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2025年10月19日日曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-4 低圧(常圧)温水暖房 −循環を確実にするための水柱圧力と蒸発容器−

はるか昔、大学で水理学を受講したはずなのに、ここで解説されている温水循環に必要な水柱の計算式の根拠がさっぱり思い出せません。しかも華氏とフィート・インチ単位だし。。。😅😅

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


循環を確実にするための水柱圧力等について

温水パイプ内の温度を低下させず維持するには、温水が一定の速度で循環、つまり動いている必要があります。

この動きは、既に説明したように、一方の水柱(ボイラーと接続した流入管内の水)がもう一方の水柱(ボイラーと接続した戻り管内の水)よりも軽くなることによって生じます。

この2つの水柱の重さ(密度)の違いがこの動きを生み出す水頭(圧力)差です。

そのため、様々な条件下で常に熱を供給するために必要な流れを生み出すのに必要最低限の圧力差を把握することが非常に重要です。

(「熱」の項から抜粋した)以下の表が役立ちます。

表XXIIIは、長さ100フィート、外径4インチのパイプが60 °F(16 °C)の空気にさらされた場合に熱循環に必要な最小の流速をパイプの水温別に示しています。

表XXIVから、プロニーの式を用いて流速から水頭差を推定できます。


表XXIII. — 熱循環に必要な温水の流速

表XXVは、異なる温度におけるそれぞれの水柱の高さを示しています。212 °F(100 °C)での水頭差は12インチです。

これらの表を使用するには行きの水温を求めます。戻りの水温は210°F(99 °C)になります。必要な流速については、表XXIIIの3列目を参照してください。

4インチ径のパイプの長さが100フィートでない場合は、パイプの長さに比例して流速を求め、増減します。

次に、表XXIVで、与えられた流速に対応する2列目の数値を読み取ります。これにインチ単位のパイプの長さを掛け、インチ単位のパイプの直径(4インチ)で割ると、必要な水頭(インチ)が得られます。

水頭(圧力を生み出す水柱の垂直の高さ)がわかったら、表XXVの行きの水温に対応する3列目の数値で割ります。その結果が、熱の循環に必要な水頭の最小高さとなります。

長さ 500 フィート、直径 4 インチのパイプで必要な水頭の最小高さを見つけたいとします。このとき、ボイラーから出る水は 210 °F で、ボイラーに戻る水は 190 °F とします。


表XXIV.—パイプ内の水の摩擦


表XXIIIから、100フィートの長さのパイプに必要な流速は'0817(インチ/秒)であり、これに5を掛けると(100フィートと500フィートの比率)、'4085(インチ/秒)となり、これは4インチをわずかに上回る値です。

したがって、表XXIVの2列目を'00119(インチ/秒)と見なし、これに長さを掛け、直径(インチ)で割ると、('00119 x 6000)/4インチ = 1785の水頭となります。

この揚程を表XXVの行きの水温に対応する3列目の数値で割ると、1フィート785インチ/092インチ=19'5となり、必要な柱の高さは19フィート5インチとなります。

パイプの長さは同じ、すなわち500フィート(約150メートル)とし、行きの水温を210 °F、戻りの水温を190 °F ではなく150 °F とした場合は以下のようになります。

100フィート4インチ径のパイプにおける速度は、'0224(インチ/秒) × 5(500フィートなので5倍する)='112インチとなります。

表XXIVによれば、'0001572インチに長さを掛け、直径(インチ)で割ると、水頭は

('0001572 x 6000)/4 = '2358インチとなり、

こ​​れを表XXVに示されている数値'254で割ると、水頭は0.773フィート、つまり1フィート未満となります。

 

表XXV. 異なる温度における水柱の高さ


したがって、長さ 500 フィートの 4 インチ径のパイプにおいて、水が 210 °F で送り出され、190 °F で戻る場合、最低点の流入口からパイプの上部までの上昇の合計は最低 19フィート5インチ 必要であることがわかります。;一方、同じ長さのパイプで、水が 210 °F で送り出され、150 °F で戻る場合の上昇はわずか 1フィート 0インチ で済みます。

このように、行きと戻りの水​​温差が大きいほど、ボイラーからパイプ上部までの間に必要な温度上昇は小さくなり、加熱ができるパイプ長さは長くなります。

また、水柱の鉛直高さ(水頭差)が高いほど、パイプを長くすることができ、水の循環も容易になります。

これら2つの点を合わせると、行きと戻りの水​​温度差が大きく、水柱が高いほど、全体の循環が容易になり、ボイラーでの必要な燃焼量とそれに伴う燃料の無駄な使いが減り、より大きな放熱面積で加熱できることがわかります。

