現代日本においては、基礎がなく、被覆のプラスチックフィルムを簡単に取り外しできる温室(プラスチックフィルムハウス)なら法律上の建築確認申請は必要ないらしいですが、家庭用の場合、10平米以上の広さ、防火地域、自治体の定めるルールなどで、諸々、法律遵守や許可のとりつけが必要です。ここに解説されているのは19世紀の海外(イギリス)の法的規制ですが、現代日本の法的規制のルーツにつながるものもあるんだな、と感じさせます。
お金と労力をかけられない場合は、トンネル栽培や温床、コールドフレームになってしまうのは、19世紀も現代も似たようなものですね。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
法的規制
園芸用建物では法律や慣例上判断しなければならないことが頻繁に生じます。
賃借人の備品や設備について
苗生産業者や販売目的の園芸業者など、営利目的で使用する温室を建設する者に関しては、明確な法的規定が定められています。
こうした業者が賃借人の場合、賃借人が建設した建築物は、賃貸借期間中であれば賃借人はいつでも自由に取り外すことができます。
一方、商売目的以外で温室を建設する者に対しては、法律は次のように定めています。
「土地や建物(不動産)に固定された温室は、その一部となる」という原則に加え、「庭に建てられ、ガラスと木材で構成され、かつモルタルで煉瓦の基礎に接合された温室は、それを建設した賃借人が勝手に取り外すことはできない」とされています。
苗生産者や市場販売する園芸業者は小木や低木を取り外すことも認められていますが、商売上の必要性がない場合は認められません。この点に関して、法律の規定は極めて明確です。
しかし、賃借人が、例えば住宅に接合、あるいは庭の塀の上や塀に接して小さな温室を建て、賃貸借契約終了時にそれを撤去して持ち去る権利を法的に確保したい場合には問題が生じます。
彼らは、温室を一般的な煉瓦の基礎の上に据えたり、借りている土地や建物(不動産)に固定したりしてはならないことを理解しています。
しかし、温室を建ててくれる業者は容易に見つけることができますし、その業者は彼らに対して、「レンガの基礎とその上に載る木製の土台(木枠)の間にはモルタルが使われていない」ことや「ボルトとナットで一時的に壁に固定するだけにすれば、温室自体を借りている土地や建物(不動産)に固定・定着しないようにする」ことで、その温室は「借主の所有物」とみなされますよと賃借人を説得するはずです。
やがて賃貸借契約の終了時が訪れ、借主が温室を運び出そうとすると、家主が立ちはだかり、家主の権威を盾に温室を撤去することを禁じます。
不意を突かれた借主は自らの法的権利を思い出して、家主と争う決意をします。そして裁判沙汰となります。
弁護士による、こと細かな法理の応酬が繰り広げられますが、借主が勝訴する見込みは薄いでしょう。
著者がこれまで見てきたいくつかの事例から判断するなら、借主が賃貸中に自費で建てた温室を撤去する法的権利が完全に保証されることはまずありません。例外は、完全に車輪付きの構造にして、いつでも好きな時に裏門から出し入れできるようにした場合だけです。
しかし、上記のような法的な困難さが生じる可能性に対して解決策があります。それは次のような方法です。
借主は温室を建てる前に、家主から確約を取り付けておくのです。その確約とは、借主が温室建設前の状態に敷地を戻すことを条件に、賃貸借期間中であればいつでも借主がその温室を撤去することを家主が認める、というものです。
そうすれば誰もが納得し、不必要で煩わしい訴訟も防ぐことができます。
レンガ組みに設置されたボイラーを金属配管や一般的なセメント接合の配管にしたりすると、撤去できなくなります。
しかし、ゴム製などの取り外し可能な継手(ジョイント)を使用した温水配管にすれば、レンガ組みに設置されたボイラーから容易に外して撤去することができます。あるいは、継手付きの配管にして、ボイラーも可搬式の独立型のものにすれば、「借主の所有物」として取り外して持ち去ることができます。
共用壁*、等
*隣り合う2つの土地や建物の境界線上に建てられ、双方の所有者が共有している壁
軒や雨樋が隣地の敷地に張り出している場合、隣地の所有者は、雨水が自分の土地に流れ込むなどの実害が発生するのを待たずに、それらの撤去を要求できる法的権利を持っています。
ただし、この措置を講じる前に、その所有者に通知し、問題となっている張り出し部分を撤去してもらうほうが賢明です。
張り出した雨樋や軒が20年間、何も措置されずに存在していた場合は地役権が生じます。
