2024年8月5日月曜日

19世紀末の園芸施設:17-2. コンサバトリー(続き)

 後半はコンサバトリーの内部について書かれています。床の大理石やタイルの模様の図を見ただけでも凝った内装が浮かびます。こんなところで貴婦人のように優雅なティータイムを過ごしてみたいものです。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

観賞用温室

コンサバトリー(続き)

コンサバトリーのインテリア

コンサバトリ―の内部は植物や花が最も魅力的に見せるようにする必要があります。
そのため鉢の支えや鉢自体は隠して,葉や花は自然にまとめなければいけません。

ステージ(展示台)はとても低くて視界から完全に隠れない限り,避けるべきです。

栽培ベッドやボーダーはいつでも展示台に勝ります。

可能であれば、二人が並んで歩くのがやっとの細い道だけでなく,十分な広さの舗装されたプロムナードのスペースをコンサバトリー内に確保します。

例えば、巨大な中央のテーブルを囲む小さな通路があるばかりといった内装は、応接室の空間全体を家具で占めるようなもので、そのような部屋を夢見る人はいないでしょう。

床面に使用される材料の中で、大理石のモザイクとタイル(図44と45を参照してください。両図は、記載された会社によって特別に設計され、描かれたものです。)は最も人気があり、芸術的です。


図44.-大理石モザイクの床面、Ly Burke & Co.の設計による。


図45.-タイル張りの床面、Minton, Hollins & Co.の設計による。


場合によってはコンサバトリーに小さなテーブルと数脚の椅子を置く方が良いこともあります。

藤材や竹材は湿気の影響を受けないため、コンサバトリーの家具にとても適しています。

コンサバトリーの規模と形が許すなら、彫刻や噴水を置くことをお勧めします。

荒々しい垂直のラインが目立つ場合は、蔓性植物を自然に見えるように誘引して優雅で柔らかい印象にしつらえることができます。また、葉が垂れ下がる植物を吊り下げバスケットに入れて、硬く単調な印象の屋根のラインを違ってみせることもできます。

むき出しでは醜い壁は、木製トレリスで覆うことができます。トレリスは取り外して、修理、清掃、塗装できるように、シンプルなデザインまたは幾何学的なデザインにして,扱いやすいサイズのパネルにします。

そのトレリスにつる性の植物や花を誘引することができます。

この場合,つる性の植物は特別な品種である必要はありません。

それどころか、最も適した植物、すなわちツタなら、手入れを多く必要とせず,とても自然な形で成長してくれます。
コンサバトリーの外部と内部に関して私は、多くの先入観をくつがえし、芸術性を喚起するという意識で書いています。批判を受けるリスクを承知で自分の考えを公表しました。慎重に検討されれば、それらは正しいと確信しているからです。

温室でガス灯を使用する場合は、「照明」の項に記載されているようなバーナーを芸術性の高いランプで包むことができます。

通常の温水暖房装置に加えて、主にタイルで作られた暖炉はエレガントな趣きを与えてくれます。大きな垂直のガラス面を日除けするには、真鍮の棒に南アフリカで育つ細かい草で編まれたカーテンを掛けます。

そのようなカーテンは、軽く、芸術的で、優雅で、湿気や日焼けの害を受けません。似たような特徴を持ったマットをあちこちにかけるのも有用でしょう。

止まり木のオウム(陶磁器のオウムではなく生きているもの)、1つまたは2つの日本の鳥かご、鳥小屋(単なるケージではなく、くぼみやアルコーブに組み込まれたもの)、あるいは少しの古い陶磁器でさえ、趣をもたらすのによく用いられます。

こうした自然と芸術の賢明に組み合わせは、植物の命の美しさを増し、コンサバトリーは単に出入りする場所ではなく、ひと時を過ごす素敵な部屋となります。


コンサバトリーの建設上の取り扱い

床面は地面のレベルの違いが1フィートだけ、あるいは2段分とわずかであっても、下るよりも上がるようにした方がどんな場合でも良いです。

コンサバトリーの外部のレンガや石積みの壁の高さは床面からの2フィート(60 cm)以上にする必要はありません。軒高は、他の寸法に応じて、7〜12フィート(2.1〜3.6 m)あるいははそれ以上の高さにします。

コンサバトリーは通常、住居に取り付けられています。その場合,庭に出るドアだけでなく部屋とつながるドアもあります。

実現可能なら必ず、コンサバトリーは異なる面にある2つのドアによって住居とつながっている必要があります。つまり、両端にドアがある短い廊下を設けます。ドアが1つしかないと、コンサバトリーの暖かく湿った空気が住宅の部屋に入ってきてしまい,不都合だからです。

しかし、ドアが1枚しかない場合は、インドゴムまたはその他の適切な材料を使用してドアの開口部(隙間)を密閉し、湿った空気が入ってくるのを防ぐ必要があります。

コンサバトリーの床面は、常につながる住居の床面と同じ高さにすべきです。住居側にマットを敷くことで、水が住居に流れ込まないようにコンサバトリーとの間に十分な段差(コンサバトリー側が低い)を設けることができます。ただし、この段差は約2インチ(5 cm)を超えるべきではありません。

コンサバトリーへ入るのに1,2段,段差があるのは,ホールとダイニングルームの間に段差があるのと同様,不快で深刻な弊害があります。

「通路」の項を参照してください。

住居のレンガ造りの隣にコンサバトリーの屋根の谷部の側溝(樋)がこないようにしてください。

コンサバトリーの屋根は、住宅に対して直角(両屋根ハウスの片方の妻面を住宅のレンガ造りの壁とする),または屋根の傾斜の高い方の面を住宅のレンガ造りの壁にします(立て掛け式ハウスのように)。避けられるのであれば、決して屋根傾斜の低い面を住宅のレンガ造りの壁にしないでください。

複雑な屋根形状は避けてください。単純な両屋根型(切妻型)の屋根は建設上非常に有利です。

寄棟つくりの屋根は、賢明に導入され、その使用に明らかな意味があるなら、不快ではありません。屋根の谷部がレンガ造りの隣にこないよう、どうしても必要でない限り避けるべきであり、互いに交差するか対称的な配置にします。

効果を得るために強引に無理をしてはいけません。役に立たない外部の意匠構造のために、内部を犠牲にする必要ないはずです。

ランタンやキューポラを導入する事例をよく見てきましたが、それは外見上は非常に美しく見えるものの、そのため内部を設計者は犠牲にしているように見えました。

いずれにせよ、うるさい、単調な、苛立たしい、まったく不必要、または単に冗長な、知性を疑わせるような、人々の嘲笑をさそうような構造は避けるべきです。

コンサバトリーを住宅建設の後に建てる場合でも、煙突の煙道とストークホール(炉の焚口)の準備はしておくべきです。

この準備に要するコストはほんのわずかです。この点での先見の明を怠ると、その後,多額の出費が確実になります。

 

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