2021年12月12日日曜日

自然で丈夫な生垣:「The Gardeners Labyrinth」第8章

針ケ谷鐘吉、西洋造園史

庭を人や獣の侵入から守るための囲いは石や煉瓦の壁などで作られましたが、庭の内部の区割りには編垣、杭柵、格子垣、生垣、手摺などが用いられました。

第8章は、16世紀エリザベス朝の庭の外や内の囲いの作り方です。しっかり作れば自然で頑丈そうです。棘の凶器度は西洋ヒイラギやウゴギ以上、カラタチ並みかも。

第8章  自然で丈夫な生垣を作るという後世の発明は、時と共に発展してきたもので、庭の最も確実な防御と救済の手段となる。

庭地の囲いは、野イバラと西洋山査子で作られた生垣が最も称賛されています。

しかし、より強力に防御できる垣根は、ギリシャの農業書(コルメラとパラディウス・ルティリウスよりもずっと前に書かれた)の中で、偉人デモクリトスが上手く解説しているものです。この方法は後世の簡単かつ低コストな囲いと同じものです。

要約すると、彼は、その年の、最も丈の大きいノイバラ[私たちはより一般的な名称として、「野生のエグランティン(ユーラシアのバラで、とげのある茎と香りのよい葉を持ち明るいピンク色の花は緋色の実をつける)」と呼んでいます]の赤い実の中に入っている種子、ノイバラ(地面付近で低く繁茂しているタイプ)の完全に熟した種子、西洋山査子の熟した種子、そしてグーズベリーおよびバーベリー(めぎ)の熟した実といったすべての実と種子を、タルトの混合器の中で、はちみつのかたさになるまでしばらくの間、かき混ぜ、浸しておきます。

その混合物を、古くてねじれのない船か井戸用のロープ、またはその他の長く編まれたロープの中に丁寧に入れて、そのロープを短いピースに切断します。そこに埋められた種子はロープに柔らかくくるまれたままロープは徐々に腐っていきます。 ロープは春の初めまで、寒さから種子を保護する仕組みになっています。

時が来れば、希望する場所で成長し生垣の囲いになるでしょう。

見栄えの良い生垣を作るには、小さな溝を2本掘ります。2本の溝は2フィート (60 cm)または3フィート(90 cm)離れていて、1.5フィート(45 cm)の深さとします。

その溝に種子を仕込んだロープ片を置き、軽い土をきちんと被せます。
そして(必要に応じて)同じように繰り返し埋めていき、種子を湿らせるため散水します。

偉人コルメラの農業書において、またナポリのパラディウス・ルティリウスの指南書において、同様の方法が記されています。

そこでは、「生垣を作る土地の区画は、2本の狭い溝で囲う。2つの溝の間隔は3フィート(90 cm)空けて、深さは1.5フィート(45 cm)とする。」と書かれています。

なお、これは春分と秋分の収穫時期に行う必要があります。その時期の地面は雨で十分に湿っているからです。

準備した溝は、冬の間ずっと掘ったままにして外気にさらしておきます。

そして、2月を過ぎたら、種子の入ったロープを各溝に置いて、種子を、特に西洋山査子の種子の成長を妨げないように軽い土で厚くならないように注意して覆土します。

この作業は、南風または南西風が吹く時に、かなり慎重に行う必要があります。

このようにきちんと覆土されれば、種子は早かれ遅かれ1か月以内に発芽します。やわらかい若苗のノイバラがある程度の高さにまで伸びたら、ヤナギの小枝か他の小さな道具を用いて、空いたスペースに誘引するようにします。 ノイバラはさらに成長して、互いに絡み合って固定しあうようになります。

これは数年のうちに、庭や畑の最も強力な防御柵となり、外敵に対する安全確実なよりどころとなります。

コルメラはさらに、ヤナギまたはタイリクヤナギの生垣を両側に配置し、2本の溝の間の中央の空きスペースを覆って、さらにレーキで掻きならすことを勧めています。

どちらかの溝から出て来たノイバラは、このヤナギの生垣の周りでからんで成長するまでは、あるいは、少なくとも互いに固定し合うくらいの強さに成長するまでは、柔らかいままかもしれません。

他にも、生垣を素早く作る似たような方法を確立した有名なディオファン(ギリシャの農業書の書き手)や彼と同じような人が数多く存在します。

ノイバラの大きめの大枝や小枝は、短く分割したり部分に切断したりして、1スパン(親指と小指とを張った長さ; 通例 9 インチ,23 センチ)の深さに掘っておいた溝に傾めにして置きます。そして土で丁寧に覆います。

この後、毎日土を耕したり育てたり、必要に応じて水をやったりするのは、植物が芽を出し、葉が展開するまで、とても重要なことです。この方法で植物を快適にし元気付けてやれば、 数年以内に、強く確実で永続性のある垣根へと成長するでしょう。

ナポリのパラディウス・ルティリウスは、別の、生垣を素早く作る方法を指南しています。

彼によると、植物としてニワトコの若木を約3フィート(90 cm)間隔で植えて準備し、それからイバラの種を柔らかく湿った粘土または固い土の長い塊で丁寧に包んだものをニワトコの木の間に作った浅い溝に整然と並べます。そこを軽い土で綺麗に覆い、必要に応じてその場所に水をまきます。その後3年以内に、泥棒と獣の両方の被害から守るのに十分な強度の頑丈な垣根へと成長します。

パラディウス・ルティリウスは、3年の成長後、このイバラの生垣は燃えているわらで炙るべきであると述べています。→かつおのたたき状態?😊

そのような賢明な作業で、その後、より良い生垣になります。

イバラは、彼が言うように、毎年、藁で炙ったり燃やしたりすることで、より良くなるのです。

熟練した農夫が断言するように、毎年のこの燃焼作業を通して、イバラはより強固に、そしてより荒々しい棘を出すようになります。

要するに、この方法は、庭地を低コストで簡単に囲む一般的な方法です。

巧みに作られた西洋山査子の垣根は、庭の囲いとして見栄えがしますが、丁寧に剪定する数年のうちに、非常に厚く硬く蝋化して、誰もその土地に入ることができず、庭のドアからしか出入りできなくなります。

様々な庭の敷地の中には、それより防御力がかなり劣るのですが、イボタノキの木で囲んた生垣もあります。

年に一度周囲と側面を剪定することによって、垣根を強化します。

この生垣は、この作業を通して、均一で厚く成長し、庭地に美しさやその他の必要な目的をかなえます。

以上、庭に特有の自然な囲いを作る方法をここに述べました。これらはどんな土地でも最小のコストで作ることができる方法です。

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