2人の借家人どうしが隣接している共有壁(庭壁など)に沿って、あるいはその上に温室を建設しようとする場合、慎重な予防措置として、それぞれの家主の同意や合意を事前に取っておく必要があります。
都市建築法
(ロンドンおよびその近隣地域を対象とする。)
この地域内に温室を建設する際は、同法の規定(別表 I)に従わなければなりません。その表には次のように定められています。
「すべての建築物は、煉瓦、石材、またはその他の堅固かつ不燃性の材料で築かれた壁によって囲まれていなければならず、その基礎は、堅固な地盤、あるいはコンクリートやその他の堅固な下部構造の上に設置されなければならない。」
いくつかの事例において、その表に記載された規定として、木材などの可燃性材で壁を建設することを禁止する判例が出ています。
ただし、第6条によれば、以下の条件を満たす温室(「窓枠、扉、および骨組みに必要な木造部分」および、建物全体)は、本法の適用対象外とされます。
「公道・私道を問わず、最寄りの通りや路地から少なくとも8フィート(約2.4 m)離れていて、かつ、最も近い建物や隣接地との境界から少なくとも30フィート(約9.1 m )離れている場合」は本法の規制から除外する。
いずれの場合も、建設に着手する前に地区の測量官へ申告し、本法で定められた手数料を支払わなければいけません。
建物のすぐ近くで火を扱う場合や蒸気輸送の配管にする場合などについては、本法第21条で以下の通り規制されます。
1. 営利や製造目的で使用する焼成炉または加熱炉の直下の床およびその周囲18インチ(約46 cm)の範囲の床は、不燃かつ非伝熱性の材料で作らなければならない。
2. 煙、加熱空気、蒸気、あるいは高温水を輸送する配管は、街路、路地、馬車道および公共道路に面した建物の外壁に取り付けてはならない。
3. 加熱空気あるいは蒸気を輸送する配管は、可燃性材料から6インチ(約15 cm)以上離して設置しなければならない。
4. 高温水を輸送する配管は、可燃性材料から3インチ(約8 cm)以上離して設置しなければならない。
5. 煙またはその他の燃焼生成物を輸送する配管は、可燃性材料から9インチ(約23 cm)未満の距離に設置してはならない。
本条の規定を遵守しない者は、各違反ごとに20ポンド以下の罰金を科すものとし、その罰金は治安判事立会いのうえで徴収されるものとする。
別表IIに基づき地区測量官に支払うべき手数料は以下の通りです。
新築建築物の手数料
床面積が400平方フィート(約37 m2)以下かつ高さが2階建て以下の建築物については……
増築ごとに、
・追加面積が100平方フィート(約9.3 m2)またはその端数ごとに、
・床面積が400平方フィート以下かつ平屋(1階建て)の建築物ごとに、
その手数料は10ポンドを超えないものとする。
・これは園芸用建築物に通常適用される手数料である。
地方委員会等
郊外や地方においては、地方委員会等による管轄を無視してはならない。
建築家、測量士等の専門職の報酬基準は、「ハースト」によれば以下のとおりです。
建築家の報酬
予備スケッチおよび設計の完了、敷地測量、基本図面、仕様書および概算見積書の作成、実施設計、直接的な監理・監督(現場常駐監督員を除く)を含む業務に対し、工事見積額の5パーセントとする。
この報酬規定に基づき、建築家は図面1式、トレース図1式、および仕様書2部を提供する義務を負うものとする。ただし、建築家への報酬はあくまで図面および仕様書の「使用」に対する対価であり、それらの所有権は業務完了後も建築家に帰属するものとする。
上記に加え、以下の費用を別途請求することができる。
・工事入札の手配および審査:0.5パーセント。
・彫刻物、ステンドグラス、その他類似の制作物(建築家自身が設計を行わないものの、全体的な監理を行うもの)について、芸術家や専門業者等と調整を行う業務:2.5パーセント。
・旅費および付随経費
・「測量・鑑定料金」に基づいて、工事の出来高を算定し、追加・変更工事(増減工事)に関して施工業者の請求内容を査定・承認する業務。
・小規模な工事や特殊な工事については、別途料金を取り決めることができる。
測量士の報酬
・小規模な新築工事や修繕工事における計測業務(内訳明細書の作成を含む):2.5%
・図面および仕様書に基づく数量の算定、ならびに小規模または複雑な工事の数量明細書の作成:2.5%
・極めて小規模な工事については、日当制とする。
・大規模な建築物については、その規模および複雑さに応じて算定する。
・リトグラフ(印刷)代および旅費・交通費は別途請求とする。
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