促成栽培用ベッドは加温ができる栽培床のことです。加温方法はそれまでの堆肥発酵熱利用や煙道による加熱から温湯パイプによる加温に急激に移ったことがうかがえます。温湯パイプは堆肥発酵の手間や煙道に比べたら清潔度が格段に良いですもんね。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
促成栽培用ベッド
促成栽培用の栽培ベッドには様々な種類があり、いろいろな目的に使用されますが、その原理は同じです。
これらに共通する主な特徴は、気温ではなく地温によって、植物の繁殖や展示ハウス用植物の育成、野菜、花、果物の促成栽培を行うところにあります。
つまり、空気の加熱や加湿による茎や葉の直接的な成長促進とは異なり、根の周りの土壌の温度を上昇させ、蒸気の発生によってこの土壌に水分を与えます。
図 89 は、促成栽培ベッドの最適とされる形式の 1例を示しています。
促成栽培ベットは、発酵物、煙道、または温水パイプによって加温することができます。
発酵は私たちの対象外で、煙道は時代遅れと考えられるため、温水パイプの方法のみを扱います。
ハウスの擁壁(左の壁)は追加の低い壁(ハウス内の中央付近の壁)と合わせて栽培土壌の受け皿となります。そこに植物を植えたり鉢を埋めたりします。
この 2 つの壁は基礎部分が厚くなっていて土の受け皿となる棚のような形を成しています。
下に栽培ベッドを加温するためのパイプがあります。
このパイプは蒸発装置があってもなくても使用できます。
水分を蒸発させたい場合、このパイプを水を入れたタンク内に固定するか、パイプの一部に蒸発皿を付けたものを鋳造するか、または取り外し可能な亜鉛などの蒸発皿を通常のパイプに取り付けたりすることができます。
内側の壁の突起部を除いて、パイプの周りのスペースを瓦礫で埋め、その上に直接土をのせる方法もあります。
ただし、さまざまな理由から、パイプの周りは空間を設けることが望ましい場合が多いです。
その理由として第1に、蒸発皿が付いているパイプかパイプが水タンクを通っている場合は、その水を交換する必要があるので、特にアクセスしやすい(手を入れて作業しやすい)ことが重要だからです。
第2に、この方法なら、土に水を注がなくても蒸発させることができます。
第3に、この方法なら、外気の取り入れ口を外壁に簡単に作ることができます。また、排気口を内壁に設置することも容易です。そうすれば、ハウスの内部に暖かい空気を引き込みたい場合、内壁に出口を設置することで、冷気は促成栽培ベッド上を通過せずパイプの近くを通すようにすることができます。
多くの栽培ベッドは経済性を考慮して構築されます。すなわち、ベッドの下を通るパイプが空気だけでなく土壌にも熱が供給できるようになっています。
ただし、この場合の欠点は、空気を加温するのは簡単ですが、土壌を加温してハウス内の空気に影響を与えないようにするのは非常に難しい点です。
可能な限り、土壌と空気は別個に加温する手段を用意することをお勧めします。
図 89 では、空気へは、前側のガラス面近くに設置されたパイプによって熱が供給されます。パイプには必要に応じて蒸発皿を設置できます。
もちろん、この空気を加温するパイプは図に示されている位置に加えて、または、図に示されている位置の代わりに、通路、背面、または内側の擁壁の上部に配置すると便利かもしれません。
この促成栽培ベッドはあらゆる形状のハウスに適用できます。
図に示したような立て掛け式ハウス、あるいは 4 分の 3 スパンの両屋根ハウスや、ガラス面に接して両側に栽培ベッド(または、片側にのみベッドがあり、もう片側に栽培ベンチ)があり、中央に通路がある比較的幅の狭いハウスやより幅の広いハウス (両脇のガラス面横に栽培ベッド (または栽培ベンチ) のスペースがあり、中央にもベッド (またはベンチ) があって通路が 2 本あるハウスでも使用できます。
あるいは、促成栽培ベッドは最も単純な形状の栽培装置、すなわちガーデンフレームやガラス窓のフレームでは、ガラス面の 1 つをスライドさせるか持ち上げることでパイプにアクセスできます。
場合によっては、促成栽培ベッドを固い底にすることが推奨されます。
底面が固いと、パイプの周りの空間は清潔に保たれ、土で汚れないようにできます。また、ベッドから水分が簡単に流れ出ないのでベッドの湿り気を保つことができます。ただし、温水パイプとベッドの土の間の熱伝導が悪くならないよう注意しておく必要があります。
パイプから放射される温風が栽培土壌に直接触れるほど、土はより容易に加熱されます。このため、ベッドの底は骨組み構造にすることをお勧めします。
パイプの上にきっちりとカバーをしてから土を置くのが望ましいと考えられる場合は、一定間隔の骨組みの支えの上に亜鉛またはスレートを敷く方が、隙間なく板張りにするよりも優れています。
なぜなら、木材が他の材料よりも腐りやすい点を除いても、条件が同じであれば、各種材料の熱伝達力の相対値は次のように異なるからです。
亜鉛 430レンガ 12スレート 42木材(モミ) 3
したがって、パイプと土壌の間の中間材が必要な場所には熱伝導性の高い材料を配置する必要があります。
鉄は亜鉛よりも熱伝導率が高いですが、錆びるためほとんど使用されません。
同じ理屈で、ベッドの側面は熱を逃さず保持する必要があるので、熱伝導率の低い材料にする必要があります。
したがって、ベッドの側面には、レンガよりも木材、スレートよりもレンガ、亜鉛よりもスレートの方が適しています。
しかし、木材は腐りやすくレンガほど厚さがないので、レンガが使用できる最良の材料でしょう。特に、一般的には、1 つ以上のレンガの壁がすでにある場合はなおさらです。
どんな種類の促成栽培ベッドも適切な排水が必要であることは言うまでもありません。
促成栽培ベッドに意匠をこらしたボックスを使用することもあります。
そのようなボックスとしては、栽培ベッドを軽いフレームとガラスで覆うタイプもあれば、亜鉛またはスレート底を持つ独立したボックスで、それをベッド内に埋め込んだり、パイプの上に置いたりして、蒸発機能を備えているタイプもあります。
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