建物へのガラスの取り付け、特に優美な曲線の建物ではいろいろな留め方が工夫がされていたことがわかりました。が、結局、当時、温室はパテが1番といった結論になっとります。
100年後の1980年頃のガラス温室はパテ(融着物質)と留め具(クリップ)の併用で、ガラス板同士の重なりはありません。手入れが悪いと結構雨漏りします。ガラス自体は割れなければ、掃除すれば、輝きは40〜50年経つ現在でも保たれています。
これからは3Dプリンターにより、取り外し簡単で永久に1滴の水漏れもない、奇抜な形の温室が登場するかも?被覆材はガラスに限らないでしょうし、夢がありますね。
ちなみに私のトンネルのフィルムの留め具は19mm直管用のパッカーです。近くのホームセンター2軒回りましたが、どちらでも取り扱いがありませんでした。みなさん、パッカー使わないの?
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
ガラス
パテを使ったガラス張り
まずガラスの裁断について述べましょう。
サッシ枠のバーは通常垂直または屋根の傾斜と同じ方向になので、1 枚のガラスでサッシ枠のバーの全長にわたって被覆することはできないのは明らかです。水平方向にバーを入れずに、ガラスを「重ねて」張るのが通例です。
この重ね幅は約 1 インチを超えてはいけません。それを超えると、霜が降りた時に毛細管現象によって重なりの隙間に保持されていた水分が凍って、ガラスを割れるほどの力になります。さらに、重ねる幅が長いと、隙間に付着した汚れで見苦しくなることがあります。
屋根やハウスのどこでも、この重ね合わせが生じる部分は連続的で規則的なラインになるようにする必要があります。つまり、12 フィートの垂木がある片流れ(立て掛け式の)屋根に、約 2 フィートの長さのガラス板を使用するつもりなら、重ね合わせによって 5 本の連続的で規則的な重ね合わせのラインができるはずであり、互いに等距離に、そして棟と樋からも等距離にする必要があります。図必要?
両屋根、八角形屋根、などがこの片流れ屋根に接する場合も、「ラップ(重ね合わせ)」のラインは同じ高さで周回するようにする必要があります。
重なり部分に水分が保持されていて、その後、凍結によって破損を生じないようにするため、ガラスの裁断にはいくつかの方法が提案されています。
図 60, 61 は2つの裁断例を示しています。
最初の方法(図60)では、ガラスを交互に鋭角と鈍角でカットすることで、重なりができず、ガラスの端同志を「突き合せ」る方法になっています。その目的は、重なりがなく、したがって毛細管現象が起こらないので、どんな水分も滴り落ちて、まずは一方のサッシバーに流れ集まるようにすることです。
しかし、こういった方法が実用的でないことは自明です。
ガラスは常に同じ角度にカットできるわけではありません。ガラスが幅全体にわたってきちんと突き合わなければ、角度のずれた開口部が生じ、熱が急速に失われます。
さらに、ガラスは非常に鋭角にカットできない限り、水分はガラス板のわずかな隙間からも滴り落ちます。
2番目の配置方法(図61)は端が曲がった状態でカットされたガラスを使う方法です 。
これは水分がガラス板の中央へ流れるようにし、凝集した水分がガラス板の重なり部分から滴り落ちるのを防ぐことを意図しています。
しかし、ガラス板の上部が水平にカットされていて、その上に重ねたガラスの下面が上のガラス板の点線で示すように湾曲しているので、おのずと重なり部分が円の一部を形成することになり、不規則に毛細管現象が発生することになります。
そうすると、ガラスの中央部分は他の部分よりも重なりの厚みが大きくなっているので、必然的にそこに水がたまって、その水が凍結すればガラスの破損がほぼ確実に生じます。
この対策として、重なり部分において上下両方のガラス板のふちを下のガラス板に対する点線で示したのと同じ曲線にカットすれば、ある程度は克服できます。
しかし、これは実際には困難です。なぜなら、ガラスのふちに凸曲線を付けるように切断するのは簡単にできますが、凹曲線を付けるのは大変難しいからです。