これまでの計算はすべて4インチ径のパイプについてでした。径が2インチや3インチのパイプでは計算が異なりますが、園芸施設では2〜3インチのパイプは放熱用に使用されることはほとんどないため、ここでは説明しません。

パイプに狭窄部や曲がりがあるとそこで摩擦損失が発生するため、できるだけ避けるべきです。

実現可能なら、循環を促進し摩擦損失を減らすために、放熱パイプは9フィートに付き1/2インチの傾きをつけるべきでしょう。

しかし、多くの場合、パイプをこの傾きにすることは不可能であり、場合によっては完全な水平にせざるをえないことがあります。

これは残念なことですが、流れはそれほど速くないものの、それでも熱を回復させ循環を生じさせるのは十分です。

この場合、ボイラーを設置する深さに大きく左右されます。


蒸発容器

温水パイプ内の水分の蒸発速度は、大気中に存在する水分量、露出面、蒸発させる水の温度、そして周囲の空気が静止しているか動いているかによって決まります。

したがって、大容量のタンクを用意するよりも、パイプ上に蒸発容器を設けてそこに少量の水を入れる方が有利であることは明らかです。

後者(蒸発容器)の方が、タンクよりも蒸発をうまくコントロールできます。

このような蒸発容器は、放熱パイプに鋳込んで作った垂直フランジ、またはパイプにフィットするように底部が凹面になっている亜鉛製の容器が利用できます。(「促成栽培ベッド」および「湿度計」の項を参照のこと。)

2025年10月5日日曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-3 低圧(常圧)温水暖房 −底面加熱、パイプの配置−

温水暖房についてまだまだ続きます。「底面からの加熱」と「パイプの配置」に関するの部分です。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


底面加熱用パイプの本数

栽培用のボーダーやベッドにパイプを置く場合は、大気への放射面がパイプ全面とはならない(下半分は地面に接する)ので、大気への放射面がパイプの全面となるこれまでの計算方法は底面加熱用パイプには適用できません。

メロン、キュウリ、パイナップルなどの通常栽培では、表XXIIに示すように、ベッド幅1フィートあたり約9インチの放射面積があれば十分であることが経験的に分かっています。

表 XXII. 底面加熱に必要なパイプ

パイプの位置

加温が効果的に行えるかどうかは、パイプ放射面の位置に大きく左右されます。

熱放射が集中して過度の高強度域ができるのを防ぐため、温水パイプは可能な限り分散して配置する必要があります。

また、パイプは空気の対流を促進し、暖気が届かない滞留域ができないないように配置する必要があります。さらに、外部から流入した空気が群落に到達する前にパイプの影響を受けて温められるようにパイプを配置するのが望ましいです。

片流れ屋根のハウスで、パイプが背面の壁にのみ配置されている場合、パイプのすぐ近くの温められた空気塊は上昇し、その場所はすぐに冷気と置き換わるため、特に棟近くの上部換気口が開いている場合、背面壁付近の空気塊は動きますが、屋根に沿った空気塊はその影響を受けず、温められない可能性があります。

少なくとも何本かのパイプは、温室の平面図で見て屋根が立ち上がる地点、つまり屋根の最も低い位置(軒)付近の地面またはその近くに設置する必要があります。

たとえパイプの設置がこの位置だけだとしても、ここで温められた空気塊は温室の最も高い部分まで上昇するので、上昇する過程で屋根全体を横断することになります。これはある種の温室にとってはまさに必要な効果です。

換気の流入口は一般的に前面の壁、つまり屋根の最も低い部分付近にあるため、そのこともパイプをこの位置に設置する理由になります。

さらに、空気が加熱されないまま群落に到達するのを防ぐため、前面のパイプを地面近くに設置する場合は、「換気」の項で説明したように、パイプのすぐ後ろの壁内に換気口を設置することをお勧めします。

パイプは屋根の最も低い部分の近くに設置するのが望ましいですが、既に述べた理由により、特に幅が広く断面積の大きい片流れ屋根のハウスでは、パイプの一部はハウス内の屋根面に配置する必要があります。

