2022年6月21日火曜日

Colewort(キャベツ)1/2:「The Gardeners Labyrinth」第33章前半

「ガーデナーズ ラビリンス」の第33章〜の第2部は作物ごとの解説シリーズになっていて、最初にとりあげられているのはコレヴォルト(キャベツ)です。キャベツは日本では明治になって流通するようになる新しいヤサイですが、ヨーロッパでは野生の原種が地中海岸の崖に自生する、古代より大変馴染み深いヤサイです。

焼き鳥屋さんでは生キャベツ(私が若かった頃はレモンと塩添えで)がつきものですが、その風習は古代ローマからもたらされた?(笑・冗談)とうっかり思ってしまいそうな記述もありますよ。

2−1(33章) Colewort(コレヴォルト、キャベツ)の播種と頻繁な移植に際し知っておくべき助言と秘訣。

農業に詳しいマルクス・カトは、どの葉菜類(ポットハーブ)よりもコレヴォルトを優先しました。学識者プリニーも同様に、すべての菜園ヤサイ(ガーデンハーブ)のなかでコレヴォルトを最優先すべきものとしています。そのため、木の枝のように力強い茎や葉柄を持ち、ラテン語でコレヴォルト(colere:耕す+ wort:植物)と名付けられたこのヤサイを最初の作物としてとりあげましょう。

この植物は糞を入れた肥沃な土壌を好みます。時々の降雨による洪水が役立つことはありますが、粘土、砂利あるいは砂といった土壌は栽培に向きません。

コレヴォルトは南向きの土地に植えると良く繁茂しますが、北向きの土地ではあまり多くの収穫は期待できません。けれども、北向きの場所で耐えて育ったものは味と強さを兼ね備えていて、冷たい空気と霜を通して柔らかくて風味の良いヤサイ(ハーブ)になります。

偉人ルティリウスが指摘したように、コレヴォルトは丘の斜面や傾斜地を好み、糞を好み、頻繁に雑草を除草することでよく育ちます。葉が6枚出たら間引かないといけません。間引いた所に残した苗の根は、土が再び落ち着くまで、柔らかい(ま新しい)牛糞があればそれに悩まされます。冬作の場合は暖かい日に牛糞を整えておく必要があります。逆に夏作の場合は太陽が西へ下がっていくような時間(夕刻)に整えます。

最も古代のギリシア人は、コレヴォルトをわずか3種類だけに分類しました。クリスプな(パリっとした)ものは Selinoideaと名付けました。パセリの葉のように葉に縮みのあるものはLean、茎が伸びずに葉が成長する広葉のものはCaulodenと名付けました。

そして、Crabと名付けられたものは、その名の通り、より薄い葉がとても密集した球になります。



左から順に、ワイルドコレヴォルト、パセリコレヴォルト、ガーデンコレヴォルト
The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。

コレヴォルトはその株に毎日太陽光がよく当たる土地であれば大きく育ちます。

特筆しておくべきは、「long or green」と名付けられた一般的なコレヴォルトは、8月中旬または9月の初め以降に播種すべきということです。そうすれば、冬と春に大きな葉へ成長し収穫できます。

農民庭師や庭主は、10月にコレヴォルトの若苗を植え12月に移植することで、厳しい冬に葉を収穫します。6月と7月にタネを蒔き、大きな房に成長させることもできます。 それは、あまり美味しくはありませんが、一年のほかの季節のものと同様、やわらかめの葉となります。

タネは古くならないように注意してください。古いと本来と異なる姿になってしまいます。

そういったタネは、報告によれば、蒔くとセイヨウアブラナやアブラナ属の小さなカブになってしまいます。

6年間タネを保存する場合は、注意深く保存する必要があります。

マルクス・ヴァロによれば、コレヴォルトのタネを塩類の多い場所に蒔き、葉が3枚出てきたら硝石または塩土の粉をそのうえに霜が降る程度ふりかけます。このように栽培管理すれば長年保存されたタネでも柔らかくておいしい葉になります。プラクサムスはギリシャの農業書において、こういった栽培方法が確立されていることを述べています。

