温水暖房システムの配管系のうち、空気の排気口とメインの給水管(主管)についての説明です。これまでの温水暖房システムの詳しい解説は、風呂の残り湯のようなぬるい温水でトンネル内を暖めるような場合も有用かも。私には勉強になっています。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
様々な暖房方法 Ⅲ
低圧(常圧)温水暖房
空気管
水が適切に循環するためには、配管とボイラーが完全に水で満たされている必要があります。この点は温水暖房ではとても重要です。
配管内に空気が少しでも残っていると、固形の障害物があるのと同様に循環を阻害します。
そのため、発生する空気や蒸気を逃がすために配管の最も高い位置に排気口を設ける必要があるのです。
一つの温水システムに複数の配管列がある場合は、各配管列の最も高い位置に排気口を設けなければいけません。
あるいは、配管列に上昇部分と窪みが複数箇所にある場合は上昇する各部分の最高点に空気の出口(排気口)を設ける必要があります。
空気は水の827分の1の軽さなので、水にのって動く空気は下に移動することは決してありませ。
これらの空気の出口は通常、必要箇所に細い金属管を挿入することで作られます。あるいは、金属管を取りつけにくい場合は配管パイプの上部に小さな蛇口を取り付けることもできます。
蛇口は当然ながら開栓しているときのみ作動するので、少なくとも1日に2回開閉を確かめる必要があります。
細い金属の空気管を取り付けた場合は、自動で作動するように、装置類の上部からさらに約8~9フィートの高さにまで立ち上げて、その先端を図92のEのように折り返して、何も入らないようにします。
この先端部はハウスの外へ導いて、排水溝や排水口へ向けることもあります。
空気管は装置から8~9フィート(約2.4~2.7メートル)の高さでしっかりと垂直に設置されているか、細心の注意を払う必要があります。垂直でないと、管内を上昇した水が滞る部分ができて外気にさらされると凍結する危険があります。
長い空気管を設けることができない場合あるいは空気管内の水が凍結する危険がある場合には、短い管と蛇口、あるいは蛇口を直付けします。ただし、可能な限り、自動で作動する金属管の方が望ましいです。
空気管の直径は非常に小さくて構いません。なぜなら、等圧下では流体(空気も水も流体)の速度はその比重に反比例するからです。すなわち、空気は水の827倍の速度で管から逃げることになります。
主管
暖房する放熱パイプをボイラーに直接接続することは不便ですし、不可能です。放熱パイプは2本の主管すなわち供給管でボイラーと接続するのが一般的です。2本のうち1本はボイラーの最上部に取り付けて、(「行き」の)上昇水を流します。もう1本はボイラーの最下部に取り付けて、ボイラーへ流入する(「戻り」の)下降水用とします。
当然のことながら、主管からは熱が放出されないようにすることが不可欠です。そうしないと、ボイラーとパイプの放熱面との間の適切な熱伝達が減ってしまいます。
この問題を回避するために、地下に埋設されている主管は通常、レンガの溝に入れ、フェルトなどの熱伝導率の低い素材で覆うか、あるいは、静止した空気層に置くのが望ましい方法です。静止空気は熱伝導率が最も低いものの一つで断熱層になります。
レンガも熱伝導率が低いため、ボイラーと放熱パイプの接続部の間の主管はレンガで覆った中空の溝に入れるだけでも熱の損失を減らすことができます。
このように空気で断熱された主管内を温水が流れ始めると、表面から熱が放射され、中空の空気層と周囲のレンガが温められますが、主管、空気層、レンガの温度が等しくなれば放射はほぼなくなります。
主管をレンガの溝に設けることができない地下室などの開放空間に設置する場合は、当然のことながら、フェルト、ケイ酸塩綿、またはその他、熱伝導率の低い素材で断熱する必要があります。
放熱パイプにおいて説明した管内の摩擦や持続的な温度上昇は、主管にも当てはまります。ただし、通常、放熱パイプは主管よりも径が細いので、放熱パイプの摩擦のほうが深刻です。
摩擦損失に関して、垂直の主管は水平に近いものほど太くする必要はありません。
水平に近い主管は、可能であれば、9フィート(2.7 m)ごとに少なくとも1/2インチ(12.5 mm)の勾配をつける必要があります。
主管の直径は通常2インチまたは3インチ(5〜7.5 cm)ですが、ボイラーと放熱パイプの間の距離と垂直の高低差、そして放熱パイプへの給水量に応じて決定されます。しかし、距離が非常に長く放熱面積が大きい場合は、4インチ(あるいはそれ以上)の径の主管が必要になる場合があり、摩擦損失を補うために垂直部の高さをどのようにとるか、細心の注意を払う必要があります。
主管はボイラーと放熱パイプを繋ぐ接続としての役目のほか、出入口のドアの下に配管が敷設されないようにし、隣接するハウス、さらには1つのハウス内の異なる場所に別々にかつ独立して暖房できるようにするためのものです。
一例として図95は4棟の両屋根ハウスにおける主管の配置を示しています。
Aは植物用暖房ハウスを想定しています。
Bはキュウリとメロン用のハウス、
Cはグリーンハウス、
Dは果樹用ハウスで、
すべて暖房されています。
ボイラーはXの位置にあります。
ハウスの両妻面と各区画にドアがあり、さらにグリーンハウスCには横向きのドアが2つあります。
ハウス内の点線は主管、太線は放熱パイプです。
主管はボイラーから直接伸びて、通路の中央をまっすぐに伸びていることがわかります。
ハウスAでは、主管からの枝分かれが展示台下の暖房パイプに繋がっていて温水を供給します。
さらに枝分かれがハウスBの床下暖房と外気暖房に繋がっていて温水を供給します。
ハウスCでは、両側面にある横向きの出入り口に暖房パイプに温水を供給するための枝分かれが繋がっているので、下を掘る必要はありません。
ハウスDの暖房については後述しますので、ここでは説明しません。
この図は必ずしも主管の模範的な配置を示すものではなく、さまざまな配置方法の1例を示しています。
上記の主管の配置から、ハウスAとBの暖房を完全に遮断しながら、ハウスCまたはその一部を暖房できること、ハウスAとCの暖房を遮断しながらハウスBを暖房できること、ハウスBの上部または下部の暖房を、他の暖房と干渉することなく遮断できることが分かります。実際、ハウスのどちらか一方、あるいはハウスの一部、あるいはハウスA、B、Cの任意の組み合わせで、残りの部分とは全く独立して暖房することができるようになっています。
ボイラーとその位置については後述しますが、ボイラーの位置と給水主管との関係についてここで言及しておくべきことは、複数のハウスを連ねる暖房計画においては、図95のZのように、ボイラーを連棟の中央付近に配置することが望ましい場合が多いということです。
この配置により、給水主管をボイラーの両側からのばすことができ、水は一方向ではなく双方向で循環します。
主管が輻射による熱損失を十分に防がれている限り、最も多くの熱量を必要とするハウスをボイラーの最も近くに配置する必要性はそれほど高くありません。
このことは、「輻射面」の項で後述するように、他の条件が同じであれば、輻射面の大きさに依存するからです。
1台のボイラーで複数のハウスを暖房する必要がある場合、循環流の摩擦損失を減らすため、ボイラーに接続する主管のサイズを大きくすることがしばしば望ましいとされています。
主管(実際は温水装置のすべての部品)は簡単に手が届くような位置に設け、溝に置かれることで蓄積した汚れなどを容易に除去できるようにしておく必要があります。

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