他の条件が同じであれば、パイプは地面の上か地面近くに設置することが望ましい。高い位置に設置すると、パイプ上部の空気塊のみが加熱され、下部の空気層が部分的に加熱されない可能性があるからです。

パイプの位置については、個々のケースを個別に判断する必要があるため、厳密な基準を定めることはできません。

ただし、一般的な観点から言えば、

非常に幅の狭い傾斜屋根のブドウハウスや植物栽培ハウスでは、パイプは前面のみに設置してもよいでしょう(必要であれば、それに妻面を加えて設置してもよいでしょう)。

幅が中程度または広いブドウハウスでは、一部のパイプを前面に、一部を通路に隣接した内側の栽培ボーダーの奥に設置してもよいでしょう。

これらの位置にうまく配管できたうえに、さらに配管したい場合は、ハウスがあまり長くない場合は、余剰配管を縦方向ではなく、ハウス内の端に沿って横方向に、つまり背面壁に沿って設置する方がよいでしょう。

ブドウハウスではパイプがブドウの茎に近づきすぎないように注意する必要があります。

中程度または広い幅の片流れ栽培ハウスで、ステージが設置されている場合、一部のパイプは前面または前面と両妻面に設置し、その他のパイプは必要に応じて、後面ステージの前面または下側の通路付近に設置します。

ある程度の規模の両屋根型のブドウハウスでは、両側面に沿って、また片側または両側にある中央通路の端に沿ってもパイプを設置することができます。必要に応じて、さらに妻面部にもパイプを設置することができます。

側面と中央ステージのある両屋根型の栽培ハウスでは、パイプは外壁に沿った両側面に沿って設置し、必要に応じて中央ステージの下や周囲にも配置することができます。

ハウスの長さによって、縦方向のみに配管するか、横方向にも配管するかが決まります。

ハウスの長さが幅に対して長ければ長いほど、妻面に配管する必要性は低くなります。

また、どんなハウスでも妻面が外気に晒されておらず、他のハウスとの仕切りによって繋がっている場合は妻面に配管する必要性は低くなります。

ガラスは外気に晒されている方が冷却されやすくなります。

また、両屋根ハウスが南北棟の場合、あるいは片流れ屋根のハウスが東または西向きの場合、当然のことながら、北向きのガラスの妻面は横方向に配管して加熱する必要性が高まります。

1連の配管の列数に制限はありません。

2列、3列、4列、あるいは6列の配管が必要になる場合もあります。

2 列または 3 列の場合、パイプは通常このように垂直に配置され、各列が結合する両端にサイフォンが設けられます。

図. 93

4列または6列の場合は:

図. 94

各系統を連結して半分を流入管、半分を戻り管とする代わりに、通常は流入管の数を戻り管の数より多くして連結します。

放熱管は、本管から立ち上げたら決して垂れ下がらせてはいけません。

ドアへの通路が複数あり、本管から立ち上げてドアへの通路間の空間に新しく配管を設置するのが不便な場合は、放熱管を地表より下に溝にを切って設置しますが、埋め戻してはいけません。溝が通路と交差する箇所では格子で覆うようにします。

このようなケースは、コンサバトリーや植物ハウスでのみ発生する可能性があり、ブドウハウス、特に内部に栽培ボーダーがある場合はほとんど発生しません。

上記したとおり、このように設置されたパイプは、加熱能力が約30%低下します。

熱の放射が抑制されるだけでなく、パイプが完全に空中に露出している場合ほど対流が効率的に行われません。もちろん、外気の流れがパイプ上を通過するように、ハウス内への外気の取り込み方法が適切に行われている必要がありますが。

水はできるだけ早く、そしてできるだけ容易に放射パイプの最高点まで上昇させなければなりません。

そうすれば、水が途中で冷えるきっかけや時間が少なくなり、上昇する水と下降する水の比重差が大きくなり、循環がより効率的に進行します。



2025年9月23日火曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-2 低圧(常圧)温水暖房 −故障の原因と放熱−

 低圧(常圧)の温水暖房装置についての続きです。装置の「故障原因」と「放熱」の部分です。

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様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