硝石の代わりに灰を使用することもありますが、これは(果実や葉、蕾を食害する)蛾や蝶の幼虫の駆除にも効果があります。これらの害虫は庭によってはコレヴォルトに大きな被害を及ぼし枯らしてしまいます。

コレヴォルトは煮て沸騰させるとより早く柔らかくなります。また、根を海藻の小さな葉3枚を重ね合せたもので包み再び土に植えれば 硝石を撒かなくても緑色を保つと、偉人コルメラは報告しています。

Reyte(網?)または海藻を移植の際に茎の下に置きっぱなしにしても同じ効果が得られ、煮ると繊細で柔らかい葉になります。煮る前のコレヴォルトは油と塩にいっとき浸しますが、煮る際にはコレヴォルトに含まれる亜硝酸や塩類物質を除くために少量の塩を入れて沸騰させます。

コレヴォルトは全体を土に突っ込んで、土中で葉の上に土を置き、茎のどの部分もむき出しにしないようにすれば、大きくて味の良いものができます。 伸びて土から離れるのに合わせて株の高さまで土を寄せ続け、外側の葉は切り取り、葉の上部だけが地上に見えるようにします。

コレヴォルトは頻繁に草取りして、糞をうまくワックスのように地面に上掛けすると丈夫になり、収量が増え、葉が柔らかくなります。(前述したように)コレヴォルトは一年中収穫することができます。飼料としても播種できますが、その場合は刈り取ってはいけません。若いコレヴォルトの柔らかい上部はサラダ用に重宝されます。それはやや熱くしてオイルと塩をかけて食します。

夏の乾季の後、雨が降ったら、庭主は腐敗した葉を引き抜いたり腐敗した株を更新します。

コールキャベツまたはホワイトキャベツは、栽培ベッドに厚めにタネ蒔きする場合がありますが、確実に葉が出た後、整備した栽培ベッドに半ヤード(約45cm)の深さで移植すれば、特に大きな茎や株に成長します。 それは厳しい霜によって柔らかくおいしくなり、わらで覆えばキャベツのヘッド(頭部)は丸く白くなります。

ホワイトキャベツ
The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。


しわくちゃでクリスプなロメインキャベツは柔らかく繊細なので、3月に播種し、その年のしかるべき時期に収穫します。必要に応じて常に水やりします。

庭師や庭主がコレヴォルトの葉が枯れるか黄色になったのを見かけたら、それはいつでも水不足のサインです。水不足が起これば葉は黄色になり、穴が空いたりレース状になったり、あるいはカサカサに乾いて必然的に弱くなって枯れてしまいます。

農夫や庭主が柔らかくておいしいコレヴォルトを育てたいなら、(前述のように)移植の際外側の葉を取って内側の葉を成長させます。そうすると外側の葉がある場合よりも味や風味が良くなります。 

赤いコレヴォルトは、(発酵中の)熱い糞をたくさん与えるか、水かワインの灰汁で十分に湿らせるか、あるいは太陽が毎日長時間当たる暑い場所に植えれば自然に成長します。

赤いコレヴォルト
The Herbal, or General History of Plants by John Gerard (1597) and Thomas Johnson(1633) より。


管理や収穫の際、パリッとしたロメインなどの株は決して頂部だけを採取しないでください。常にヘッド(頭部)や上部から下の厚い葉を収穫します。

どの系統や種類のコレヴォルトも外気と土壌が寒くも暑くもないなら、どの季節にも植えることができます。 ディバー(点蒔き棒)で作った穴に移植する際、少なくとも根の先端をカットして植え付けるようにします。植え付けの際に根が折れたり曲がったりすると根は大きく傷つくからです。