たとえ凹曲線を付けたとしても、重なり部分に不規則に水が溜まる箇所が生じる可能性はゼロにはなりません。
ガラス板に関して重要なことは、重ね合わせ部分を確実に水平にすることです。
次の注意点は、パテとその使用箇所に関するものです。
園芸用の建物は厳しい気象条件と日射にさらされるため、パテは硬化し、ひび割れ、剥がれ、木材が露出して腐り、隙間から湿気や虫が入り込み、内部に水滴が落ちる傾向があります。
これを回避するため、多くの園芸家はガラス板をパテで埋め込んでいますが、上部にパテは使用せず、単に「スプリギング(バネ留め)」にするか、割りピンでガラスを押さえるだけにします。
この方法は、キュウリのフレームや小型の栽培温室などには適しているかもしれませんが、見た目は決して美しくありません。そのため、栽培だけでなく観賞目的で建てられたコンサバトリーや温室には適していません。
ただし、パテを適切に作って正しく使用すれば、これらをすべて回避できます。
良質の煮沸した亜麻仁油 (約 9 割) と獣脂 (約 1 割) を混ぜ、次に必要な粘度になるまで攪拌して十分に混ぜ合わせると、パテは硬化したり割れたりしにくくなります。
ガラスは正確にカットし、下部のパテにしっかりと埋め込む必要があります。そうすることで、下部のパテは溝とガラスの間に薄く均一な層を形成します。
ガラスは銅の鋲で「固定する」必要があります。
次に、上部のパテを均一かつ滑らかにカットする必要があります。多すぎず、かつ、パテは垂直の角度にカットするのではなく、かなり急角度の直角三角形の断面にします。そのために十分な量のパテを使いましょう。
表面にバリや割れ目が残っていないこと。水が溜まる心配がなく、パテは実用上十分な硬さがありながら、修理が必要なときにはナイフで切れるほど柔らかいこと。
パテが硬すぎてひび割れしないようにすることは、鉄骨のハウスでも木骨のハウスでも重要です。特に鉄とガラスの膨張と収縮に影響を受けて損傷するのはパテである確率が高いからです。
木材は、ガラスを張る前と後に徹底的に塗装する必要があります。
通常のパテが非常に硬くなった場合、苛性カリまたは苛性ソーダで短時間湿らせておけば柔らかくなって、パテを簡単に取り除くことができます。または、パテに硝酸または塩酸を塗ると、約 1 時間で柔らかくなります。
ガラス板の重なりにパテを塗るのは昔からよくある方法ですが、そうすればハウスは暖まりやすくなり、重なり部分が広いとガラスが割れるのを防ぐこともあります。しかし、これは見栄えが悪いだけでなく、屋根面の太陽光線を遮る面積が増えてしまいます。
パテを使わないでガラスを張る方法。
特許を取得しているパテを使用しない方法が数多くあります。主なものとして、Helliwelli Johnsonによる発明、Rendleによる発明、Shelleyによる 発明があります。
図 63 はHelliwell の方法でガラス張りした屋根の一部を示しています。
垂木は約 6 フィートの間隔で設置し、これに水平のガラス張り用のバーを固定しています。そこに、銅、真鍮、または亜鉛製のクリップを使ってガラス板を固定しています。
鉄骨の屋根では、クリップは鉄のアングルバー(山形鋼)にボルトで固定します。
Helliwell 氏は、大面積の屋根で非常に大きな正方形のロールガラスまたは鋳造ガラスを張る場合、Helliwell特製の垂直バーにガラス板を張るのが最も適している、と推奨しています。
図 64 はこの垂直バーの断面を示しています。
通常の垂木と棟木で亜鉛の垂直バーを支え、そのバーがガラスを支えます。
真鍮のボルトとナットでバーに銅製のキャップをねじ込んでガラス張りが完成します。
特許権者は、この方法について次のように主張しています。
—この方法は円形であれどんな形でも、鉄骨屋根にも木製屋根にも使用できます。
—木工作業が省力できます。
—パテは不要です。
—腐りやすい材料が露出しません。
—外側の塗装は不要です。
—ガラスは簡単に取り外して洗浄し、再度取り付けることができます。
—膨張や収縮による破損がありません。
—ガラスの縁に隙間ができません。
—ガラスがガタガタしたり緩んだりしません。
