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2025年9月23日火曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-2 低圧(常圧)温水暖房 −故障の原因と放熱−

 低圧(常圧)の温水暖房装置についての続きです。装置の「故障原因」と「放熱」の部分です。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


故障の原因

温水暖房に関しては、注意すべき点が数多くあります。これらの注意点を無視すると、通常、機器全体が故障してしまいます。

機器が正常に作動しない場合、「ボイラーに何か問題がある」とすぐに結論づけてしまいがちです。

もちろん、その通りのこともありますが、以下に示すような多くの原因があって、そのいずれか、あるいは複数の原因の組み合わせによって故障が発生する可能性もあります。

  • 放熱パイプの数量不足
  • 放熱パイプの不適切な位置
  • 主配管の不適切な位置
  • 放熱管や主配管内の空気や汚れによる閉塞。
  • 空気配管の不適切な取り付け。
  • 給水タンク配管の不適切な取り付け。
  • ボイラーの出力不足。
  • ボイラーの不適切な位置
  • ボイラーの不適切な設定
  • ボイラーの付着物
  • ボイラーの不適切な焚き方
  • 煙突の構造不良。
  • 煙突への煤の堆積、等々。

以上の原因を含め、多様な原因について、以下に述べる低圧温水暖房装置の各部分の説明で取り上げましょう。


放熱面

放熱には通常、2インチ、3インチ、4インチの径のパイプが用いられます。

大水量用のパイプほど径が大きくなって放熱面積が広くなりますが、扱いやすい水量に限ると、園芸では一般的に4インチのパイプが放熱面として便利です。

2インチや3インチの径のパイプは一般的に給水本管として使用されます。

2インチ、3インチ、4インチ径のパイプの放熱面積はそれぞれの直径と同じ比率になります。4インチのパイプは2インチのパイプの2倍の放熱面を持ち、3インチのパイプは2インチの1.5倍の放熱面を持ちます。

同じ長さの2インチ、3インチ、4インチ径のパイプ内の水量は、これとは異なる比率、すなわち直径の2乗に比例します。

したがって、2インチ:3インチ:4インチ径のパイプの同じ長さでのパイプ内水量の比率は4:9:16となります。

ただし、熱損失に関する計算はすべて、パイプ内水量ではなく、パイプの放熱面積に基づいて行うことを覚えておいてください。

木材は、十分温まった空気を送ってやると、特に燃焼しやすくなるのは疑いようがない事実です。そのため、都市の建築法(「法律」の項参照)では、温水パイプ、温風パイプ、および煙道は、可燃物から一定距離、離して設置してなければならないと規定されています。

放熱パイプについて重要な点は、状況に応じたパイプの数量と配置にあります。


放熱パイプの数量

既に説明したように、低圧(常圧)システムのパイプ内水温は212 °F(100 ℃)を超えることはありませんが、実用上許容できるパイプ内の最高水温は200 °F(93 ℃)です。

植物の健全な生育にとって、パイプの放熱面をこれほど高温にしてはいけません。180 °F(82 ℃ )以下、でき​​ればそれ以下としてください。

もちろん、放熱面を最高温度にして暖房するよりも低めの温度で暖房する方が多くのパイプが必要になります。

しかし、このわずかな追加費用は(パイプの数は増えますが、継手などの費用は数量が多い場合も少ない場合も変わらないので)、暖房による栽培効率の向上と、パイプを最高温度ではなく中程度の温度で運転することによる大幅な燃料節約によって十分に補うことができます。

温室に必要なパイプの数量は、以下の要素によって決まります。

  • ガラス面から熱が逃げる面積
  • 外気温
  • 室内の必要温度
  • 放熱パイプの温度

必要なパイプの数量を求める公式が専門家によって数多く提案されていますが、トレッドゴールドが多くの実験を通して決定した公式が、最も精度の良いものとして広く認知されています。

それはまず、1分間当たりの暖房容積数[立方フィート]を算定する必要があります。

トレッドゴールドは次のように述べています。「温室の長さに温室の最大高さの半分を掛けた数値にガラス面積を1.5倍にした数値[すべてフィート単位]、さらにドアの数を11倍した数値を加えます。

この合計値が、外気温から設定室温になるように暖房で加温されるべき、1分当たりの空気容積値[立方フィート]となります。」

そして、こう言っています。「1分間に加熱するべき空気の容積数[立方フィート]に暖房室温[華氏]を掛け、その値を温室の室温とパイプの表面温度の差の2倍で割ると、必要な配管の長さ[フィート]がぴったり算出できます。」

この計算方法は、ストーブ暖房を要する促成栽培温室などに適用できます。

グリーンハウスなど、それほど強力な熱を必要としない場合は、1分間に加熱すべき空気容量[立方フィート]をこれより10%ほど低く見積もることができます。

重厚な木製の骨組みと垂木を備えた屋根の温室の場合は、温室の容積数[立方フィート]の10パーセントを差し引いて見積もることができます。

これらの公式を具体的に説明するために、長さ40フィート0インチ、幅16フィート0インチ、背面壁の高さ15フィート0インチ、前面壁の高さ5フィート0インチ(うち2フィート6インチはレンガ造り)の片流れ屋根のストーブ暖房の温室を考えてみましょう。

