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2025年3月24日月曜日

19世紀末の園芸施設:33. 照明

栽培に人工照明、LED ! が利用されているなんて、当時の人が知ったら驚きますよね。

ここでは、電照栽培についての言及もなく、もっぱら人々が夜の温室(コンサバトリーやウィンターガーデン)で過ごし、楽しむための照明について解説されています。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

照明

栽培目的の温室では人工照明が必要になることはほぼありません。
ただし、コンサバトリー、ウィンターガーデン、花室では暗い夜に照明が必要になることがよくあります。
照明に使用できる手段は、ろうそく、ランプ、ガスバーナー、電灯です。


ろうそくとランプ

ろうそくやランプは使用しても通常植物に害を与えることがなく、多くの場合、十分役立つでしょう。


ガスバーナー 

誰もがコンサバトリーのガスバーナーに対して正当な懸念を持っています。
発生する燃焼生成物と乾いた熱は植物体に対して極めて有害だからです。

しかし、ろうそく、ランプ、電灯は多くのコンサバトリーに適していない(照度が足りない?)ので、他の条件が同じであれば、通常は間違いなく、ガス灯が採用されるに違いありません。 
植物に害を与えることなくガスバーナーを照明として使用するために多くの方法があります。

サンバーナー(当時、大きな部屋の照明のため、複数のガスバーナーを円形などに集合させた装置)は、極めて希薄な空気塊を利用して燃焼生成物をバーナーから直接外気へ排出する構造になっています。

少ない本数のバーナーがガラス球に内蔵されていて、補助シャフトまたはチューブで外部空気がバーナーに送られることによって燃焼します。

しかし、この方法だと、突風が吹くとほとんどの場合、上昇気流が逆流し、建物内に有毒な燃焼ガスを吹き込んでしまう可能性があります。

その結果、人へはごくわずかな不便が生じる程度ですが、植物には大損害を与えることになります。

図 88. 自動換気照明装置(Sugg社特許取得済み)


著者がこれまでに見た温室用ガスバーナーで最良のシステムは、図 88 に示すものです。
この図は、建物の屋根から吊り下げられたアルガンバーナーを内蔵したホヤ(ガラスの筒)を表しています。

アルガンバーナーは密閉されていて、室内の空気とは遮断されています。

矢印の方向に注目すると、熱気と燃焼生成物から成る気流がバーナーから直接、中央のチューブを通って上昇し、3 連の穴の開いた風よけを通って外気中に抜け、暴風雨でも逆流が発生しないことがわかります。

外部の新鮮な空気は、中央のチューブを囲むシャフトによって形成された環状空間を通って燃焼炎部分へ供給されます。

当然、このようなバーナーは、照明する室内の空気の温度を上げません。ただし、この点はコンサバトリーよりも住宅で重要でしょう。

図のような直径 20 インチの球形タイプは30カンデラ(一般的なろうそく30本の明るさに相当)のアルガンバーナーに適したサイズです。26インチタイプは50カンデラのバーナーに適しています。


電灯

最近の調査によれば、電灯は植物の発育に強力な影響を与えると考えられています。
しかし、このテーマはまだ未解明であり、いまのところ園芸栽培の目的で電灯を利用する意味はないでしょう。

ここでは照明手段としてのみ取り上げます。

電灯は空気を汚染せず、放射される熱はわずかで、その光色のため、日光とほぼ同じくらいよく見えます。電灯は照らす面積が広いので、光源を視線より上に高く配置できるウィンターガーデンなどに特に適しています。

A サイズの Gramme ダイナモ発電機(2.5馬力相当)で駆動する 4,000カンデラのアーク レギュレータ ランプ 1 個を地面から約 20 フィートの高さに設置すると、2 フィートから 3 フィート以内にあるガスバーナーと同等の明るさで約 500 平方ヤードの面積を照らすことができます。または、30〜40 フィートの高さに設置すると、約 2,000 平方ヤードを照らし、そのエリアのどこでも新聞を快適に読むことができます。

このような照明は、1時間、1灯あたり6ペンスから8ペンスのコストで利用できるでしょう。その場合、照明は少なくとも週50時間点灯していると仮定します。 

敷地内でエンジン、ミル、またはタービンでポンプを駆動するために電力供給が行われている場合(「給水」の項で説明したように)、この電気は電灯の稼働にも簡単に利用できます。

この場合、電灯は電源から半マイル以内であれば、コストが過度に高くなることなく任意の距離に設置できます。

ただし、半マイルを超えると、長い電気回路の抵抗を克服するために、導線をはるかに太くする必要があり、その結果、よりコストがかかるようになります。

ウィンターガーデンで電灯を見たことがない人にとって、光と影によって生み出される美しい効果を想像することは難しいでしょう。

電灯を使う多くの場面では、深い影は非常に不快なものですが、シダやヤシなどの繊細な模様を鮮明に浮かび上がらせる時には素晴らしい効果をもたらします。

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