商業温室で温湯暖房は見かけなくなっていますが、高級メロンハウスなどでは今も利用されています。温湯はじんわり均一に暖房できるところがきっと魅力なんでしょうね。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
様々な暖房方法 Ⅲ
低圧(常圧)温水暖房
バルブ(弁)
熱を供給する主管は熱を調節したり止めたりするバルブと密に繋がっています。
表XXIIIで示したように、温水パイプ内の熱を持続的に供給するには、温水が一定の速度で流れている必要があります。
さて、ここでボイラーの火を弱めると、ボイラーからパイプへ流れ出す水(流出水)の温度は流入水(戻り水)の温度に近づくようになり、流れる速度が低下します。そして、温度差がある限度に達すると、熱を持続的に供給するのに十分な速度が得られなくなります。
したがって、小型の暖房システムすなわち1つのハウスあるいは1つの配管系を暖めるシステムでは、火力を増減させることで供給する熱を自由に調節したり停止したりすることができます。
しかし、ほとんどの場合は1つの熱源で複数のハウス区画あるいは複数の配管系を動かすことが多いです。
したがって、1つ以上、複数の配管系列の循環を遮断したり、残りの配管系列の循環を妨げずにある系列を停止したりする機能が必要になります。
これを実現するために、チェックバルブまたはスロットルバルブを使用します。
こういったバルブは、概ね図86と似た構造をしており、絞り通気バルブと同様に平衡状態にあるため、水の動きによってバルブが閉じたり開いたりといったことはありません。
バルブが完全に開いていれば、スロットルバルブのディスクの端以外、温水は循環することができます。バルブを閉じれば温水の循環は完全に止まります。
この種のバルブは開いている時、他のバルブよりも水の循環を邪魔しません。
バルブが単に循環を停止させる目的だけなら、流出管にバルブがひとつあればよく、戻り管にバルブを設置する必要はないでしょう。ボイラーが非常に強力に運転でき、配管がそれに適した配管になっている場合、流出管にのみバルブを設置すれば、水の循環を妨げるよりむしろ流れを迂回させるといった効果的な使い方ができるでしょう。
一般的には、バルブは流出管と戻り管の両方に設置するべきです。
図95に示すように、主管の長さ方向の中央から分岐して立ち上げる主管の一部または全部にバルブを設置することができます。
通常のスロットルバルブは循環を妨げますが、水圧抵抗は生じません。
例えば、運転中のボイラーと予備のボイラーの間、運転中の2つのボイラー間、あるいは大規模で複雑な配管系の特定箇所などでは、高圧バルブが必要となることがよくあります。
使用する高圧バルブは、通常の「ねじ込み式バルブ」のように迂回した流路を作るものではなく、開弁時に完全に、直接、明確に流路となるタイプを使用してください。
以下の図96のバルブはこの条件を満たしています。
このバルブを閉じると、2枚のディスクが機械的にねじ込まれることによって弁座に押し付けられ、あらゆる圧力に対抗します。
バルブを開くと、ディスクは弁座からわずかに後退し、流路部から完全に出ます。
この図はねじ込み式のバルブ弁を示していますが、この原理はスピゴットソケット(蛇口弁と受け口)式またはフランジ式のバルブにも同様に適用されています。
図97は一般的なスロットルバルブを示しています。高圧バルブを流出管に、スロットルバルブを戻り管に設置することが推奨される場合もありますが、そのような組み合わせに利点はありません。
高圧バルブを使用する場合は、当然のことながら、流出管と戻り管の両方を高圧バルブにする必要があります。
バルブのパイプへの取り付けにおいて、注意すべき点が1つあります。
195ページの図95を参照すると、鉛直の立ち上がった主管は区画Cで途切れ、ハウスDには通っていないことがわかります。区画Cの一端の両側にある放熱パイプは、そのままハウスDまで通っています。配管が区画Dに入る箇所には、図98に示すように、H部にバルブが取り付けられています。
ハウスDを加温する必要がある場合、H部の中央にあるバルブを閉じ、他の2つのバルブを開きます。ハウスDへの熱供給を停止する場合は中央のバルブを開き、他の2つのバルブを閉じます。このシステムの明確な欠点は、Cが加熱されない限り、ハウスDを加温できないことです。
接合部
園芸用の温湯暖房に最も一般的なパイプには蛇口栓と受け口が端についています。末端がフランジのパイプもありますが、非常に稀です。
末端がフランジのパイプでは、フランジの隙間に水密性の高い接合部ができるように、加硫ゴム製のワッシャーをかませてフランジをボルトで締め付けます。
蛇口栓と受け口を端に持つパイプの接合には以下のような方法があります。
一つは錆止め接合です。
これは、蛇口と受け口の間をロープでコーキングし、湿らせた鉄粉と塩化アンモニウムの錆止め混合物で気密にシールするものです。
この接合は一度作ると、パイプを壊さずに取り外すことはほとんど不可能です。
もう一つの接合方法は赤鉛と白鉛の混合物でロープを使ってパイプをコーキングする方法です。
もう一つはロープでポルトランドセメントをコーキングする方法です。
しかし、最も簡単で、漏水に最も強く、そして最も簡単に外せる接合は円形の加硫ゴムリングを利用するものです。
この接合方法は、リングを蛇口栓の先に置き、受け口または接合口に押し込むだけです。
リングは受け口の端と蛇口栓の端のほぼ中間に位置し、水がパイプ内を循環すると平らな楕円形に丸まります。(図99参照)
短時間で、熱によってリングの外側がパイプに密着し、接合部は特に障害物がなければ長年良好な状態を保ちます。
数分もあれば、新しいリングを挿入することでこのように接合部を修理できますし、接合部を分解してパイプを別の用途に使用することもできます。もちろん、加硫ゴムリングはボイラーに最も近い接合部には使用しないでください。
加硫ゴムリングで接合した装置はリングを挿入した直後から始動できますが、パイプに水を満たす前に、錆び止めやセメントの接合が硬化・乾燥していることを確認する必要があります。
加硫ゴムリングはパイプの膨張・収縮に対応するので、他の接合で発生しがちな漏水の危険性はそれほど高くありません。
前述のように(「鉄骨ハウスと木骨ハウス」51ページ参照)、鋳鉄は温度が32°Fから212°Fに上がると1/889膨張します。つまり100フィートあたり約1.35インチ伸びます。
したがって、特に接合固定するパイプは線膨張しやすいようにしておく必要があります。そうしないと、接合部が漏水しやすくなります。
接合した2つのパイプの温度が異なる場合、流出水側の膨張と戻り水側の膨張が異なります。
給湯技術者の中には独自の接合方法を使い、そのため、パイプを特殊な端部形状にすることがあります。
こういった特殊な接合方法は、後から変更や増築を行う際に同じ形状のパイプを入手することが困難になる可能性や、加硫ゴムリング付きのソケットと蛇口栓付きのパイプに比べて利点が極めて限定的なことから、実用的であるとは言えません。




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