故障の原因

温水暖房に関しては、注意すべき点が数多くあります。これらの注意点を無視すると、通常、機器全体が故障してしまいます。

機器が正常に作動しない場合、「ボイラーに何か問題がある」とすぐに結論づけてしまいがちです。

もちろん、その通りのこともありますが、以下に示すような多くの原因があって、そのいずれか、あるいは複数の原因の組み合わせによって故障が発生する可能性もあります。

  • 放熱パイプの数量不足
  • 放熱パイプの不適切な位置
  • 主配管の不適切な位置
  • 放熱管や主配管内の空気や汚れによる閉塞。
  • 空気配管の不適切な取り付け。
  • 給水タンク配管の不適切な取り付け。
  • ボイラーの出力不足。
  • ボイラーの不適切な位置
  • ボイラーの不適切な設定
  • ボイラーの付着物
  • ボイラーの不適切な焚き方
  • 煙突の構造不良。
  • 煙突への煤の堆積、等々。

以上の原因を含め、多様な原因について、以下に述べる低圧温水暖房装置の各部分の説明で取り上げましょう。


放熱面

放熱には通常、2インチ、3インチ、4インチの径のパイプが用いられます。

大水量用のパイプほど径が大きくなって放熱面積が広くなりますが、扱いやすい水量に限ると、園芸では一般的に4インチのパイプが放熱面として便利です。

2インチや3インチの径のパイプは一般的に給水本管として使用されます。

2インチ、3インチ、4インチ径のパイプの放熱面積はそれぞれの直径と同じ比率になります。4インチのパイプは2インチのパイプの2倍の放熱面を持ち、3インチのパイプは2インチの1.5倍の放熱面を持ちます。

同じ長さの2インチ、3インチ、4インチ径のパイプ内の水量は、これとは異なる比率、すなわち直径の2乗に比例します。

したがって、2インチ:3インチ:4インチ径のパイプの同じ長さでのパイプ内水量の比率は4:9:16となります。

ただし、熱損失に関する計算はすべて、パイプ内水量ではなく、パイプの放熱面積に基づいて行うことを覚えておいてください。

木材は、十分温まった空気を送ってやると、特に燃焼しやすくなるのは疑いようがない事実です。そのため、都市の建築法(「法律」の項参照)では、温水パイプ、温風パイプ、および煙道は、可燃物から一定距離、離して設置してなければならないと規定されています。

放熱パイプについて重要な点は、状況に応じたパイプの数量と配置にあります。


放熱パイプの数量

既に説明したように、低圧(常圧)システムのパイプ内水温は212 °F(100 ℃)を超えることはありませんが、実用上許容できるパイプ内の最高水温は200 °F(93 ℃)です。

植物の健全な生育にとって、パイプの放熱面をこれほど高温にしてはいけません。180 °F(82 ℃ )以下、でき​​ればそれ以下としてください。

もちろん、放熱面を最高温度にして暖房するよりも低めの温度で暖房する方が多くのパイプが必要になります。

しかし、このわずかな追加費用は(パイプの数は増えますが、継手などの費用は数量が多い場合も少ない場合も変わらないので)、暖房による栽培効率の向上と、パイプを最高温度ではなく中程度の温度で運転することによる大幅な燃料節約によって十分に補うことができます。

温室に必要なパイプの数量は、以下の要素によって決まります。

  • ガラス面から熱が逃げる面積
  • 外気温
  • 室内の必要温度
  • 放熱パイプの温度

必要なパイプの数量を求める公式が専門家によって数多く提案されていますが、トレッドゴールドが多くの実験を通して決定した公式が、最も精度の良いものとして広く認知されています。

それはまず、1分間当たりの暖房容積数[立方フィート]を算定する必要があります。

トレッドゴールドは次のように述べています。「温室の長さに温室の最大高さの半分を掛けた数値にガラス面積を1.5倍にした数値[すべてフィート単位]、さらにドアの数を11倍した数値を加えます。

この合計値が、外気温から設定室温になるように暖房で加温されるべき、1分当たりの空気容積値[立方フィート]となります。」

そして、こう言っています。「1分間に加熱するべき空気の容積数[立方フィート]に暖房室温[華氏]を掛け、その値を温室の室温とパイプの表面温度の差の2倍で割ると、必要な配管の長さ[フィート]がぴったり算出できます。」

この計算方法は、ストーブ暖房を要する促成栽培温室などに適用できます。

グリーンハウスなど、それほど強力な熱を必要としない場合は、1分間に加熱すべき空気容量[立方フィート]をこれより10%ほど低く見積もることができます。

重厚な木製の骨組みと垂木を備えた屋根の温室の場合は、温室の容積数[立方フィート]の10パーセントを差し引いて見積もることができます。

これらの公式を具体的に説明するために、長さ40フィート0インチ、幅16フィート0インチ、背面壁の高さ15フィート0インチ、前面壁の高さ5フィート0インチ(うち2フィート6インチはレンガ造り)の片流れ屋根のストーブ暖房の温室を考えてみましょう。