—結露による水滴の落下がありません。
Johnson の方法は、ガラスの取り付けに圧縮性のある亜鉛(できれば、銅)のチューブを使用しています。その断面は図 65 のとおりです。弾力性のあるチューブがガラスを受け留めてクリップで固定します。
ガラス板を真鍮のクリップで固定し、コッター(くさび)またはネジで所定の位置に固定します。こうすれば、コッターやネジは簡単に取り外すことができるので、必要に応じてガラスをスライドさせれば付けたり外したりが自由にできます。
以下のような利点が主張されています。
- パテを使用しない完全防水のジョイント。
- 膨張と収縮に耐え、破損が防止されます。
- 内側も外側も塗装は不要。
- 優れた耐久性。
- 故障の可能性がほとんどありません。
- 光と熱を比較的よく通します。
- 曲げガラス不使用。
- 軽快ですっきりとした外観。
Rendle の方法は以下のとおりです。
1)水平の亜鉛または銅のバーを、通常の方法で垂木で支えられた母屋に固定します。
これらのバーはそれぞれ断面が異なります。棟に取り付けるバーは逆 U 字型断面、中間のバーは長い S 字型断面で、上部の部材はS字の下部まで直線で続いています。下部のバーは J 字型断面です。
これらのバーには穴があいていて、水が逃げるように下端から間隔を置いてカットされています。
ガラスは、上端をバーにできるだけ押し込むと下端がバーに収まるようにカットされています。ガラスは垂直に 1 〜 1.5 インチ重ねます。
2)もう1つの方法は「コンビネーション」と呼ばれます。
これは垂直ジョイントを除けば1)と似ています。ガラスを重ねる代わりに、垂直バーを使用します(図66を参照)。
このバーには溝がきってあり、そこにガラスが嵌め込まれます。バーの溝は、ガラスの内側に凝縮した水分をガラス下から外に排出します。
バーはガラスの強力な支持部となっているため、4フィートまでの長さのガラスを使用することができます。
発明者はこの方法を平らな屋根や非常に広い屋根といった大きなガラス板を使いたい場合に推奨しています。
3)また別の方法は「アクメ」と呼ばれます(図67を参照)。
このシステムは、次の点で前のシステムと異なります。
ガラスを固定するクリップが狭いのを勘案して重なりを大きくとっています。
クリップがないぶん、雨水はスムーズに流れます。
垂直バーの溝は四角形であるため、水平バーのスロットが埋まり、ガラスに対する強度が増します。
母屋は狭くなっています。
木材の代わりに、溝付きの鉄製の垂木を使用することができます。
Rendle 氏は、このシステムについて、次のような利点があると述べています。
—メンテナンスと修理のコストが 80 ~ 90 パーセント削減されます。
—ガラスはどの方向にも「遊び」があるため、収縮や膨張による破損はありません。
—強風や列車の通過による振動による破損はありません。
—ガラスの取り付け時間は従来の 4 分の 1 で、すぐに交換できます。
—凝縮した水蒸気による滴下はありません。
—パテ、セメント、フェルトなどは一切不要です。
—円形の屋根に直線のガラス板をはめ込むことができます。
Shelleyの方法は冷却鋳鉄の棒を用います。このバーのフラップにガラス板が滑り込む溝が刻まれています(図 68 および 69 を参照)。
溝には間隔を置いてストッパーが設けられており、ガラスが所定の位置に嵌め込むときに、ガラスが吹き飛んだり溝から外れたりするのを防ぎます。
溝の上端とガラスの間には、ガラスを固定するための弾剛性のバルカナイトコード(硬質ゴムでできたコード)が配置されています。
a a ガラス。b バルカナイト(硬質ゴム)(可動式)。c 特許取得済みのストッパー。d バーに固定されたバルカナイトe 湿気を逃がす溝。f バーを屋根に固定するための突起。
バーには、屋根の母屋にねじ止めするための耳が鋳造して付けられています。また、バーの下端には、下部のガラス板を固定して、下の屋根部分や雨どいにガラス板が滑り落ちないようにするための肩が付けられています。
ガラスを更新、修理、また取り外す場合は、ガラス板を溝の位置で持ち上げてストッパーから外し、ガラス板の両端が交互にはずれるように横方向に動かす必要があります。
