。
栽培用ハウスでは、植物はガラス面の近くになるように、鉢に対して(吊り下げるなどの)人工的なサポートが必要です。
展示観賞用のハウスでは、サポートも鉢も目立たせてはいけません。
栽培用ハウスでは、植物がそのスペースを最大限占めるべきです。
展示ハウスでは人の遊歩するスペースが優先され、植物のためのスペースはその補完的なものとなります。
栽培ハウスでは、単一性、均質性が求められます。
観賞用ハウスでは、芸術的な変化があることが美徳とされます。
ほとんどのコンサバトリーでは、植物を育てることは不可能であるだけでなく、植物を長期間良好な状態に保つことさえ不可能です。
したがって、栽培ハウスとコンサバトリーは区別すべきだけでなく、栽培ハウスをコンサバトリーへ植物の供給するために使用する必要があります。
コンサバトリーの建築的側面
私たちは、コンサバトリーを単なる植物や花を集めた施設としてではなく、応接室に隣接した花の集合場所としてとらえ、効果的に見せるための主要点についてお話ししましょう。実際、その機能は適切に開発されているとは言えず、使用方法も適切に理解されていません。
コンサバトリーは住宅と同時に建てられるか、住宅に続いて建てられるかにかかわらず、住宅と調和していることが不可欠です。ガラスを建築物として扱うには細心の注意が必要となるため、コンサバトリーの建設は言うは易く行うは難しです。
建築上印象的なコンサバトリーにすると同時に、ガラスでできたコンサバトリーが住宅部分と一体感のあるものにすることが不可欠です。
凝ったディテールや平凡な装飾に頼らず、コンサバトリーの幅広いラインで十分魅力的となるようにすべきです。
「建築物を装飾するのであって、決して装飾物を建築するのではない」という普遍的な芸術のルールを忘れてはいけません。建築上の特徴とガラス細工としての側面のバランスをとる必要があます。極端にごつすぎたり極端にきゃしゃすぎたりしない、その中間を目指す必要があります。
外観と内部:
コンサバトリーを建築的に扱う一方、特に内部の構造に関しては、その建設の主目的である植物や花の展示について忘れてはいけません。
コンサバトリーや建築物の芸術性を優れたものにするには、必ずしも多額の費用がかかるとは限りません。それどころか、真の最高の芸術性をひきだすには、それに適した費用というものがあるのです。
図でそれを説明しましょう。図に描かれたコンサバトリーは主にバランスの取れたプロポーションとシンプルなラインが外観上の優れた効果をあげていることがわかります。
内部は、建物本体の水平方向に 30 度の角度をなす屋根によってその魅力が生み出されています。1 つのパターンを 3 回繰り返すことで、各部に完全な半円形のリブを形成しています。
このリブの繰り返しは遠近法の効果を生む素晴らしい特徴となっています。と同時に構造上も不可欠なものとなっています。
このようなハウスは明らかに非常に手頃なコストで生産できます。
口絵、図版41., 42., 43.、および図46., 47. は、Geo Sherrinが本書のためににデザインして描いたものです。それらは、コンサバトリーに関するさまざまな要点を図解する役割を果たしています。
図48はコンサバトリー内の欄間上の採光に適した、鉛ガラスをはめた着色カテドラルガラスのパネルです。
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