2023年4月21日金曜日

ウォルター・ニコルのキッチンガーデン

著名な造園家であるWALTER NICOL氏の19世紀初頭(1802年)の書「THE FORCING, FRUIT, AND KITCHEN GARDENER.(促成、果実、キッチンガーデナー)」にある、キュウリの促成栽培果樹の壁栽培やエスパリエについて以前、メモしました。

4月になってヤサイが育ち穫れるシーズンになったので、第III部のキッチンガーデンを読んでいます。

イギリスは産業革命がスタートして、農業社会から工業社会へ突き進んでいく時代の幕開け期です。この時代の気運が農地やキッチンガーデンにも及んでいて、本書のイントロダクションも「勤勉に耕せ!」といった雰囲気です。といっても、その動力源はまだ畑なら牛、庭なら人です。大型機械や化学製品での収奪とまだ無縁な世界です。

当時の人が目指していた農業の工業化がたどり着いた現代は、有機農業や不耕起栽培や自然農法などが注目されるので、本書のような人力一辺倒で化成肥料や化学農薬が現れる前のキッチンガーデンの指南書も一興です。

「促成栽培、果実栽培、キッチンガーデン」by WALTER NICOL
第Ⅲ部 キッチンガーデン
「はじめに」

必要は発明の母と言われますが、それはまさに産業界にとって第1にして最大の促進剤です。

したがって、なぜ北の国々が南の国よりも園芸と農業の技術においてはるかに進んでいる、その理由は、おそらく、北は土壌と気候に恵まれておらず、その結果、生活の快適性や必要品の生産性が南よりも低いためなのでしょう。

交易が拡大し、人々が互いにより親密な交流を持ち始めると、現実の欲求だけでなく彼の地から想像でかきたてられる欲求も相互に見出すようになり、それを満足させる手段が採用されるようになります。

島国(英国)の私たちには、その進歩はゆっくりとした歩みでした。

しかし今では、他の時代には知られていなかった、変革進歩の精神があらゆるコミュニティに宿っています。

園芸と農業の部門もこうして急速に進歩したのですが、独創的で勤勉な人々がその才能と忍耐力を発揮できる部分がまだ十分に残されています。

土を耕すことによって食べ物を育てるさまざまな方法は、ガーデニングと農業という 2つの範疇で理解する必要があります。

ガーデニングと農業は密接に関係しており、互いにほぼ同盟関係にあります。

両者の主な取り組みの違いは、使用される機具とその使用方法にあります。

ガーデニングは人が労働源であるのに代し、農業ははるかに多くの部分を牛の働きによっています。

プラウ(牛がひく鋤)は最も役立つ道具ですが、小規模ではスペード(シャベル・スコップ)ほど効果的ではありません。

したがって、ややもすると生産が行き過ぎがちになる畑よりも庭に優れた点があると言えます。

ガーデナーである私たちが勤勉であればあるほど、その見返りは大きくなるでしょう。

関心と同じく思慮分別は、ガーデニングでも農業でも、高い技術を要する産業であれば必要とされるものであり、それがさらなる進歩をもたらします。

肥料の価値と効果、その施用、品質、特性、土壌の整え方についての正しい知識は、農業の進歩の根本であり、その後の発見へとすべてつながっています。

こういったことは、農業よりもガーデニングの方がより綿密に行うことができ、失望するリスクも少ないものです。したがって、園芸(ガーデニング)における発見と進歩は、一般に農業より一足先んじてきました。

庭の野菜だけでなく、開拓畑の穀物でも効果的な耕作、掘削、溝掘りなどが豊富な収穫をもたらすための最重要事項であることがわかるでしょう。

このような土作りは農地よりもガーデニングの方が集約的に実現でき、畑よりも庭の方がより生産的であるというもう1つの理由になっています。

3つめの理由は、状況によりますが、地域性、防護施設の有無などが考えられます。

ただし、それは常に有効というわけではありません。多くの種類の野菜、特に最も有用な野菜は、保護された場所よりも開けた場所にある庭の方が、より良いとまではいかなくても、同等の生育能力を発揮することがわかっているからです。

庭の土地は一般に農地よりも高く貸し出されます。家族を維持するために割り当てられる庭の面積はかなり小さいものです。

庭主は、熱心さ、勤勉さ、そして忍耐力を発揮する必要があります。

成果を信じ、能力を最大限に発揮して自分の土地を耕し、管理すべきです。

こうしたことが庭が畑よりも生産的であることの理由でしょう。

そして最終的に、

個人の庭は実用性と同時に娯楽の対象でもあるため、一般に、手入れや管理などがしやすい、最も便利な場所に作られます。

そうして、軟弱な食用植物を最も熟練した努力で栽培しても、特にその土壌が栽培に適していない場合、しばしば困惑させられます。

さらに、偶発する気象現象や天候の大きな変化すべてに誰が太刀打ちできるでしょうか?