外気温が20 °F(-7 ℃)のとき、室内温度を70 °F(21 ℃)に保ちたいとします。また、屋根の骨組みが鉄製、あるいは骨組みが非常に軽量なら、骨組みの保温性は期待出来ないので、それによる熱の節減効果はないものと仮定します。

まず、1分間に加熱される空気容積[立方フィート]を求めるには、温室の長さ(40フィート)に最大高さの半分(7.5フィート)を掛け、それにガラスの総面積(1100)の1.5倍とドア数(2)の11倍を加えると、(40 x 7.5) + (1100 x 1.5) + (11 x 2) = 300 + 1650 + 22 = 1972となります。

次に、この空気容積の立方フィート数1972に70 °Fと20 °Fの温度差を掛け、その積を180 °Fと70 °Fの差の2倍で割ると、

パイプ表面積は以下のように求まります。

[1972 x (70-20)]/[(180 - 70) x 2] = [1972x50]/[110x2] = 98600/220=448平方フィート

4インチパイプ1フィートあたりの表面積は1平方フィート強であるため、上記の結果の448平方フィートは、長さ数448フィートの4インチパイプにした場合、上記の結果の448平方フィートよりもかなり大きな表面積になることを示しています。

問題の後半部分をもっと簡単に解くために、フッドは表XXから、毎分加熱されるべき空気容積[立方フィート]を求めることができるようにしました。これは、外気温が10~50 °F(-12~ 10 ℃)の場合、毎分1000立方フィートの空気を45~90 °F(7~ 32 ℃)に加熱するのに十分な4インチパイプの長さ[フィート数]を示しています。

この表は、パイプの温度を200 °F(93 ℃)にした場合の値です。

ただし、この値は園芸用途には大きすぎる可能性があります。したがって、適度なパイプ温度を維持するためであれば、これらの数値はおおよそ値とみなしておけばよいでしょう。

この表を、すでに述べた暖房条件、すなわち外気温が 20 °F(-7 ℃)のときに内部温度を 70 °F(21 ℃)に加熱する場合に当てはめてみましょう。

70 °F(21 ℃)の数字の下の縦列と、20 °F(-7 ℃)の数字の反対側の横列を見ると、1,000 立方フィートあたり 216 フィートの長さのパイプが必要であることがわかります。


表XX.—さまざまな温度を実現するのに必要なパイプの長さ。


これを1.972倍すると(1,972は1分間に加熱する容積の立方フィート数)、パイプの長さは426フィートとなり、これは以前の計算(<448)とほぼ同じです。

どちらの計算方法を採用しても、パイプの本数が少なすぎるというリスクはほとんどありません。

多くの人は、外気温が20度(例えば、一年で最も寒い半期の平均気温)よりも高いと想定します。私たちの気候では、この気温は約40度と考えて、異常低温日は、強制的に少し加熱する必要があると考えています。

しかし、これは賢明な方策とは到底言えません。

パイプの量が多すぎることで安心かどうかは別として、暖房装置が最も役立つ時期は、一般的に最も天候が厳しい時のはずです。


迅速な計算には、著者が実際の実験に基づいてまとめた表XXIが役立つでしょう。

この表を使用するには、まず、温室の実際の容積をフィート単位で求めます。

この表は、外気の最低気温が一定の約20 °F (-7℃) であり、また温室には相当量の木材が使用されていることを前提としています。

冷房設備(換気窓など?)を備えた温室については、別途考慮する必要があります。


表XXI. —さまざまな温度を実現するために必要なパイプの長さ。

上記の表、公式などは、結局のところ、多かれ少なかれ概算の数値であり、それぞれの状況を考慮して判断する必要があります。

例えば、他の条件が同じであれば、両屋根ハウスは片流れ(傾斜)屋根ハウスよりも多くの配管を必要とします。北向きの片流れ(傾斜)屋根ハウスは、より好ましい方角(一般的には南や南東の向き)の片流れ(傾斜)屋根ハウスよりも多くの配管を必要とします。

一方、片流れ(傾斜)屋根は両屋根よりも風が強く当たるので、冷却がより大きくなることがあります。

住宅に付設されていて寒冷な外気から保護された園芸施設は、屋外に単独で建てられた同型の園芸施設よりも配管が少なくて済みます。

建てた場所の(イングランドの)地域性も考慮する必要があります。

同じ配管でも、上部が開いた溝に設置されている場合、あるいは部分的に格子によって溝の壁面近くに設置されている場合は地上に露出して設置されている場合よりも、多くの配管が必要にですが、前者の放熱量は後者の場合の約70%しか必要としないと計算できます。

よくある失敗は、パイプの量が少なすぎることです。


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