ただし、ストッパーの特徴を知らなければ、ガラスを取り外すのは容易ではありません。
垂木は必要ありませんが、母屋は約 6 フィートの間隔で設置する必要があります。
特許権者はこの方法に次のような利点があると主張しています。
—大気やその他の影響にさらされて腐敗しやすい材料を使う必要がない。
—木材をほとんど使用しなくてすむ。
—母屋は約 8 (6?)フィート間隔で設置すればよい。
—ガラスの取り付けが簡単かつ迅速にできる。
—パテが不要。
—塗装は任意でよい。
—ガラスが吹き飛ばされることがない。
—この方法を知らない人がガラスを外すことは困難なので、屋根はある程度侵入の防犯になる。
—膨張や収縮による破損がない。
—どのような角度への取り付けにも同じようにできる。
—亜鉛不使用。
—円形の屋根に平らなガラスを張ることができる。
こういったパテを使わないガラス張り方法は、鉄道駅、展示場、浴場、市場、織物工場、倉庫などの屋根には有利な施工方法ですが、園芸用栽培ハウスに関してはパテを使ったガラス張りに代わる方法はいまだ発明されていないことが分かっている。
全体として見ると、世界は非常に保守的であり、どんな方法でも、それがいかに優れていても、既存の方法がどれほど劣っていても、それを置き換えることはなかなか難しいものです。
パテを使ったガラスの張り付けが園芸用の建築物では今でもその独自の地位を維持しているのは、それ以外の方法はどれも園芸家の要求をパテ以上に満たすものがないからです。
パテを使わないなら、次の2つの方法のどちらかを採用する必要があります。ガラスを金属とくっ付けてある程度の「遊び」を持たせるか、ガラスを何らかの柔軟な物質とくっつけるかのいづれかです。
前者の場合、熱が逃げやすく、建屋を適切に燻蒸できず、毛細管現象によって水が溜まる隙間が多くなり、その後この水が凍結してガラスが頻繁に破損する可能性があります。さらに、水が溜まるこの隙間に虫が住みつくこともあります。
2 つ目の方法では、たとえ使用される弾力性の物質が屋根を密閉するように十分に調整して施工されていたとしても、暖房温室特有の厳しい温湿度の変化の影響を受け、弾力性物質が急速に破壊される可能性があります。その場合、それを更新する費用と手間はおそらくパテを使った場合よりもはるかに大きくなるでしょう。
確かに、ガラスの取り付け部となる鉄筋、垂木、棟木などといった構造材の大部分は建屋内にあります。
しかし、屋根の外側に板やはしごを設置しない場合、この利点はデメリットとなる可能性もあります。すなわち、ハウス(温室)の内側からガラスを張ることができない場合もあるということです。特にブドウ用ハウスのガラスの張り替えは、ブドウの木がガラス面の近くで屋根全体を覆っている場合などには内側から施工できません。
パテを使わないガラス張りの主な利点の 1 つは、ガラスを素早く簡単に出し入れできることです。これもまた、利点がデメリットとなる可能性があります。なぜなら、そのような場合、鍵やその他の侵入防止措置があっても、数枚のガラスを子供でも 5 分で外して中に入って貴重な果実を持ち出し、再度ガラスをはめ直すことができるからです。
パテなしで留め具でガラスを張る方法の中には、パテでガラスを張るよりもコストがかかるものもあります。
また、ガラスの重なり部分が非常に大きくなってしまう場合もあります。
重なりが大きいと、そこに湿気が溜まりやすくなり、汚れも溜まりやすく、見栄えが悪くなり、植物が日射で焼けやすくなります。
園芸家は、パテでガラスを張る手間がなくなればとても喜ぶでしょう。しかし、留め具によるガラス張りのさまざまな方法を注意深く観察し、長期間にわたって経験した結果、適切な材料を使用し、慎重に作業すれば、栽培目的の園芸用建物にはパテでガラス張りするのが最善だとわかります。園芸用建物におけるガラスの重要性は当然、非常に大きいので、ガラスに関する栽培上の科学的知見を無視するわけにはいきません。
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