外気温が20 °F(-7 ℃)のとき、室内温度を70 °F(21 ℃)に保ちたいとします。また、屋根の骨組みが鉄製、あるいは骨組みが非常に軽量なら、骨組みの保温性は期待出来ないので、それによる熱の節減効果はないものと仮定します。

まず、1分間に加熱される空気容積[立方フィート]を求めるには、温室の長さ(40フィート)に最大高さの半分(7.5フィート)を掛け、それにガラスの総面積(1100)の1.5倍とドア数(2)の11倍を加えると、(40 x 7.5) + (1100 x 1.5) + (11 x 2) = 300 + 1650 + 22 = 1972となります。

次に、この空気容積の立方フィート数1972に70 °Fと20 °Fの温度差を掛け、その積を180 °Fと70 °Fの差の2倍で割ると、

パイプ表面積は以下のように求まります。

[1972 x (70-20)]/[(180 - 70) x 2] = [1972x50]/[110x2] = 98600/220=448平方フィート

4インチパイプ1フィートあたりの表面積は1平方フィート強であるため、上記の結果の448平方フィートは、長さ数448フィートの4インチパイプにした場合、上記の結果の448平方フィートよりもかなり大きな表面積になることを示しています。

問題の後半部分をもっと簡単に解くために、フッドは表XXから、毎分加熱されるべき空気容積[立方フィート]を求めることができるようにしました。これは、外気温が10~50 °F(-12~ 10 ℃)の場合、毎分1000立方フィートの空気を45~90 °F(7~ 32 ℃)に加熱するのに十分な4インチパイプの長さ[フィート数]を示しています。

この表は、パイプの温度を200 °F(93 ℃)にした場合の値です。

ただし、この値は園芸用途には大きすぎる可能性があります。したがって、適度なパイプ温度を維持するためであれば、これらの数値はおおよそ値とみなしておけばよいでしょう。

この表を、すでに述べた暖房条件、すなわち外気温が 20 °F(-7 ℃)のときに内部温度を 70 °F(21 ℃)に加熱する場合に当てはめてみましょう。

70 °F(21 ℃)の数字の下の縦列と、20 °F(-7 ℃)の数字の反対側の横列を見ると、1,000 立方フィートあたり 216 フィートの長さのパイプが必要であることがわかります。


表XX.—さまざまな温度を実現するのに必要なパイプの長さ。


これを1.972倍すると(1,972は1分間に加熱する容積の立方フィート数)、パイプの長さは426フィートとなり、これは以前の計算(<448)とほぼ同じです。

どちらの計算方法を採用しても、パイプの本数が少なすぎるというリスクはほとんどありません。

多くの人は、外気温が20度(例えば、一年で最も寒い半期の平均気温)よりも高いと想定します。私たちの気候では、この気温は約40度と考えて、異常低温日は、強制的に少し加熱する必要があると考えています。

しかし、これは賢明な方策とは到底言えません。

パイプの量が多すぎることで安心かどうかは別として、暖房装置が最も役立つ時期は、一般的に最も天候が厳しい時のはずです。


迅速な計算には、著者が実際の実験に基づいてまとめた表XXIが役立つでしょう。

この表を使用するには、まず、温室の実際の容積をフィート単位で求めます。

この表は、外気の最低気温が一定の約20 °F (-7℃) であり、また温室には相当量の木材が使用されていることを前提としています。

冷房設備(換気窓など?)を備えた温室については、別途考慮する必要があります。


表XXI. —さまざまな温度を実現するために必要なパイプの長さ。

上記の表、公式などは、結局のところ、多かれ少なかれ概算の数値であり、それぞれの状況を考慮して判断する必要があります。

例えば、他の条件が同じであれば、両屋根ハウスは片流れ(傾斜)屋根ハウスよりも多くの配管を必要とします。北向きの片流れ(傾斜)屋根ハウスは、より好ましい方角(一般的には南や南東の向き)の片流れ(傾斜)屋根ハウスよりも多くの配管を必要とします。