大きな、成長した苗を選んで移植すれば根の定着はゆっくりですが、力強く成長します。 

この根にとって、柔らかい(生の)糞や川の泥を土に塗ったり置いたり混ぜたりすることは望ましくありません。一般的に乾いた土壌が適切であり、好みます。外側の葉が枯れても優しい雨が降れば活力が戻ります。 

前に言ったように、若いコレヴォルトに塩水で水やりして柔らかくする人もいます。 


(自然界の比類のなき検索者である)プリニーによれば、土鍋などの容器は毎日水を沸騰させることで、とても早く容器表面のクラスト(余分な焼成殻)にヒビを入れたり、容器の側面内部まで焼き付けることができます。素焼きの容器でもその効果は同じですが、この容器でコレヴォルトを煮ると、すぐに簡単にクラストを落とすことができます。

アテナイオスは、コレヴォルトはいかなる場合でもブドウの木の近くに植えたり播種したりしてはならず、ブドウの木も同様にコレヴォルトの近くに植えるべきではないと書いています。 この2つの植物が1つの区画にあると(テオプラストスの証言のように)互いに成長を妨げ合います。互いに避け合うため、ブドウのツルはコレヴォルトに向かって伸びるのではなく、コレヴォルトを避けて曲がりくねります。そのためブドウの収量も少なくなります。

これと同様に、樽(Butte)や 大樽(Hogg sheade)のワインにコレヴォルトを入れると味も風味も損なってしまいますが、それにビートの葉を浸ければ再び味が回復する(とプリニーは断言しています)。 

その記述や証明によれば、知の偉人アンドロシデスは(プリニーが書いているように)、コレヴォルトは酔っぱらいに対して大いに役立つと報告しました。そのうち、ワインを非常に愛飲するエジプト人の間では肉と一緒にコレヴォルトを煮ることが現在一般的に行われていると書いています。そのように調理されたものを食べればワインを飲んだ後の不快な辛さ(二日酔い)に備えることができます。

プラクサムス(ギリシャの農業書の著者)によれば、少量のワインをコレヴォルトの沸騰した煮汁に一滴ずつ注げば、沸騰後も(二日酔いを癒す)力を発揮する汁となります。

大酒飲みが集ってワインをたくさん飲む場合、飲む前に肉と一緒に生のコレヴォルトを一定量、前もって食べておくべきでしょう。

この問題について、宴会でたくさんのワインを飲み、好きなだけ食事をとった古代ローマの偉人(M. カトー)の言を聞いてください。「食事の前に大量の生のコレヴォルトを上質の酢で食べて、食事に臨んでは生の葉5枚を食べれば、食べたり飲んだりしていなかった人のように好きなだけ飲むことができる。」

ワインとこのヤサイの素晴らしい関係は前述しましたが、 M.ヴァロの書物の中でアグリウスが指摘したことにも通じています。


また、コレヴォルトは、オレガノ(または野生のマジョラム)、ルーやソーブレッド(ユーラシア大陸南部に自生し、淡いピンクか白い花を持つシクラメン)の近くに植えてはいけません。それらは乾燥気質で、 コレヴォルトの成長を邪魔し、しおれさせます。従って、コレヴォルトの近くに播種または植えるべきは、他の非常に湿った気質のハーブが大変有効です。 同様に、湿った気質のハーブの近くにラベンダーを植えてはいけません。大根と同様、その中に含まれる特有の酸性物質や刺激物質を通して、近くで成長している湿った気質の柔らかい植物を燃やすからです。

アテナイオスによる有用な記録もあります。(昔)アテネでは問題が起きないように懐妊中の女性にはコレヴォルトを肉と一緒に出さなかったと報告しています。

コレヴォルトの灰でも同様の問題を生じます。灰をひと匙水に溶かしたものは(前述のように)亜硝酸物質を含み、煮沸が不十分なままの煮汁(ここでのちほど説明します) にするとお腹を緩くします。

長いので後半に続く。


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