この国では多くの不利な条件の下で園芸や農業に従事しなければなりません。特に早春に多くの不利な条件が存在しますが、そのことはヨーロッパ大陸ではあまり知られていません。

天候がより厳しいということではなく、それは確かに問題視されますが、天候の変化が大きいことが問題で、まさに植物にとってとても重要な第一の成長促進となる太陽光にあまり恵まれていないという不利な条件があります。

ですから、力の及ぶ限り、私たちが働くにあたってこの不利な条件を改善できるよう、どのような方法であれ可能な限り、土地のあらゆる場所で以下のような高度な栽培を行うことが求められます。それによって、作物が気候に適応し健康になるよう努めましょう。

そうすれば、間違いなく良い効果をもたらし、目標の達成に大きく貢献します。

まず排水がポイントです。 なぜなら、潜在水が土壌中に溜まったままで、野菜*、穀物、樹木が最高の生産性をあげることは絶望的だからです。

そして、この頻繁に行うべき管理作業の実践方法が確立され公開されたことは、この国にとって喜ばしいことです。おそらく、これ以上に価値のある利得はないでしょう。

* 一般的に受け入れられている言葉に従えば、野菜だけで自然の王国のまるごと1分野を形成しています。


読者のみなさんは、ジョンストン氏の説明のように、私がエルキントン氏のことを言っていることにおそらくお気付づきでしょう。彼はそれに言及しています。→ジョンストン氏やエルキントン氏は当時有名だったのでしょうか?

その次は、効果的な耕作、掘削、溝掘り、土の入れ替え、そして土壌の通気をまず実現すべきで、私たちはそれらに特別の注意をはらう必要があると思われます。

そして、 土壌の一部分だけを疲弊させないようにしましょう。その他の土壌部分は不活性状態のままになっているだけであり、おそらく同じ時期に同じように作物を生産することができます。

おそらく一度も、または少なくとも何年もの間、不活性状態にあった土壌はコールタールの轍やスペードを突き刺したりすることで分割し、その結果「人間と獣の食べ物」を生産できるように変えましょう。

その新鮮で疲弊していない土壌は長年連続栽培して過度に負担をかけ疲弊している土壌をタイムリーにその負担から解放してやることができます。

しかし、私たちがこの隠された宝物(新鮮で疲弊していない土壌)を探し出し、それを利用して栽培している間、楽観的になりすぎないようにしましょう。

腐っている砂利、鉄のような漂れき土、腐食している砂といったものは私たちの生産活動を妨害するので、混ざって持ち込むことのないよう気をつけましょう

次の重要なポイントは、土壌を改善するかリフレッシュするのは非常に有用なことです。

疲弊した土壌を大幅に回復させるには肥料(堆肥、有機肥料)を慎重に施用する必要があります。

肥料の有用な成分には多くの種類があります。

賢明な人は必ず、土の粘りが強すぎる場合は土壌を肥沃にし、粒子化する効果が最も明白な成分を施用します。また、土が軽すぎて多孔質である場合は、接着力を高め、肥沃になる成分を施用します。


次のポイントは技術と適切な作付です。技術に関しては、練習と経験のみによって成功を確実にすることができ、完璧を達成することができます。

作付に関しては、賢明な人なら、人が労働を休むように土地も生産から休む必要があること、すなわち、いつも作物を植えて土地に負荷をかけすぎているのは、働きっぱなしの人と同じく、悪い結果をもたらすということを心にとどめています。なので、正しい道を踏み外すことはないでしょう。

さらに、栄養価も低く、健康的でもない作物を2倍収穫するよりも、それより少ない量だけれども品質の良い作物を作る方が確かに望ましいことです。賢明な人は土壌の持つ強さと能力に合わせた収量にするものです。

そして、これはもう一つ検討すべき事項、つまり雑草の問題へとつながります。

それぞれが関連しあっている自然界のあらゆるものの中で、最も嫌われるのは雑草の庭で、支離滅裂で非常識な存在です。

➜➜➜➜➜

収穫することを目的として種をまいたり、植えたりしていますか?

健全でよく成熟した作物を育てていますか?

かけた費用と労力に見合う報酬を得るつもりですか?

同時に、怠慢によって土壌を貧弱にし、作物が成長・成熟するのに必要な栄養を奪う雑草を生やしていませんか?

結果として、望むリターンが得られていますか?

➜➜➜➜➜

必要と思う課題に注意を集中しましょう。最終的に、植物を栽培して食べ物とする成功の秘訣は、次の項目に大きく影響されます。

☑️土壌の質に関する正しい知識

☑️効果的な排水

☑️効果的な耕作

☑️効果的な掘削

☑️効果的な溝切り

☑️控えめな施肥

☑️適切な作付け

☑️注意深い草取り

☑️こまめな収穫

☑️賢明な休耕を挟んだローテーション


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