一方、片流れ(傾斜)屋根は両屋根よりも風が強く当たるので、冷却がより大きくなることがあります。

住宅に付設されていて寒冷な外気から保護された園芸施設は、屋外に単独で建てられた同型の園芸施設よりも配管が少なくて済みます。

建てた場所の(イングランドの)地域性も考慮する必要があります。

同じ配管でも、上部が開いた溝に設置されている場合、あるいは部分的に格子によって溝の壁面近くに設置されている場合は地上に露出して設置されている場合よりも、多くの配管が必要にですが、前者の放熱量は後者の場合の約70%しか必要としないと計算できます。

よくある失敗は、パイプの量が少なすぎることです。


2025年9月7日日曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:かすかに秋の気配

 9月に入っても35℃超え、最低気温も27℃と暑いです。

ただ、熱湯の中にいるような空気感は、日陰で風があれば、やわらいできたような。。。いや、単に、自分が暑さに順化しただけかも(笑)

夕方なら草刈りする気力が、ようやく戻ってまいりました。暑さで弱っている雑草は比較的抜きやすいです。

今夏の暑さのサバイバー1号は青ネギ。

サバイバー2号は青シソ。あちこちに自生しています。

サバイバー3号はスイスチャード。以上!(笑)


ミカンは発芽から5年経ってもこの小ささ。

アゲハの卵。ミカンは青虫さんたちのエサ専用樹と化しております。

カキが色づきはじめたので、かすかに秋を感じます。今年は小ぶりで数も少なめです。





2025年8月11日月曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-1 低圧(常圧)温水暖房 −原理−

低圧(常圧)の温水暖房装置について詳しく解説されています。まずは原理から。

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様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


一般的な原理

熱は放射、伝導、対流によって伝わります。

・放射とは、周囲の空気温度を著しく上昇させることなく、発熱源から離れた物体へ熱が伝わる現象です。

・伝導とは、熱が物体自体を介して伝わる現象です。

・対流とは、熱が(水や空気などの)流れにのって伝わる現象です。

燃え盛る火の前に立っている人の顔が温かくなるのは放射によるものです。

火に入れた火かき棒の柄が温かくなるのは伝導によるものです。

やかんの中の水が温められるのは対流によるものです。

放射熱は、その名の通り、音や光と同様に、あらゆる方向に直進します。

放射熱の強度は、点源からの距離の2乗に反比例して減少します。この法則は光の放射と同じです。

図9は、これを非常に明確に示しています。
1ヤードの距離で、ある量の熱線が1平方フィートを覆っているとします。2ヤードでは、同じ熱線は2平方フィートではなく4平方フィートを覆います。3ヤードでは、3平方フィートではなく9平方フィートを覆います。4ヤードでは、4平方フィートではなく16平方フィートを覆うことになります。
つまり、1ヤードで、1平方フィート当たりの熱線強度が1であるとすると、2ヤードでは、1平方フィート当たりの熱線強度は1/2ではなく1/4になり、3ヤードでは1/3ではなく1/9、4ヤードでは1/4ではなく1/16・・・となります。以下同様です。


ここで、さまざまな建築材料自体の熱伝達率、すなわち熱伝導率を示した表が役立つかもしれません。


表 XVIII.— さまざまな材料の熱伝導率 (Hurst)

---------------------------------------------------------
材料 :: 熱伝導率
(キャンバス生地を1とした場合の比率)
---------------------------------------------------------
銅::1000
鉄::450
亜鉛::430
鉛::230
スレート::42
バースストーン::25
ガラス::14
レンガ(耐火)::13
レンガ(一般)::12
オーク材::4
モミ材::3
コルク::2
キャンバス生地::1


温度の異なる物質をほぼ接して置くと、温度は自然と均一になる傾向があります。
したがって、他の条件が同じで、外部からの影響がないと仮定した場合、それぞれ60度と90度の温度の2つの物質をくっつけて置けば、どちらも75度の温度になります。
熱を素早く吸収するものは、当然ながら熱を放出するのも素早いです。逆もまた同じです。
したがって、他の条件が同じであれば、温室の容積が大きいほど、突然の日光や霜の影響を緩やかに受けます。
温室が小さいほど、早く暖まりますが、暖房を切ると急速に冷えます。
温室の表面積が大きいほど、その容積に比例して温室からの放熱のスピードが早まります。


