2021年11月14日日曜日

庭園事始め:古代ローマから16世紀へ「The Gardeners Labyrinth」第1章

 トマス・ヒルとヘンリー・デジックの「The Gardeners Labyrinth」(庭師の迷宮)は19世紀を遡ること300年前のエリザベス1世時代、16世紀の有名な園芸書です。園芸に対する基本スタンスは、16世紀の当時から連綿と変わらず19世紀、そして現代へと続いているなぁと思えます。カボチャパンツにタイツの16世紀のいでたちのガーデナーの挿絵も楽しいです。まずは冒頭部分をメモしました。(いつも通り英語が不得手なので訳が間違っていたらごめんなさい。)


第1章 庭園の発明。誰が最初に考案したか、そして過去にどのようにして確立されたか。


偉大なプリニーによれば(彼の19巻目の著作本において)、古代ローマ時代の庭園は、持ち主の労力と勤勉さで維持される、狭い土地を単純に囲い込んだものに他ならないと報告されています。それは収穫物と年間の収益をもたらしました。

しかし、時が経つにつれて(人々は自身を尊重したシンプルな(負担のない)生活を求めるようになって)、心の楽しみや喜びになるよう、庭園を飾ったり作りあげたりしてきました。

キケロは著書『De natura Deorum』で、エピキュアン(快楽主義者)の、庭に安息と幸福を求める心がアテネの城壁の中に庭園を作ることを最初に試みさせた、とあります。それ以前は(と思われますが)囲いのない広い土地に無防備に作るもので、自分の町や家といった身近で栽培するといった発想はありませんでした。

そういった理由(まっとうな理由)で、プリニーはおいしい庭(キッチンガーデン)の発明をキケロに準拠したのはもっともなことです。

(プリニーが報告しているように)古代ローマ人が所有していた庭園は木々と人工的な囲いで形成され、その中で毎年更新が必要な植物(1年生植物)が栽培されました。

その中でも、特に、レッドオニオン、ケール/原始的なキャベツ、大型のリーキ、クレス、大型のマロー(アオイ科の植物)またはホリーオーク、エンダイブ、ロケット、そしてさまざまなサラダ用のヤサイが栽培されました。

これらの中から人々が大いに喜ぶ収穫物が見出されてきました。言わば、調理に火を必要とせずドレッシングをかければよいサラダを味わうことができ、ヤサイや木材を町で売ることで肉を惜しみなく買うことができ、そのうえ日々の稼ぎが得られたのです。

当時(古代ローマ)の奇妙な風習として、肉を食べることはほとんど気にかけられず、尊重されていなかった(一般に、肉を食べたことが知られるとある種の非難を受けた)ので、(屠殺場や肉市場に行く)代わりに毎日庭に出かけたのです。

コルメラは書物10.で「古代の農夫は庭の知識に疎かったので(というかむしろそう強制された)、果物とヤサイ・薬草の成長と収穫を促進する方法について捧げる労苦と勤勉さは少しのものだ。」と述べています。彼らは庭での労働に怠慢だったようで、一般的な種類の単調なヤサイ程度の生活で満足していました。

しかし、時代とともに考えも変わり、エピキュリアンの考えも伝わり、美味しそうな肉に添える可憐なハーブやサラダ用ヤサイのタネを蒔くようになり、その美味しさから栽培に熱心になり、庭の適切な管理にもっと注意を払うようになりました。庭はしっかりと囲い、必要とされる様々な果樹、植物(花?)、ヤサイ・ハーブで美しく整えるようになったのです。

庭の持ち主の挑戦と勤勉さにより得られた素晴らしい収穫物・商品であるハーブ、果物などの農産物を都市や街に進んで輸送するようになり、市場に調達されました。それによって日々の稼ぎと年間の家や庭、建屋の更新費用が得られました。同様に、都市と町中においても、農産物が流通することによって、楽しみや心の喜び、さらに 果物、花、ハーブによる食の豊かさが加速しました。

庭園は非常に一般的なものとなり、平均して広くなりました。庭園の責任と主な管理は妻に委ねられたので、カトーが報告しているように、もし庭の除草、刈り込み、植え付けを妻が苦痛や強制と感じないならば、妻は単に家にいる存在ではなく、庭仕事も行う主婦になりました。

しかし、古代の報告をここでひとまず置いて簡単に言うならば、私は、庭仕事の実践の効果と産物を本書に掲げ、まずは庭で学び追求すべき管理法と助言や秘訣について乞い願うものです。

それらはすべて楽しいものであり、多くの庭師の進歩と収穫物および庭でのあらゆる楽しみについて、これから別の章で述べていくことといたしましょう。

キケロ、プリニー、コルメラ、カトーはいずれも古代ローマの有名人です。古代ローマの農産物はオリーブ、ブドウのほかにアーティチョーク、マスタード、コリアンダー、ロケット、チャイブ、ネギ、セロリ、バジル、パースニップ、ミント、ルー、タイム、ビート、ポピー、ディル、アスパラガス、ラディッシュ、キュウリ、フェンネル、ケッパー、タマネギ、サフラン、パセリ、マジョラム、キャベツ、レタス、クミン、ニンニク、イチジク、アプリコット、プラム、桑の実、モモ、と現代日本でもお馴染みの西洋野菜やハーブが並びます。

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