園藝之友 第2年第1号 (1906年)
蔬菜促成栽培(続き1)農学士 春乃園主人
この頃、日露戦争に勝利して、社会の雰囲気が高揚してたせいか、
季節外れのキュウリやナスを高額でも買う景気の良い層がいたんですね。現在の価格換算で、
冬のキュウリ1本が1000円、ナス1本2000-3000円!それもとっても小ぶりなんですよ。
当時は、幅1m、長さ2m、高さ30cm位の木枠にガラスか油紙のサッシを乗せた温床栽培(木枠下の地面には馬糞や落葉などを敷いて、その発酵熱で温める)だから、収量がごくわずかなので珍品扱い。以下、引用です。
近頃、世の進歩に伴って実用品も贅沢になってきて、蔬菜の如きは春から冬にかけて、普通の季節の生産だけでは満足できず、初冬から寒中早春にかけてキュウリを収穫するというのは、一方から見れば、学術の進歩大いにありといえるが、他方面から見れば、次第に贅沢になりつつあるということである。しかし珍品を、人類が大いに賞賛するのは蔬菜に限らない。・・・栽培家が季節外れの品を作るので、購入する人がいるのか、消費者が望むので、栽培家が苦心して生産することになるのか、問うても仕方ない。今となっては珍品として促成栽培物を珍重すると同時に、価格も高いので、栽培は難しく、設備に多額の資本を要するにも係らず、栽培家は競って促成栽培を行うようになったのは、高値で生産物を販売できるからに外ならない。
春に1本2、3厘(40〜60円*)のキュウリが、9、10月頃には1、2銭(200〜400円)の値段となり、冬には5銭(1000円)以上の値段になるのは、市場に出回る数が少なくて、希少と云うに過ぎない。ある栽培家は四坪のガラス障子の下で、1作200圓(400万円)キュウリを売り上げた実例がある。早春、ナスの価格は1個10銭以上20銭(2000〜4000円)の価格になると見聞しては、栽培家たる者なら垂涎の情を禁じないだろう。濡れ手に粟の掴み取りと古語にあって、所謂労せずして巨利を得ることを意味する。・・・希少品は或る程度高値がつくものである。・・・もし促成栽培が普通の栽培に比べて、特に著しく難しくもなく、多額の資本も必要でなければ、大いに促成栽培をやってみることができる。しかし、多額の資本を投じても成功は確実でないので、希少で価格が高いのは尤なことであり、促成栽培が有利なわけである。
*当時の1銭が現代の200円に相当すると仮定した場合の換算金額
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