空気や水の場合、熱伝導率が非常に小さいので、伝熱は主に対流によって促進されます。

温度変化が空気に及ぼす影響については、「換気」の項で説明しています。

温度変化の影響は、空気の場合と同様に、水でもほぼ同じです。

しかし、表XVII. を見ると、空気は温度が何度でも、温度が上昇すると膨張することが分かります。一方、水は温度上昇時に膨張するためには、華氏39.2度(4 ℃)以上である必要があります。
39.2 °F(4 ℃)以下では、温度が下がる方が水は膨張します。


表XIX.—異なる温度における水の体積(相対値)

------------------------------------------
華氏温度, °F(摂氏温度, ℃)::体積
------------------------------------------
20 (-7)::1.0012000
30 (-1)::1.0003780
40 (4)::1.0000000
42 (6)::1.0000258
52 (11):: 1.0005123
62 (17)::1.0014070
72 (22)::1.002627
82 (28)::1.004143
92 (33)::1.005901
102 (39)::1.007911
112 (44)::1.010150
122 (50)::1.01261
132 (56)::1.01527
142 (61)::1.01814
152 (67)::1.02120
162 (72)::1.02443
172 (78)::1.02788
182 (83)::1.03148
192 (89)::1.03526
202 (94)::1.03922
212 (100)::1.04333
------------------------------------------

すなわち、水は39’2°(4℃)で密度が最大になるので、体積としては最小になります。

表XIXは、様々な温度における水の体積(4℃)で体積を1した相対値)を示しています。

したがって、39.2°(約40°)(4℃)以下の水の場合を除けば、空気の流れに関して述べた一般的な考察は水の流れにも当てはまることがわかります。

しかし、水は空気ほど流動性の高い物質ではないため、空気よりもはるかに正確かつ確実に操作できます。

熱水は上昇し、冷水は沈みます。これは単に、両者の比重が異なるためです。

言い換えれば、ある量の熱水は、同じ量の冷水よりも軽く、両者が接触すると、重い冷水が沈み、その沈む際に軽い熱水が上方に押し上げられます。


図版43


一般原理の実際への適用

上記の原理を低圧(常圧)の温水暖房に適用する場合、2本の水柱を用います。

一方の水柱は常にもう一方の水柱よりも高温に保つようにします。そうすれば、水は規則的に移動し続け、いわゆる「循環」が維持されます。

図92は、最も単純な形の装置の縦断面図を示しています。

図92. 暖房装置の鉛直断面図

Aはボイラー、すなわち熱の発生部を示しています。

CとDは配管で、Aと繋がる2本の水柱を含んでいます。

「2本の水柱」とは、高さのある垂直方向のパイプ部分を指します。

つまり、A、C、Dに含まれる2本の水柱は、点線H、F、G、F、つまり配管Cの上部とDとAを結ぶ配管の下部との高低差に相当します。Kは、必要に応じて水を排出するための蛇口を示しています。

A、C、Dは、配管や周囲の空気と同じ温度の水で満たされているとしましょう。この場合、水の循環は起こりません。

ボイラーAを加熱すると、パイプC内の水温は上昇し、それに比べてD内の水は冷たいので沈むので、水は押し上げられる方向に動きます。

Cのパイプ菅は中の温水から熱を吸収し、大気中にその熱を放射するので、結果的にC内の水を冷却することになります。

しかし、その間にボイラーAはさらに熱を供給するので、C内の水温は上昇し、冷却されてDで沈みます。Aが熱を供給し続け、CとDの温度が周囲の空気や周辺の物体よりも高い限り、矢印の方向で示される循環のプロセスが続きます。

水が部分的に加熱される際に膨張しますが、その膨張は空のタンクBに設けられた余剰空間で受け留めます。

パイプ内に空気が溜まって循環を妨げないように、上部が開いた小管Eが最上部のパイプCの最も高い部分に取り付けられています。

BとEは両方とも大気に開放されているため、装置のどの部分にも、水頭による圧力を除いて内部圧力がかかることはありません。

したがって、水温は212°F(100℃)を超えることはありません。

低圧加熱装置内の水は沸騰しないはずですが、蒸発によって減少する可能性があります。そのため、膨張タンクBはパイプを介してボイラーの最下部に接続されていて、減少分の水を補給するための容器として機能します。

このシステムは安全で、シンプルで、信頼性が高く、操作が簡単で、微妙な調整が可能で、園芸用途では特に、放射温度が 華氏212度 (100℃) (実際には 華氏200 度(93 ℃)) を超えないという大きな利点があります。

2025年8月2日土曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:朝な夕なにベリー摘み・・・でした。

5−6月は、桑の実マルベリーがいっぱいできて、朝な夕なにせっせと摘みました。

朝に収穫しても午後にはまた実が熟していて大忙し。

冷蔵庫の冷凍室がマルベリーでパンパンで、冷凍食品が買えない(笑)。

今は冷凍ベリーをせっせと消費中。




今は、酷暑で雨も降らず、どこの庭木も雑草も枯れ枯れです。ご近所の皆さんはジョウロやホースで水撒きされていますが、ズボラな私はほったらかしです。

雑草もみずみずしかった5−6月の写真で涼をとります。

アスパラガスの夏芽もありました。

食べ終わった豆苗の根を植えていたら、涼しげな白い花が咲いて、
さやをいただきました。虫食いだったけど(笑)

今は存分に夏を楽しむべきでしょうが、
さわやかな秋が待ち遠しいです。

2025年7月9日水曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 Ⅱ  ランプ・ガスストーブ・熱水・蒸気

 19世紀の暖房(発酵以外)はどれも、何かを燃やして空気や水の温度を上げる方法です。ここでは、温室にはやや不向きな方法が整理されています。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 II


ランプ

パラフィンなどのオイルを燃やすランプは暖房目的で使用されることもありますが、ごく小さなハウスを除けば効果的でないので利用されることはほとんどありません。
ランプの中には不快な臭いを放つものもあります。


ガスストーブ

燃焼生成物がハウス内に侵入するガスストーブは園芸に全く適しません。

ガスボイラーの(水を温める)場合、メンテナンス費が非常に高くなるのですが、小規模なハウスでは、その手間はそれほど大きくないことから、ガスボイラーが使用されることもあります。しかし、既存の装置よりもはるかに経済的に暖房できる装置が開発されるまでは、ホットハウス(熱帯植物育成用温室)にガスボイラーはお勧めできません(「燃料」の項を参照)。

いかなる状況下でも、園芸用にガスストーブを使用する場合は細心の注意が必要です。

ガスストーブの燃焼生成物は植物に非常に有害です。ガスストーブ自体が外壁の屋外側に設置されている場合でさえも、換気口から燃焼生成物がハウス内に吸い込まれた事例を知っています。


高圧熱水システム 

(大気に)開放された容器の水は加熱されても212 °F(112 ℃)を超えることはありません。

しかし、密閉容器であれば加圧加熱でき、はるかに高い水温にすることができます。

高圧熱水システムは、水を封入した錬鉄製のパイプ系統で構成され、パイプ内で加熱された水は300〜400 °F(150〜200 ℃)の温度でパイプ中を循環します。

この循環パイプは通常、細径です。

加熱されていない状態では、パイプ系統の水はこの膨張管の底部までに入っています。
燃料を投入して点火し、温度が上昇すると、空気は水よりも圧縮性が強いため、膨張管内の水は膨張して系統のパイプ内を満たします。

放熱面となるパイプの径は細く、温度が高いため、熱は集中して当たり、園芸用途には不向きなほどです。
さらに、パイプは高い内部圧力に耐える必要があり、パイプ近くで燃焼する危険ととも爆発の危険もあります。

システム系統の最も高い部分のパイプは膨張管として機能するように、より太いパイプにするか、または容器(タンク)が設けられています。

こうした理由により、このシステムは複数棟の組み合わせハウスにはほとんど用いられず、実際、園芸用に使用されることはほとんどありません。


蒸気

蒸気システムは、熱水の代わりに蒸気を使用する点を除けば、前述のシステム(高圧温水システム)と非常に似ています。

蒸気は熱水と同様、圧力が上昇するにつれて温度が一定の割合で上昇するという、同じ物理法則に従います。

したがって、蒸気による暖房についても高圧熱水の場合と同じ欠点が挙げられます。さらに、既に蒸気動力を使用している工場や建物のように排気蒸気や廃蒸気を利用できる場合を除き、蒸気を加熱媒体として使用することは経済的にもほとんど不可能です。


低圧温水暖房

低圧温水暖房は園芸用途に最も有利なシステムです。次ページで詳しく説明します。

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-4 低圧(常圧)温水暖房 −循環を確実にするための水柱圧力と蒸発容器−

はるか昔、大学で水理学を受講したはずなのに、ここで解説されている温水循環に必要な水柱の計算式の根拠がさっぱり思い出せません。しかも華氏とフィート・インチ単位だし。。。😅😅 HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881) 様々...